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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
アレグロの救済とアグナダム帝国
276/359

268、黒腫の真実

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

今回は再会したルシオとリアーナと回収したデータの中身の回です。

「ケイ、消えたデータの履歴ってどういうことなの?言っていることが分からないけど、そのデータが消えたのなら回収出来ないじゃない!?」


突然のケイの発言にシンシアが反論する。


確かに一般的に考えると、消えてしまっモノに関しての回収は不可能なのだが、ケイはデータが消えてしまっても回収することが可能だと述べる。


「確かにデータは消えたとルシオが言ったが、実は“データを消したという事実”はメインシステムには履歴として残っているはずなんだ。もし、アグナダム帝国が俺の国のコンピュータと似たような構造をしているとなると、どこかにバックアップとしてデータを残しているか、リセットされても復元できるようなシステムが組まれているはずだ。それが国の重要な資料や情報となれば、保護をするためにあの手この手を使うのは当たり前だからな」

「えっと・・・じゃあ~ケイは、消されたデータというのは実は存在していて、消えたという事実からデータを復元させる、という認識でいいのかな?」

「さすがレイブン!当たりだ!ほら、よく言うだろ?木を隠すには森の中ってさ~」


ケイの言いたいことを指摘したレイブンだが、その隣では未だに納得していないシンシアの表情が窺える。

シンシアはそんなに都合良くいくのか?と疑問を投げかけると、間髪入れずにアルバから【データの履歴から復元を開始します】という合図に、思わず出来るの!?とツッコミを入れざるおえなかった。


「復元の状況は?」

【100%ではありませんが、現在約30%のデータが復元済みとなってます】

「意外と速いんだな。もっと時間がかかるかと思ったが、情報自体は復元されても100%とはならないってことは、なんか理由でもあるのか?」

【東部地区・南部地区のメインシステムの再稼働により、アグナダム帝国の情報収集およびデータの復元は全体の40%までは可能となっております。しかし更なる情報となりますと、引き続き北部地区中央地区のメインシステムの再稼働が必要となります】

「やっぱ、それがネックか~」


アルバは“データを消したという履歴”からデータの復元を既に進めていたようで、ケイが思った通りに、表向きはデータが消えたという事実だけを残して別の保管場所に移してあったようだった。しかしそこから情報を取り出し、復元・修復作業がかかるそうで、今すぐに情報を提示することは難しい。


とりあえず復元されたデータは、随時ルシオが所持している端末に送るように伝えると、一旦話を打ち切りその日は解散となった。



翌日の早朝、ケイがいる客室に船員が訪ねに来た。


「ケイさん、朝早くに申し訳ありません。バギラさんから至急船医室に来るようにと」

「何かあったのか?」

「保護された女性の方の意識が戻ったようです」


どうやらルシオの友人であるリアーナの意識が戻ったようで、話を聞いたルシオも船医室に駆けつけているということらしい。とりあえず船員に言付けの礼を言い、まだ眠そうな表情のブルノワと少佐を連れて船医室へと向かった。



「ケイさん、おはようございます」

「バギラ、起きた女性の方は?」

「今、ルシオさんと会話できるほど回復しています」


船医室の入り口でバギラとばったり会うと、目を覚ました女性の様子を伝えてくれた。


ルシオの友人であるリアーナは体力が低下していたものの、意識も言葉もはっきりしていた。現に、ベッドの傍にある椅子に腰をかけているルシオと楽しく談笑している姿が見られる。


「それで、残りの二人の方は?」

「いえ、まだ意識が戻っていません。呼吸や心拍数は安定しているので、いずれ気がつくとは思います。ですが1500年以上もあの状態だったとなると、他の二人のことも考えると体力回復のためにリハビリもしていかなくてはなりません」


そう考えると、ルシオの体力回復の速度は思ったより早いことが分かる。


通常ブランクがあれば、始めのうちは身体が思うように動かないことがあるのだが、それが二~三日で改善されたとなると、相当な精神力の持ち主かあるいは元々身体にかかる負担が少なかったかのいずれかになる。


「あ、ケイさん!」


談笑していたルシオとリアーナがケイに気づき、手を振る。


一瞬、会話に入ってもいいのだろうかと思ったが、予めルシオがリアーナに今までの経緯を話していたようで、友人の再会を喜ぶと共にケイに礼を述べる。


「ケイさん、本当にありがとうございました!おかげでもう一度リアーナと会うことが出来ました!なんとお礼をしたらいいのか・・・」

「気にすんなって。こっちもルシオの友人だとは思わなかったけど、会えてよかったな」


歓喜余って泣き出すルシオに、男がメソメソ泣くんじゃないよ~と呆れた表情でリアーナが肩を叩く。雰囲気から友人というよりおかんみたいな印象が見られる。


「そういえば、ちゃんとした紹介はまだだったね。あたしはリアーナ、南部地区のメインシステム監理責任者兼研究者をしていたよ」

「研究って?」

「色々と行っていたさ。ルシオから話は聞いてるかわからないけど、黒腫についても少し調べてたよ。まぁ通常はメインシステムのサポートが大半だったけどね」

「じゃあ、アレグロのことは何か知ってるか?」


リアーナ自身は研究者というより技術者のような業務内容が大半だったようで、黒腫が発生した頃には、業務とは別に独自で調査を行っていた。

ケイはアレグロの経緯のことをリアーナに伝え、アレグロの本体が東部地区の医療施設から中央地区へ運ばれた経緯を訪ねた。


「五大御子神のアレグロ様のことだね?確かに彼女は黒腫に侵されて東部地区の医療施設で治療を受けたのは知ってるよ。だけど詳しい事は私も分からなくてね。あ、そういえば人づてだけど、アレグロ様の人魂魔石をドール体に組み込んだのはイシュメル様だって聞いたことがあるよ」

「アレグロとタレナの兄がか?」

「アフトクラトリア人のことは知ってるかい?彼らを造るドール体と薬品型細胞の発案者である、スピサっていう研究者が亡くなってすぐにイシュメル様がアレグロ様を助けるために彼女の跡を継いだんだよ」


彼女の話では、イシュメルは中央地区をまとめると同時に研究者としても知られていた。


彼はアレグロが黒腫に侵される以前から、率先してみんなを助けようとしていた。

しかし中には心ない人も居たようで、「間に合わないから諦めろ」や「お前一人がどうこうできるはずがない」などと酷い言葉を投げかけられていたのだという。

それでも諦めないのは、兄妹の上に立つ自分が諦めたら家族おろかアグナダム帝国の人々まで絶望してしまうという気持ちがあったようだ。


「それでイシュメルはどうなったんだ?」

「さぁね~あたしもそこまでは知らないよ。ただ、噂があったね。弟のナザレ様と揉めてたって」


イシュメルは黒腫の研究とは別に弟・ナザレと揉めていたことが明らかになった。


これはあくまでも噂なので真意は分からないが、イシュメルが試練の(ペカド・トレ)の建設を巡ってナザレと口論になっていたところを何人か目撃していたという。

そういえば、ダインに向かった時にジュマからイシュメルとアフトクラトリア人の話を聞いたことを思い出す。彼らはダインにある採掘場から陽花石と月花石を切り、海を渡って大陸に五つの四つの塔を建てた。


そこでケイははたと気づく。


「そうか!そういうことだったのか!」


考え込んでいたケイをルシオとリアーナが不思議そうに見つめていたが、急に声をあげたことで何事かと目を丸くする。


「ケイさん、どうかされました?」

「ルシオ、アルバからの東部地区と南部地区のデータの状況はどうだ?」

「そ、それでしたら、復元できたデータはアルバとこちらの端末に共有されています。それがどうかされたんですか?」

「悪りぃ、ちょっと貸してくれ」


ルシオからタブレットを手渡されたケイは、復元・解析されたデータに目を通した。


データには黒腫の経緯が表示されており、アグナダム帝国が沈む三年前に黒腫の影響が東部地区から広がっていたと記されている。


データの中には画像と動画も保管されていたようで、以前東部地区のデータを回収したものと同じような症例がこちらのデータにもあることから、症状としてはほぼ変わらないのだが、やはり以前見た画像のようにアスル・カディーム人とアフトクラトリア人の症状が異なっていることも気になった。


「ルシオ、このデータは全部見たか?」

「いえ。途中までは見たのですが・・・」

「ここのデータからは、黒腫は東部地区を中心に広がったってあったが間違いないか?」

「はい。僕がアグナダム帝国に来てから二年後にその症状が見られました」


ルシオがアグナダム帝国にやって来たのは世界大戦の五年前。その二年後には黒腫がひろがっていたとなると、確認するべきことがもう一つ。


「じゃあ、試練の(ペカド・トレ)はいつ頃出来たんだ?」

「ルシオがアグナダム帝国に来る一年半前だよ」


今までの会話を聞いていたリアーナが割って入る。

彼女が試練の(ペカド・トレ)の建設を任された知人から話を聞いた範囲では、完成までに10年を費やしたそうで、そのあとにルシオがアグナダム帝国へやってきたことは覚えていた。


彼女の話と当時のデータを照らし合わせるとあることにケイは気づいた。


東部地区は港に面していることから外交面で島と島の往来もあった。

そこから黒腫が発生し瞬く間に大陸中に広がって行ったとなると、伝染病また何かしらの病原体が推測される。しかし今の現状、その情報が残っていないとなると、もしかしたら偶然が重なった形で黒腫が発生したのではと考える。


「だとすると、黒腫の正体はアレかもしれない」

「ケイさん、黒腫のことについて何かわかったのですか?」

「あぁ。黒腫の正体はアレしかない。バギラ、みんなを会議室に集めてくれるか?」


置いてけぼりのルシオとリアーナを余所に、ケイはバギラにみんなを会議室に集めるようにと指示を出した。

回収したデータを見てケイはあることに気づき、至急皆を集めるようにとバギラに指示を出します。

果たしてそれはなんなのでしょう?

次回の更新はちょっとズレまして1月16日(土)です。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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