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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
最終章・蘇った帝国と新たなる王
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308、いきなり訪問ーダイン編ー

皆さんこんばんは。

さて今回は意外な人物がケイ達の元を訪れます。

ガイナールとの桜紅蘭訪問から数日が経ったある日のこと。


この日もケイは、ゲートにあれこれと手を加えていた。

先日の桜紅蘭のように、離れた場所でもゲートを繋げることができるとわかってから、今度は別の島に行けるように調整を行っている。


「本当にこのゲートで桜紅蘭に行けるようになったんだな」

「まぁな。ただし、このダイヤルを合わせてからが条件だな。しばらくはこの方法でやるとして、将来的には自動で標準を合わせればいいんだけど、とは思ってる」

「難しいのか?」

「頑張ればできると思うけど、その辺りどうすっかまだなんも決まってねぇんだ」


作業を近くで見ていたアダムは興味深そうにゲートに目を移し、ケイの意図している言葉を理解はしているものの、それがどんな風になるのか全く見当がつかない様子だった。

またケイ自身もその辺りをどうするかと決めかねていることから、人の動きや思考をキャッチして自動で切替できるようにするか、はたまた指や手の動きだけでゲート内部の情報を切替できるようにするか、と考えが尽きない。


いずれにせよ、その辺りは複数繋げてからの方が考えがまとまりやすいだろうと考え、それらのやり方を一時保留とした。



「ケイさん、お客様がお見えになってます」


ケイ達のやりとりの最中、ローゼンが声を掛けた。


振り向くと彼と見覚えのある背の高い男性の姿があり、訪ねにやって来たその人物に驚き、ケイとアダムが声を上げる。


「ディナトさん!?」

「えっ?なんでここにいんのさ!?」

「ガイナール殿からケイ達の話を聞いて来てみたんだ」


その人物とは、エストアの王:ディナト・ロルドスである。


ディナトとはこの間の召集会議後に会話を交わしたのだが、多忙だったことからゆっくりする時間がなくそのまま別れた。しかし彼は、あの後からずっと諸事情でアルバラントに滞在をしていたようで、時間が空いたから顔を見に来たのだという。


またガイナールからケイが面白いことを始めたという話を聞き、申し訳ないが代わりに見に行って貰えないか?というようなことも言っていた。

どうやら先日の一件でウォーレンとフォーレに激怒されてから、仕事が立て込んでいるそうで暫く顔を出せないとのこと。頑張れ!ガイナール!


「あ、というよりも、エストアを不在にして大丈夫なんですか?」

「あぁ。今は“妻”が代理をしてくれているし、ここに来る前に業務などの引き継ぎは皆に頼んでいるんだ」


妻・・・・・・?とケイとアダムが疑問を浮かべる。


二人が記憶している限り、ディナトは一国の主であるが特定の女性と婚姻を結ぶという話は聞いたことがない。


「妻って、あんた結婚したのか?」

「実は、少し前に“アマンダ”と籍を入れたんだ」


式は先の話になるようだが、ハミカミながら答えるディナトにケイとアダムは驚きのあまり目を丸くする。


エストアの採掘師であるアマンダとその弟のクルースとは、幼い頃からの付き合いで、ほぼ幼なじみと言ってもよい間柄だった。

ディナトは幼少の頃から他人思いで明るくハッキリとした性格のアマンダに惹かれており、いずれは彼女と添い遂げようと考えていた。

しかし彼が二十代前半の頃、先代である彼の父が急死したことで国をまとめなければならなくなり、彼女への思いを秘めたまま今まで過ごしてきたという。


だが彼の行動の決め手となったのは、世界異変の時だったという。


アマンダが人々を避難させる際、彼女の部下が異形に襲われそうになり、寸前で回避したことを後から聞いたディナトは、人生の中でも一、二位を争うぐらい肝が冷えたのを感じ、その時の気持ちを考えると、人生なにがあるかわからないと痛感したことで、即アマンダにプロポーズをしたのだという。


結果的に二人は婚姻を結ぶことになったのだが、国の復興等で式は保留となり、最近になって時間に余裕ができたことから式の準備を進めていたそうだ。


「式で渡す指輪の作製のために、今まで残っていたんだ」

「ということは、作製は順調ということですか?」

「う~~~ん、宝石に関してはあまり詳しくないから少し迷っててね」

「え?相場はダイヤとかじゃないのか?」


結婚指輪=ダイヤモンドを想像していたケイだが、エストアではルビーやフリージアで発掘されるフローライトという青緑色の宝石がよく用いられているという。

もちろんダイヤモンドを加工して指輪にすることもあるが、どちらかというと銀婚式のような記念の時に贈られる代物で、日本の常識とはかなり異なる。


ディナトの話からケイは、自分の常識は必ずしもそうとは限らないんだなと漠然と思ったのだった。



「よし!できた!」


ゲートの改良が完了し満悦顔のケイが立ち上がる。


全体的な変更点はないが、新たにダイヤル部分に異なる高さの二つの人型が互いに手を繋いでいるようなマークが刻まれている。

これはホビット族と巨人族のことを意味しており、一説ではドワーフ族の遠い祖先が移住したホビット族なのではという調査結果が最近明らかとなっている。

もちろんディナトも自身の遠い祖先がホビット族ではないか、という話を聞いたことがあるが故に今ケイが行っている事に興味を持っている。


「話には聞いていたが、本当に実現できるんだな~」

「まぁ~個人的にはゲートを調整せずに自由に島同士を行き来出来るようにしたいんだが、その辺りは今のところ保留だな」

「でも、それを設置すれば、我々が住んでいる大陸内でもゲートで容易に移動が可能にもなるということだね?」

「できるっちゃできるけど、実用となりゃ国ごとの法律などがあるだろうしクリアするための条件も必要になるけどな」


大陸内の移動は、基本徒歩の他に馬車や船である。

距離やエストアやフリージアといった気候の変動が大きい国では、日数に余裕を持つことがこの国では当たり前で、技術を導入するとなると条件などが別に発生する可能性もある。

またディナトが指摘した通り、ケイの技術で将来的に各国などに設置して自由に行き来出来るようになれば移動は楽になるが、オーバーテクノロジー扱いになるので今のところケイ達を含めたごく一部でしか利用しないことにしている。


世界的な普及になるにはかなり先になるだろうけど・・・と、ケイはまだ見ぬ将来に思いを馳せた。



「あ、そうそう!もしディナトも一緒に見学に行くならこれを着けてくれ」


ケイがディナトに手渡したものは、青い石がはめ込まれた金色の腕輪だった。

金色の部分は蔦とリーフのような細工がなされ、まるで貴族が所持していそうな煌びやかな装飾ほ施されている。


「これは?」

「自動翻訳機。俺達は分かるけど、向こうの島は言語が異なるんだ」


シルトやアルペテリアに使っている翻訳機と構造は一緒なのだが、ケイの珍しい気遣いで女性はイヤリング型で男性は腕輪型。ちなみに、桜紅蘭の時に同行したガイナールにもデザイン違いのものを渡している。


ケイからの誘いに承諾したディナトは、二人だけでは心配だと同行することになったアダムも加わり、次なる島・ダインへと向かうことになった。



「じっちゃんのばかーーー!!!!」



扉を開けたケイ達の耳に、聞き覚えのある少年の声と反対側からゴン!となにかが盛大に衝突した音がした。


それがなにかを確認するためケイが扉の影から顔を出すと、視界に唖然としているホビット族と扉の下で目を回しているポポの姿を見つけ、すかさず「ポポ!」と他のホビットたちが駆け寄り、目を回し続けている彼を何人かで担いで家の中に運び入れる。


「ケ、ケイさん!?」

「よぉ、ジュマ!・・・なんか取り込み中か?」

「あ!い、いえ。孫と少しありまして・・・」


出直した方がいいかとケイが訪ねるが、突然の状況に理解の追いついていないジュマはなんとか頭を回転させ、一体どういうことなのかと尋ねられた。

ケイは今までの経緯を説明し、同行していたディナトをジュマに紹介した。


「自分はエストア国の王を務めておりますディナト・ロルドスです」

「ごれはご丁寧に・・・私はホビット族の族長を務めておりますジュマと申します」


戸惑った様子の二人を前に桜紅蘭に続きなんとも締まらない状況だと思えたが、直前のポポとジュマの様子が気になり、ケイはそのことを尋ねた。


「ジュマ、ポポとなにかあったのか?」

「実は、メトバのことで孫と意見違いになってしまいまして・・・」

「メトバが?どういうことだ?」

「メトバは・・・・・・もう寿命を迎えるのです」


言葉の意味が分からずケイ達が困惑していると、ジュマはその詳細を語った。


彼の話では、一月前からメトバの身体に赤い草のようなものが生え、それが体中に回り始めたのだという。

この赤い草は巨人族でいうところの不治の病で、ポポは親友でもあるメトバをなんとか治したいと考えていたのだが、祖父であるジュマは病気を治す術はないし、死が来ることを受け入れるべきだと諭していた。

もちろんポポはそれに納得できずに家を飛び出したところ、タイミングよくゲートが出現し、ケイが開けた扉に激突したのがことの経緯だった。


「というか、そもそも巨人族ってなにからできてんだ?」

「詳しい事は私もわかりませぬが、元々はアスル・カディーム人が他の大陸から運び込んだ岩や石を使って作製された生命生物だと聞いた覚えがあります」


生命生物とはなんぞやとケイ達が首を傾げるなか、ジュマの話では何らかの方法で物質に命を吹き込む技法だと言った。

ということは、ネクロマンサーや錬金術の派生した技法のようなものだろうか。

なにせジュマが生まれる前の話でアスル・カディーム人が関わっていたとなると、その内容からヒガンテやアフトクラトリア人の前身という位置づけになるのではと推測する。


「それでメトバはどこにいるんだ?」

「彼でしたら集落の南側に広場がありますので、そちらにおります」


なお巨人族はホビット族と共存をしているが一定の住居という概念がなく、動けなくなったメトバは他の巨人たちの行動により集落の空いている広場へと運びこまれたそうだ。


「ケイ、とりあえずメトバの様子を見てきた方がいいかもしれない」

「だな!ディナトもそれでいいか?」

「ん?あ、うん。君達に任せるよ」


ケイがディナトに声を掛けると、なにかを考えていた様子からハッと我に返りそう答えたが、なぜかその表情からは疑問の色が見えたのだった。

ケイはアダムとディナトと共にゲートをくぐりダインへやってきましたが、そこでホビット族の族長であるジュマと孫のポポのやりとりを目撃しました。

巨人族のメトバが不治の病で死んでしまう可能性をなんとしても改善したいポポと死を受け入れろと諭すジュマ。

同時にディナトが気になる様子を見せています。はたしてそれはなんなのでしょうか?


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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