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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
アレグロの救済とアグナダム帝国
300/359

292、その先に

皆さんこんばんは。

さて今回は前回からの続きで暴走する列車から飛び降りたケイ達と、北部地区と中央地区の境目にある丘の上にいるアダム達が驚愕するお話です。

「これは一体どういうことなんだ?」


小高い丘の上に辿り着いたアダム達は、その光景に愕然とした。


てっきり荒廃した風景が広がっているものとばかり思っていたのだが、なにせ一面黒く広がった湖が眼前に現れるとは想定していなかったのだ。

東から朝日が昇り始めるとその異様な黒い光景は一層際立ち、黒い塔はまるで全ての光を拒絶せんばかりにその存在を強調しているようにも見える。


『あれは、王宮・・・なのか?』


愕然とするイシュメルからそんな言葉が漏れた。


記憶の中にある中央地区の光景が現実の光景とリンクしていないのか、信じられないと言わんばかりに頭を振り、その横ではシルトが黙ったまま彼の様子を窺っているのだが、自身も目の前にある光景に理解が追いついていないのか目線に動揺する様子が見られる。



『アレやだ!コワ~イ!』



そう声を上げたのはブルノワだった。


アダム達と同様、一晩中起きていたので丘を上る前にタレナの腕の中でうつらうつらとしていたのだが、レイブンが代わり彼女を抱っこさせた時には既に半分夢の中状態だったブルノワが、突如火がついたように泣き出した。

ケイを呼ぶ声とよほど眠たいのか機嫌を悪くさせ、帰りたいと首を振る動作にレイブンが落ち着かせようと背中をさする。


「皆さん!あれを見てください!」


タレナがブルノワが見ていた方向に目を向けると、驚いた様子で皆に告げた。


その言葉に釣られるように一同がそちらを向くと、眼下に広がる黒い湖に何かが動いている様子がある。しかし、対象となる地点は朝日が当たらない位置にあるせいでよく見えず、アダムが目を凝らし注視するとそれは複数海面から出ては沈みを繰り返しているところがみえた。


「あれまさかとは思うが・・・「ストーンヘッジ!?」か!?」


アダムが水面で動いている異様な物体の正体がストーンヘッジの群だということに気づき、隣に居るレイブンもその正体に気づいたのかこちらを向き、同じ事を口にした。


日が昇るにつれ徐々に中央地区に光が差し込み始めると、全体の様子がより鮮明にアダム達の前に姿を現し、それはまるで“異様”という言葉しか浮かばないほどの光景だった。

先ほどから見えている黒い湖とばかり思っていたものは、よく見ると粘着質を含んだまるでヘドロのように一面をうねうねと主張させている。またそこから来ているのか、腐敗したような非常に強い刺激臭が一帯に漂い、丘の上にいるにも関わらずその刺激臭がアダム達の鼻をつく。


黒・・・ストーンヘッジ・・・というワードが一同の頭に浮かび、これはまさか《黒腫の集合体》なのでは、という結論がアダムの脳裏に過ぎる。


「しかし参ったな~これじゃ下に降りられない」


ケイ達は大丈夫なのだろうか?という思いがアダムを不安にさせる。

なにせ丘から降りることが難しい状況にどうしたものかと首を捻り、これではケイ達との合流は難しいだろうなと感じていた。


また地下で移動しているケイ達の安否も気になり、もし向かっている最中であればこのことを伝えるべきだと考え、アダムはスマホを手にするとケイに宛てて今の状況をメッセージに残したのだった。



「・・・いってぇ~~~」


中央地区が一望できる丘の上でアダム達が立ち往生していた頃、暴走する魔道列車から飛び降りたケイ達は、次々起こる展開に振り回されている状態に見舞われていた。


間一髪で列車の衝突に巻き込まれることなく脱出することが出来たが、シンシアと少佐を抱きかかえての脱出の際に衝撃を和らげようと地面を転がり、その前方から列車が何処かに衝突した影響からか破片が飛来し、それを察知して彼らを庇うように背中を向けたことで飛来物がケイの背中に直撃をする。


普通なら大怪我をするほどの状況なのだが、アレサの寵愛持ちであるケイにとってはしゃがんだままテーブルに頭をぶつける程度の衝撃しかない。とは言え、それ以外は生身の人間と変わらず、やはり痛いものは痛い。


「ねぇ、大丈夫?」

『『『クゥーン』』』

「飛んできた破片が何個か背中に当たった。正直地味にいてぇ~」


飛来した破片が直撃した肩や背中の部分に痛みを感じ、身じろぎしながらも立ち上がったケイにシンシアは心配する様子を見せ、傍らには申し訳なさを表わしたかのような少佐の鳴き声がする。


「それよりも、ここはどの辺りになるのかしら?」

「あの速度だったらもう中央地区に入っているかも知れねぇな。それにしても、地上に出る以前に他の駅が見当たらねぇ」

「駅?中央地区の・・・たしか王宮広場前の駅の事よね?」

「大陸中を魔道列車が行き来しているからには、少なくとも王宮広場前の前にも駅があったと思ったんだけど、大陸が沈んだ影響か目視で確認してもホームが見当たらなかったんだよな~」


シンシアからあの状況でよく確認出来たわね、という言葉を掛けられたほどケイは意外と冷静だったわけだが、非常灯が照らす二線の線路の上で立ち往生しているわけにはいかず、とりあえず地上に上がれる道を探して進行方向に続く線路沿いを歩くことにした。


線路に沿って歩いてから少し経ってから、シンシアがあることに気づいた。


「ケイ、さっき私たちが乗っていた列車って何かにぶつかったわよね?」

「結構先で壁か何かにぶつかった音がしたのは聞いたけど、それがどうした?」

「もし壁にぶつかったのだとしたら木っ端微塵に吹き飛ぶって言ってたけど、それなら爆発や火事が起こるってことじゃない?線路沿いに歩いて本当に大丈夫なのかしら?」


むしろ来た道を戻った方がいいんじゃないの?というシンシアの意見にケイがハッとする。


たしかに彼女の言う通り、魔力を込めた列車があれほどのスピードで衝突をしたのなら爆発の一つがあっても可笑しくはない。むしろ現象としてあって当然なはずなのだが、衝突しただけでケイ達がいる地下内にその後の影響が皆無であることに逆に違和感を感じる。


ケイがサーチとマップを発動させようとした時、ポケットに入れたスマホに着信があったことを告げるランプが点滅していた。


相手はアダムからのようで、その内容を確認したケイがサーチとマップを発動させた後に足元に居た少佐を拾い上げ、隣に居たシンシアの腕を掴んで歩き始めた。

黙ったままのケイに少佐は三頭とも困惑した様子で見上げ、シンシアはどうしたのかとこちらも困惑した様子で話しかける。


「ケイ、どうしたのよ!?」

「ここはマズいから移動するだけだ」

「凄い剣幕だけど、なにかあったの?」

「マップで確認したら俺達は丁度中央地区の真下にいるんだけど、どうやら地上全体が赤く覆われているっぽいんだ」


その言葉にシンシアは一瞬なんのことを言っているのか分からず首を傾げたが、すぐにケイのスキルのことを示していることに気づき、血の気が引くような思いにかられた。


その後閉口したままの二人と少佐は、線路沿いを進行方向に向かって歩き出した。


移動する前にアダムからのメッセージに対して《何とか地上へ上がる道を探してみる》と返信し、その直後に再度アダムから了解のメッセージが送られると、北部地区と中央地区の境にある丘の上から撮られたとおぼしき動画が添付されていた。


朝日が昇り、中央地区が照らされると地上は全域と言っていいほどに真っ黒に染まっていた。

また大陸の中央部分には真っ黒に染まった塔のような建物が、画面越しでも分かるほどの異様さを放ち、地下にいるケイ達はそこで自分たちが徹夜だったことを知ると同時に、難しい局面に立たされていることを理解する。



歩き始めてから十分ぐらい経った頃、線路を平行するように非常灯がある地点以降途切れていることに気づいた。


前方には、先ほどまで乗っていた魔道列車が何かに突っ込んだ形で停止しており、状況から脱線車両がそのまま壁に突っ込んだということなのだろう。

しかし足元に続いている線路を見てみると、非常灯が消えている地点と同じ位置で途切れ、その切れた部分をよく見ると捻れ引きちぎられているような跡が残っている。


本来ならこの先に線路が続いていたであろうと考えはしたのだが、通常の生活の中で、線路が捻れ引きちぎられることなんてあるだろうかと首を傾げる。


それはまるで、何かの力によって強引に引きちぎったようにも見えなくない。


改めて壁に突っ込んだ列車の方を見てみると、30cm四方の亀裂の隙間から奥に空間が広がっている様子が見えた。

手にしているランタンを照らしたものの、その明かりだけでは奥の様子がよく見えず、耳を澄ませると遠くの方から風の音が微かに聞こえる。


「この奥に道が続いてるみたいだな」

「じゃあ、壁じゃなくて瓦礫で塞がれていただけってこと?」

「もしかしたら王宮広場前の駅に繋がってるんじゃないかと思うんだよな~」


ケイが亀裂部分に足蹴りし隙間を広げると、一人分ほどの穴が空いた。


ポッカリと空いた穴の奥から微かな風の通りと不気味なほど静寂な雰囲気が漂い、先導するように少佐を抱えたケイが穴を通り、次にシンシアが穴を通り抜けるとその不気味な雰囲気をより肌身で感じることができる。


「なんだか不気味ね」

「というか、中央地区はサブシステムが動いていないのが気になるな。やっぱ黒腫の巣窟になっている影響ってことか・・・?」


辺りの不気味な様子にシンシアが両腕をさすり、ケイは中央地区が黒腫の巣窟と化している影響からか、サブシステムが起動していないことに疑問を抱く。


正直そんな悠長なことを言っている場合ではないのだが、大陸が沈んだことがかなりのダメージだったのか地上への道が軒並み潰れている状況で、やはり道なりに進むしかないなと思い直す。


「・・・ねぇ?本当にこのまま進んで大丈夫なの?」

「大丈夫、とは言えねぇな。そもそも黒腫の影響でストーンヘッジが発生したって思ったけど、アレ俺勘違いしてた部分があったわ~」

「勘違い?えっ?どいうこと?」

「黒腫は薬品型細胞が月花石と混じって変異し感染病のように広がったって言ってたわけだが、冷静に考えると黒腫に感染した人々は死んだ後も縛り続けられていることになる・・・要は、ストーンヘッジ自体が黒腫に感染した人々の成れの果てってワケだ」


その言葉を聞いたシンシアが驚きのあまりに声を詰まらせた。


ケイ達は今まで黒腫に侵された人々とストーンヘッジは別の個体であると認識していた。しかし思い返してみると、ルフ島で遭遇した黒い騎士もダインのストーンヘッジ発生の際に発見したアフトクラトリア人も、結局は黒腫に変異した細胞に飲まれた結果だと気づかされる。

そうなると、アダム達が見たように1500年以上前に生存していた何億ものアスル・カディーム人は、一部を除きすでに黒腫に感染した後だったということになる。


黒腫の集合体はかつてのアスル・カディーム人の成れの果て、という事実に行きいたケイとシンシアは、各々が危機感を抱くと同時にその根源が中央地区にあることを確信したのだった。

アダム達が立ち往生している頃、ケイとシンシアは中央地区地下の真っ只中となかなか合流できません。果たしてケイ達は無事に会えるのか?

そしてケイが考え行き着いた黒腫の正体もなんとなく想定できました。

果たしてどうなることやら。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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