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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
アレグロの救済とアグナダム帝国
277/359

269、アグナダム帝国崩壊の原因

皆さんこんばんは。

遅くなって大変申し訳ありません。

さて今回は、アグナダム帝国崩壊の原因についての回です。

暫くしてバギラから呼ばれた一同が会議室へ集合した。


会議室には既にケイと傍には補助役としてルシオが座っており、仲間達を始めダットまでも何も聞いていないため各々が困惑した表情を見せている。

アダムが「なにかあったのか?」と訪ねたのだが、ケイはとりあえず席に着くように促すと何も分からないその場の全員が大人しく席に着いた。


「俺達はバギラさんから集まるように言われただけなんだが、どうかしたのか?」

「ルシオに頼まれて回収したデータの事と黒腫の原因がわかった」


ケイはルシオの友人はリアーナの事であり、回収したデータとアルバに頼んで復元して貰った東部地区と南部地区のデータについて一通り確認したことを説明してから本題へと入った。


「結論から言うと、黒腫はただの病気じゃなかったんだ」

「ただの病気じゃないだって?風土病とかじゃないのか?」

「その考えがそもそも間違ってたんだ。考えてみて見ろよ?人の身体に痣が現れて、それが全身に広がって死んだなんてことあるか?仮に呪いだったら、既に高度な技術を持った時代に解除できる方法なんて一つ二つあったはずだ。それが出来なかったとなると、呪いの類いでもない・・・そう考えると、黒腫自体が実は作られたモノだった可能性がある」

「ちょっとまて!?作られたって病気をか?呪い以外でそんなことができるのか?」


疑いの眼差しのアダムを始め、全員がケイの方を見つめている。


この世界には、怪我以外に風邪などの病気はたしかに存在している。

怪我もすれば体調を崩して病気になるという概念はあれど、それ以外の要因は呪いによる体調不良ということが一般的なようで、地球とは違った考え方を持つ。


しかしケイは、アグナダム帝国で発生した黒腫についてもう一つの可能性を感じていた。


ケイが着目したのは、アフトクラトリア人を形成するために使用された薬品型細胞の存在である。これはスピサが長年の研究を掛けて形づくった成果であり、またアグナダム帝国崩壊の要因のひとつになったものである。


「ルシオ、リアーナが集めたデータを表示してくれ」

「はい、わかりました」


タブレットを操作しているルシオの前にはプロジェクターが置かれ、会議室の白い壁をスクリーン代わりに映像が映し出された。


プロジェクターから映し出された映像は、リアーナが集めたデータをルシオが分かりやすくまとめ翻訳したもので、アフトクラトリア人の製造過程と使用されたドール体と薬品型細胞についての詳細である。予め回収したデータに一通り目を通したケイもなんとなくしか理解できなかったが、ルシオ曰く、アスル・カディーム人の研究者の間では基本中の基本の形とのこと。専門職の当たり前は一般人には理解できないんだがと思ったが、ここでは心に留めておくだけにした。


「リアーナが調べたデータによると、黒腫は薬品型細胞が変異したものではないかと言われています」

「薬品型細胞はアフトクラトリア人を形成に不可欠なものだと解釈しているけど、それが変異したということは、当然きっかけがあったということなんだね?」

「はい。実は当時、その原因がわからずなんの治療法もないことから、一時的に人の魂を魔石に移すと共に研究者総員で黒腫に侵された人々の解明に力を入れていたようです」


スクリーンに投影された映像が切り替わり、ケイが東部地区で入手した医療施設とおぼしき場所で医師らに押さえられながら女性が悲鳴を上げて悶える動画が流れる。

さすがに女性であるシンシアやタレナの前で流すのはどうかと思ったが、案の定流れる映像にシンシアが苦い顔を浮かべ、その隣ではタレナが映像を見つめている。


「ここの部分を見てほしい」


ケイの言葉と同時に医師に押さえつけられた女性の姿が映る。


予めケイがその映像を再生した際に女性のつんざくような悲鳴が上がったため、さすがに精神的におすすめはしないと思い、ルシオに頼んで音声を下げるように編集をお願いしていた。そのため、映像に写し出された女性の悲鳴は何段階か下げられてはいるものの、苦悶に満ちた表情と逃れようと暴れる姿は、映像であってもあまりいいものではない。


そのなかでケイが示した部分は、女性の首や腕を指した。


女性の身体に広がっている痣は、普通の皮膚のような質感ではなく、まるで石のような滑らかな不気味な光沢感が見られる。


「実はこの痣、よく見ると皮膚の中から盛り上がるように現れているんだ。これがどういうことか分かるか?」

「どういう・・・って、黒腫ってことだよな?でもこれがただの病気じゃないとなると、どういうことなんだ?」

「というか、俺達は一度これを見てるんだ」


アダムの疑問を口にしたものの全員がいまいちピンと来ていないようで、ケイがもう一つヒントを与えると驚愕の表情が一斉にケイに向けられる。


「ちょっと待て!俺達は一度見ているってどういうことだ?」

「そのまんまだ。むしろ遭遇していると言ったらいいか」

「じゃあ、もしかして・・・」


困惑するアダムの横でレイブンが何かに気づいた様を見せる。


まさかと向いた(レイブン)の表情は、ありえないと言わんばかりに驚愕の表情を浮かべたことから、ケイは頃合いだと結論を口に出した。



「黒腫の正体は“月花石”なんだ」



一瞬の静寂の後に、ケイとルシオ以外の全員が盛大に驚きの声を上げた。


さすがに想定していなかったのか、アダムがちょっと待てと机を叩き立ち上がるとケイに説明を求める。


「黒腫の正体が月花石?どういうことなんだ!?」

「アダム落ち着けって。まず、月花石がストーンヘッジだということはダインで知っただろ?ちなみに月花石と陽花石は対になることは分かるよな?」

「たしか陽花石は太陽の光を吸収して光り、ストーンヘッジに変容する月花石の効果を押さえる意味で、逆に月花石は月の光を吸収して光る、ということだよな?」

「そう。それは既にバナハの試練の塔の事を思い出してもらうとわかると思う。あと、それに“魔素”が加わるんだ」

「魔素?」

「実は俺も知らなくて以前ルトに教えてもらったんだが、魔素は全部同じ性質じゃないらしい。この世界の魔素は、大きく分けて“大気中の魔素”と“水中の魔素”とに分かれてるんだ。それを聞いた時に月花石の事を思い出して、単に光りを吸収して効果を発揮するか否かって考えてたけど、実は違うんじゃないかって思ったんだ」


ケイは以前ルトから魔素について聞いたことがあり、彼曰くダジュールに存在している一に魔素を取り入れることによって“混合変化”というものを起こすことが希にあると聞いた。要は地球でいうところの化学反応の様なもので、実際に見てはいないのだが、月花石も実は魔素によって反応したことからストーンヘッジに変わったのではと考えた。


「言いたいことは分かるが、それなら月花石が黒腫の大元と考えるとそこまでの経緯はどうなんだ?」

「それについては僕から説明します。実は、アルバのシステムから東部地区のメインシステムのデータの復元が解析できまして、その情報によりますと“入港記録”が残っていたことがわかりました」


ケイの代わりにルシオが質問の回答を述べた。


アルバのシステムから当時の入港記録が復元できたようで、その記録によると定期的にダインからの船がやって来ていたそうだ。船には、当時大陸で建設する為の資材が運び込まれ、一度東部地区にいる職人達が加工のために持ち運び、それを再度船に積み込んで大陸に運んだ記録がある。

また東部地区は職人の作業場が総合病院の近くにあり、病院には医療研究室もあることから何らかの原因で薬品型細胞と月花石の一部が混ざったのではと推測される。

しかしそれも詳細なデータがなくあくまでも状況証拠でしかないが、ケイは今までの経緯から考えると間違いはないだろうなと思っていた。


「ちなみに黒腫の研究は東部地区を中心に行ってたのか?」

「中心となって研究を進めていたのは東部地区の医療施設でしたが、復元されたデータにはない部分も多くあるのでもしかしたら中央地区のメインシステムに残っている可能性はあるかもしれません。あそこにはアグナダム帝国全土のデータが保管されていると聞いているので・・・」

「ということは、どちらにしろ中央地区に行くしかねぇってことか」


ルシオから全てのデータは中央地区のメインシステムで監理していると聞いたケイは、アレグロの事もあることから早めに北部地区のメインシステムを起動させるべきだなと思い直した。


「でも、薬品型細胞に月花石が混じることなんてあるのかしら?普通なら絶対に考えつかないし、第一どうやって入るのよ?」

「はっきりしたことは言えねぇけど、完成したアフトクラトリア人が何らかの原因で月花石と接触してそれが広まったとか、あるいは薬品型細胞の段階で月花石を分からないように混入したとか」

『スピサの研究に誰かが邪魔をした、ということなのか?』

「可能性はなくはないかもな」


複雑な表情のシルトの気持ちも分かる。


自分の妻が研究していたものに故意に手を加え陥れることもなくはないし、何らかの原因で混入した可能性も否定できない。しかし、港街に面した場所に医療施設を含んだ病院があることから、何らかの原因でことが怒ったのは間違いない。

当時の状況を記したデータが未だに入手できないことから細かいことまでは分からないものの、想定していた通りの出来事が起こったのはほぼ確定だろう。


ケイは皆に北部地区へ向かうと同時に早く中央地区へと向かおうと伝えた。



「すみません!バギラさんはいますか!?」



話が一段落した当たりで会議室の扉が乱暴に開け放たれた。


ダットが何事かと驚き入ってきた船員に一喝すると、慌てた様子の船員が低い腰をさらに低くさせながら、申し訳ないと頭を何度か下げた後にバギラを呼びに来たと述べる。


「なにかありましたか?」

「あぁ~よかった!こちらに入らしたんですね!実は先ほどもう一人の女性の意識が戻ったんですが、起きるやいなやブルノワちゃんと少佐に飛びつこうとして手伝っていた他の船員が今押さえている状態なんです!」

「なんですって!?」


助けてください!と懇願した船員に慌てたバギラが立ち上がる。


ケイもリアーナの様子を見に来た際にブルノワと少佐が彼女と遊んでいたので、世話を船医室にいた他の船員に頼んだままだったことから、まさか保護したもう一人の女性がとんでもないやつだったとは思わず「世の中物騒だな」と口にするやバギラと船員のあとを追うように会議室を飛び出した。

アグナダム帝国が崩壊した原因は月花石だった。


ダインの時に遭遇したストーンヘッジの様子から、黒い痣はそれが原因なのではとケイは考える。

ルシオから中央地区なら詳しいデータがあるかもしれないということから早めに北部地区のメインシステムを起動させようと考える。

その一方で保護されたもう一人の女性の意識が戻ったが、ちょっと様子が変のようで・・・。

次回の更新は少しズレまして1月21日(木)です。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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