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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
最終章・蘇った帝国と新たなる王
310/359

301、近状報告

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回からTwitterでも告知した通り、最終章となります。

最後までお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。

長い旅が終わり、住み慣れた屋敷へ戻ってから一ヶ月が経った。


アルバラントの屋敷に戻ってきた頃、ガイナールに連絡を取ったところ直接会って話す機会があった。その時彼からケイ達がいない間に大陸でもひと騒動が起きていたようで、かなり大変だったと聞かされる。


やはりケイの読み通り、大陸全土に広がっていた地下遺跡は後に黒腫の巣窟になったようでストーンヘッジとの大合戦が繰り広げられていたという。

まぁ要因となる出来事はいくつかあったようだが、最終的にケイとアレサによる黒腫消失によりダジュール全土からその脅威は取り除かれたわけなのだが、大陸に広がった黒腫と出現したストーンヘッジを抑え込んだ功績者が存在し、それがケイ達の屋敷にいる四人の使用人たちのことであるとこの時初めて知る。


またケイ達がいない間、使用人の四人を取り巻く環境は大きく変化していた。


パーシアは、縁があって以前から出店したばかりでレパートリーで悩んでいた、レストラン・ダヴェーリエのマイセン&マーガレット夫妻の元で働かせてもらっていた。

後にとある青年実業家の後押しで独立し、レストラン『希望の星(ザウマ・ナグム)』のオーナーとして店を切り盛りをしており、店の前を通るたびに長蛇の列の人気っぷりが伺える。従業員がパーシアを入れて三人しかいないため、近々要員を増やす事を検討している様子。

また大陸大騒動時には、自分の身の危険も顧みず人々を助け、励ましたことにより、人々から尊敬というよりも崇拝者のような情熱的な人気っぷりが、騒動後の店の繁盛に拍車をかけている様子があった。


ルトは以前から庭師兼錬金術師として活動していた。

ケイ達が旅に出る前に最年少最速でゴールドランクに到達したばかりで、その延長線上で講師も務めた実績も出来たそうだが、周りから認められる反面やっかみもあり苦労していたことを聞いている。

しかし大陸大騒動には、そんな状況にも関わらず冷静に分析し、自分の知識をフルに生かした功績が大きく認められ、錬金術ギルド最年少で最高ランクであるダイヤモンドを授与された。

これは歴史上類をみない出来事であり、ましてや16才という若さで錬金術ギルドのトップに君臨するとは彼自身も思っていなかったのだろう。

実はこちらも少し前にギルドマスターのマーリンと話す機会があったのだが、その際に「将来的にギルドマスターをルトに任せたい」と内緒でケイに伝えられる。

もちろんその時ケイもまさか~と思っていたが、錬金術委員会の会長から認められ、彼からの後押しもあり、そんなに遠くない未来が来ることにケイはなぜだか嬉しく感じた。


ボガードは、ケイ達の知らないところで規格外のギルド指導員に変貌していた。

本人からはそんなわけないと首を振っていたが、彼の後輩である少女からはギルドで定期的に行われる講習が過酷を通り越して地獄だったり、王国騎士団から訓練依頼を依頼され、結果的に騎士団が行う通常訓練より遥かに過酷だったという感想をいくつも貰っていると証言をしている。


そういえば屋敷に戻った際、装備が変わっていたことに気づき尋ねたことがある。


ボガードからは『挑戦者の試練』で高レベルのカラクリミミックを倒した戦利品で、かなり難儀したと聞く。

それに関しても後輩の少女曰く、一回目は肉を切らせて骨を断つ戦法で勝ち、カラクリミミックのリベンジマッチでは、あっさりと力でねじ伏せて勝ったというのだから驚くしかない。

その反面、ケイ達が旅に出た当初はシルトの穴埋めもしていたようで精神的に辛かったと口にしていたが、縁があってベルセの祖父である男性を介して警備要員が増えて楽になったという。

実際にベルセの祖父である男性に会い礼を伝えたところ、フリージアの件を聞いていたようで、孫が世話になったからと還暦を過ぎてもエネルギッシュな人柄に本当によかったと胸をなで下ろす。

ちなみに大陸大騒動時では、アルバラント城内に出現したストーンヘッジを押さえ込み、ルトに打開策のヒントをもたらした功績が認められ、王国騎士団から加入の話が出ていたが、それは断ったそうだ。


ローゼンは、四人の中で一番取り巻く環境が変わったと言っても過言ではない。

もともと屋敷内の仕事が中心で、ある程度ルーティンが決まっていたので行動範囲が他の三人とは異なっていた。

しかしとある一件から聖都・ウェストリアにある獣医師の青年と出会い、彼や周りの人のために奮闘し、アルバラントを飛び出してウェストリアまで遠出することになった。

まぁそれが大陸大騒動時の一つの要因と遭遇するとは思わなかったようだが、結果的にローゼンの方も途中で出会ったヴィンチェ達のおかげで事なきを得る。

一番の驚きポイントとして迷子の子猫を保護したのだが、実はその子猫が上位精霊であることが分かり、知らない間に契約をしていたことである。

上位精霊は、姿が普通の精霊とは異なり全体的な能力が高く、ローゼンの契約している上位精霊の中でも猫の姿に四大属性持ちとかなり珍しい。

そのおかげかは分からないが、騒動後には獣医師会の相談員というポジションに治まり会長となった青年の補佐を請負っている。

といっても青年は獣医師会の本拠地ウェストリアで暮らし、彼とは上位精霊を介して手紙のやりとりをしているそうで、落ち着いたら仕事専用のスマホをローゼンと青年に手渡そうかと思う。



そんな個人の様子も兼ねて近況報告を受けたケイ達だったが、やはり故郷の様子が心配だったのか、屋敷に戻ってすぐにアダムはセルバ村へ、シンシアとレイブンはダナンに一時戻っている。


その数日後、幸いセルバ村に住む家族や幼なじみたちに怪我などはなかったとアダムから連絡があった。しかし長い間連絡を取っていないことから、幼なじみのリーンとラリーから大分心配されていたのは言うまでもない。


シンシアとレイブンの方は、商業都市・ダナンに戻ってすぐにその惨状が垣間見られたようで大分ショックを受けていた。


街の地下に巨大遺跡が広がっていた影響でいくつか崩壊していた部分があったようだが、奇跡的に怪我人はおらず領主である父親・オランドや兄のアーヴィンを中心として復興が進められている。

レイブンの親族であるコルマとメリンダだが、ストーンヘッジ発生時には買い物に出ていたため、その異変をすぐに知り避難をして難を逃れている。

幸いダナンに滞在していたパーティ・エレフセリアによって保護されたのだが、家の方はストーンヘッジの影響で崩壊し、住む場所がなくなったと困っていたところ、オランドの計らいで、同じ状況で住む場所がなくなった他の家族と領主の屋敷で共同生活を続けている。


アレグロは聖都・ウェストリアに向かい、そこで静養することになった。

やはり1500年以上というブランクが効いていたのか、身体の衰弱が激しくアルバラントまで向かえないことが素人であるケイ達の目からでも明らかだった。


船に合流したケイ達は、ウェストリアの兵達を連れてやって来たイーサンの部隊に事情を説明すると、同行していたウェストリア兵の一人からローゼンの活躍話を聞き、困った時はお互い様だと、アレグロの静養を含めイシュメルを始めとしたアスル・カディーム人達の保護をすると伝えられる。

またウェストリアに立ち寄った際、マルセールと再会することが出来た。

彼は前回再会した時より大きく成長し、精悍な顔つきが相まって大神官というよりも騎士団の団長と言っても差し支えないほどガラリと印象が変わり、ケイは内心ちょっと悔しい気持ちを持った。


タレナはそんなアレグロが心配だった様子で、一緒にウェストリアに残ると言った。


まぁ長い間離れていたし、色々思うところはあったのだろう。

「こっちのことは心配せずついていてやれ」と答えると、タレナはご迷惑をおかけしますと口にし深々と頭を下げた。イシュメルとアルペテリアもそんな二人が心配だったのか、ウェストリアに残ると言う。


なんだかんだで兄姉はいいな~と思ったのは内緒の話。



ケイがアルバラントに戻ってから、ここ一ヶ月の間に入れ替わり立ち替わり様々な人達屋敷を訪れている。


この日は、ガイナールがウォーレンを連れて屋敷にやって来ている。

ケイが知る限り、週に一~二回ペースでやってくるのだが、城の仕事は大丈夫なのだろうかと不思議に思っていると、優秀な部下(フォーレ)に任せていると清々しいほどの笑みを浮かべて弁明をしている。ケイの頭の中で、独特な口調でガイナールをボロクソ言っているフォーレの愚痴姿が浮かぶ。

まぁいつも滞在時間が一時間程度なので、それならスマホを使えよと思わないでもないが、多忙なガイナールも面と向かって話したいこともあるのだろう。


「そうそう。五大御子神の一人・・・たしか、ナザレと言ったかな?彼の安否についてもこちらで把握出来たよ。武器防具屋をしているノートンという男性の店の地下で発見されたそうで、こちらから彼にアレグロ達の事を伝えたら、君達が戻る前にウェストリア行きの馬車に乗ってこの街を出て行ったそうだ」

「はぁ?あっ、じゃあそいつも生きていたってことか?」

「偶然か必然か、君達が以前大剣・インイカースを見つけた店の地下で見つかったそうだ」


五大御子神の一人・ナザレは、偶然にもアダムの先輩であったノートンの店で発見されていた。


その時たまたま店の地下倉庫で作業をしていたところ、不自然な壁に違和感を抱いたノートンがその壁を壊したところ、隠し部屋を見つけ無事に保護をされたそうだ。

しかし彼は怪我をしていたようで、そのことを相談をするためにノートンがアダムに接触をしようと冒険者ギルドに向かったところ、偶然にもギルドに居たボガードが対応し状況が発覚。

当初ナザレは自分の記憶がなかったようで、しばらく屋敷の居候兼ノートンのところの店番として過ごしていたが、大陸大騒動時にはストーンヘッジの脅威を退け、ほどなくして無事に記憶が戻ったという。


彼の状況に関しては詳しく聞くことは出来なかったが、聞き取りをしたガイナールの話では、1500年前に大陸にやって来たナザレとシルトは父であるシャーハーン王の死後、薬品型細胞に関してシルトと対立し、その際にスピサのことを伝えたのがそれが理解されずに彼に切られてしまったのだという。


保護をしたノートンの話では、ナザレの身体には左肩から右脇腹にかけて大きな傷跡があったのだそうで、ケイ達がシルトを連れて戻ってくるから、話し合いのため待ってはくれないだろうかと問いかけたものの、ナザレは会わせる顔がないと首を縦には振らなかったらしい。


シルトもその話をボガード経由で知り、なんとも言えない表情をしたそうだ。


二人に関しては時間が必要だと感じたケイ達は、暫くそっとしておいた方が良いだろうと感じたのは当然のことだった。


「あと、近々各国の代表を召集して今後の事を話し合う機会を設けることにした。君達にもその会議に同席してほしい」

「今後のことって?」

「君達が今まで巡っていた島国の人々との交流関係とウェストリアとバナハで保護しているアスル・カディーム人のことが中心かな。あとは、アグナダム帝国の跡地となった大陸についても議論しておくべきだろうね」


ようやく歴史のスタートラインに立ったとでも言うべきなのだろう。


ガイナールは、大陸以外の他の島国との交流や今後の事について考えていたようで、国を預かる一国の王としては無視出来ない問題の一つだろうと述べる。

たしかに、今まで明かされなかった歴史がケイ達の行動によって明るみとなり、他種族との関係性も考えるべきなのだろうとわかってはいた。

しかし、相手の事もよくわからないままいきなり交流というわけにいかず、結果として各地を巡ってきたケイ達に協力を仰ぐしかないのが現状である。


ケイは当事者であることからその話を受けるしかなく、またまた面倒くさそうだと冷めてしまった紅茶のカップに口をつけたのだった。

屋敷を訪れた国王・ガイナールから召集会議の出席を打診されたケイ。

各国の代表が集まる会議だと伝えられたケイは、まだまだゆっくりできない様子。

なお301話の大陸側の展開に関しましては、9月下旬頃に異世界満喫冒険譚のサイドストーリーの投稿を考えております。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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