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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
アレグロの救済とアグナダム帝国
288/359

280、追ってきたアルペテリア

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回は、アルペテリアとの再会と彼女から伝えられたあることが判明します。

「ダットさん、お取り込み中すみませ~ん」


話が一段落付いたところに船員の一人が会議室の扉を開けて顔を出した。


ダットがどうした?と声を掛けると、橋の反対側から人を乗せたグリフォンがこちらに向かって来ていることを述べる。


「もしかして、野営地に残っている奴らか?」

「もしもの時を考えて何人か待機させているが、なにかあったのだろうか?」


イーサンはアルペテリアのこともあり、何かあっては事だからと二十人ほど大陸側の野営地に待機させていると答える。

彼曰く、そもそも待機している隊の人間が単独行動するということはよほどのことがない限り行わないものだという。普段は滅多にないそうだが、人を乗せたグリフォンがこちらに向かってくるとなると大陸で何かあった可能性があるのかもしれない。



知らせを受けたケイ達が甲板に向かうと、丁度魔道船目がけてグリフォンが飛行してくる姿が見えた。


その背にはイーサンの部下とおぼしき青年と、見覚えのある橙色の髪の少女が乗っており、碇泊する船に近い位置でグリフォンが着地をすると、部下の青年が「イーサン隊長!」と声を張り上げる。


「どうした!待機してろと命令したはずだが!?」


船を下り部下と合流したイーサンが何事かと尋ねると、青年を庇うようにアルペテリアが二人の間を割って入った。


『この方を怒らないでください。私がお願いしたんです!』

「隊長、申し訳ありません!彼女がどうしてもヴィンチェさん達に話したいことがあると言って後を追ってくれと・・・」


どうやらヴィンチェ達がアグナダム帝国側に向かったすぐ後にアルペテリアの容態が回復し、彼女が気がつくがいなや突然ヴィンチェ達に思い出したことがあるから話をしたいと言い出したそうだ。

もちろん部下の青年は、安全面や体調のことも考慮して許可はできないと首を振ったのだが、お父様について話しておかねばならないからと何度も熱心に説いていたようで、寝負けした青年は、始末書は覚悟の上で彼女を連れて橋を渡ってやって来たという。


「アルペテリア!」

『タレナ姉さま?』


アルペテリアに駆け寄ったタレナが、怪我はないかとか体調はどうなのかと心配そうに尋ねる姿にやはり姉妹だなという様子を端から見ていたが、アルペテリアはタレナの姿を見るや父親のことでこんなことを口にした。


『タレナ姉さま!私、お父様になんて酷いことを言ったのか後悔しているんです』


どういうことなのか分からずに一瞬ケイ達の方を向いたタレナに、アルペテリアは記憶の混乱が起こっているのか、まずは落ち着くようにと諭した。

どうやら記憶の一部が戻ったようで、ベルセのところに居た際に父親について散々酷いことを言ったことに反省のような素振りをみせる。


「アルペテリア、君は何を思いだしたんだ?」


困惑するタレナの横にヴィンチェがアルペテリアに目線を合わせるように聞く姿勢をとると、アルペテリアは自分を諭しているタレナの方からヴィンチェの方へと顔を向けた。


『ヴィンチェさん・・・お父様は“私を黒腫守るために氷塊に閉じ込めた”んです』

「えっ?それはどういう・・・」

『・・・・・・お父様は、大陸に渡った辺りから黒腫に侵されていました』


アルペテリアの口からシャーハーン王のことが語られると、まさかその王までも黒腫に侵されていたことを聞き、一同が驚く。


彼女の記憶では、シャーハーン王と部下だったシルトと兄のナザレと共に船で大陸を渡ったが、その際にアルペテリアが父がいる客室に赴いたところ、偶然背中に黒い痣が広がっているところを目撃したそうで、それを知ったシャーハーン王からこのことは誰にも言ってはならないと口止めをされていた。

実はそれより以前にシャーハーン王は、娘であるアルペテリアに対して接近や接触をしてはいけない、などと冷たい態度を取っていた。

しかし後になってから、王自身が黒腫に感染したことにより同行していた者達への配慮だったことをこの時察したそうだ。


「となると、シャーハーン王は大陸を渡る時点で黒腫に感染していたということになるな。だとすると、黒腫というのは伝染病みたいなものなのか?」


でも・・・と思案するケイは、アルペテリアに覚えている範囲で良いので答えて欲しいと、いくつか質問を投げかける。


「アルペテリア、シャーハーン王が黒腫に感染したのを知ったのは、大陸を渡る船での中ってことで間違いないか?」

『はい。私が思うに父は、シャーハーン王はその時には既に・・・』

「黒腫に侵されていたってことか。じゃあ、アレグロが黒腫に侵された事を知ったのは?」

『えっと、船を渡る前・・・一月ほど前です。そのころアレグロ姉さまの体調が思わしくないと会うことが出来なくなったので・・・』


悲しそうにそう告げたアルペテリアの表情に、黙って話を聞いていたヴィンチェが「そういうことか・・・」と呟き、ケイもアルペテリアの証言を聞き、間違いないなと納得の表情を浮かべる。


「おい、ヴィンチェ!お前たちだけで納得しないでくれよぉ~」


そんな二人の様子に、勝手に納得するなと困惑しているダニーの声がした。


エイミーからは、ヴィンチェは考えると長いし知らない間に自己完結してしまうので、こちらからアクションを掛けなければ言わないから困るとプリプリした様子が垣間見られる。


「あ、あぁ~ごめん。さっきのアルペテリアの言葉から、シャーハーン王の黒腫はアレグロさんから来ていたかもしれないんだ」

「はぁ?どういうことだ?」

「アグナダム帝国の医療施設は東部地区からある時を境に中央地区に移された。もしかしたらその時点でシャーハーン王は“黒腫の正体”を知ってたんじゃないかと思ったんだ」


ヴィンチェの言葉に続きケイが、アレグロの身体が中央地区へと運ばれたことを述べる。


二人は、アレグロが黒腫に侵された時点でシャーハーン王はその原因と正体を把握していたのではと行き着いた。

現にアレグロの身体は、医療設備が整っていた東部地区から中央地区へと移されていることから、黒腫の一因にもなっている月花石が決定的であると同時にアグナダム帝国崩壊に直結したことも想定していた可能性はある。


だが、そこでいくつかの疑問が浮かぶ。

そのひとつにアレグロ達の兄であり、五大御子神の二人であるイシュメルとナザレの存在である。


これまでホビット族や精霊族から断片的に存在は認識していたのだが、同じく大陸に渡ったシルトからは、記憶の消失があるためか当時の二人の足取りが分からなかった。


「そういや、五大御子神のナザレはどうなったんだ?」

『ナザレ兄さまは、大陸に到着した時に別行動をとっていました」


アルペテリアから、ナザレは大陸に到着した直後に同行していたシルトと別行動を取った証言が上がる。

ケイが思うに、二人は大陸上陸後に現在の王都・アルバラントへ赴いたのだろうと推測するが、タレナの記憶と照らし合わせるとシルトはその後で彼女により封印という名の眠りにつかされたと考えるべきだろう。


しかし、その時アグナダム帝国に居たタレナが大陸を渡ってシルトと合流できるのか?という疑問に関しては、今はないが女神像が関係していることを既に想定している。


今までの文献・情報から考えるに、各箇所に配置されている女神像は対になっており、それぞれがゲートのような役割も果たしていたのではと察する。

これは、当時すでにワープや転移門のような魔術または技術が発達していた事を意味している。でなければ、大陸側に広がる地下遺跡に溜まった魔素を定期的に大陸外に排出させる技法など今の現代ではほぼ不可能に近い。


シャーハーン王は、魔力と魔素の関係を熟知した上でそのような技法を取り入れたと考えると、実は・・・ということが頭を過ぎるが、それを証明することは永久にないだろう。


「ケイ、ところで疑問なんだが、五大御子神の残りの二人はどうなったんだ?」

「そこなんだよな~。ナザレは大陸を渡ったまではアルペテリアの証言で把握出来たけど、イシュメルという人物の足取りに関しては全くないんだよな~。アルペテリア、お前の兄ちゃんたちについてなにか知ってるか?」

『申し訳ありません。実は兄さまたちとあまり交流がありませんので・・・』

「交流がない?兄妹だろ?」


なぜ?と疑問を浮かべるケイにアルペテリアは、年が離れすぎている故にあまり交流がなかったことを口にする。


アスル・カディーム人は、他の種族とは異なり“永遠に生き続ける人種”であることから、人間でいう成人が彼らの場合だと大体1000才ぐらいのようで、アルペテリアが生まれた時点で二人は2000才を超えていたそうだ。

また成人になったイシュメルとナザレは、アルペテリアが生まれた頃にはシャーハーン王の補佐として国の繁栄に力を入れていた様で、ケイ達の感覚でいう年の離れ過ぎた兄妹ということになる。


外見上はエルフ族のように年月を掛けてゆっくりと成長していくらしいが、その辺りは個体差によるとのこと。


以上のことから、今まで名は上がっていたイシュメルとナザレだが、兄の記憶があるアルペテリアでも年が離れすぎていた関係で、兄妹としての記憶は本来であれば年が近い(と思われる)アレグロやタレナの方があったのは確実だろう。


ただアレグロはあのような状況になり、タレナは記憶の全てが戻らない状態であることから、イシュメルの方は未だに謎に包まれている。

現在の事を考えると本人達はすでに亡くなっている可能性はあるが、シャーハーン王と同じ末路を辿ったのか、はたまた他の要因なのかは全く見当も付かない。



「皆さーーーん!!」



そんな時、ケイ達の耳に大声でこちらを呼ぶルシオの声が聞こえた。


そちらを見やると、甲板で手を振る彼の隣にはリアーナとピエタ、シブレの姿があり、四人とも遠くからでも分かるほど何故か焦っている表情を浮かべている。



早く早くと手招いているルシオ達の姿に、よく分からないがとにかく一旦戻ろうとケイ達は船へと引き返したのだった。

アルペテリアによって、シャーハーン王は黒腫に侵されていたことが判明しました。

また、五大御子神のイシュメルとナザレの足取りも不明であることから、謎が深まりつつあるケイ達に突然ルシオ達から声が上がります。

一体何があったのでしょう?


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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