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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
最終章・蘇った帝国と新たなる王
313/359

304、いきなり訪問ー桜紅蘭編ー

みなさんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

今回は、屋敷にあるゲートを利用して桜紅蘭へやって来た話です。

「お前らどこから入ってきた!?」

「おい!誰か縄持ってこい!」


ゲートにより桜紅蘭のユイナの屋敷の庭先に到着したケイとガイナールは、ほどなくして鬼人族の男衆により強烈な洗礼を受けた。


なにせ、鬼人族の男性は年代問わず種族的な特徴と屈強故に威圧感が相まって、ケイや180cm以上のガイナールでさえも小柄に見えてしまう。たしかに無断でしかも船無しで島に来てしまったことにも原因はあるが、この状況は誰がみてもマズいことを物語っている。


「み、皆さん!この方たちは私の友人です。誰かお兄様達を呼んできてください!」


ケイの姿を見て驚いたユイナが間に入りアサイ達を呼んでくるように指示すると、その場にいた男衆が口々に「でも・・・」と、戸惑いを見せつつ彼女の言葉に耳を傾ける。

彼女の指示を受けたそのうちの数人がアサイ達の元へと知らせに走り、残った者達は鋭い眼光でケイとガイナールを睨んでいる。


想像してほしい、自分たちより体格がいい男衆に囲まれるという肝が冷える思いを。


「ケイさん!一体どうやって・・・いえ、お怪我はありませんか?」

「あぁ、大丈夫だ。こっちも予告なしに来て悪かったな」

「いいえ、私たちの方こそ失礼致しました」


まだ状況の理解が追いついていないのか、戸惑いながらもケイ達を気遣うユイナに申し訳なく思い謝罪するのは当然だろう。


それからほどなくして呼びに行った数名の男たちに連れられ、アサイ・キキョウ・ミナモがやって来た。


三人はケイ達の姿と桜の巨木近くに見慣れぬ扉が出現していることに大層驚いた様子で、ユイナと同様に状況が飲み込めず二人と扉を交互に見やる。


「えっ?ケイさん!?ユイナ、これはどういうことだ?」

「急にこの扉が現れて、そこからケイさんたちが出てきたんです!」

「よぉアサイ。まぁ、ちょっとした想定外があってな~」


驚きを隠せないアサイにどう説明しようかと悩むケイと、今度は二人の顔を交互に見やるガイナールの姿がある。


微妙な雰囲気のなか、未だに警戒している男衆に仲裁のためミナモが間に入り宥め、キキョウが俺達の客人だ!文句あるか?と納得(?)させてから持ち場に戻らせるように指示を出す。

またケイとガイナールは、ユイナから立ち話もなんなのでと座敷に上がるようにと進められ、そのまま縁側から靴を脱いで中へ上がって行った。



「なるほど・・・事情は大体わかりました」


座敷へと通されたケイとガイナールは、対面にアサイとキキョウ、側面の左右にミナモとユイナが座った状況で、ここに行き着くまでの状況と海に沈んだアグナダム帝国の跡地を浮上させたこと、それとガイナールの紹介と合わせて、大陸外に存在する他種族との話し合いの場を設けたいことを四人に説明した。


もちろん四兄妹にとっては雲を掴む話になるだろう。


その証拠にアサイは納得したと言いつつもその表情が晴れることはなく、隣に座るキキョウもなんだかなという表情を浮かべ頭を掻き、ミナモもどう反応してよいか分からず戸惑っている様子がある。


「アサイ兄様、もしかしたらあの地震はケイさん達がアグナダム帝国がある大陸を浮上させた影響だったのではないでしょうか?」


ユイナがそんなことを口にした。


どうやら一月以上前に桜紅蘭全体に伝わるほどの強い揺れと振動が何回かあったようで、それ以降は何事もなく平穏に過ごすことができたことから、島民達の間では何かの前触れではないかと噂されていた。

現にその地震はケイがアルバを使用し海底に沈む大陸を浮上させた影響なわけだが、ここから一番近いアグナダム帝国東部地区でもかなりの距離があると認識しているものの、海に囲まれた島国という地形からか地震の影響は少なからずあるとみる。


「そういえば、お隣の方はどちら様で・・・?」

「コレは失礼した。私は王都・アルバラントの国王、ガイナール=レイ・ヴェルハーレンだ」

「国王・・・ですか?ということは、人族の王ということでしょうか?」

「私は国を治めているのであって種族的なまとめ役という意味とは少し違うのだが、まぁ概ね似たようなものかな」


ケイ達の大陸には、人以外にも様々な種族が共存している大陸だと説明し、ガイナールは五つの大陸の内の中央大陸を治めていると説明するや、アサイ達は驚きながらも興味深げに耳を傾ける。


「国をまとめると言うことは、かなり大変なことだと思います」

「まぁー私もまだまだ若輩者の部類だから苦労は少なくないよ。見たところ、君が桜紅蘭のまとめ役ということかな?」

「はい。私たちの両親は鬼人族の長を務めておりました」


ケイ達が初めて桜紅蘭に来た時、アサイとキキョウは長争いで対立していた。


しかし蓋を開けてみると、実は裏で実権を握らんと叔母であるサザンカが自身の夫と四兄妹の両親を殺害し、兄妹の仲を引き裂こうと策略していたことが判明。

後にケイ達によりその計画は阻止されサザンカは処罰されたわけだが、なぜかアサイは困ったような表情でその後のことを口にする。


「叔母のサザンカが両親を殺害し、島の実権を握らんと私たちの仲まで引き裂こうとしたこと判明しましたので島の掟により処罰しました。ですが・・・」

「なにかあったのか?」

「タマエのことだ。島のヤツらがことあるごとに噂しやがって、やれ族長殺しの子供だ!やれこいつも追放しないのか?ってな」


頭をガシガシと掻き、頭を振ったキキョウがアサイと同じ表情で言葉を続ける。


「ケイさん達が島を去ってすぐに、タマエをユイナの屋敷で面倒を見ることになったのですが、一部の島民たちはそれを良く思っていないようなんです」

「たしかに二人以上いれば、その数だけ違った意見が出るって言うよな」

「その度に島民たちと話し合いの場を設け、互いに快く過ごして行けるように模索をしていたのですが・・・」

「ガキ達がな~」


悲痛な面持ちのアサイに、その苦労を間近で見ていたであろう他の三人も本当に参っているのかお手上げのような雰囲気を醸し出している。


どうやらタマエは、他の子供達からサザンカの息子というだけで意地悪をされることが増えたようで、ある時は大人数で罵声を浴びせ、ある時は石をぶつけられ頭に怪我をして帰ってきたことがあったという。

タマエ自身、人間の年齢に換算すると大体五~六才ぐらいで、まだまだ親に甘えたい年頃だろう。そんな幼子を母親と引きはがしても良かったのかと思いはすれど、サザンカの罪は帳消しにはならない。


アサイ達は、自分たちしたことは本当に良かったのかと思い悩んでいる様子がある。


「私が非力なばかりにタマエには辛い思いばかりさせてしまい、果たして自分は族長としてこの先まとめていけるのだろうかと不安に感じてます」

「そんな!?アサイ兄さんは立派に務めを果たしているじゃないか!?」


弱気になっているアサイをミナモが励まし、他の弟妹たちもその言葉に同意する。


アサイ自身、鬼人族の中では若者にあたるため色々と苦労があったのだろう。

一時はキキョウと長争いをしていたが、後にキキョウは頭を使うことは自分には難しいから兄であるアサイが適任だと本人を目の前にして宣言したそうで、それ以降彼の補佐兼護衛の立場として、部下をまとめ島に貢献していたという。

ミナモとユイナもアサイの補佐として支えてきてはいたが、タマエのことを大人たちが噂しそれが子供たちにも伝わったのか、子供達が真似をし始めている状況にもなっている。


「子供は良くも悪くも純粋だからね。大人の行動を見ていろいろなことを吸収し、それをそのまま表現しているんだ」

「無垢ゆえの残酷性ってことか?」

「それも一理ある。あとは子供たちの独自のコミュニティーが形成されているとなると、その影響もあるだろうね。これは子供だけではなく、我々大人達にも当てはまるんだ。一人が白と言えば白、黒と言えば黒ってね。それに偽りの真実も言い続ければ真実になる、ということもあるだけに同調圧力も多かれ少なかれあるはずだ」


やはり人を見てきた経験があるだけに、ガイナールも他種族と交流の少ない鬼人族の価値観が気になっているのだろう。


特に子供となると種族関係なく、その行動は万国共通と考えられる。


人の噂も七十五日という言葉があるが、子供の場合一度固定された概念はそれを上回る出来事がない限り覆ることは難しい。

特に桜紅蘭のような島国は、外部との接触があまりなく独自のコミュニティーが形成しつくされたとなると容易ではない。特に集団になると顕著に現れるところはどの世界どの世も一緒らしい。


「ところで、タマエは今いないのか?」

「はい。先ほど屋敷の女中と散歩に出たと聞きました。タマエが一人でいると怪我をして帰ってくることが多くなり、最近では他の子供達によって石階段から突き落とされかけたと聞きました」

「それ、大丈夫なのか?最悪死ぬぞ?」

「以前から兄様たちに相談はしていたのですが・・・」


ケイがタマエの所在を尋ねると、ユイナから少し前に屋敷の女中と外へ出かけたという事を聞く。あの騒動の後、ある特定の子供達により嫌がらせを受け始めたようで、一人でいると怪我をさせられることが多く、最近ではその子供達により死にかけたことがあったことから、以来外に出るときは極力誰かと一緒に出かけることを余儀なくされたそうだ。


結菜の表情が曇り、本当に困った様子で手立てがないように項垂れる。


「実は私もことあるごとにその子達に注意していたのですが、族長殺しの親の子供に何しようが勝手だろ?と言われてしまいまして・・・」

「親の罪は子の罪でもあるってことか?それ、ちょっとおかしくねぇか?」

「私もそう思っているのですが、何度か親御さんにも注意をお願いしたのですが、なんというかあまり強く言えない気質のようでして・・・」


アサイの話によると、タマエにちょっかいをかけてくる子供たちは三兄弟のようで、その親も温和なせいか、子供達に強く言えないところがある様子だという。

どの世界にもそう言った親は存在するが、どちらかというと鬼人族は気が強い印象を感じただけにケイ達としては驚きである。



「ユイナ様!ユイナ様!」



その時、襖を隔てた通路から女中のすり足と慌てた様子の声がした。


よほど急いでいたのか女中が襖を開け、客人であるケイ達に気づき礼をするやユイナから注意を受ける。しかしその表情は青ざめているようで、危機的な何かを物語っている。


「なにごとですか?客人の前ですよ?」

「も、申し訳ございません!しかしタマエ様が・・・!」

「タマエになにかあったのですか?」

「が、崖から落ちて怪我を・・・」


顔面蒼白の女中の言葉にその場にいた全員が驚愕の表情を浮かべ、ユイナがすぐさまタマエが居る場所に案内するようにと指示し、席を立ち急いでその場所へと向かうことにした。

着いて早々大変な目に遭ったケイとガイナールだが、アサイ達からタマエのことで相談を受ける。

しかしそのタマエも怪我を負った様子で、慌てて現場に駆けつけることに。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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