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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
アレグロの救済とアグナダム帝国
280/359

272、メインシステム・商業区

皆さんこんばんは。

遅くなって申し訳ありません。

さて今回は北部地区のメインシステムの場所へ向かうお話です。

北部地区の東側に港とおぼしき場所に船を碇泊させると、東部地区とはまた違った雰囲気を感じた。


船から見える景色は港街とは違い、どちらかと言えば高い建物が連なる商業を中心とした雰囲気が見られる。

アルバによると北部地区は南東を中心に商業区が広がり、北西を中心とした区間には住宅地が広がっていたそうだ。そうなると、北部地区は一般市民が生活の基盤となっている場所であることが想像出来る。


「タレナ、大丈夫か?」

「えっ・・・は、はい。大丈夫です」


先ほどから、一人景色を眺めていたタレナにケイが声を掛けた。


北部地区はアレグロとタレナが管理していたためか、なにかを思い考えている素振りが見られる。しかし、彼女の性格からかあまり多くは語らず、いつも一歩引いた位置でケイ達を見つめているところがある。よく言えば思慮深いが逆を言えば自己顕示が苦手と見てとれる。


タレナに関しては、シルトを閉じ込めた前後の記憶が思い出されただけで、日々の記憶というものは未だにうろ覚えか思い出せていない状態が続く。

それにある時、彼女から「何か重要なことを忘れているような」事を聞いたことがあった。それがなんなのかは分からないが、ケイ達はその内思い出すから焦らなくてもよいと常々言ってはいたのだが、タレナの性格上それが皆に迷惑をかけるのではないかと不安がっている様子も見られた。


「ダット!俺達はちょっと行ってくるが、大丈夫か?」

「あぁ!こっちは気にするな!」

「ルシオが同行したいと言ってたけど、アレはどうなったんだ?」

「バギラが無理だって!」


実は今回の北部地区は、ルシオも同行したいと申し出があった。


彼は北部地区の現状とメインシステムの状態が気になるのか、リアーナ達より早くに覚醒したせいもあり、調査としてケイ達と行動をしたいと言ってきた。

しかし船医であるバギラからは、数日しか経っておらず体力が思った以上に落ちており、今は安定していてもいつ体調が急変するかわからないと、首を縦には振らなかった。


当然、残念そうな表情のルシオに、アルバから引き続き各地区の情報修復と収集を行っているので解析と調査をお願いしますと提案すると、まるで新しい玩具を与えられた子供の様にパァっと表情が明るくなる。

意外と単純なんだなとケイは思っていたが、その時同席していたリアーナがいつものことだと苦笑いを浮かべていたので、なるほどねとなんとなく察した。



魔道船を下りたケイ達は、その足で北部地区のメインシステムがある施設へと足を向けることにした。


しかし他の地区とは違い、建物が密集している関係でアルバがタブレットに表示した北部地区の地図データと実際の道筋がかなり異なっていた。

建物が倒壊し、道がふさがれ遠回りをすることはある程度想定していたものの、施設がある場所までは碇泊している商業区東側から南側を迂回し、そこから北に向かうしかないらしい。特に東側は建物の密度が高かいせいか、本来あるべき道筋がほぼふさがれている状態だという。


「アルバ、メインシステムのある建物はここから見えるか?」

【はい。正面に見えます建物にあります】


前方に目を向けると、崩壊した瓦礫の合間から一際高い建物が見えた。


あれはなんの建物かと尋ねると、以前までは商業区の中心部として人気が高かった商業施設の一つだという。

専門店を大規模な店舗に集約し、多数の商品が販売された小売店の施設だという話だったので、おそらくはデパートみたいなものだろうと推測される。

ちなみに呆けた表情で遠くに見える建物を見つめていた仲間達に尋ねると、一つの施設に複数の店が入っているいう形態は存在しないと首を振る。

現に大きな都市である王都・アルバラントや聖都・ウェストリア、商業が一際発展している商業都市・ダナンにもそのような施設がない。


その理由として、ダジュールにはその概念がないということである。


この世界では、建物一軒につき一つの店ということが常識で、地球のような百貨店などの大型施設が存在しない。

また敷地面積の広狭や各都市ごとに建築法が定められている関係で、特にウェストリアでは、大聖堂より高い建物を建ててはいけないという法律が定められている。

それ以外にも細かな条例があるそうだが、その辺りは地球の条例と似たり寄ったりというところもあった。



それから二時間近くかけて歩き慣れない場所に四苦八苦しながらも、なんとかメインシステムがある大型施設跡まで辿り着いたケイ達は、見上げるほどの高さの建物に感心と驚きの声を口に出した。


「だいぶ大きな建物だけど、ここにメインシステムがあるんだよな?」

【はい。この建物は全盛期で約150程の専門店が集約されていました。メインシステムは最上階の展望施設の一角にあります】

「最上階?地下じゃないのか?」

【北部地区のメインシステムは、カロナック大橋を起動させるシステムも兼任していますので、橋の状態および起動の有無を確認するために最上階に設けられています】


建物の内部に足を踏み入れると、正面に案内所のカウンターが目についた。


左右には壁で区切られたいくつものスペースがあり、かつては店が連なっていたことを示している。

そこから目線を上に動かすと吹き抜けになっているようで、吹きさらしにはなっているものの、天井にはドーム型の天窓がはめ込まれていた跡が残っている。

また中心の吹き抜けを囲むようにフロアが存在し、目視で大体7階層とそこそこ高さがある。


アルバによるとメインシステムがある最上階は展望スペースになっているようで、本来なら正面に見える四機あるエレベーターで向かうことが出来たが、今はメインシステムのみしか起動することができないため、結果として左右にある階段を使うしかない。


「うわぁ~めんどくさ!階段しかないなら飛ぶしかないか~」

「え゛っ!?と、飛ぶの!?」


嫌そうな顔をしたシンシアに歩いて最上階を目指すことが怠いとケイが言い切る。


よくよく考えると、エストアの時もバナハの試練の塔の時もなんだかんだで飛んでいるのだ。今更感があるのだが、シンシアは若干の恐怖を覚えているもののそんなことをケイは知る由もない。



「い゛っっっやぁぁぁあああああ!!!!」



そして案の定、ケイの魔法【フライ】によってシンシアの叫び声が響き渡る。


体感にして十数秒もしない間に最上階の展望スペースに到達したケイ達は、360度周りの景色を一望できる場所に辿り着いた。


勘弁してくれと言わんばかりのシンシアの形相にケイが大丈夫かと声を掛けると、彼女から問答無用で効果音がつきそうな勢いで蹴りを貰う。

とても公爵令嬢がする行動じゃないなと口にするケイに、シンシアからもう一発蹴りを貰う。端から見る限りどっちもどっちという印象である。


改めてこの場所を見渡すと、展望スペースはドーム型の天井に本来は窓ガラスがはめ込まれていたのか、アグナダム帝国が一望できる開放的な空間が広がっている。

しかし高い位置にあることに加え、遮るものがないせいで強風が吹き込んで肌寒く感じる。


「結構高いわね。あ、あそこにあるのは魔道船じゃない?」


シンシアが指した先に碇泊している魔道船が見え、視点を左に向けるとカロナック大橋の主塔と広大な海の景色が広がる。

また反対側にある北側は、荒廃した密集した建物の跡地が広がっていた。

データによると、北部地区の北側はアスル・カディーム人の住宅地であることが記されている。これを見る限りではかなりの人数が住んでいたと思われる。

建物の密集具合から、アスル・カディーム人は一体どこに行ったのかと疑問が上がったが、ルシオとリアーナ達のことを考えると、もしかしたら他の場所にも同じようにコールドスリープされた人がいるのではと思い至る。


ここまでの歴史や文化が発展しても、これがアグナダム帝国の結末だったのかと思うと、なんとなく不思議な気持ちになる。

特にタレナとシルトはこの国の人であり、まさか1500年以上経った自国を目の当たりにするなど当時では考えも及ばなかっただろう。


メインシステムは展望スペースの一角に存在していた。


というのも、操作室とおぼしき扉がぽつんと存在していたことから、それがメインシステムがある場所ではないかと考え、ケイが扉を手に掛け引いた。


中はある程度密閉されていたいたせいか、扉を開けた瞬間に腐臭が混じった濁り水がケイ達の足元に流れ出し、ケイが足元に居るブルノワと少佐を瞬間的に抱えて持ち上げた。

何かが腐敗した妙な臭いにケイ達が顔を顰め、特に鼻が聞く少佐は嫌な表情と三頭様々な鳴き声で臭いに対して嫌悪感を示す。


「これは何かが腐ったような臭いだね」


鼻をつまみ顔を顰めたレイブンが開いた扉から中を覗くと、何かを見つけたようで小さく「あっ!」と声を上げた。続けてシンシアが覗き込もうとしたところ、入らない方がいいとレイブンが静止し、ケイとアダムに中を見るようにと合図を送る。


「これは酷いな・・・」

「臭いの元がこれは、さすがにシンシアとタレナにはきついな」


ブルノワと少佐をレイブンに手渡してから覗き込むと、中には二体の白骨化した遺体のがあった。恐らく臭いの元であるそれは、おそらく腐乱した際の臭いが水と混じったせいなのだろう。


メインシステムがある部屋にも窓が広がっているものの、外から吹き込む風のせいで生臭いを通り越してかなりの異臭を放っている。

とりあえず臭いが酷いため、中へはケイとアダムが入り最初の操作を行った後にアルバに起動操作の一任をする。


「うわぁ~超~くっさ!」

「ねぇ、大丈夫?何があったの?」

「遺体があった。恐らく設備の奴らのものだったけど、腐乱した臭いが結構きつかった・・・」


臭いのせいで若干吐き気を感じたケイとアダムだったが、シンシアがその話を聞き見なくて本当に良かったわと心配半分哀れみ半分で二人を見つめる。



【メインシステムの再稼働まで、あと十秒・・・】



アルバのカウントダウンが始まり、ケイ達はこれで中央地区が浮上するはずだと考え、カウントが進むにつれて起動音とモーターのような音が辺りに響き渡り、どうなるのだろうと期待と不安を感じる



【5……4……3……2……1……】



カウントが0になったと同時に照明展望スペースの照明が灯ったのだが、なぜかガタンという音と同時に照明が落ちる。


「えっ・・・・・・?」


突然のことに何が起こったのか分からず、一同は困惑の表情を浮かべるしかなかった。

展望スペースにあるメインシステムを起動させたケイ達は、何故かシステムがダウンしてしまったことに困惑をします。一体何が原因だったのでしょう?

次回の更新は1月29日(金)夜です。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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