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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
アレグロの救済とアグナダム帝国
295/359

287、予想外の事態

皆さんこんばんは。

遅れて申し訳ございません。


さて今回は、イシュメルから明かされたシルトの謎の直後に予想外の事態が起こります。

シブレと偽っていたイシュメルから、シルトの記憶障害はタレナの状況と同じ黒腫に感染し完治した後遺症ということを明らかになった。


ケイは大方そんな予感はしていたが、決定的な証言・証拠がないということで口にはしなかった。また、イシュメルがシブレという若い兵士として偽っていた事を考えると、実はアレグロとタレナも知らない何かが裏にあったのではないかと感じさせる。


「イシュメル、あんたが姿を偽っていた理由は?」

『元々は、人々の生活が現状どうなっているかを確認するために変装をして各地を回っていました。ご存じかどうかはわかりませんが、我々五大御子神はこの国では父の代理であり国のシンボルであることから、人前に出てしまうと騒ぎが大きくなってしまうが故にこのような姿になることを求められてきました』


イシュメルの話では五大御子神は、当時からかなり有名だったことからまるで人気アイドルを追いかけるファンのような状況になることが多々あったそうだ。

そのため、特に兄妹の中でもシャーハーン王の代理以上の事も務めていたイシュメルは、自身を“シブレ”という名を使い、一般兵として姿を偽り業務を遂行していたと述べる。


それから当時、南部地区の視察を終えて中央地区へと戻る途中で大陸が沈む現象が起こり、部下たちの機転により、リアーナ達と共にコールドスリープされることになった。

本来ならイシュメル自身も大陸と共に沈む運命を迎えるはずだったのだが、生きていればアグナダム帝国は復興できるしアレグロを助けられるはずだと、半ば部下達によってコールドスリープをかけられたことを口にする。


『今思えば、私がもっとしっかりしていれば違った結末があったのではないかと後悔しかありません・・・それに今の私は、国民のためと言っておきながら自分の弟妹すら守れない愚か者です・・・・・・』


ケイは、不甲斐ないとばかりに頭を振るイシュメルのナザレの発言に疑問を抱く。


アレグロのことは、イシュメルが黒腫に侵された彼女の身体から魂を切り離し、一時的に人魂魔石に移したと想像はつくが、ここに来て何故ナザレも守れなかったと口をしたのか。


残された文献から解釈するにナザレはシルトと行動を共にしていたと考えると、彼の役割はシャーハーン王を含めた黒腫に侵された人々を連れて大陸を渡ったことが想定できる。

これはあくまでもケイの考えでしかないが、その道中でナザレの身に何かしらのアクシデントがあったことから、イシュメルは彼の状況を知り、嘆いていたのではないかと考える。


「ナザレも助けられなかったってどういうことだ?」

『当時アグナダム帝国では、アフトクラトリア人の暴徒が日を追うごとに増えていきました。私とナザレはその原因が黒腫による感染だと突き止めたのですが、弟は自身の判断で父や感染した人々を連れ大陸を離れてしまったのです』

「アンタの指示じゃなかったってことか?」

『はい。ですが、その少し前から弟は他国へ行けば黒腫改善のヒントがあるのではと考えていたようで、私にも少しだけその思いを打ち明けてくれました』


イシュメルは、ナザレの行動に一定の理解を示しながらも国を預かる身ながら弟をバックアップしていたようだが、その行動が世間一般では二人の不仲が囁かれていた噂にも繋がっていた。

また、他の大陸に行けば黒腫を完治する術があるのではないかと考えて行動していたナザレとは、結論から言うと再会することは叶わなかった。


大陸を渡った人々の中にアフトクラトリア人がいたことから、ナザレはその暴徒に巻き込まれた可能性を感じてはいたが、イシュメル自身も国内に居たアフトクラトリア人の暴走に近い現象が頻発し、それをなんとか解決しようと奮闘するも、結局二進も三進も行かなくなりアグナダム帝国もろとも海に沈む末路を迎えたというのが真実だったようだ。


「ところでイシュメルさん。シルトさんのことなんですけど、タレナによって閉じ込められたと聞いたことがあるのですが、その事についてなにかご存知だったりしませんか?」


レイブンがシルトのことについて、イシュメルに尋ねる。


シャーハーン王とナザレに同行していたシルトに関して、今まで見聞きしてきたことを説明しタレナの行動も含めて投げかけたところ、もしかしたらとイシュメルからあることを聞くことができた。


『考えられるとするならば薬品型細胞の研究のことしょうね。シルトは当時からアフトクラトリア人を形成するための研究には反対してました。彼から「神から与えられた我々が人を創造などと神を冒涜する行為ではないか」と指摘もありまして、我々としてはその気持ちも十分理解できたのですが、アレグロが黒腫にかかった際に黒腫の研究を続けていたのですが、どうやら思い違いをしていたようで、それすらも冒涜行為と見なしていたようなんです』


どうやらシルトは、黒腫から完治した後遺症のせいで失った記憶が思い込みによって別の記憶として定着していたらしい。


当時スピサから引き継いだイシュメルとサイウォンが黒腫に変異した薬品型細胞が研究を行っていたのだが、シルトはそれすらも神への冒涜だと否定的な意見を持っていた。

シルトのその考えは、早い段階で黒腫完治の影響の一端とイシュメルは認識していたのだが、アレグロを思うタレナと意見違いを繰り返したことにより、シルトが武力行使に出るのではと噂になり、タレナが不安を感じたせいか彼を拘束したのではないかと考えを述べた。


しかし当の本人達は、その考えもやりとりも頭の中からすっぽりと抜けてしまったためか、その話をまるで他人事の様にやりとりを見つめている。


ちなみにその事を覚えているかと両人に尋ねると、二人とも首を横に振る。


心なしか顔を青くさせたタレナの表情の内心は大体想像ができるが、顔を伏せたままのシルトは項垂れたままケイ達の方を見ることもない。また、シルトから戦意が消失していることを確認したケイが彼の拘束を解くと、イシュメルの話に混乱している様子が窺える。


「まぁ、とりあえずタレナもシルトも無事だったから一旦船に戻ろうぜ」


各々思うことはあるにしろ、このままここに居るよりは船に戻ってこの後のことを考えようとケイが手をパンッと叩き、シンシアがタレナの元まで駆け寄ると怪我がないことを確かめてからほっとした表情をみせる。


「タレナ、本当に無事で良かったわ」

「迷惑を掛けてごめんなさい」

「こんな状況でいうのはなんだけど、お兄さんと会えて良かったわね」

「えぇ。まさかイシュメル兄さまに会えるとは思いませんでした」


シンシア自身も兄が居るため、その気持ちは分からなくはない。


タレナもまさかすぐ近くに兄が居るとは思わなかったのだが、互いの顔を見合わせたイシュメルとタレナの表情に、シンシアはなんとなく羨ましい気持ちを感じた。



「・・・なぁ、なにか床が揺れてないか?」


疑問を浮かべたアダムが皆にこう尋ねる。


床が揺れてる?とケイが首を傾げると、僅かにだが床が揺れている気がする。

建物は小高い丘の上に建っており、窓ガラスがない構造をしていたため風の通りを直に受けている。ケイはそのせいで揺れている気がしただけなのではと思い、念のためサーチとマップを展開しようとした矢先、突如建物内に大きな地響きと強い揺れを感じた。


「きゃっ!」

「地震か!?」


地震の様な強い揺れにシンシアが悲鳴を上げながらバランスを崩し、ケイはそんな彼女の腕を掴み抱き寄せてから近くに掴まれる位置まで誘導する。

その間、天井から破片の一部が落下し、壁の部分が崩壊するほどの強い揺れは数分ほど続いた。



「・・・・・・みんな、大丈夫か?」



強い揺れが収まった頃、アダムが顔を上げ辺りを見回した。


元々荒れ果てた大聖堂は、天井や壁の一部が崩落し辺りに瓦礫の山を築いている。

かなり強い揺れだったのだが建物が崩壊しなかったのは丈夫な構造だったため、アダムはほっとした顔を浮かべる。


「アダム、ケイとシンシアは?」

「えっ?それならそこにいるんじゃないのか?・・・・・・えっ?」


レイブンに尋ねられたアダムが、指した先にポッカリと穴が空いている。


恐らく地震の後にできたであろう穴は、人が丸々入るほどの大きさで、アダムとレイブンがまさかとその穴に駆け寄り下を覗くと、永遠に続きそうなほどの暗闇が広がっている。

顔を見合わせた二人は、ケイとシンシアがこの穴に落ちたのではと考える。


『う・・・うぇぇぇぇん!パパぁ~~~!!』


穴の近くに、火が点いたように泣きはじめたブルノワの姿がある。


レイブンが彼女を抱き上げあやしながらケイとシンシアの事を尋ねると、しゃくり上げながら、安全な位置にいるブルノワのところに向かおうとした時に目の前で落ちたそうだ。

しかもあろうことかその時少佐も二人と一緒に落ちてしまったようで、目の前から突然いなくなったことに驚きと悲しみが入り交じった様子で泣き続けている。


アダムが近くにロープみたいなものはあるだろうかと辺りを見回したところ、異変を感じ取ったのかシルトから声が上がる。


『二人とも!そこから離れろ!』


アダムとレイブンがハッとし穴の方を注視すると、下の方から生き物が威嚇するような低い唸り声がしたかと思った次の瞬間、四足歩行の黒い異形の個体が次から次へと沸いて出るように穴から這い上がってきた。


「ストーンヘッジか!?」


その集団に後ずさりをしたアダムとレイブンは、ケイとシンシアが穴に落ちたのは間違いないがこのままでは自分たちの身が危ないと危機感を募らせ、二人に向かって数体のストーンヘッジが飛びかかってくると、それをシルトが払いアダムとレイブンを庇うように前に立つ。


『ここでの戦闘は避けたい。二人とも退くぞ!』

「退くって、ケイたちが落ちたかもしれないんだぞ!?」

「アダムさん、お気持ちは分かりますがここは一旦外に出るべきです」


這い上がるストーンヘッジの群を前に、タレナに説得をされたアダムは舌打ちをしたい気持ちを抑えながら、一同は大聖堂の外へと退避することにした。

突然の地震で生じた大穴からケイとシンシアが落ちたのではと慌てたアダム達だったが、その穴からストーンヘッジの群が現れる。

果たしてケイとシンシア、巻き込まれた少佐の運命は如何に!?


いつもご高覧くださりありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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