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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
アレグロの救済とアグナダム帝国
289/359

281、黒腫のある事実

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回は、前回明らかになったシャーハーン王のことと慌てた様子でケイ達を探していたルシオ達の話。

焦りの表情を浮かべている四人にケイ達は、もしや保護をした他のアスル・カディーム人の身に何かあったのかと不安を抱いた。


アルペテリアの証言から王であるシャーハーン王が黒腫に侵されていたことが判明したことから、もしかすると自分たちの知らない間に黒腫に関する何かが起こったのではと危機感を感じていたが、甲板に戻ると何故かルシオの手にタブレットが握られ、これを見ろと言わんばかりにそれをこちらに向ける。


「ルシオ、そんなに慌てて何かあったか?」

「実は、先ほど僕とリアーナ宛てにアルバ経由でサイウォンが残したメッセージを受け取ったんです」


そういえば北部地区のメインシステムを訪れた際に、アルバに資料またはデータの回収・復元をお願いしていたんだったと思い返す。

ルシオ曰く、サイウォンが生前に二人に宛てたメッセージをデータとして残していたようで、データ回収の際にアルバがそれに気づき二人に転送したという。

そして、その内容を確認した二人はある事実に驚き、ケイ達に伝えようと船内を駆け回っていたそうだ。


だからタブレットを手にしてたのかと納得したケイだったが、ルシオから端末を受け取ると、表示されているサイウォンのメッセージに驚愕した。


「・・・はぁ?え・・・・・・うそだろ?」

「最初はあたし達もこの内容が何かの間違いだと思っただけど、サイウォンの性格から考えると冗談を書いているようには思えなくてね~」


リアーナ宛のメッセージも同じ内容のようで、これをどう解釈すればいいかと悩んでいる様子があった。


「ケイ、サイウォンという人のメッセージは何が書いてあるんだ?」

「あーーー言ってもいいモンかと悩む案件」

「・・・ん?どういう意味だ?」


アダムが尋ねると、ケイにしては珍しく歯切れの悪い返しをした。


よほど言いにくいか解釈に困るようなそんな微妙な表情をしているケイにシンシアから、そんなに言いにくい内容なの?と疑問を投げかけられる。

もちろん黙っていても残されたメッセージが覆ることがないので、ケイは言いにくいながら、ある事実を皆に伝えた。



「サイウォンのメッセージには、アレグロが侵された黒腫は“元々タレナから来たもの”だって書いてあるんだ」



その言葉に、全員が一斉にタレナの方を向いた。


本人もどういう事なのか分からず何も知らないと首を振るが、そのメッセージの続きには、タレナの当時の状況も書かれていた。



サイウォンの残したメッセージには、アレグロが黒腫に侵される二ヶ月前にタレナの身体に原因不明の痣が広がったことが記されていた。


当時サイウォンは、北部地区のシステムの管理者でありながら医療従事者という二つの職をもっていたようで、タレナを検診した担当者であった経緯と共に今後についてシャーハーン王に伝えたところ、タレナの身体にある痣に関して市民への混乱を避けるためにこの事実を内密に処理をしようとしたのだが、ここである人物がそれに異議を唱えた。


その人物こそ、当時王家に仕えていたシルトである。


シルトは、自身の妻であり研究者でもあったスピサが亡くなる以前から、アフトクラトリア人を形づくる薬品型細胞の研究に否定的な考えを持っていた。


その理由として、自分たちを創ったメルディーナを侮辱するような行動であることから何度も忠告し、それと同時に黒腫の正体を知っているならば国民に知る権利があると掛け合ったのだが、シャーハーン王は繁栄した大陸で不安を煽るような言動やそれが元で更なる混乱が起こりかねないと訴えを退けたのだ。


また、同じ時期に交流を持ったシャムルス人を初めとしたケイ達が住む大陸では、互いの交流を形づくろうと、当時は“友好の塔”と言われた試練の(ペカド・トレ)の建設を巡り、イシュメルとナザレが対立していたと噂されていたようだが、これに関しては本人達に直接聞いたわけではなく、疑問が残る部分もあるためなんとも言えないと綴られている。



色々と思うところはあるが、それよりもケイはアレグロが侵された黒腫はタレナから来たという一文が気になった。



現在タレナは、記憶障害が残る形にはなっているものの鑑定で判断する限り、特に体調に変化はないように見える。


だが所々思い出せる部分もあったドール体だった(人魂魔石の)アレグロとは対照的に、タレナに至ってはシルトを閉じ込めた経緯のみ記憶が戻ったかたちになる。

そもそもアレグロもタレナも双子ではあるが別々の人物・人格と言われればそれまでなのだが、もしかしたら身内であれば遺伝的に共通する特性があるのではと、ケイはふとそんな考えを抱く。


「ルシオ、一つ聞いていいか?そもそもアスル・カディーム人って魔法を使える人物はいないのか?今まで聞く限りだと、シャーハーン王は魔力を使ってアフトクラトリア人を操った・・・というより維持してきたワケだし、できそうな奴ぐらいいるんじゃないか?」

「魔法、ですか?少なくとも僕やリアーナ、ピエタは適性がないので無理ですね。元々所持している魔力が低い人が多いこともあるかもしれませんが、文化的に魔素を利用した“魔機学”が発達した文明が中心でしたし、魔法に長けるということであれば、シャーハーン王や五大御子神が該当するかもしれません」

「じゃあ一番持ってるっていうと、やっぱシャーハーン王と五大御子神っていうことか?」

「正確なことはわかりませんが、アレグロ様とタレナ様は北部地区で神官を務めていたようでしたので、魔力がないというわけではなさそうです」


もっとも他にも神官やそれに従事した人物もいたようだが、シャーハーン王や五大御子神ほどではないと語る。


その言葉を聞いたケイは、険しい表情ながらも「そういうことか・・・」と呟いた。


「ケイ、僕たちの方でもちょっと気になることがあったんだけど」

「気になること?」

「以前フリージアに赴いた時、エケンデリコスという人から地下神殿についての話を聞いたんだけど、そこで回収した資料にアスル・カディーム人がビェールィ人を襲った記録が残ってたんだ。もしかしたら、黒腫に感染した人物がストーンヘッジとなってそこにいた人々を襲ったのかもしれない」

「ストーンヘッジって汚染された月花石が元じゃねぇのか?あ、いや・・・」


そこでケイとヴィンチェがある事実に行き着き、同時にそういうことか!と互いに顔を見合わせ、「おいおい、またか~」と呆れた様子でダニーが自己完結するなと首を振り、それに気づいた二人が皆にこう説明をする。


「ダニー、フリージアで会ったエケンデリコスとの会話を覚えているよね?」

「あ、あぁ。それがどうかしたんだ?」

「僕は思うにストーンヘッジの正体は、黒腫に侵された人々が変化した姿じゃないかと思うんだ。元々アフトクラトリア人を形づくった薬品型細胞に月花石の欠片が混じったことで、それが変化をして黒腫としてアフトクラトリア人に広がった。月花石は魔素や魔力にに反応するとしたら、体内に取り込まれたアフトクラトリア人はいわば感染した状態と考えられる。それにアフトクラトリア人は、シャーハーン王の魔力で生きながらえてきたワケだから、接触していた王を筆頭に魔力を持っていたアスル・カディーム人たちも黒腫に次々感染してそれが大陸中に広がった」

「もっと言うなら、その時神官をしていたタレナが該当する人物に接触して感染したが、それ以前にアレグロが知っていた可能性がある」


ケイは、タレナが黒腫に侵された時点でアレグロが何らかの方法で自分に黒腫を移したのではと考えた。


もちろんどうやってという技法的なことはわからないが、五大御子神であるアレグロと同様にタレナも魔法を扱えたのだとしたら、必然的に一般人よりも魔力があるはずである。

しかし魔法を扱うことが出来ないとなると、黒腫から完治するにあたり魔力そのものが彼女からアレグロに移る形でなくなった可能性が考えられる。


「でもタレナは記憶がないんでしょ?どうやってそれを証明するのよ?」

「タレナがアレグロと北部地区で神官をしていたとなると、本来ならアレグロぐらい魔力がないとおかしいはずなんだ。だが、今のタレナの魔力量を鑑定と一般人ぐらいしかないし、黒腫に感染した後遺症で魔法を扱うことができないとなると、必然的に武道の方に方向転換をするしかなくなる。それと記憶も欠如したまま戻らないと考えると、それがどういうことかわかるか?」

「どういう・・・って、どういう意味なの?」

「タレナの記憶障害は、黒腫に感染し完治した代償の可能性があるんだ」


ケイの発言に驚いたシンシアがタレナの方を見やると、俯いた彼女の姿があった。


俯いた際に髪の毛の影になっているため表情を伺うことはできなかったが、膝に置かれた両手は組んだままわずかながら震えている様子を見せる。


思えば以前、能力を上げる薬をアレグロとタレナに飲ませた際に鑑定で確認したところ、タレナは身体的な能力がアレグロよりも高い印象を受けた。

その時はマーダ・ヴェーラの護衛を務めていたせいもあってか、姉妹で得意分野が違うんだなとしか認識していなかったのだが、まさか黒腫から完治した後遺症で魔力を扱うことができなかったばかりか記憶障害に陥っていたなんて誰が想像しただろう。


「あ~~~タレナ?大丈夫、か?」


ひとしきりケイとヴィンチェが説明をした後で、俯いたままのタレナに声を掛けると、一瞬肩を振るわせ動揺している様子があった。恐らく大分前から自身の記憶障害が一般的に知れ渡っているものとは別だと認識し、尚且つそれを隠していたことをケイ達に咎められるのではと思っているのだろう。


しかしケイは、言葉には出さなくとも明らかに普段の様子と違うタレナの態度に妙な違和感を感じ、その辺のことを突っ込んで聞いてもいいものかと戸惑いながらも思案したのだった。

黒腫に感染したアレグロだったが、元々それはタレナから来たモノだった。

サイウォンが残したメッセージにはその時のことが綴られ、また五大御子神のイシュメルとナザレが試練の塔建設を巡り対立していた噂が会ったことが記されていました。

果たして真相はいかに!?


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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