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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
アレグロの救済とアグナダム帝国
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282、タレナの失踪

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回は前回の続きからで、アスル・カディーム人の保護後のことと様子の違うタレナの話です。

タレナの記憶障害が実は黒腫に感染し、完治した後遺症だと言えば彼女でなくとも誰だって言葉は出なくなるだろう。


配慮不足だったかとケイが横目でタレナの反応を伺うと、驚きで言葉に出ないというよりも戸惑いと納得したような表情が窺えた。

しかしそんなタレナの表情に、ケイは妙な違和感を感じていた。それが何かまでは分かりかねるが、まるで何かを決意したようなそんな表情が隠れている気がした。


また目線を横に向けると、シルトが神妙な面持ちでタレナを見つめている。


元々表情が表に出ないので何を考えているのかまではこちらも掴みかねるが、以前タレナが思い出したという数少ない情報では、シルトを拘束し現・奴隷商の屋敷地下にある隠し部屋に閉じ込めたことを考えると、薬品型細胞の研究の反対意見を上げたとして揉めた結果なのだろう。


ただあくまでもケイの独断的な意見で、実際はもっと広く根底的な部分で要因があるかもしれないなとは察しているものの、二人の間以外にも、行方が分からない五大御子神のイシュメルとナザレにも関わってくるんじゃないかとそんな気がしていた。


「タレナ、大丈夫?」

「えっ・・・?あ、はい・・・」


心配そうに声を掛けるシンシアに大丈夫だと返したタレナは、まるで心ここにあらずというような様子だった。


他の皆はケイとヴィンチェがタレナの記憶に関して指摘したことにより、本人が気落ちしているのではと感じていたようだが、ケイにはどうしても妙な違和感を拭えずに居た。むしろ、今度はシルトの様子もタレナとは異なった違和感を感じる。



その後、その件は一旦話を切り、今後の事について話し合うことにした。


「・・・で、アスル・カディーム人はどうするつもりなんだい?」

「いや~それがさ、まだ何も決まってねぇんだよ。幸い魔道船は200人以上を収容する容量はあるけど、その・・・いろいろな面でちょっと、な?」


ケイが元・日本人なら察してくれよと目線で訴えかけると、あぁ~と色々と察したヴィンチェが頷く。


現在コールドスリープが解除されたアスル・カディーム人は、魔道船の一部を変更し客室を広げ、そこで暮らして貰っている。

もっともコールドスリープの影響からか、まだ全体の3分の1しか意識が覚醒していないものの、ケイが予め創造した翻訳機をまとめてルシオ達に手渡し、意識が戻った人からその都度同意を得て装着して貰っている。


また初めの頃は、ダットから船員達に余計な刺激を与えないようにその区域の制限をしていたようだが、ルシオ達だけでは手が足りず、結局は船員達も手伝う様になった。

もちろんアスル・カディーム人たちは最初の方こそ警戒を示していたが、船員達が食事や話し相手になるなど徐々にだが距離が縮まっている印象を持つ。

まぁ、もっとも船員達は外部との接触が多い仕事をしていたことから、隔たりというものが薄いということもある。


いずれにせよいつまでも船上での生活を送るわけにも行かないのだが、そうなると彼らは“移民”という扱いになり、受け入れ先などの別の問題も発生する。


「イーサン、保護をしたアスル・カディーム人は結果的に移民になるわけだけど、その辺りの手続きは国によってどうなってるんだ?」

「移民ということでしたら、バナハでは所要の手続きをとっていただければ、最短でも二日ほどで申請が下りるかと・・・ですが、お話にも出ていたとおり200人以上ということであれば、手続きにそれだけ期間が必要になります。もちろん移民の申請は国によって異なりますが、特にウェストリアとダナンは他の国以上に厳しい審査があると聞いたことがあります。そうそう!あとアルバラントも独自の手続きの仕方があるようです」


イーサンの話では国によって移民や移住の手続きが異なるようで、そのなかでもウェストリアとダナンは審査などが特に厳しく行われている。


聖都であるウェストリアは聖人の生誕地とされていることから、その地を汚さない(負の因縁を残さないような意味らしい)ことを重要視しており、ダナンは各国からの流通が他の国より比率が多く、過去に起こった出来事(ケフトノーズ家の騒動)から更なる警戒を行っている。


さらに王都・アルバラントでは、他の国とは異なった手続き方法があるというが、イーサンは人づてにそういった話を聞いただけで内容はあまり知らないらしい。

ただ移民などの受け入れ審査にはブラマンテ家が担当しているようで、今は大臣であるフォーレが入国や人々の動向をチェックしている。

彼も元・日本人だったという事情を知っているケイ達からすれば、前世の特殊な生活をしていた名残がこういった場面で活躍しているのだろうと、あまり深く考えないことにした。


「ところでケイさん、彼らの受け入れ先は決まっているのですか?」

「いいや。いきなり他人を受け入れろ、なんて国に話をしてもこの人数だとさすがに首を縦に振らねぇだろう」

「まぁ、一般的に考えればそうですね」

「正直、俺はアスル・カディーム人を保護してもいつまでもこの船で過ごして貰うことはちょっと違う気がするんだけど、そこを考えるとどうしたもんかな~って思うんだよな~」


イーサンから保護したアスル・カディーム人の今後について尋ねられたケイは、ため息をつきながらどうしたものかと頭を抱えた。そこで、そんな様子を見たイーサンが少し考える素振りをしてから、ケイ達にこんな提案をする。


「ケイさん、もし少し時間をいただけるのでしたら、僕は一旦部下とバナハに戻りロアン様に報告と相談をしたいのですが?」

「相談?」

「はい。アスル・カディーム人を移民としてダナンに受け入れて貰えないかという話です。もちろん!それが通るかどうかはわかりません。ですが、いつまでもこのままというワケにも行かないでしょうし・・・」


イーサンがチラッとダットの方を見やると、驚いた様子のダットとその隣で困惑したバギラの表情が窺える。


また、ダットとしては完全にアスル・カディーム人全員を養おうという気持ちを持っていたのだが、さすがの彼もできることとできないこと位は理解している。

しかし、困った人達を見過ごすことができない性格だからか、それを見透かしていたかのようにイーサンから提案をされるとは夢にも思っていなかった。

不安要素はあるが、お願いしてみるしかないかと思い、駄目だったらまた考えようとケイは仲間達とダット側の魔道船の人々、それからアスル・カディーム人側のルシオ達の同意のもと、イーサンの提案を承諾した。


それからイーサンはこのことを報告するため、アルペテリアを連れてやって来た若い兵と共に、グリフォンに跨がり急いで来た道を飛んで戻っていった。


若い兵と一緒に来たアルペテリアは、元々ヴィンチェたちに同行していたため残ることになり、ダットの計らいでエイミーと相部屋という形にしてもらったのだが、船に居る間だけアスル・カディーム人たちと魔道船の船員たちの間を取り持つ橋渡し的な役割がメインになるだろう。


ケイはこの問題が解決する方向になればいいなと思いながら、一旦この場はお開きにする運びとなった。



ケイが解散早々に客室へ戻ると、一日も経っていないのになんだか疲れたなと部屋に入るやベットにダイブしたまま瞬間的な昼寝姿のブルノワと少佐の姿に苦笑いを浮かべたが、自身も同じように並んでベッド横になると次第に睡魔が遅い、いつの間にか寝入ってしまった。



「ケイさん、すみませ~ん!」



それから数時間経ち、部屋の外からのノックと声かけにケイの意識が覚醒した。


寝ぼけ眼で上半身を起こすと窓からは綺麗な夕焼けが広がり、いつの間にか眠ってしまったことに気づくが、再度扉からノックがしたので、ハイハイと言いながらベッドから立ち上がると扉を開き訪問者を迎える。


「あ、お休み中のところすみません・・・」

「ん?レマルクか・・・どうした?」


部屋に訪問してきたのはレマルクだった。


レマルクはケイは寝起きがすこぶる悪いとダットから聞いていたようで、気分を害していると感じ謝罪を口にする。別に気にすることはないと思い、気にしていないことを伝えてからなにか用かと返す。


「あの、こちらにタレナさんは来ていませんか?先ほど夕食の件でお部屋に伺ったんですけどいないみたいで」

「タレナが?いいや、俺んとこには来てないぞ?」


レマルクはマカドからの伝言で、夕食は魚と肉のどっちがいいかということを聞いて回っていたようで、先ほどタレナの部屋に伺ったのだが不在らしく探していた。

ケイが甲板か船内の何処かにいるのではと言うと、その前にアルペテリアのところにもルシオ達のところにも行ってみたが来ていないと言われたそうだ。


「レマルク、タレナさんはいたか?」

「あ、兄ちゃん!ううん、ケイさんのところにもいないみたい」


会話をしている間にイベールがこちらにやって来た。


レマルクからの返しに弱ったなと頭を掻き、彼もまた同じ用件でシルトの元を訪れたが不在だったらしい。

ケイの反応を見ると、シルトはここに来ていないことを察し、他の場所を探してみるとだけ伝えると踵を返して去って行く。


「なぁ、シルトもいないってどういうことだ?」

「今日の夕食の献立を伝えに回っているんですけど、兄ちゃんもさっきからシルトさんを探しているんです」


船内は広いので何処かで行き違いになった可能性もなくはないが、今までにこんなことはなかったとケイは首を傾げた。


ただ一つ理由を挙げるとすれば、先ほどの話し合いにあったタレナのことが原因なのだろう。その時のいつもと違ったタレナの様子とシルトの態度を思い返すと、やはりもう一度ちゃんと話し合いをするべきだっただろうと思ってはいた。


「レマルク、俺も探してみるよ」

「すみません、よろしくお願いします」


頭を下げたレマルクと別れ、自室のベッドに眠っているブルノワと少佐を起こしてから、彼らを連れてタレナとシルトを探して船内を巡ることにした。

タレナとシルトの姿が見えないとイベールとレマルク兄弟から言われたケイ。

先ほどの話し合いの時に指摘した理由が原因かと思われたが、決定的な理由が見当たらず、考えもそこそこに二人を見つけに船内を探し回ることになります。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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