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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
28/359

26、一族の謎

やっと礼服が届けられました。

しかし・・・?

翌日、ケイ達は朝食後、予定通り宮殿に居るルラキに会いに宿屋を出た。


店先で準備をする女性に、荷物を荷台に載せて引く男性達の姿が見える。

朝の早い時間のためか、道行く人もまばらである。


中央広場を通り、宮殿のある北に向かうと門の両脇に二人の兵が立っていた。


「おはようございます!昨日伺ったダナンの被服職人のリックです」

昨日と違う門番にそう伝えると、話が通っていたのか二人のうちの一人が宮殿内を案内した。



宮殿内の天井は、非常に高かったのがケイの第一印象である。

五、六メートルはあるであろう天井にそびえ立つ飾り柱。

よく見ると、繊細な金の装飾が施されている。


長い通路に、角をいくつか曲がった先の部屋に案内された。

来客用の部屋であろう。

革張りの長椅子が二脚と木製の低いテーブルが置かれており、その下には色彩鮮やかな絨毯がひかれている。


「こちらでお待ちください」

案内をした兵が一礼をし部屋を退出した。


ルラキが来るまでに、リックは鞄から木の箱を取り出した。

式典用の礼服である。

緊張した面持ちで長椅子に座るリックに、ケイがその隣に座る。

「ちょっとケイ!私たちは護衛よ?座るなんて失礼よ!?」

シンシアが注意をするが、ケイは「座るために椅子があるんだろう?」と悪びれもせず堂々と座った。


そんなやりとりの中、ノックの音がした。


入ってきたのは鎧を着た、茶色の髪の男だった。

「被服職人のリックさんですね?私は、マーダ様の護衛隊長を務めておりますルラキと申します」

「初めまして!ダナンの被服職人のリックと申します。今回は父の代理でお届けにまいりました」

リックはバッと立ち上がると、かなり緊張しているためか勢いよく一礼をした。


「えっと後ろの方がたは?」

「はい。今回護衛をお願いしていますパーティ『エクラ』の皆さんです」

リックに紹介されて、各々挨拶をした。

「あぁ。クラーケンの魔石提供者の方々でしたか」

どうやらケイ達のことは知っていたようで「おかげで街も過ごしやすくなりました」と礼を述べられた。


「長旅で大変だと思いますので、どうぞ皆さんもお座りください」


ルラキが座るように進めると、既に座っていたケイ以外の三人が腰を掛ける。

「ケイは遠慮を覚えるべきだわ」と愚痴ると、ルラキが「長旅でお疲れでしょう」とそれを制す。あまりその辺のことは気にしないようだ。


「ルラキ様、ご要望の礼服はこちらになります。ご確認をお願いします」

リックがルラキの方に木の箱を差し出す。

「拝見致します」とルラキが断ってから、箱を開けた。


礼服は、白地に襟の部分に金色の刺繍が施されている。

全体的に華美にならず、落ち着いた印象の衣装である。


「その衣装、男モノにしては小さいな」


ケイがルラキの隣で、覗き込むように感想を言った。

確かにサイズ的にはケイと同じぐらいだが、肩幅はケイより少し小さめな印象がある。


「えっ!?」と、突然のことにさすがのルラキも一歩たじろぐ。

「マ、マーダ様は小柄なお方なので、この大きさで丁度いいとおっしゃっていました」

そう返すことにいっぱいだった。


「衣装の最終調整はなさいますか?」

「い、いや、これで問題ない。今報酬をお渡しします」

表に控えていた侍女に話をするため、席を外す。


「本当に確認しなくてもいいのかな?」

「職人柄というやつかい?」

首を傾げるリックに、アダムが尋ねる。

「それもありますけど、その日の状態で人の体型は微妙に変わるので、礼服になるとその都度調整しないと当日合わないという方もいらっしゃいますから」

特に女性より男性にその傾向がみられると、リックが答えた。


「リック様ありがとうございます。こちらが代金になります」

硬貨の入った麻の小袋を手に、ルラキが戻って来た。

「・・・はい、確かに」

リックはそれを受け取り中を確認した後、丁寧に鞄にしまった。


「すんませーん!トイレ行きたいんですけどー?」


ここでケイのトイレタイムである。

「あ、それでしたら、部屋を出て左に向かい、二つ目の角を右に曲がってすぐにあります」

ルラキが案内するかと尋ねると、すぐに戻るから大丈夫といい部屋を出た。



「あれ?どっちから来たっけ?」


案の定、迷子になった。

宮殿の内装がほとんど同じのため、どっちから来たのかわからなくなったのである。

「ま、いっか!」

突撃!宮殿de showと銘打って一人納得する。


ケイ独断の宮殿内の探索が開始された。


適当に角を曲がった先に、扉が半分開いている部屋があった。

「なにここ?」

顔だけ覗くと、おそらくプライベートの談話室のような場所であろう。

部屋の構造は、先ほどの応接間とよく似ていた。

部屋の壁には、正面の窓と窓の間の壁に一枚、左に六枚、右に五枚ずつ肖像画が掛けられていた。

「田舎の遺影しか見ない光景だな」

この家の家族の絵だろう。年代は青年から中年ぐらいと様々だ。


「ここで何をしているのですか!」


女性の声に振り返ると、召使いとおぼしき二人の女性が立っていた。

「すんません。ダナンの被服職人の護衛で来たんですけど、トイレから戻る途中で迷っちゃって」

扉が半開きだったから中に入ったと、悪びれもせず言った。

「そうですか、それではご案内致します・・・それと、あなたはここの掃除がまだでしょ?私が戻るまでに終えて頂戴!いいわね?」

「承知いたしました」

髪を結い上げた女性が指示し、三つ編みの少女が承諾する。


「そういえば、この絵ってなに?」

「こちらは歴代の国王の肖像画になります」

髪を結い上げた女性によると、正面が初代国王の肖像画で、左奥から二代目と続き、右奥から九代目と続く。

「ということは、今の国王って何代目?」

「十四代目になります」

三つ編みの少女が答える。


「あれ?ここには12枚しかないけど?」

ケイの指摘した通り、本来右側の一番奥に八代目の肖像画があるはずである。

しかし、そこには肖像画はなかった。


「肖像画は元々ないそうです」

「え?なんで?」

「事情は私にもわかりませんが、八代目の国王は女性だったと聞いています」

髪を結い上げた女性の話だと、七代目の国王の妻だったらしい。

子をなかなか授かることが出来ず、夫を亡くした後、国を維持するために自ら名乗りを上げた勇敢な女性だったそうだ。


「そういえば、マーダ様も元々は跡継ぎではなかったそうですよ」

突然の、三つ編みの少女の爆弾発言である。


「え?それ俺が聞いていいやつ?」

「ちょっとあなた!それは他言無用でしょ!?」

女性が少女を戒める。

「申し訳ありません。このことは内密にして貰えないでしょうか?」

女性が頭を下げ、少女がそれに続き頭を下げる。

「内緒にしたいなら言わないよ。でもなんでそんなことが?」

「さぁー。私はマーダ様は養子だと聞いてます」

「私は妾の子供じゃないかって、噂を聞いたけど?」

少女が首を傾げ、女性が噂を口にする。


「ここで何をしてるんだい?」


青年の声に振り返ると、見覚えのある人物が立っていた。

「ルークス様!」

二人の召使いが慌てて頭を下げる。


「あれ?ルークじゃん!」

「ケイさんでしたか。お久しぶりです」

ルークスが会釈をする。彼とは、アルバラントのオークション以来の再会である。


「今日はどうかしたんですか?」

「被服職人の護衛で来たんだけど、トイレに行ったら迷ってさ~他人の家で迷子なんて初めてだ」

「あぁ。やっぱり迷いますよね?僕も経験があるからわかります」

ルークス曰く、幼少の頃によく迷子になって泣いていたらしい。

たまに客人を招くが、何人かはケイと同じで迷子になるらしく、看板でも立てた方がいいのでは?と内心思う。


ルークスに進められ長椅子に座る。

二人の召使いは話を邪魔しないように退出していった。


「そういえば、ここにはなんで八代目の肖像画がないんだ?」

ケイは先ほどの疑問をルークスに聞いてみることにした。

「元々はあったんです。でも父が燃やしてしまって・・・」

「燃やした?」

「九代目国王が亡くなってすぐに」


ルークスの話では、七代目の国王はマーダとルークスの伯父が務めていたが病気で他界。

本来八代目は、九代目の国王つまり二人の父の二番目の兄が後を継ぐ予定だった。

しかし当時流行病で床に伏せっていたため、七代目国王の妻が代理という形で継いでいた。


「あれ?それだったら、親父さんが後を継ぐんじゃねぇの?」

「我が国の法律で、兄弟が生存している場合は継ぐことが出来ないんだ」


八代目として国に貢献していた女王は、三年後に九代目が病から完治したため、強制的に退位させられたらしい。

その際に・・・


【お前達を絶対に許さない!楽に生きられると思わないで!】


と、恨みを口にしたそうだ。

彼女はこれが原因で幽閉、その数年後に死亡したそうだ。

その際に、彼女の肖像画も不吉だという理由で破棄された。


国に貢献した一人なのに、仮のために強制的に退位。ひどい話である。


その後、九代目も二年後に死亡。後を継いだ五十代手前の父親も、即位後一年半で死亡。

三人の兄たちも同様に三年以内に死亡している。


「完全に呪われんじゃん」

「否定はできないよ」

複雑な表情を浮かべたルークスは、「なぜこんなことに・・・」と口を零した。


「というか、お祓いとか除霊とかやらないのか?」

「お祓い?除霊?」

聞き慣れない言葉にルークスが首を傾げる。

「いやぁ、俺の国では霊を鎮めたり、呪い返しや厄払いとかそういうことをしてくれる人が居るんだ」

「へぇ~そうなんだ。神官みたいな職業なのかな?」

日本には神社という神聖な場所がある。

正月では、初詣と一緒に厄払いをする人も少なからず存在しており、ダジュールではそういった役割は神官などの聖職者が該当する。


「あと、鑑定して原因を特定するとか?」

話を聞く限り呪われているとしか思えないが、実は違うといった場合も少なからずある。

「う~ん、この国には鑑定出来る人間があまりいないんだ」

「他の国に相談とかは?」

「実は、そのことで何度か兄さんに掛け合ったことがあるんだ」

過去に、鑑定の出来る人物が居るバナハやウェストリアに頼んでみようと言ったが、なぜかマーダは「その必要はない」と首を縦に振らなかったそうだ。


「それ絶対おかしくねぇ?」

「僕も、後々違和感には気づいていたんだ」

「なら俺が見てやろうか?」

「えっ?」

「俺、鑑定持ちだから」

目の前の人物が、鑑定スキルを所持していたことにルークスは驚いた。

「見て貰っても構わないか?」

一縷の望みを抱きながら、ケイにそう頼んだ。


ルークスに懇願されたケイが鑑定をしてみること、能力値は平均より少し高めの数値が出た。さすが王族と言ったところだ。

スキルも、護身用の剣術や外交系の職業関連のものばかりで、これといって目立ったものはない。


「ん?」とケイが顔をしかめる。

気になる項目が一つあったからだ。


称号 【カタラの呪い】 成人男性が国王に即位した場合、三年以内に死亡する。


「ルーク、お前呪われてんぞ」

「えっ?」

「称号に【カタラの呪い】って出てる」

ケイは、成人した男性が即位した場合、三年以内に死亡するとルークスに説明した。

ルークスは顔を青くしながら「まさか・・・」とショックを受けた。


しかし、ここで疑問が浮かぶ。

一族全員にその称号があったと仮定して、『マーダはなぜ十年も国王としてやってこれたか?』

一つの仮説がケイの頭の中に浮かんでいるが、決定打が掴めないため保留にしている。


「ルーク、ひとつ聞いていいか?」

「な、なんだい?」

ショックから立ち直り切れていないルークスが答える。

「さっき、マーダは元々跡取りではないって聞いたんだけど、どういうことなんだ?」


「そ、それは・・・」

ルークスが言いよどむ。

おそらく何かを知っているような口ぶりだが、他国の人間に話せる内容ではないと推測する。



その時、扉の外で人が走ってくる音がした。

かなり急いでいる様子で、ケイ達の部屋の扉を強めに叩いた後、確認もせずに開かれた。


「ルークス様!こちらにいらっしゃったんですね!?」

現れたのは、褐色の肌に橙色の肩で切りそろえられた髪をした女性だった。

以前、オークションで出会った二人の護衛の一人でタレナだった。


「タレナ、どうかしたのかい?」

不思議そうにルークスが聞くと、青い顔をしながらタレナがこう答えた。



「マーダ様がお倒れになりました!」



「えっ・・・?」

まったく予想できなかった答えに、ルークスは声を失った。


補足:ルークス・ルーナエ・ヴェーラ 通称:ルーク

名前が長いため、あえてルークスと記載。

会話は通称のルークにしました。


次回の更新は5月27日(月)です。

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