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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
アレグロの救済とアグナダム帝国
307/359

299、罪と罰(前)

皆さんおはようございます。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

異形となった王妃討伐後に現れた謎の光の続きからになります。

珍しく二回投稿の前編からどうぞ。

突如、光を発した場所をケイ達は唖然と見つめていた。


アダムから本当は何かしたのかと懐疑的な目を向けられたが、ケイ自身は全く身に覚えがない。ただ、メルディーナに似た石像が気に食わず引っこ抜き、異形となった王妃目がけて投げつけただけなのだが、なぜこうなったのか皆目見当もつかない。


光は純白のように輝きを増し、徐々にだが人の形に変化し始める。


「ケイ、本当に何もしてないのよね?」

「だから、何もしてねぇって!俺ってそんな信用ねぇか?」

「「前科があるから全く」」


シンシアとアダムが口を揃えて反論すると、そっか・・・とケイが苦笑いを浮かべる。


純白に輝く光は、数回点滅を繰り返すと最後の点滅で辺りを照らすほどの強い光を放ち、ケイ達は思わず目を瞑る。


それからほどなくして光が収まり確認のためにケイが目を開くと、視界の先に誰かの足とおぼしきものが映った。

白を基調とした長めの衣装のようで、裾の先からその人物らしき白い靴も見える。

ケイが目線を上へと向けると、見覚えのある白を基調とした品のある衣装にまさかとその人物の顔を見るや、驚いた様子でこう呟く。



「・・・アレサか?」



初めて顔を見た時と同じ柔らかい笑みを浮かべた表情でアレサが立っており、驚きを通り越してなんと声を掛けていいかと戸惑っていると、そんなケイを察してか彼女から歩み寄り、ケイの前に立つと久々の再会に笑みを深めた。


「はい。ご無沙汰しております・・・ケイさん」

「いや、あんたなんでここにいるんだ?」

「あちらをご覧ください」


アレサが指を向けた先は、先ほどケイが異形になった王妃にトドメを刺した石像を示している。よく見るとあの衝撃で像の頭部が破損しており、破損した部分からもう一つ人の顔をした像を見つけ、なるほどと合点がいった。


「あれってアレサ像だよな?」

「今は亡きアスル・カディーム人の王妃が、職人に指示を出してアレサ像の上にメルディーナの像を象った物を造らたようです」

『母上が祈っていた像が、ですか?まさかそんな・・・』


アレサは石像の正体を知っていたようだったが、まだ混乱気味のイシュメルはこの時初めて石像の中に別の石像があったことを知り、驚きのあまり声を詰まらせる。


「私はアレサ像を介してダジュールの人々に言葉を伝え、癒やしてきました。彼女(イメルダ)も生前は毎日熱心に祈っていたようでしたが、そんな彼女を・・・このアグナダム帝国の人々を救ってあげることはできませんでした」


悲痛な面持ちで目を伏せたアレサは、自分がもっと早くに気づけばと悔やんでいる様子があった。同時に祈ってもいないアレサ像から何故彼女が現れたのか、そんなことを考えていると、こちらの考えを見透かしているのかアレサが笑みを浮かべあることを伝える。


「実は、ケイさんに報告がありましてこちらに参上いたしました」

「報告?」


突然の発言に疑問を浮かべたケイだったが、彼女の後方から光の空間が現れると、もう一人の人物がアレサの私兵とおぼしき男性達に両脇を抱えられながらやって来る。


その人物は、囚人が着るような薄汚れた革の服に両手を特殊な魔法が用いられているのか緑の紋様が光る黒い拘束具で縛られ、全体的に痩せこけ青い髪はボサボサ、顔には疲労が色濃く残っている少女だった。


「アレサ様!話を聞いてください!」

「えっ?・・・お前、メルディーナか!?」


必死にアレサに取り繕うとしている少女の声に、ここでその人物がメルディーナであることにケイは気づいた。


メルディーナは、私兵である男性にアレサ様の発言の邪魔だとばかりに口に白い布を詰められ、フガフガと鼻息を荒くさせて抗おうと藻掻き始めたものの、二人の男性は訓練を受けている兵なのか彼女の行動にはビクともしない。


そんな様子をアレサが一瞥し、駄目だなとばかりに頭を振ってから本題へと入る。


「この度メルディーナの処遇に関しまして、審議した結果をお伝えに上がりました」

「審議って、裁判したってことか?」

「はい。メルディーナは不用意な介入・時代改革・人類を滅亡・運命の強制変革等など、様々な罪が明るみに出た結果“第一級罪”ということが決まりました」


第一級罪という言葉自体聞き覚えがないので、恐らくその審議会で使われる用語なのだろう。


アレサの話では、ケイがダジュールに旅立ってからほどなくしてメルディーナは審議会によって拘束され、そこでかなり長い間尋問を受けたそうだ。

その結果、彼女はアグナダム帝国を中心とした文明の発展から滅亡・隠蔽に関わり、黒種に侵されたシャーハーン王が死亡した後には彼を魔王として復活させ、世界に混乱に招いた。

そればかりか、自身は“アニドレム”という予言者として現世に降臨し、過去の遺産・証拠を破棄しないと災いが起こり続けると大衆に嘘を吹き込み、世界大戦を引き起こしたなど、聞くに堪えないことばかりがケイ達に説明される。


その説明に自分の仮説が当たっていたことに、メルディーナは意外と単純なのではとふとそんな考えが頭を過ぎる。


「それからフリージアにあった小さな村を魔物によって壊滅させたのは、やはりメルディーナでした」

「村って・・・俺の村か!?」


アレサの言葉に動揺したのはレイブンだった。


彼は成人するまで今は亡き農村で過ごしており、その村がなくなった原因が自身が予言者として活動拠点としていた村を隠蔽させようと、魔物をけしかけたと自供した。

憤りを隠せないレイブンは、ケイ達にも見せたことがない形相で拘束されたままのメルディーナに詰め寄り、気持ちの高ぶりを抑えきれず言葉をぶつけた。


「お前が俺の・・・俺達の村をなくしたのか!?俺の家族やダニーの家族、村の人々まで全員が死んだんだぞ!?それにあいつは・・コルマは、生まれてすぐに家族を亡くしたんだぞ!!親や兄姉の顔も知らずに!!」

「レイブン落ち着けって」


メルディーナに詰め寄るレイブンの表情は憤りを通り越して、もはやすぐにでも彼女を殺してしまうのではというほどの気迫を感じた。


魔物の襲撃により生まれ育った地は廃村となり、同じ生き残りであるコルマの幼き頃を思い出したのか、物を言えぬメルディーナに思いを言葉として投げつける。

その状況に、これ以上はと慌ててアダムが止めに入るや、次の言葉が出なくなるほどショックを受けたのかレイブンはその場に蹲り項垂れた。


メルディーナの気まぐれ&隠蔽工作により、人の運命が変わってしまうことをケイ自身も痛感していたことから、レイブンの気持ちも少なからず分かっているつもりである。しかしそれが元・管理者をしていたメルディーナに理解できるかは、この様子を見れば大体想像がつく。


「ところでアレサ、第一級罪って具体的になんの罰則になるんだ?」

「そうですね・・・ケイさんの言葉を借りるのでしたら「自分のケツは自分で拭け」ということになります」


外見の上品さとふんわりと笑みを浮かべた表情とは裏腹に、ミスマッチな発言を口にするアレサにケイたちは驚愕する。

この場のシャレはちょっと・・・とケイが表情で示すと、アレサはそれを察してか本当ですよ?と、よそ見をする彼氏に嫉妬する彼女のような表情で返し、無理に突っ込んではいけないと、わかった!わかった!というように首を縦に振る。



「それではこの場を借りて、メルディーナの刑を執行いたします」



アレサが宣言をすると、いままでメルディーナが逃亡しないように脇を固めていた兵士がサッと後方へと下がった。


もちろんメルディーナは、罰を受けたくないためか拘束されているにも関わらずその隙に逃げようと走り出したが、地面に太い木の根のような黒種の一部に足を取られ前方から前のめりに倒れる。

しかし、アレサは彼女を気に懸けることもなく右手に青白い光を形成させると、その光を見てもなお逃亡しようとするメルディーナに向かって飛ぶように指示を出した。


光はメルディーナに向かって一直線に飛来し衝突したかと思った次の瞬間、彼女の姿はそこにはなく、透明な6cmほどの正方形の箱が地面に転がり落ちた。


「アレサ、メルディーナの刑は終わりか?」

「いいえ。もうひとつあります」


刑が執行されたのかとケイが尋ねると、まだとアレサは首を振り、今度はイシュメルとタレナの方を向くと、とあることを二人に告げた。


「アスル・カディーム人の五大御子神のお二方、この世界・ダジュールから黒種に関する一切を消滅させますが・・・よろしいですか?」


その言葉にケイはそういうことかと、目線をアレサに向ける。


アスル・カディーム人が創りだしたアフトクラトリア人は、薬品型細胞を応用したもので、アレサはその関連全てをこの世界から無くすという結論に至ったようだ。

アグナダム帝国の跡地がここまでになった以上、自身の元・部下が起こした不祥事をアレサが幕引きをするということを考えると仕方がなかったとしかいえない。


『はい・・・本来なら責任を取って私が行うべきでした。こんな形でアレサ様の世界を汚してしまい、なんとお詫びをしてよいものか・・・』

「確かにあなた達も道を間違えてしまったのかもしれません・・・しかしそれを責める権利は私にはありません。それは、私とその部下であったメルディーナにも責任はありますので・・・」


悲痛な表情のイシュメルとその半歩左後ろに立つタレナが深々と頭を下げ、アレサはアスル・カディーム人の責任だけではなく、自分たちにも責任があると二人を責めることはなかった。


「アレサ!感傷に浸ってるとこ悪いんだが、二人の状態が進行している!」


場の空気を知ってか知らずか、ケイが会話の間に入り込んだ。


「かなり進行してますね」

「俺の方でもコレ(亜空間ぶくろ)でなんとかしようと思ったんだが、黒種自体をなんとかしないと堂々巡りになるんだ」

「状況は理解しております。メルディーナの失態は、私が責任を持ってこの状況を収めましょう」


アレグロの本体と彼女を支えているシルトの様子がかなり浸食しているようで、その表情から一刻の猶予もないと悟ったアレサは、世界をあるべきものへと戻す行動に出た。


アレサとの再会を果たしたケイ達は、その場でメルディーナの処遇&処罰が伝えられ執行されました。後編は本日の20時投稿になります。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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