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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
最終章・蘇った帝国と新たなる王
322/359

313、コカトリスのウロコを求めて

皆さんこんばんは。

ネットの調子の関係で少し遅れました。

さて今回は、コカトリスのウロコを探すユルいお話です。

ルトからコカトリスのウロコの採取を頼まれたケイとアダムは、ディナトを連れてエバ山へと向かった。


ちなみに王都からエバ山までは片道半日近く掛かるため、手っ取り早くゲートからアーベン経由で山に向かうことにする。ゲートは元々アダムの借家に繋げたもの改良して作られているため、前の機能を残している関係で扉を開けてすぐに家具の少ない間取りへと続く様子に、初めて経験するディナトが驚愕としたのは言うまでもない。


「そういえば、アーベンに来るのは初めてだな」


借家から町の外に出る道中で、ディナトがそんなことを口にする。


一国の主である彼は、初めて見る港町の街並みに行き交う人々をすれ違いに眺めては興味深げな表情を見せる。


「ディナトはアーベンに来たことがないのか?」

「あぁ。それどころか実は海も数回しか見たことがないんだ」


山生まれ山育ちのディナトが幼少の頃、父親の公務に同行した際、ダナンで海を何度か見たことがある。

しかし父親が多忙だったことから港まで足を伸ばすことができず、海をしっかりと見る暇もないまま国へと戻ったことから、その時の潮風の香りが残念な思い出として残っている。


「そういえば折角アーベンに来たんだから、少しマリー達のところに寄りたいんだがいいか?」


ケイの提案にアダムは一瞬躊躇したが、ディナトに以前お世話になった人たちのことだと教えると、折角なのだから顔を見せて行ったらどうかと肯定される。



「おーい!マリー!」

「おや!?ケイ達じゃないか!」


宿屋『ポーサ』に赴くと、接客が一段落したマリーの姿があった。


昼時を過ぎた頃だったようで、彼女がケイとアダムの姿を見つけるや大層驚いた様子で厨房にいる夫のドルマンを呼んだ。それからほどなくして現れた彼の方も急な訪問に驚きを浮かべながらも笑顔で三人を迎え入れる。


「久しぶりだね、元気にしてたかい?」

「あぁ。二人も変わりなさそうだな~」

「あはは!あたし達はいつも通りだよぉ!」


ケイ達との久々の再会が嬉しかったのか、マリーはカラカラと笑い、元気そうでよかったと告げる。

一瞬、なにせ数ヶ月も大陸を離れてましたから・・・と言いそうになったが、そこはハッと思い直し「忙しかったんだ」とだけ返す。


「ところで、その隣の人は誰なんだい?」


マリーがケイとアダムの隣にいるディナトの方を見た。


ディナトが自分の事を告げると、ドルマンが驚いた表情を浮かべ、マリーに耳打ちをする。そしてそれを聴いた彼女も「まさか、一国の主がこんなところにいるとは・・・」とあんぐりとした様子でディナトを見やる。


「あー、実はエバ山に用があってその関係で立ち寄ったんだ」

「エバ山?ということは、やっぱりコカトリスの卵かい?」


えっ?というケイの表情に、違うのかい?とドルマンも疑問を浮かべ首を傾げる。


「そういえば、今の時期は産卵期だったな~」

「えっ?そうなのか?」

「実はサラマンダーもコカトリスも、元は同じ系統の卵胎生生物なんだ」


コカトリスとサラマンダーは、一見生息地が異なっている別の魔物として認識されがちだが、元は同じ種のドラゴンから生まれ互いに派生した経緯があり、その習性からか互いに高所を好むところも同じだという。また繁殖期も一年で五回と他の魔物に比べてやや多く、一回につき二~五個ほど卵を産むのだそうだ。


「それならこれを持って行ってくれ」


ドルマンが一度厨房へ下がり、手に袋のようなモノを提げて戻ってくる。


中を覗くとベジルキッシュが入っており、調理の際に卵が余ったのでいくつか作った内の一つだと言い、コカトリスの卵は使ってないけど小腹が空いたときにと気を使ってくれた。


ケイ達はそんな二人の好意に感謝しつつ、また来るよと告げてから目的であるエバ山へと向かったのだった。



アーベンの町からエバ山は、距離にして徒歩15~20分のところにある。


町から山が見えるほど近い距離にあるのだが、魔物の生息地と言われているだけのことはあってか登山のように山道を歩く人の姿は見受けられない。


「人っ子一人居ないって、実はエバ山ってやばいのか?」

「まぁ~コカトリスの生息地だし、時期が時期なだけに冒険者の派遣も一時休止にしているからな」

「そういや、卵の回収は常時依頼にも入ってることがあるよな?それって、やっぱ産卵期や繁殖期は外すのか?」

「普通はな。大繁殖したとかじゃなければ、コカトリスは手慣れの冒険者でも気をつけなきゃいけない魔物でもあるし、この時ばかりは常時依頼も取り下げるしかないさ」


アダムから実はエバ山は危険地域に指定されており、コカトリスが獰猛になるケースもあることから冒険者も時期を外すことがよくあるという。

今の時期はまだその前段階らしいが、町にいると希に山の方からコカトリスの縄張り争いをする鳴き声が聞こえてくることがあるのだという。


三人は山道を登り、まずはコカトリスがよく目撃される中腹部へ向かった。



「なぁ、この辺りって穴がたくさんあるけどコカトリスの住み家か?」


山道を登る途中、ケイは岩山にいくつか横穴があるのを見かけアダムに尋ねた。


「あぁ~!あれは空の巣穴だな」

「空?子育てが終わった巣ってことか?」

「いや、あれは地位変更による跡だ」


エバ山に生息しているコカトリスには、互いに上下関係を決めて暮らしている習性があると、ここ十年ぐらいの調査で判明した。


どうやら本能的に上下関係が決まっているようで、一つでも多く子孫を残そうとメス争いや縄張り争いが繰り広げられていることが日常だとも言われている。

しかも所々に見られる横穴は、コカトリスの権力と地位を示しているらしく、上に行けば行くほど強い個体が複数体のメスと一緒に暮らしている。

またメスも強いオスの子孫を残そうと取り合いがあったりもしており、その際に相手の子孫を残さないよう潰し合うことも日常的にあると知られている。


最初にエバ山に降り立った時、ある巣穴で割れた卵を見た時の事を思い出したケイは、あの時の意味はこう言うことだったのかとここで疑問を知ることができた。



「二人共、止まれ・・・」



更に山道を進むと、ディナトが急に前に立ち二人に止まるよう制止した。


近くの岩陰に二人を誘導し姿勢を低くしてから物影から覗くと、威嚇する二頭のコカトリスの姿を見つける。

互いに睨み合う二頭は縄張り争いの最中のようで、山道を身体を使って道いっぱいに広がると、次の時には睨み合いながら円形に身体を丸めその場でクルクルと回り始めた。


日常生活でそれをされると困るのだが、ここはコカトリスのテリトリーなので本来はケイ達が部外者の立場となる。


「縄張り争いか・・・あの様子ではしばらくは動かないだろうな」

「え゛~~~っ、もぉアレでいいんじゃねぇの?」

「君・・・正気かい!?」


面倒くさそうに睨み合う二頭を捕って帰ろうというケイに、信じられないといった様子でディナトが聞き返す。

普通でもあの状況下はかなりまずいと判断出来るのだが、そんなことはお構いなしのケイは、よし!と気合を入れると二人が止める前に二頭に向かって走り出した。



「よっしゃ!貰ったぁ!!」



縄張り争いをしている二頭のうちこちらに背を向けているコカトリスにケイが飛びかかった。


その背にしがみつくや素早く頭部へと移動し、慌てふためくコカトリスの頭を平然と拳で殴り、その勢いで地面に叩きつけるように脳しんとうを起こさせると、前方のもう一頭が慌てた様子で尻尾を振りかぶり、叩きつける動作を目で追いながら同じタイミングでその尻尾を支えるように受け止めた。


普通なら死んでもおかしくはないのだが、相手がケイだけにコカトリスのも想定外だったようで、そこから逃れようと藻掻く寸前で、捕らえた尻尾を自分ごと回すように左回転に身体を捻ると、その勢いのまま後方で目を回しているコカトリス目がけてバットの要領で二頭を相打ちさせる。


コカトリスが互いに打ち付けられた音と衝撃に驚いたアダムとディナトがハッと我に返るや、ケイが打ち付けたコカトリスは宙を舞うように崖下へと落ちていくところだった。


「おい!?ケイ!ち、ちょ・・・「悪ぃ!俺先に行ってるわ!」」


アダムが静止しようとした瞬間、崖下へと落ちていくコカトリスの背に飛び乗るように、ケイも一緒に落下という名の下山の行動に至る。

もちろん止めようとしたアダムもそのやり方に唖然とするしかないディナトも、まさか斜め上の行動に出るとは思いもよらなかった。


また崖下へと落ちていくコカトリスと飛び乗ったケイを目で追いながら、二人はその後を追うように慌てて来た道を戻ったのは言うまでもない。



崖下へと落下した二頭のコカトリスは、途中で突出した岩山にぶつかりながらもかなり下の方まで転げ落ち、最終的には下山地点の近くに流れる川沿いに突っ込むように止まった。


ケイは地面に激突する直前で途中の大きな岩肌の前で飛び降り着地すると、川沿いに落ちる二体を悠然と眺めていた。


いくら山を拠点にしているとはいえ、あの高さで地面に激突すればほぼ助からないということは誰が見ても分かる。

しかし想定以上にコカトリスのウロコや肌が強かったのか、木っ端微塵になるということはなく、多少の傷と出血という状態であることから意外と丈夫なんだなとケイは他人事のように感じた。



「ケイ!お前はなんでいつもいつもそうなるんだ!?」


ケイがコカトリスの両手足と口を縛り、動けなくしたところでアダムとディナトが追いついた。


アダムは合流するやケイの頭に拳骨を落とし、毎度毎度大変なのはこっちなんだから・・・といった様子でため息交じりの注意をする。

ティナトに至っては、あまりの捕縛のやり方に理解が追いついて居ないのか、無力化したコカトリスとケイを交互に見やっている。


「いってぇ・・・だ・か・ら、さっき言っただろ!『先に行く』って」

「もうちょっとやり方を考・え・ろと言ってるんだ!」


勘弁してくれと脱力するアダムは、自分だけなら良いがディナトさんがいるんだから気を配れと注意する。言われた当人であるケイは、アダムがサポートに回ってくれるからできるんだろう?と返す。


言われてみると、もし物陰に隠れた地点にコカトリスが来たとなったらと考えると一理あるなと一瞬考えてみたものの納得できないアダムに、ディナトはとりあえず捕獲はできたのだから、ある程度処理をしてから戻ることにしたらと逆に気を使うハメになったのである。

ケイの斜め上の捕縛術になんとかコカトリスを調達できた三人は、一旦状況を確認してからルトの元へと戻ります。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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