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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
最終章・蘇った帝国と新たなる王
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314、研究と気づき

皆さんこんばんは。

前回から少し間が空いてしまったのですが、今回はお留守番組の三人+α側のお話です。

ケイ達がコカトリス捕獲に奮闘している頃、お留守番組のポポとメトバはルトの手伝いをすることになった。


しかし手伝いとは言っても専門的な知識がほとんどない彼らには、さっぱりな様子で、作業場であれこれ考えているルトの後ろ姿を見つめながら、自分たちに何が出来るのかと疑問を浮かべる。


「兄ちゃん、おいら達はなにをすればいいんだ?」


思案しているルトがその声に気づき振り返ると、手持ち無沙汰にしているポポ達の姿があり、そうだな~と考えつつも、どうしたものかと思い悩む。


現にケイ達には、変異したアカリゴケの生育を一時的に遮断することならできると言ってはみたものの、ルトが見るにメトバにあるアカリゴケは、自分が想定している以上に急激な変化・進化を繰り返していると感じ不安を抱く。


また巨人族については、ポポの話とアルバと呼ばれる人工知能が提供した過去のデータ資料しか判断材料がなく、周期的にアカリゴケが巨人族の身体全体に回り増殖しきると人の死と同じような現象に行き着くわけだが、それが巨人族でいう、生きながら死を迎えるのか、はたまた開花すると死を迎えるのか、という微妙なニュアンスによっても生態系に違いがでるのではないか、と疑問が尽きない。


変異したアカリゴケの生育状態を実際に見たわけではないので判断しづらい部分はあるが、現状でわかることは細胞レベルで癒着をしているということ。

というのも、先ほどメトバから拝借した細胞を試験的に作製した除草剤に入れるとピンク色が混じった赤っぽい色が浮かんできたのだが、これはメトバの細胞である岩の内部が溶け崩れた色である。


アルバが提供したデータでは、巨人族はエストアの岩を使用して作られた生命生物であることが明らかとなっているが、使用されているエストアの岩は、もともと土地と魔素の関係で内部が赤くなっているのが特徴とされている。

よく専門家の間では『スーカ(すいか)の山』と冗談で表現されているが、日本でいる酸化鉄を含んだ土壌・赤土に近いものと想像してほしい。


ただルトが気になる点として、作製した除草剤は薬草を一切使用していないにも関わらず、赤色に混じってピンク色が出てくる点である。


本来エストアの岩にはピンク色の成分が出るような要素は何もないはずなのだが、現にルト達の目の前で検出されていることから、これが何を示しているのか皆目見当もつかない。


「ポポさん、メトバさん、お手伝いをお願いしてもいいですか?」

「ん?おいら達にできることなら!」

「それなら、もう少しメトバさんの細胞を拝借してもよろしいでしょうか?」


ルトが提案をすると、快く胸を叩いたポポの表情が瞬間的に変わる。


たとえ検査のためだとしても、大切な友人であるメトバの身体を少量でも削る行為に嫌悪し、それをするならルトへの協力は拒否したい衝動に駆られる。

ルトもそれを重々承知しているが、フラスコに現れたピンク色の成分が一体何を意味しているのかという疑問を捨てきれないでいる。


「メトバ・・・?」


そんな二人の雰囲気を察してか、メトバはルトに自分の右手を差し出した。


ポポがそんなことしなくていいと制止しようとしたが、メトバは友人の悲痛な思いを受け取りつつも、尚且つルトのためにと協力を惜しまない姿勢を示す。

言葉を発する動作を持ち合わせていない巨人族は、自分たちの行動でしか周りに示すことが出来ない。そんな彼だからこそ、ルトとポポの顔を交互に見やり諭すような雰囲気を向ける。


「メトバがいうなら、おいらは何も言わないよ・・・だけど、あんまり痛いことをしないでほしいんだ」

「うん・・・ありがとう。メトバさんも気を使わせて申し訳ありません。調べたいことがもう少しあるので協力をお願いします」


頭を下げたルトにポポは言い表すことの出来ないほどの不安な気持ちでルトとメトバを交互に見つめ、メトバの行動も相まってか、ここはルトに任せようと決意をしたのであった。



再度二人に了承してもらったルトは、謎のピンク色の部分を考えることにした。


彼が作製した除草剤はケイ達にも説明した通り、薬草の代わりに予め鉱石を調合しやすいように加工したものが使用されている。


本来鉱石類は鍛冶師の専門分野になるが、自分で加工した物を錬金術の素材として使用していることは錬金術界隈では常識的な話だったりするのだが、一般的にはさほど知られていない。

そもそも錬金術師が鉱石を使用という概念が世間では浸透どころか認識すらされておらず、その理由としては鍛冶師が使用するというイメージがかなり強いことが上げられる。


鉱石を加工するという前段階の話を少し説明させてもらうと、実は鉱石自体を使用するのではなく、鍛冶師が作業して発生する“クズや残骸”のことを示す。


この説明ではあえてクズ鉱石と呼ばせて貰うが、どの生産専門職でも多かれ少なかれ、作業で発生した“残りもの”というものが存在する。

これらを専門業者が回収し、材料にするために加工したものを提供→錬金術師が購入し使用するという一連の流れがあるのだが、腕に自信のある錬金術師などは、自身で調達し加工することで自分にあった素材を使うことができる、いわばリサイクルのようなものに非常に近い。


とまぁ~話は脱線したが、ルトの場合は顔見知りの鍛冶師からタダ同然で鉱石を譲って貰ったものを加工し錬金術の素材として使用している。

ルトぐらいになると、どの素材がどれだけ効果・効能を持っているか、また情報や経験を基に新たな可能性を引き出せるかは大体察しがつくのだが、今回に関しては全くと言っていいほど検討がつかない。



【お困りのようですが、よろしければデータの解説を行いましょうか?】



突然、どこからともなく声を掛けられたルトと隣に居るポポが一斉に「わっ!!」と驚きの声を上げ、慌てて辺りを見回してもルト達しか居ないはずなのだが、その声の発声源を思い出したルトがある一点を見つめる。


作業用の机の空いているスペースに一台のタブレットが置いてある。


ケイ達がエバ山に向かう前にアルバから提供されたデータをもう少し大きな画面で見たいと、ケイが取り出した私物の端末である。

そこから声が聞こえたので、その声の主がケイ達とやりとりをしていたアルバというの声ではないかとを察したルトは、恐る恐る声を掛けた。


「あの・・・あなたはケイさんのスマホから声がしたかと?」

【はい。ですがワタシは、アグナダム帝国のメインシステムを司っている関係で、他の通信機器に接続することが可能となります】

「えっと・・・それでしたら質問したいことがあります。先ほどのケイさん達のやりとりを見て思ったのですが、巨人族の構造はヒガンテ?というモノの基礎だったということでしたが、その構造は全く同じということですか?」

【いえ。解析されたデータからはヒガンテは、アグナダム帝国の王・シャーハーン王の魔力に依存していました。対して巨人族は、岩本来に蓄積されている魔素と魔石を組み合わせた、いたってシンプルな構造となっております】


ケイ達の話に出ていたヒガンテという生物(兵器?)は、過去存在したシャーハーン王が魔力を使って動かしたという事実に疑問を浮かべる。

たしかに冷静に考えると、ヒガンテがシャーハーン王なくしては自立できないということに、シンプル設計で先に造られた巨人族が可能なのは、技術的な順番としてにおかしいのではと考える。


さらに詳しく話を聞いてみると、元々ヒガンテを造るに辺り先に生み出された巨人族の構造をベースに試作を重ねていたようだが、結果的に自立したヒガンテを生み出すことができなかった、と記録に綴られている。

その原因についてはアルバのデータベースにも明記されていなかったため、暗礁に乗り上げたかに思えたが、ルトがメトバの方を向いたときにそうだ!とあることを閃く。


「ポポさん!お手伝いをお願いします!」

「えっ?手伝いって?」

「いくつかフラスコを出すので、その中にメトバさんの身体の部位の表面を別々に採取してください」


その発言にポポは、この兄ちゃんは何を言っているんだ?と目を丸くしたが、アルバの話を聴いたルトは、もしかしたら自分は勘違いをしていたのではと思い至る。


そして直ぐにルトとポポはそれぞれ手分けして、メトバの表面の採取を行った。


高い位置である頭と肩・背中はルトが、しゃがんだ体勢のメトバの両手足をポポがいくつもあるフラスコの中に次々とその細胞を採取する。


「ルト兄ちゃん、採取したのは良いけどこれをどう調べるんだ?」

「僕の推測が正しいなら、ケイさん達に言った仮説が部分的に成立しなくなる可能性があるかもしれないんだ・・・」


机一杯に広がったフラスコの数に何をするのかとポポがルトの方を見上げると、神妙な面持ちでフラスコを見つめ、何かを決めたかのように部屋の隅にある棚の方へと向かった。


「ルト兄ちゃん、それは?」

「以前僕が作った成分を解析する薬品みたいなものかな」


ルトが戻ってくるや、その手には無色透明の液体が入ったビンが握られている。


瓶に栓をしているコルクの開けると、隣にいたポポが椅子に乗った状態でルトが手にしている瓶に顔を近づけ臭いを嗅いでみたものの全く臭わない。一見【水】と言われれば納得できそうなほど特徴がない液体に、得体の知れない謎だけが深まる。


ルトはその液体をそれぞれ採取したフラスコに少量ずつ均等に流し入れた。


液体が注がれたフラスコは、それぞれ採取されたメトバの細胞と反応するように赤色に染まり出したのだが、ルトはその変化をを見逃さないように厳しい目線を向ける。



「やっぱりそうだったんだ・・・」



ほどなくしてルトがあることに気づき、脱力するようにその場に座り込んだ。


ポポとメトバは何がなんやらと顔を見合わせ、その様子に気遣いながらもポポがどうしたの?と声を掛ける。


「ルト兄ちゃん?何かわかったの?」

「あ、うん・・・僕、ケイさん達に謝らなきゃと思ってさ。やっぱり勘違いしていたことがあったんだ」

「勘違い?」

「うん。メトバさんの身体に広がっている変異したアカリゴケの本当の正体は一般的に見られる“錆”のことだったんだ」


サビ?と疑問を浮かべるポポ達を余所に、ルトはケイさん達にどう説明をするべきかと別の心配事が発生し、一層頭を抱える事態となったのだった。

変異したアカリゴケについて、ルトは錆が関係しているとポポとメトバに告げます。

自分の勘違いだったと頭を抱えるルトに、二人はなんと声を掛けていいのか困惑している様子。

さてさて、どうなることやら。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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