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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
32/359

30、能力向上委員会(?)

次のターゲットは、アダムとレイブン。

ケイの実験という名ばかりのいたずら。



シンシアが昇格試験を受けている間、ケイとアレグロとタレナの三人は雑貨屋にいた。

「おっちゃん!空き瓶を10本頂戴!あとポーションも6本追加で!」

「あいよー。全部で1.300ダリだ」

カウンターの上に空き瓶10本とポーション6本並ぶ。

「あんちゃん空き瓶なんて何に使うんだ?」

「んー?ちょっとね~」

雑貨屋の亭主にお金を払い、空き瓶とポーションを鞄の中に詰める。



雑貨屋を後にした三人は、宿屋の裏の空き地にやって来た。

その際にマリーに断りを入れると「あまり汚さないで頂戴」と言われながらも了承してもらった。

実は、昨日のシンシアの武器に強化効果を付加できたので、もっといろいろやってみようということになったのだ。

ケイが空き瓶10本に井戸の水を入れる。

地べたに座り、まずはポーション1つに手を加えることにした。


昨日と同じように魔力を込めると、ポーション全体に仄かに紫色がかる。

「【エンチャント・ランダム】」

光が収まり、ポーションに鑑定をかける。


【エリクサー】体力・魔力全回復。全状態異常解除や人体欠損なども完治する。

       現在の錬金術では再現は不可能。


残りのポーションに同じようにエンチャントを施すと、同じように【エリクサー】に変化する。

「全部同じじゃん」

ケイは少しガッカリしていたが、本来はポーションの効果が上がるだけで、性能が飛躍的に向上または変化することはない。

実際、エンチャンターの能力はここまで性能は高くないのだが、文献のみの言い伝えのため何が正解なのかは把握しかねる。

ランダムのわりには連続で同じ物に変化したため、たまたま別の意味で運が味方した可能性がある。


「エリクサーって、エンチャンターだと作成可能なんですね?」

「おとぎ話だと思っていたわ」

二人に結果を話すと、タレナとアレグロは動揺を隠すことが出来ずに、まじまじとエリクサーを見つめる。

「おかしいな~?でも武器の強化効果の時は別々だったし・・・」

「もしかしたらケイさんの能力が高いため、それに比例して変化したのではないでしょうか?」

「俺が?」

「恐らくですが、昨日(さくじつ)のシンシアさんの武器も、本来は存在しないスキルの可能性も捨てきれないかと」

「能力が高すぎる影響ってこと?」

「あくまでも推測ですが」

確かにタレナの言うとおり、ケイは創造魔法を扱うことが出来る。

そのおかげで、エンチャンターという称号が発生し合わさったことにより、能力を逸脱していることは試した結果薄々感じていた。


「まぁ、いっか~」

他の能力をつけようとしたが、ポーションは一本につき一つしかつけることができなかった。

エリクサーに興味がなくなったのか、6本のうちの2本をアレグロとタレナにあげ、残りを鞄の中にしまう。



次に、水の入った空き瓶に着手する。


「【エンチャント・ランダム】」

発光し、光が収まった後に鑑定をする。


【レベル促進剤+10】レベルをプラス10あげることが出来る。

        ※急激なレベルアップのため、力加減等には気をつけてください。


「おっ?できた!」

ビンを見みると、水から水色の液体に変化している。

「ケイ様、これは何?」

「これは【レベル促進剤】といって、飲むだけでレベルが10上がるんだ・・・試してないけど」


【魔力促進剤】 魔力がプラス500、MPがプラス250アップ。

【攻撃力促進剤】攻撃力がプラス700アップ 

        ※急激に上昇するため、日常生活に注意。


二つ目と三つ目も同じようにエンチャントすると、別々の物ができあがる。

【魔力促進剤】は黄緑色の液体に、【攻撃力促進剤】は赤色の液体にそれぞれ変化した。

「おぉ~できてる!」

「この二つはなんでしょう?」

「黄緑色が【魔力促進剤】で赤色が【攻撃力促進剤】だな」

ケイは、続けて残りの7本を同時にエンチャントをかけた。


その結果ー


【スキル促進剤】 スキルレベルが3上がる。1個

【体力増強剤】 体力を1000上げる。1個

【器用促進力】 器用さが200上がる。1個

【魔素クリア剤】体内に停滞している魔素を体外に排出し、調整を促す。1個

        ※一般の人が使用しても意味はない。


残りの三つは【レベル促進剤+10】が二個に【攻撃力促進剤】が一個。


異世界ドーピング剤の完成である。


「正直興味はあるけど、飲むことを躊躇するわね。効果は確かめないの?」

アレグロに言われ一瞬考えるが、アレサの寵愛を持つケイには使用しても無意味ということを悟る。

「あー俺はいいや。別に必要ないし」

「それもそうですね。あれだけ動けて、魔法も扱えるとなると必要性を感じない気がします」

タレナは王家の墓の戦闘の際に、間近でケイの立ち回りを見ていたため、これらに必要性を感じるのか疑問に思った。


「じゃあ私に【魔力促進剤】を頂戴!」

アレグロが黄緑色の液体が入ったビンを手に取る。

「ね、姉さん!?」

「ケイ様の足を引っ張らないために、試してみるわ!」

止めるタレナにアレグロは、ビンの蓋を開けると一気に飲み干した。


飲みほして俯いたままのアレグロ。


「ア、アレグロ・・・大丈夫か?」

さすがのケイも、アレグロが躊躇なく飲んでしまったため冷や汗をかいた。


「なぁんだ~普通においしいじゃない!」

「へぇ!?」

「姉さん大丈夫?」

「えぇ。別に味は普通よ」

ケロッとした表情のアレグロに、念のために鑑定を行う。


アレグロ Lv32

MP 750/750 魔力 1200


恐らく元々魔法関連の能力が高いのだろう。加算されたことにより、魔力量が四桁になっている。

それをアレグロに伝えると「少しでもケイ様に近づけたかしら?」とか「さすがケイ様ね!」と賞賛される。

知らない間にケイ信者になっている。

能力が高くなっても、実践ではどうなるかはわからない。その辺は追々検証していこうと思う。



「三人共ここにいたのか?」

ここでアダムとレイブンの帰還である。

「お帰り~」

「今戻ったよ。ところでシンシアは?」

レイブンが辺りを見回しシンシアを探す。

「シンシアならギルドの昇格試験に行ってる」

ギルドマスターから受けるように言われて、朝早くから出て行ったことを伝える。

「Cランクか。だいぶ早い段階で言われたな」

「シンシアさんならきっと大丈夫ですよ」

「・・・だといいんだが」

不安そうなレイブンにタレナが安心させるような笑顔を向ける。


「ところで何をしてるんだ?」

「ちょっといい物を手に入れてさ、はい!」

ケイが水色の液体が入ったビンをアダムに渡す。

「これなんだ?」

「何でも『甘い水』だってさ」

もちろん嘘である。ケイがアダムに渡したのは【レベル促進剤+10】で飲んだ場合はどうなるか確かめてみることにした。

しかし、怪訝な顔のアダムは口をつけようともしない。

「あら?飲まないの?」

ここでアレグロのアシストが入る。

「アレグロは飲んだのか?」

「えぇ。どちらかと言えば甘酸っぱい感じね」

ケイはレイブンにも赤い液体【攻撃力促進剤】の方を手渡す。


しかし何も知らない二人は、互いに顔を見合わせた後、匂いを嗅いでから同時に飲み干した。

「確かに甘いな・・・」

「赤いやつは見た目ほど甘くはないな」

「そうなのか?こっちは俺にはちょっと甘すぎる」

「なんならこっち飲むか?」

ケイがアダムに赤色の方をレイブンには水色の方を与え、それを疑いもせず飲み干す。なんともチョロい話である。

「確かに赤いやつは甘くないな」

「青い方が少し甘いのかな?」

ケイは二人にバレないよう鑑定をした。

同じ物をそれぞれ飲んだ二人は、アダムがレベル42でレイブンがレベル45に上昇。

能力値は全体的に約2倍ほど上がり、攻撃力は【攻撃力促進剤】を飲んだため四桁になっている。

「というか、なんで買ったものを外で飲んでいるんだ?」

「匂いがキツいかもしれないから」

アダムが素朴な疑問を投げかけるが、実際に作成した本人であるため、それも大嘘である。

一通り満足したのか「残りは自分の分」と言って鞄にしまう。


「とりあえず、落ち着きたいから中に入ろう」


アダムが宿屋の裏手の扉に手を掛けた瞬間、何かが外れる音がした。

「・・・はぁ!?」

外れたドアノブを手に固まる。

「アダム、大丈夫か!?・・・えっ?」

裏手の扉は内側から引くタイプであるため、レイブンが扉に手をついた瞬間、木製の扉は手を置いた位置から音を立てて真っ二つに割れた。


「なにやってんだいあんた達!」


奥からマリーが顔を出す。

「あ、いや・・・」

「マリー、これは・・・」

放心状態のアダムとレイブンに、マリーはあきれ顔で扉を直すようにいうと奥へと戻っていった。


「ぷ!くくっ・・・ぎゃはははは!!」

そのやりとりに吹き出し、笑い転げるケイ。

「ケイ!お前何かやっただろう!?」

アダムが詰め寄り、ここでネタばらしをする。

「二人が飲んだのは俺が創った能力向上薬で、赤が【攻撃力促進剤】で、水色は【レベル促進剤+10】!いやあ、効果がわかってよかった~」

「なんて物を飲ませたんだよ!」

「ちなみにアレグロには【魔力促進剤】を渡したけど、試すわけにもいかないからさ~。あと、急激に上がったから日常生活の力加減は慣れが必要だって鑑定に出てた」

ケイがひとしきり笑うと立ち上がり、魔法で木製の扉を直す。

「まぁ~強くなることはいいじゃん!ガンバ!」

ケイが脱力した二人の肩をたたく。


「ケーーーイーーー!!!」


裏口から中に入ると、同じタイミングでシンシアが戻ってきた。

「お~おかえり~」

「えぇ!ただいま!ところであんたに一つ聞きたいことがあるんだけど!?」

怒りの形相でケイの胸ぐらを掴む。

「シンシア、何を怒ってるんだ?」

「それは怒るわよ!あんたが武器に細工をしていたから私が怒られたじゃない!」

シンシアが言うに、試験用のゴーレムとの模擬戦で訓練場を半壊したそうだ。

どうやら確率30%の【破壊の光線】が発動したようだ。

「私はCランクになったけど、他の人の試験が全て中止になったのよ!?」

鑑定用のルーペで調べるとケイが強化していたため、後処理が終わったタイミングですぐさま戻ってきたらしい。

あまりの怒りに、胸ぐらを掴んだまま前後に揺さぶる。

「合格したならいいじゃん!なんで怒るんだよ?」

「あんたのおかげで【破壊の令嬢】やら【無慈悲の少女】なんて変な二つ名がついたじゃない!」

半壊した訓練場に、駆けつけたギルドマスターのオルガが「まぁあいつの仲間だから仕方ないか・・・」と遠い目をしたそうだ。


「じゃあお詫びにこれやるよ!」

ケイが水色の液体が入ったビンを渡す。

「何これ?飲んでいいの?」

「いいよ!」

「シンシア、ちょっとまて!」

レイブンがそれを止めようとしたが、シンシアはビンの中身を全て飲んでしまった。

「で、これは何?」と聞かれ【レベル促進剤+10】の説明をすると、我慢ならないと弓で打ち抜こうとする。それをレイブンが羽交い締めで止め、アダムが問い詰める。

その様子をアレグロとタレナはニコニコしながら見守っていた。

なんとも楽しい仲間達である。


余談だが、後に唯一飲んでいないタレナが、ケイに【スキル促進剤】と【体力増強剤】をねだったのは内緒の話。




異世界ドーピング剤の回でした。

アダム達の受難はこれからも続く?

次回の更新は6月8日(土)です。

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