273、復旧出来なかったワケ
皆さんこんばんは。
遅くなって申し訳ありません。
今回の話は、メインシステムが稼働しない原因を突き止めようとします。
アルバがメインシステムを起動させたまではよかったが、何故か照明が点いた途端にブレーカーが落ちたようで、点いた明かりが一斉に消えた。
また今回の北部地区は、メインシステムがある制御装置室と同じ場所にブレーカーがあり、それが既に上がっている状態を確かめた上で、ケイとアダムがアルバの操作補助を行ったはずだった。一同は何が原因なのかがわからず、困惑の表情で互いに顔を見合わせ、ケイはアルバにどういうことなのかと訪ねた。
「・・・アルバ、なんか落ちたんだけど?」
【現在システム状況を確認しています。暫くお待ちください・・・・・・】
「フレーカー下がったままだけど上げた方が良いか?」
【はい。お手数ですが一度試してください】
システムがダウンした音と同時に照明が落ちた原因をアルバが解析している間、ケイは再度先ほどの制御装置室を覗いてみると、ブレーカーが下がっている。
今回はブレーカーが予め上がっていたことを確認してからの操作だったため、手順は間違っていないはずである。
「・・・あれ?ブレーカー上げたけどなんもないぞ?」
【恐らく、動力に想定以上の負荷が掛かっている可能性があるようです。現在原因の特定を急いでいます】
システムは起動していると思ったが、ブレーカーを上げ直しても何も起こらない。
はて?とケイが首を傾げていると、アルバから施設内の一部に想定以上の負荷が掛かっている影響でブレーカーを上げても復旧が出来ないと知る。
そうなると、大陸沈没後も動いている箇所があったという事を意味していることで間違いなさそうだ。
「アルバ、システムの負荷が掛かっている場所は?」
【調査によりますと地下の施設と思われます。ですが・・・】
「どうかしたか?」
【申し訳ありません。システムダウンの影響は地下で間違いないのですが、独立したセキュリティの影響で、それが何かまでは確認が出来ませんでした】
どうやら、アルバのシステムとは別のシステムが組み込まれているようで、サーバーとセキュリティが異なっているため詳細を特定することが難しいという。
本来ならアルバがまとめているシステムがアグナダム帝国を支えていたが、それとは別に独立したシステムが存在しているらしく、メインシステムの動力の一部がそのシステムに組み込まれている。
また、そのシステムは何段階かにセキュリティ設定がされており、アルバの方で解除できるところは行ったようだが、一部だけそのシステムから操作をしないと残りのセキュリティが解除できない箇所があった。
「要は、地下にあるシステムを操作しないとメインシステムが稼働しないってことだな?」
【はい。現在システムはメインシステムの約20%を利用しており、セキュリティの観点からワタシからの操作が出来ません】
ケイ達の方でセキュリティの解除をすれば、アルバがサーバーの再設定と管理をすることができるという。
ケイ達は少し手間ではあるが、地下の様子を見に行くことにした。
「ねぇ、そういえば地下ってどこにあるの?」
ケイ達が一階まで戻ると、シンシアが思い出したように地下のことを口にした。
たしかに一階のエントランス部分に地下に通じる階段がなく、あるのは正面の四機のエレベーターホールのみで、見渡したところ非常階段に続く扉も見当たらない。
アルバからは、元々エレベーターホールの左側に地下に通じる非常階段があったようだが、その部分は崩落しており入ることが出来ない状態だという。
「階段は駄目ってことか・・・ちなみ地下にはなにがあるんだ?」
【ワタシのデータが正しければ、各店舗の在庫を保管する倉庫でした】
「それって、エレベーターで下に行くことはできないのか?」
【今見えます四機の左端の一機がそれに該当します。また時間帯で従業員用のエレベーターに切り替っていた記録もありました】
ケイが左端のエレベーターに近づくと、アルバからメインシステムが復旧しないと使うことが出来ないと指摘されたのだが、ケイはそんなことはお構いなしにエレベーターのドアに手を掛けると、両手で無理矢理こじ開けた。
「ち、ちょっと!?なにをしてるのよ!?」
「いや、階段から下りられないなら、ここから下りた方が速いかな~って」
こじ開けたエレベーターの内部を覗くと、上下に続くぽっかりとした暗い空間が広がっていた。
どうやらこのフロアには来ていないようで、既に落ちていたのかケーブルが断裂した跡がぶら下がっていた。
一緒に覗いたアダムから冗談だよな?という表情が見えたが、ケイはいたって真面目にここを下りますがなにか?という表情で返す。ただ上にも下にも空間が続いている事から、飛び降りることになるとしたら大怪我では済まないような気はする。
「ちなみに高さが結構あるけど、どうやって下りるんだい?」
「そんなのそのまま・・・「ばっかじゃない!?何考えてるのよ!!」いてっ!」
そのまま飛び降りると主張するケイに、生身の人間が飛び降りるなんて自殺行為だとシンシアから蹴りを食らう。まぁまぁと窘めるレイブンに、アダムは安定の発言だなと遠い目をする。
現に、ケイはエバ山でアダムを助けた後に彼を担いだまま崖から飛び降りている。
それを考えると本人はなんら問題はないだろうが、大体は冗談か突拍子もない方法で解決するんだろうなと、毎回物理的なツッコミをいれるシンシアにもはや一種の職業病に近い反応なんだろうなと、アダムが苦笑いを浮かべる。
「まぁ、冗談は置いといて、とりあえずこれを使って下りてみよう」
創造魔法を発動させたケイは、創造した縄ばしごを手にした。
長さは15mほどと少し長めに創り、それを引っかけられる位置に設置してから、はしごを下に投げ入れる。
「・・・あ、たぶんこれ足りてないかも」
縄ばしごを投げ入れてからケイがあっと声を上げる。
少し長めに創ったのだから足りるかと思ったのだが、投げ入れた縄ばしごの落ちた音から想定していた長さより長い気がしたのだ。予め調べておけば良かったと思いつつ、ケイがサーチとマップで下を確認すると、マップではその倍の高さが表示されている。
アルバから在庫の管理場と聞いていたのだが、いくら何でも構造から考えると地下の高さが以上に高く、一フロアしかないことに疑問を抱く。
さすがにこのままでは下りられないと考え、縄ばしごを一度回収してから高さに合わせて再度創り直す。
「思った以上に高さがあるから、俺が先に行って見てくるわ」
「えっ!?ちょっと!!?」
シンシアの止める声を背に、ケイはブルノワと少佐を抱えてそのまま飛び降りた。
アダム達は、またこのパターンかとため息をついたのだが、そんな表情をしていたことなどケイは知らなかったのである。
ドン!という着地の音と衝撃が狭いエレベーターのスペースに響き渡る。
普通なら恐怖で固まるはずのブルノワと少佐は、それを面白いと見ているのかキャッキャッと喜んでいる様子が見られたが、彼らは従魔であることを忘れてはならない。故に一般的な幼児とはことなることとケイという規格外の主がいることで、これもまた普通とは異なった人物によって教育されている。
「うわぁ、これ嫌だな」
ケイは落下したエレベーターの天井部に着地したようで、非常ハッチをこじ開けて内部を確認すると、内部は大陸が沈没した影響で流れ込んだ濁った水が排水されないまま溜まっていた。当然これを見て中に入るという思考はなく、さてどうしたモノかと考えた時に、こちらを向いたサウガが小さく吠えた。
「サウガ、どうした?」
『バウ!バウ!』
まるで、授業の時に先生が問題を答えてくれる人と言う発言に、一斉に手を上げて主張する低学年の子供の様な状態でサウガが吠えているので、わかったわかったと窘めた後で、ケイは何をするのかと見守ることにした。
『ヴァァァァァアアアア!!』
サウガから発せられる唸り声と共に、氷のブレスが内部に向けられた。
中に溜まっていた濁った水は氷のブレスにより瞬時に凍結すると、今度は何故か目線を同じように見ていたヴァールに向ける。
『バウ!』
『ガ、ガウ・・・?』
『バウ!バウ!』
サウガとヴァールは鳴き声のみの会話であったが、まるで予定にない業務を押しつけられている部下のように、情けない声を出しながらヴァールが渋々といった様子で、その後の作業を受け継いだ。
『ガァァァァウ!』
内部で凍結した正方形の氷が、ヴァールの雷に直撃すると同時にドアと同時に外側へと吹き飛んだ。
至近距離で雷を落としたものだから、咄嗟にケイはブルノワと少佐を匿うように抱き寄せ、衝撃と音に驚いたブルノワは目を丸くしながらその場で固まった。
「ケイ!大丈夫か!何かあったか!!?」
上部から心配をするアダムの声が聞こえた。
ケイは障害物があったからそれをどかしたと声を張り上げながら返すと、何が起こるか分からないから気をつけろよ!というような声がかかる。
アダムに先に行っている!と返事を返したケイは、氷の欠片が残った内部に着地すると、吹き飛んだドアによりエレベーターの外を見やると暗闇が広がっていた。
アルバの話では地下に動力過多の原因があると聞いたのだが、見る限り闇が広がっているだけだった。
『ワウ~~~』
今回出番のなかったショーンがふて腐れた声を出した。
拗ねてるなとケイは理解し、拗ねるな~拗ねるな~とショーンの頭をなで回してから明かりの確保のために、ショーンにたいまつに火を灯せと命令をすると、瞬時に目を輝かせながら、たいまつに火種をつけた。
『パパ~~~!あれぇ!』
抱きかかえられたブルノワが何かに気づいた様子で指を指した。
暗闇に何かの影が浮かび上がっているものの目を凝らしてもよく見えなかったのだが、ケイが何気なく目線を上げると、大きな物体が立ちはだかるように眼前に現れた。
「これ・・・ヒガンテか?」
見上げた先には、ヒガンテが横一列にまるでスクラムを組むように停止している。
ケイはこれが何を意味しているのか分からず、とにかく仲間達の到着を待ってから調査をした方がいいなと思い直した。
メインシステムを起動するためには、地下にあるシステムが影響しているとアルバから指摘されたケイ達は、その足で地下に向かった。
当初、商業区の在庫を管理する倉庫だと言っていたのだが、辿り着いた先にはなぜか一列にならんだヒガンテの姿があった。
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