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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
最終章・蘇った帝国と新たなる王
320/359

311、体内にあるアカリゴケと除草剤

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回は久々のアルバ登場とルトの除草剤の話です。

「ケイ、これはどういうことだい?」


ディナトから説明を催促されるがこちらもいきなりの展開に理解しきれず、考える間を置いてから、古代人であるアスル・カディーム人の遺産を継承した結果だと今までの経緯と詳細を述べる。

もちろん信じる信じないは相手次第だし、こちらは体験した出来事をありのままに話しただけなのだが、信じられない表情をしていたディナト達はケイの説明を各々自分なりに整理する。


「・・・で、君はその、アグナダム帝国の王にでもなるつもりなのかい?」

「王?まさか~それはないない!」


そうかと息をついてからディナトがこんなことを尋ねるが、ケイがその発言に肩を竦め否定するように手を振る。しかし話を聞く限り、ケイが過去の遺産を継承しているのであれば、何かしらの意味があるのではと問いかける。


「君たちが他の大陸を巡った先に浮上したアグナダム帝国は、現に形を残して存在しているわけだから、いずれにせよ王の遺産である腕輪を持っている君自身に何かしらの思いを託した可能性があるってことなんじゃないのかな?」

「それ以前にアスル・カディーム人の生き残り・・・というより王の息子が生きているからそいつが国を継ぐべきなんじゃねぇの?むしろ全く接点のない俺が他国の王って世も末だしな~」


ケイの多少自虐混じりの発言にディナトは、彼の言葉から“継承自体に後ろ向き”であることを感じ取る。


もちろん経緯を聞いた上で考えれば普通そうだろうなとは思うが、千年以上前の遺産を偶然にも手に入れ、かつての大陸を浄化したという事実から考えると歴史に残るほどの偉業を成し遂げたにも関わらず、あまり積極的でないケイの態度に首を傾げる。

正直、個々の気持ち次第なので一個人が指摘するのは何か違うと思い、ディナトはそれ以上のことは口にしなかった。


「とにかく話を戻すと、アルバがデータを転送したということでいいんだな?」

「あぁ・・・とはいえ、なんでもう少し早く教えてくれねぇんだよ?」

【聞かれませんし、以前空気を読めと発言されましたので・・・】


ケイとアダムの会話に流れるように入る女性の様な声が辺りに響く。


説明されたとはいえ、ルトは驚き辺りを見回し、ポポは緊張からか小さくなったメトバを抱き寄せながら身を縮ませる気持ちはわかる。ディナトに至ってはアルバが見えないためか、警戒するように目を細めケイ達のやりとりを見つめている。


「巨人族のデータは、送られてきもの以外にもあるのか?」

【現在、他のデータは修復作業中です。なお添付資料は当時のアスル・カディーム人の技術を反映させた資料となります】

「それって、どのくらい前だ?」

【おおよそ2000から2500年前と推測されます】


巨人族のデータが大分前からあることに、アフトクラトリア人やヒガンテを形成することを前提に巨人族が生み出されていたとしたら・・・と考えた時、試験的な運用をホビット族がいる島に配置し、共存が可能なことを確認したことで、独自に研究を進めてきたと考えるべきだろう。

またアルバの言い切らない発言に疑問を抱き問いかけたところ、アルバ自体は巨人族のあとに造られたため、正確な情報がデータでしかわからないという。


一見、アスル・カディーム人たちの利益になるために行ったことにも思えるが、むしろホビット族は損得勘定というものがなかったから実現できたのではないかと思えてならない。

現にポポはメトバを慕い、ほぼ表情や様子が変わらないメトバもポポに対しては気にかけている様子が見られるため、考え方の相違の結果と言ってしまえばそれまでなのだが・・・。



アルバから送られた添付ファイルを開き、情報をタブレットに転送させた後にプロジェクタを用いり壁に投影させる。


壁に映し出された映像から、当時の巨人族を形成する設計図や工程図のような一覧がスライド式で流れる。

データが古いものであることから、アルバが事前に画像解析・処理を行ったのだろう。所々に当時の文字らしき書き込みが見られるが、映像では潰れて見えるためケイでも正確に読み取ることが難しい。


「ケイ、書いている文字わかるか?」

「字自体が潰れてるところがあるから正確に読めねぇぞ?えっと・・・“上陸した大陸北東にある岩山を一部切り崩しベースを形成させる”ってよ。要は巨人族を造る上での材料みたいなことっぽいな」


表示されている内容から、巨人族の元となる当時の材料が表示される。


ケイがその材料を読み上げたところ、ルトからは現在では手に入らない錬金の素材が使用されているという。この情報だけでは推測でしか計ることができないが、ケイの解読した内容から人格形成のために魔石を精製し、埋め込んだ方式ではないかとされる。

魔石を精製?と疑問に感じたのだが、実際に錬金術の一環で魔石を加工する技術があるそうで、それにより能力の増減または生成などは知られていないだけで錬金術界隈では当たり前に存在している。


しかし過去にはその技術を応用し人格形成・変換の技術もあったようだが、現在のダジュールの法律では違法とされ、ケイはそういえば地球にも似たような技術はあったなと説明の途中でふと思い出す。


「大陸北東はこの情報で見る限り、位置的にエストアなのは間違いないようだな」

「巨人族の元をここから取って造っていたとなると、単に造りだした以外にも目的はあったりするかもな」

「目的?」

「例えば・・・軍事用、とか?」


まさかとアダムは驚き見たが、ディナトからは500年前の世界大戦にてエストアとバナハとの契約の締結があった痕跡が残っていたことを述べられる。

また軍の運用の際にエストア協力の元、倫理的に言うことをためらうことも行ってきたそうだ。まぁ、その時代の背景はケイ達の知るところではないのだろう。


「話が脱線しちまったけど、結果として巨人族の体内に存在しているアカリゴケを使用出来るのか?」

「それは、正直この資料だけではわかりません。エストアの土地にあった岩や石だけを用いて造られていることを前提に考えれば、排除自体は問題ないかと。ですが・・・」

「それを行うためには障害を取り除く必要がある、ってことだな?」

「はい。問題は大きく分けて二つあります。一つは、巨人族に寄生しているアカリゴケの発生元が何処かという点。もう一つは巨人族の性質がどうなのかという点です」


ルトの説明によると、アカリゴケがもし巨人族の生命の中心である魔石に近い場所にあるとしたら、除草剤を使用ことは難しいだろうと述べる。


巨人族の魔石は人で言う心臓部分に当たるため、下手に除草剤を撒いてしまうと薬物中毒のような症状を起こしてしまう可能性を危惧しており、また魔石は環境の変化に対応し日々変化を起こす物質である反面、ケイ達が思っているほど外部的な刺激に脆く壊れやすい部分があることから、理論上では一つとして同じ魔石は存在しないなどと言われている。


「ケイさん、メトバさんを一度しっかり診せて頂きたいのですが、元の大きさに戻すことはできますか?」

「できるっちゃできるけど、その・・・医者でも技術者でもないのにわかるのか?」

「実は最近、技術や医療関係の方に色々ご指導をお願いして貰っているんです!」


ルトは満面の笑みで、生物の組織や構造、他職業の人々に専門的な話を聞いて回っていることがあるので、ある程度の知識は理解できると述べる。

隣にいるディナトから、思わず「彼は錬金術師だよね?」と確認されたが、知らない間に大人になっているんじゃないかとケイとアダムは感心する。



メトバを診てもらうため作業場から庭に続く扉を開け庭に出て、拓けた場所まで来ると、ケイが元の大きさに戻って貰うよう腕輪を調整する。すると、ズズズッという振動の後、ポポと並んだぐらいの高さから一気に見上げる形へと姿を変えた。


「け、結構大きいですね・・・」


唖然とするルトを余所にメトバの高さは近くに植えた木の枝スレスレまで近づき、身体の状態を診たいのでその場に座ってほしいと頼むと、ゆっくりとした動作で胡座をかくようにその場に座った。

ルトがメトバの身体を頭のてっぺんからつま先までくまなく確認し、その途中で身体によじ登り、それから屈んで足の内側を確認したり、たまにポポに話を聞いたりとまさに診療そのものだった。


「・・・で、なにかわかったのか?」

「はい。メトバさんの身体に存在しているアカリゴケは、巨人族の体質に合わせて変化しているものと考えられます。アカリゴケは繁殖の際、胞子による生殖繁殖が行われるのですが、環境の変動にかなり弱くエストア内だけで繁殖をしているため外部に出ることはほとんどありません。ですがポポさんの話を聞くかぎり、この大陸に存在するアカリゴケとはかなり性質が異なっています」


アカリゴケはシダやコケ植物なのか!?とケイは驚いていたが、アダムやディナトの表情に疑問が浮かばないことから、地球とダジュールの環境はかなり異なる認識なのだろう。


ポポとメトバが暮らすダインは島の中央に山に見える丘が存在しその周りを森が囲むような環境となっている。

気候はエストアより過ごしやすく、水辺や森が存在することからポポから話を聞いたルトが、その環境がアカリゴケの性質を大きく変えたのではと考える。


「今、新しい除草剤を試しているのですが、メトバさんの細胞組織を少し頂いてもいいですか?」

「えっ・・・も、もしかして削るってこと!?」


新しい除草剤が巨人族の体質にどのような影響を与えるか調べたいというルトの言葉にポポが不安そうな表情で見つめている。

表面上を少しだけ拝借したいと願うルトにメトバが率先して腕を差し出すのだが、ポポが駄目だと思い止めようという行動を取りそうになるものの、その気持ちを察してかメトバが首を振って制止する。


なんとかポポを宥め提案が了承されたルトは一旦作業場へと下がり、ほどなくしてピンセットとなんの素材で構成されたのか分からないオパールのような色合いの液体が入ったフラスコを取りに戻ってくる。

腕を出されたメトバの指先の組織をピンセットの先で薄く削り、それがフラスコの中に落ちるや液体と反応した影響でその中心に細かな気泡が上がった。


また、どんな反応になるかルト自身もわからないため、一同は緊張した面持ちでフラスコの中の液体を見つめていたのだった。

アルバが提供した過去の資料を元にルトが巨人族に入り込むアカリゴケの調査を行いました。

またルトが作製している除草剤は一体どんな影響をもたらすのでしょう?


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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