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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
アレグロの救済とアグナダム帝国
275/359

267、救出された者達と黒腫のヒント

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回は、南部地区のメインシステムで保護された生存者と回収したデータからのヒント回です。

コールドスリープの装置が解除された後、ケイ達は三人の男女の姿を見つけた。


ルシオの時と同じように酸素ボンベがないかと周りを確認したが見当たらず、アダムから創造魔法で酸素ボンベができないかと聞かれたことにケイはハッとし、慌てて三人分を創造してからそれぞれに装着させた。


「ねぇ~この人達はアスル・カディーム人よね?」

「たぶんな。本当なら同じように眠らされていたようだけど、無事だったのは三人だけってことみたいだな」


辺りを見回すと同じような装置が壊れた状態で見つかることから、本来なら同じ条件でコールドスリープされた人々がいたようだが、こればかりは運と奇跡としか言い表せないことを物語っている。

保護をした三人は、全員が浅黒い肌を持つことからアスル・カディーム人であることは理解できた。運命は残酷ね。と呟くシンシアにケイ自身も複雑な表情を浮かべる。


改めて三人に目を向けると、二人の女性のうち、一人はサイド部分を刈り上げたアシンメトリー風が相まったボーイッシュな紫の髪とスラッとした体型から、はじめは男性かと思ったのだが、全体的な雰囲気と女性特有の曲線的な体型から性別を間違え、橙色のツナギを着用していたことから設備の整備士ではないかと考える。


もう一人の女性は、シンシア程の背丈に肩口で切りそろえられたアッシュ系の黒髪と顔立ちの幼さが相まって子供のように見えた。ただ服装は、裾の長いグレーのドクターコート調と同じ色のスラックスを着用し、正装っぽさがあることから、現場の責任者ではないかと推測されるがその辺は鑑定してみないと分からない。


そして唯一の男性は、アダムほどの背丈に端正な顔立ちと少年から青年になりかけていることから外見上は二十代の前半ぐらいかと想定し、同時に軽装ながらも肩当てや胸当てを装着し、腰には護身用の刃渡りが短いナイフを携帯していることから、警備を担当していた人物ではないかと結論づける。


「思わぬ収穫だな。もしかしたら、ルシオに聞けば三人の事を知ってるのかもしれない」

「もう戻るの?」

「アルバの方もデータの回収は終わったようだし、そろそろ退散かな。・・・と、その前に一度鑑定してみるわ」


ケイが三人に鑑定を掛けると、その情報が中を描くように半透明なスクリーンとなって表示される。


その情報によると、ボーイッシュな女性の名は【リアーナ】で、職業は南部地区のメインシステム監理責任者と表示される。「整備士じゃないのか・・・」と驚くと同時に外見上は二十代の半ばぐらいであることから早くに出世したのだろうと関心を示す。


次に小柄な女性は【ピエタ】という名で、役職は“メインシステム監理士・副責任者”と表示されていた。ということはリアーナの直属の部下ということになるのだが、元々童顔っぽさが残っていることから、こちらも人は見かけによらないなと思わされる。


そして男性は【シブレ】という名で、南部地区の警備員と表示されている。

どのぐらいの人数が居たのかは分からないが、たまたま生き残ったのか運がいいなとしか思わなかったのだが、その時表示されている彼の名前の横に※(しるし)がついていた。


当然それに疑問に思ったケイがその項目を開こうとした時、ふいにシンシアから声を掛けられる。


「ケイ、もう戻るってことでいいのよね?」


ケイが思案している間にピエタはアダムに担がれ、リアーナはレイブンにおぶさり、シブレは一番大柄なシルトが抱きかかえられていた。

シンシアから声を掛けられたケイは「あぁ・・・」とだけ声を掛けると、念のため【エクスヒール】をかけた後にそのまま魔道船に戻るために来た道を戻ったのだった。



「皆さんお帰りなさい! バギラさんからすぐに船医室へ運んでくださいとのことです」


魔道船に戻ったケイ達は、待機していたレマルクからバギラからの伝言を聞き、そのまま船医室へと運び入れた。


船医室は既に準備が整っていたようで、並ぶように配置された白いベットに三人を寝かせると、症状の確認のために脈拍や外傷の有無を確認するバギラに「念のために治癒魔法を使っておいた」と伝え、返答が来てから一旦船医室を出た。


「ケイ!また拾ってきたようだな?」

「別に犬猫じゃない」

「わかってる。で、何かわかったのか?」

「アルバからすでにデータを回収してルシオに送っている。本当は色々と調べたかったんだけど、アレがあったろ?だから時間がなくてさ~」


ダットにルシオのことを尋ねると既に体調が戻ってきたようで、今はあてがわれた客室へと休養しているという。バギラからは定期的に体調の有無を確認しているようで、今はリハビリということで船内を歩き回ることも出来るようになったが、念のために船員の一人が補助として彼の付き添っているのだそうだ。


ちなみにケイ達が戻った時にこの話を客室に居た本人に声をかけたが、アルバから受け取ったデータのチェックをしていたようで、生返事で返したことで付き添いの船員が引いたらしい。



「ダットさん!ケイさん達が戻って来たそうですが!?」



そんなことを話していると、船員に介助をされながらルシオがやって来た。


ダットからはあの時ちゃんと聞いてたのか!?と驚かれたが、熱中をしていても人の話を聞けるように耳は外を向いていると言っていたのだから、やってることは聖徳太子と通ずるものがある。


「今、保護した奴らをバギラが見ている。ルシオを保護したように三人もコールドスリープされていたが、俺達が見たときには衰弱はあれど外傷はなかったから、意識が戻るのを待つしかないってところだな」

「そうですか・・・ちなみにその人達のことは何かわかったんですか?」


ケイが鑑定した三人の名を告げると、瞬時に驚愕の表情に変わり「リアーナが・・・?」と呟き、慌てた様子で介助していた船員を押しのけると、止める間もなく診療中の船医室へと入っていった。



「リアーナ!目を覚ましてくれ!リアーナ!!」

「ルシオさん落ち着いてください!」



ケイ達が慌てて中へ入ると、ルシオは真ん中のベッドで眠っているボーイッシュな女性の脇に立ち、祈るように彼女の手を握ると目を覚ますように訴えかけている。

もちろんルシオの体調の事もあることからバギラが間に割って入り、介助をしていた男性が落ち着くようにと後ろから肩を引くように止めに入る。


「ルシオ、落ち着けって!」

「で、でも!彼女が・・・彼女が生きてたんですよ!?も、もう信じられなくて・・・」


ケイに言われたルシオは、混乱している状態を落ち着かせるように何度か深呼吸を調え、安心したのかその場に腰を抜かすように座り込んだ。


「ルシオさん、この方(女性)と知り合いなんですか?」

「僕の友人です。彼女(リアーナ)が・・・本来、僕にデータを送るはずだった人なんです」


バギラたちもこれには驚き、ダットと介助の船員と顔を見合わせる。


どうやらケイ達が保護をした女性の一人はルシオの友人だったようで、鑑定の通りにリアーナは南部地区のメインシステムを監理している代表者だった。

ちなみにもう一人の女性・ピエタはリアーナの部下であることがルシオから語られ、一緒に保護された男性・シブレは面識はないものの、着用しているものから南部地区で巡回している警備兵ではないかと言われている。


「ルシオさん、ご友人は・・・皆さんは大丈夫です。一度、落ち着きませんか?」


タレナが床に膝をつけてルシオに寄り添い、彼の肩に手を置いてからゆっくりと諭した。


未だに信じられない気持ちと目の前に生きていた友人との再会に混乱しながらも、ルシオがその言葉に頷き、ケイ達と船員に支えられながら船医室をあとにした。



「・・・で、ルシオさん、落ち着いたかい?」


それからケイ達は、今後の事とルシオに送った友人からのデータの詳細を聞くために場所を移すために作戦室へと向かった。


テーブルにはマカドが入れた人数分の紅茶が置かれている。


ルシオは、マカドが入れた紅茶をおかわりを含めて数杯飲み干した後にダットからの問いに頷く。今になってから恥ずかしくなったのか、恥ずかしがり屋の子供の様に何度も頷く姿にダットが親目線で大丈夫だと告げると、今度はケイ達に向かって一礼をする。


「皆さん、先ほどは大変申し訳ありません」

「気にすんなって、でも俺達もまさかとは思ったんだわ~」

「また、友人に会えるとは思わなかったので、本当に本当に感謝しかありません!」


深々と頭を下げたルシオに、今度はケイから回収したデータについて問いかけた。


「アルバからデータを受け取ったと思うけど、なんかわかったか?」

「は、はい。リアーナのデータでは、ドール体に使用されている“薬品型細胞”が変異したものが黒腫ではないかとありました」

「薬品型細胞?」

「皆さんがどこまでご存じかはわかりませんが、アフトクラトリア人はアスル・カディーム人が造った機械人形(オートマタ)というのはご存じでしょうか?実は、機械人形(オートマタ)は人型を形成する際に薬品から生成した細胞が用いられているんです」


ルシオの話を要約すると、アフトクラトリア人を形成するには二つの要素が必須となる。


一つは、機械人形(オートマタ)の中心部分であるドール体。

そしてもう一つが、その身体を形成する薬品型細胞。


この二つは、共にシルトの妻であるスピサが長年掛けて形づくった研究の成果の結晶だと言われている。


特に薬品型細胞というものは薬品の種類や組み合わせは憶測でしかないが、送られたデータを見るだけでも約15種類で構成されているようで、それぞれの順番と容量・タイミングを総合的に判断し緻密に計算された技法だと言うことが述べられる。

もちろんケイ達はその専門家ではないため、使用する薬品が多いか少ないかは分からないが、ただ言えることはその工程で何かしらの異常が発生したことは察することができる。


「でも、リアーナのデータ以外で分かることがないみたいなんです」

「ないって?」

「アルバの調査では、大陸が沈んだ時にデータ自体が消えてしまった可能性があります」


すまなそうな表情のルシオに一同が暗礁に乗り上げたかに思えたのだが、その次の瞬間にケイはアルバにとある指示を伝えた。


「アルバ、“データが消えた履歴”を追ってくれ」


まさかその言葉がアグナダム帝国最大の謎に近づくとは、この時ケイ以外の全員が予想だにしていなかった。

友人・リアーナからのデータを解析したルシオから、アフトクラトリア人を形づくるドール体と薬品型細胞についてを知ることになったケイ達は、彼からそれ以上のことは分からないと伝えられます。

しかしケイは他に方法があるようで、アルバに指示を出します。

次回の更新は1月13日(水)夜です。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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