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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
アレグロの救済とアグナダム帝国
279/359

271、北部地区へ

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回は、北部地区へと向かう回です。

ピエタとシブレの意識が戻った翌日のこと。


ケイ達を乗せた魔道船は、北部地区へ向けて移動を開始していた。

既に東部地区・南部地区のメインシステムを稼働させると同時に、アルバはそれぞれの地区の情報および機能の修復を行っていた。


もちろん保護をしたリアーナとピエタから、南部地区の機能維持のために残りたいと言っていたため、設備の機能を遠隔で操作できるように創造魔法でタブレットを創造し二人に手渡した。また、彼女たちもルシオと同じように施設を遠隔で操作することができるなんてとあんぐりとした表情をケイに向けていた。


軽く話しを聞いてみるが、やはりルシオと同じように、遠隔操作や小型化という技術面がアグナダム帝国ではあまり確立されていなかったのだろう。メルティーナがアスル・カディーム人に生や知識を与えたわりには、技術面の進歩と同時に簡略化というものが不足している印象を受ける。

その証拠にメインシステムを統合を担っているアルバも、不足している情報の収集・統合におけるの処理があまり上手くいっていないどころか、情報を保持するという分野に特化していたようで、AIを構成する上で情報を元に学習を重ねる分野も若干弱いということが判明する。


それが修正される予定があったのか否かは、今になってはわからない。


過去に全メインシステムの補助も請負ったことのあるピエタにその旨を伝えると、技術者の観点から大分前に気になってはいたのだが、そもそもアルバのプログラムを組んだ人物がシャーハーン王だったことから、メインシステムの構築方法などは大元である中央地区に行かないと分からないと返答があった。


やはり専門職でも大幅な変更は難しいのかと尋ねると、システム自体の軌道を少しずつでいいなら修正できるらしい。ただ、ケイ達がいない間にアルバのシステムを覗いたところ、思ったより複雑化されているそうで、アルバの機能を損なうことなく修正を加えるとなると、どうしても進行度が遅くなる。


もしその部分に目を瞑って貰えるなら、やってはみるとピエタから提案を受けた。

コンピュータやシステムの構築に関しては全くの素人であるケイは、期間は問わないのでやってみて欲しい、無理なら無理で構わないと返すと、それなら今から取りかかると、ピエタは承諾しアルバのシステム修正に着手した。



当初魔道船は、浮上した北部地区が目の前に見えることから直線的に向かおうとしたのだが、ダットから安全面を考慮して東部地区を迂回するように北上した方がいいと提案があった。

ダット曰く、海面下に中央地区の建物の一部とおぼしきものが見えていたのだが、放置している年月が経ちすぎている関係で、海に生息する魔物が生息しているかもしれないので、目の前に見えるからと言って直線に船を進ませるなんて愚の骨頂と言い切る。

もちろん海の経験があるダットがいうのだから、安全面を考慮しながらの航海は当たり前なのだろう。ケイもその分野については全く分からないので、どのルートで北部地区へ向かうかは彼に任せることにした。



東部地区の大陸を迂回すること二時間。


周辺に魔物が生息している可能性があったため、念のために警戒をしていたが、滞りなく北部地区の大陸がゆっくりと前方に姿を見せた。

魔道船が進行方向に見えている北部地区へと向かっていた道中で、舵を取っていたダットがふとこんなことを口にした。


「しっかし、この辺りは妙だな」

「妙って何がだ?」

「波だよ。波は風が吹いた方角に立つって知ってるだろ?この辺りは東から西に風が吹いているんだが、海面に見えている波は荒く見えるのに波の衝撃が船に全く伝わってこない。それに東部地区の大陸を見て見ろ。あれだけ波が岩礁や防波堤に打ち付けられているのにその影響が海域に全くない。それどころか北からも波が来ていて、とにかくなんか不気味なんだよ」


ダットが言った通り、進行方向左側に見える東部地区の大陸に目を向けると波が防波堤に打ち付けられている。あれを見る限りではかなり波が立っているように見えるのだが、よく見ると進行方向の反対側からも風浪の形跡が見られる。

単に潮の流れの関係か魔道船のしっかりとした構造上の影響と思われたのだが、海を知っている人間からすると、それを差し引いても上手くは言えないが異様に見えるらしい。現に漁師をしていた一部の船員達は、不気味すぎる波の方向と海の様子に不安を抱いているように見てとれる。


【波が不規則な正体は、恐らく北部地区のメインシステムの影響でしょう】


そう答えたのはアルバだった。


北部地区には、大昔に大陸と大陸を繋ぐ大きく長い白い橋が架かっていた。

ケイがもしかして“カロナック大橋”のことかと訪ねると【はい】と返答が来る。そうなるとフリージアと聖都ウェストリアを繋ぐカロナック大橋は、本来であればこの場所とも繋がっていたことになる。

それは世界大戦の影響で大陸が沈んだと同時に姿を消し、ケイ達の大陸側の橋も痕跡を残さないように修復され、その存在も歴史の闇に葬られた。


これが、カロナック大橋に関わる謎の正体だった。


「アルバ、なんで波が北部地区にあるメインシステムのせいだっていうんだ?」

【カロナック大橋は元々建設する計画はありません。その理由として、この辺りの海域は非常に波が荒く、航海に適さない海域でありました。しかし、北部地区から遥か東にビェールィ人を中心とした人々が暮らしている大陸があり、彼らとの交流・交易の関係で波を自在に制御する装置を北部地区のメインシステムに組み込んだことから始まりました】


本来であれば、ケイ達のいる大陸側のカロナック大橋付近に港街を建設しようという話があったようで、そちらの方は橋が完成した辺りから着手しようとした寸前で頓挫したそうだ。


そう思うと、以前ケイ達がカロナック大橋を渡った際に、橋の欄干から下を覗くと異様に高いなと思ったことがある。実はウェストリアからフリージアに向かう道中が坂になっており、そのせいだと思われる。

現にカロナック大橋が気になると言っていたヴィンチェは、アダムの幼なじみであるリーンが目撃した光る橋の謎に迫っており、それについても定期的に彼から報告を受けていた。


「そういえば、カロナック大橋って光ることがあるのか?」

【光、ですか?データによりますと、ビェールィ人達が居た側のカロナック大橋は我々と違う手法で橋を一時的に消す技術があったようです】

「橋を消すってことか?」

【はい。正確には、橋の東側半分をビェールィ人が管理し、西側は我々アグナダム帝国が管理していました】


アグナダム帝国を繋ぐ橋は、西側半分をアスル・カディーム人が東側半分をビェールィ人がそれぞれ管理していたそうだ。

それは橋の建設時に協定として結ばれていたようで、本来はそのことを示す契約書が中央地区に保管されていたようだが、今となってはあるかどうかも分からない。


「橋が建設されたってことは、あの前方に見えるヤツは橋の一部かなんかか?」


ダットが前方に見えるあるモノを指さした。


それは橋を支える主塔のようなもので、それが平行に二本建てられている。

よく見ると橋の一部に滑車がついており、そこから海に向かって太い鎖が垂れ下がっている。恐らく滑車を用いて橋がせり上がるような仕組みなのだろう。

橋自体の構造は地球にもあるような技法に近いものがあるが、それが大陸を繋ぐ様な仕掛けになっているとなると、技術面で疑問が残るがあえてそこには触れないことにする。


「あれがアグナダム帝国側のカロナック大橋か・・・そう考えると結構長いな」

「あの柱についている滑車はなんだんだぁ?」

「橋をせり上げるための一部なんだろうな。意外と原始的だけど」

【カロナック大橋を制御している北部地区のメインシステムを稼働すれば、橋を上げることは可能です】


ダットはへぇ~と感心の声を上げ、あれだけ大がかりの装置にも関わらず、元は人が造り上げた代物に大した物だとカラカラと笑う。まぁ、正確には建造物が大きすぎて笑うしかなかっただけである。



ケイ達を乗せた魔道船は、北部地区の東側の海域を航海していた。


前方にはカロナック大橋の一部である主塔がそびえ立ち、ケイ達おろか船員達もあまりの大きさに口を開けて驚いた。


「すごいな~。これがアグナダム帝国時代にあったと考えると、相当な技術がないと出来ない代物だぞ?」

「橋の建設は五年から十年ほど掛かると言われているけど、これを見る限りだと少なくとも何十年単位で掛かっているだろうね」


呆気にとられたアダムとレイブンの発言に、確かに主塔だけでもおおよそ数十メートルはあると見る。しかも、橋を上げるための鎖もこの世界では最大と思わす程の大きさだった。正確な表現方法が思いつかないが、近い表現でいうならば鎖の一つひとつの大きさが大型ダンプカーのタイヤほどある。規格外と言うべきだろう。


そんな会話を繰り広げた後、カロナック大橋の一部を目の前にして船を寄せる場所を探してみる。

アルバによると、北部地区は商業区と北側に住宅区が広がっていたのだが、浮上した北部地区は荒廃しており、その面影は微塵も残っていなかった。

そもそも商業区は海に面した場所に連なっていたようで、船を碇泊させる場所がいくつかあった。

かつては客船や貨物船などが行き来していた関係で、場所も魔道船を泊められる程の幅はあったのだが、いかんせん大陸が沈んだ関係で港がある場所は廃材や海の生物が付着していたりとだいぶ生臭く結構酷い有様だった。



「碇を降ろすぞ!!!!」



碇泊させる場所を見つけ船員に指示を出すダットの声をバックに、皆と少し離れて一人、手すりに手をつき北部地区の光景を見つめるタレナの姿があった。


「タレナ、大丈夫かしら?」

「アレグロのこともあったからな。少しそっとして置いてやろうぜ」


シンシアの心配する声にケイは一瞬タレナに声を掛けるべきかと迷ったが、考えることもあるだろうとそっとして置くことにした。

北部地区へ辿り着いたケイ達の前に、カロナック大橋の一部とおぼしき主塔が二つ見えました。

以前ヴィンチェが疑問を浮かべていた謎がここで明かされたことにより、ビェールィ人との交流の形跡が確認されました。

次回の更新は1月27日(水)夜です。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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