表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
アレグロの救済とアグナダム帝国
299/359

291、黒い塔

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回は前回の続きで、中央地区へ向かったケイ達とアダム達それぞれのお話です。

「・・・地震か!?」


アダム達がケイ達と合流するため、北部地区から合流場所である中央地区へと向かう道中で強い揺れに見舞われた。


始めは小さな揺れだったが、数秒後には下から突き上がる感覚にその場を動くことができず、建造物が密集している住宅地を通り過ぎたものの、辺りには住宅が連なっていることから倒壊の影響を危惧する。

それから揺れ自体は一分ほどで収まったのだが、その原因が中央地区の浮上の影響ということを瞬時に察したアダムの心中は(ケイ、タイミングを考えろ)という言葉しか出ない。


合流地点である中央地区へ向かう道中で、北部地区との間に小高い丘があることがイシュメルから語られる。


元々北部地区は草原が広がる小高い丘が広がっていたのだが、大陸の人口が爆発的に増えた時代があった影響で、移住居確保のために北部地区の丘を一部切り崩し建造物を建てたなどと言われている。

なおこの話はイシュメルが生まれる前の話なので、相違があるかもしれないけど・・・と彼は口にしていたが、アダムとレイブンからすれば何千年前の話だろうかと一瞬考えが頭を過ぎる。


「そう考えると、北部地区の地形ってかなり特殊な感じはするね」

「ん?どういうことだ?」

「さっきイシュメルさんが、北部地区は丘を切り崩して建物が建てられたって言っていたけど、もしかしたら“大陸を分断または大陸が沈むことを想定”して造られたって可能性があったかもしれない」


中央地区を浮上させるために先ほどの強い揺れが起こったのだが、その影響で荒廃した一部の建物が崩れはしたものの、あれほどの強震にも関わらず遠くに見える丘の名残に変化がないことにレイブンは疑問を持ったのだという。


景色を見回してみると、北部地区は北側の小高い丘の上に大聖堂が建てられ、反時計回りで丘が連なっているのだが、1500年以上経ちなおかつ荒廃して建物が劣化しているなか、通常なら地震により丘に崩れる影響が考えられるがそれが一切ない。

正直、目視をしているので実際の影響はあるのかもしれないが、それを差し引いても違和感しか感じられない。ましてや地下に移動施設があるとなると、その影響が全くないことにレイブンは不思議でならなかった。


『レイブンさんのいう仮説ももしかしたらあったのかもしれません。父・・・いえ、太古の昔から存在していた我々の人種がこの可能性も考えて大陸の発展進化を遂げたとなると、浅はかだった自分たちの考えで歴史を終わらせてしまったということになるのかもかもしれませんね・・・』


元から責任を強く感じる性分なのか、イシュメルから悔しさと悲しさが入り交じった表情が見てとれる。その傍には、心配そうな様子で見つめるタレナと何と声をかけていいのか分からない様子のシルトが目を伏せている。


アダムとレイブンは、この話題には触れない方がいいのではないかと互いに目線を合わせると、なんとも言えない気まずさを感じたのだった。



「ケイ!この状況を何とかしなさいよ!!?」


変わり果てた街並みを前に落胆しているイシュメルにアダムとレイブンがどう声を掛けていいのかと悩んでいる頃、ケイとシンシアはアグナダム帝国に到着して以来の更なる受難に見舞われていた。


魔道列車を運行させたものの、肝心のブレーキという概念がない列車は高速道路をフルスピードで走り抜けるレーシングカーと化していた。

いくら大陸が広く大きいといえども、直線距離を暴走して走る列車にシンシアはパニックに陥りケイの胸ぐらを掴んでは何とかしろと迫り、彼女に抱かれている少佐は三頭とも速度超過に怯え固まっている。


かなりパニック気味のシンシアに「何とかするからとりあえずその手を離せ!首が絞まる!!」とケイが抗議をし、なんとか話して貰ったもののこのままでは障害物にぶつかりでもしたらひとたまりもないことを痛感し早急に対策を考える。


「アルバ、魔道列車のシステムを遠隔操作できるか?このまま壁にあたりでもしたらひとたまりもねぇ!」

【システムに介入することは可能ですが、あと4分50秒で壁に衝突します】

「ばっかやろ!!早く言え!!!!」


AIなのに何を学習してるんだ!?とでも言いたげなケイであったが、時間は刻一刻と迫っているため、瞬時にマップを展開させると進行方向の状況を確認する。


その途中で、一瞬だけ進行方向やや左側に分岐器と線路が二線見えた。


アルバの説明では、地下を走る魔道列車は中央地区の『王宮広場前』の駅を起点に外回りと内回りに大陸中を運行していたようで、分岐器は魔道列車が出来た当初は北部地区と南部地区を行き来するだけだった路線を新たに繋ぎ、時間によって東地区へと行けるようにするために利用されていた。

しかし分岐器は、技術の発達と共に大陸を一周することができるように線路が新たに設置されたため、いつからか使用されなくなったという。


「きゃあ!」


ややスピードが落ちた列車に、急に何かが乗り上げたような衝撃を受けた。


その反動でシンシアが大きくよろめき、彼女に抱かれていた少佐がその反動で浮かび上がると、ケイが咄嗟にシンシアを抱き寄せ、宙を舞おうとしていた少佐をもう片方でキャッチする。


その後大きな衝撃が続き、平行している壁に激突し擦れる衝撃と列車にある金属部分が壁にひっかく様に鈍い高音を辺りに響かせている。

ケイは咄嗟に先の衝撃で列車が脱線したのだと理解し、アルバに遠隔で列車を止めて貰おうとしたがこのままでは列車もろとも木っ端微塵の未来を感じた。


「シンシア!降りるぞ!」

「えっ!?どういうことよ!!?」

「列車が脱線してんだよ!このままじゃ乗って壁になんかぶつかったりしたら木っ端微塵に吹き飛ぶぞ!」


冗談でしょ!?という驚愕の表情のシンシアに、とにかく降りるぞと彼女と少佐を抱き抱えたまま、衝撃が続くなか壁伝いに運転室と二両目の連結部分まで辿り着くと、進行方向左側は壁にすれたまま時折火花が飛び散る光景が目にはいる。


抱きかかえられたシンシアと少佐は顔を引きつらせそちらを凝視しているが、一刻の猶予もないケイは二人の様子に気に掛けることもなく、速度が減速しているもののトンネル内の非常灯が線のように見える速度に臆することなく、連結部分からまるで川に飛び込むように列車から飛び降りた。


その数秒後、進行方向に走り去った列車は壁か何かにぶつかり、その衝撃音と振動がトンネル内に響き渡ったのだった。



ケイとシンシアが映画のアクションシーンの様な体験をしている一方で、アダム達は北部地区から中央地区へと移動をしていた。


中央地区へ向かう道中、建物が連なる風景から徐々にあぜ道の風景へと変わり、本来なら比較的舗装されていたであろう道路は、元がどんなものかもわからない程細かいレンガが続き、一同の足元を不安定にさせる。


「そういえば、タレナやイシュメルさんの他のご家族は居るんですか?」


アダムが隣を歩いているイシュメルに声を掛ける。


イシュメルはなんの話をされているのかと疑問の表情を浮かべ、アダムは母親や祖父母・いとこは居たのかと問いかけた。

家族・・・身内・・・と呟き、目を伏せたイシュメルにアダムは触れてはいけなかったのかと自分の無神経さに反省し撤回の言葉を口にしようとした時、彼から自分たちの母親について口を開いた。


『私たちに祖父母が存命だったのかはわかりません。なにせ、私たちの寿命は長いですし父からも聞かされた記憶はありません。母は元々あまり身体が丈夫ではありませんでした。特にアルペテリアを生んでからは一年のほとんどをベッドで過ごすような日々を送っていたと記憶しています。ですが、母は常に父や私たち兄妹のことを心配してくれ、体調の良いときはお菓子や裁縫したものを送ってくれました』


シャーハーン王の妻である王妃・イメルダは、元々病弱で身体に不調を抱えやすい体質のせいか、人前に出ることがほとんどなかったのだという。


イシュメルや彼の弟であるナザレは、幼少の早い段階から教育を受け始めたため、母親との思い出というものが極端に少ないことに寂しさを感じていたものの、一国の主である父を支えようとその気持ちに目を瞑り、父や国のために力を尽くしてきたことが述べられる。


アダムとレイブンは冒険者以前に一般庶民のため、家柄が自分の将来や国に関わるというイシュメルやタレナのような位置づけの人間の気持ちを想像でしか理解できない。しかし身近に領主の娘であるシンシアがいることから、その苦労や葛藤は少なからず見てきた方だと思っているし、ましてや1500年以上前に存在していたアグナダム帝国の一族が存命していたとなると、この先の不安や悩みが尽きないことはある程度想像できる。


『母はアレグロが黒腫に感染していたことを嘆き、代われるのなら代わってやりたいと思っていました。私や弟もアレグロにに巣くっている黒腫を取り除きたかったのですが、治療法が見つからずどんどん浸食していく彼女の身体を前に何も出来なかったことが今でも悔しいんです・・・』


アレグロが黒腫に侵されたと聞いた時、イメルダは普段は床に伏せっていた自身の身体を引きずり、娘の元まで赴き対面したアレグロを見て泣き叫んだという。


病弱の自分よりも娘を治して欲しいと医師に懇願し、手立てがないと首を振る医師に何故何も出来ないのか?何故人々を救えないのか?それでも医者なのか!などと詰め寄り、周りの護衛に制止されながらも必死に娘を何とかして欲しいと悲痛な想いが語られる。


しかし彼女の想いとは裏腹に、結果的にアグナダム帝国は黒腫の影響で海に沈んだわけなのだが、イシュメルの記憶が正しければ、大陸が沈む前も中央地区の王宮にイメルダは居たことになるので、もしかしたら最後の最後までアレグロをはじめとした家族達の身を案じていたのかもしれないと今ではそう考えることができる。



アダム達が荒廃し瓦礫などの残骸で埋め尽くされた舗装されていない道を進むと、中央地区との境界線上にある小高い丘まで辿り着いた。


丘自体はそんなに高さはないのだが、イシュメルの記憶では本来あるはずの階段などの造形物は流されたのかそこにはなく、かすかに残っている道の跡を辿りなんとか上ってみる。


「朝が来てしまったね」

「結局徹夜かよ~」


丘を上る途中でアダムとレイブンが空を見上げると、遠くの空に朝焼けが映った。


タレナを探しに行ったものの、色々なことが重なったせいで結局は徹夜になった事実に思わずため息が漏れる。しかも自分達はその足で中央地区へ向かうのだから、冒険者に暇どころか休憩もない。もちろん徹夜は依頼時に野営の一環で何度か経験はあったものの、一晩中走り回るなどという経験は数える程度。


色々思うところはあるもののあまり考えることはせず丘を上り続けたのだが、頂上に辿り着いた先でアダム達はとんでもない光景を目の当たりにした。


「おいおい、冗談だろ・・・」

「これは黒い湖?」


丘を上りきった先に中央地区全土が黒い湖のように広がっている。


目線を遠くに向けると、黒い異様な高層の建造物のように何かが聳え立っている。

イシュメルとシルトは唖然とした様子でその建物を見つめ、タレナはあまりの異様さに顔を顰める。


アダムとレイブンも中央地区の異様な光景に、ただただ立ち尽くすしかなかった。


ケイとシンシアがハードな展開を迎えている頃、中央地区が一望できる丘までやって来たアダム達は異様な光景を目にします。

果たして黒い光景の正体とは?


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ