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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
アレグロの救済とアグナダム帝国
274/359

266、データの回収

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回は、前回の続きからです。

南部地区にあるメインシステムは、荒廃した田園地帯のなかにぽつりと佇む一軒の教会跡地だった。


周辺には、教会の敷地のものと思われる塀や門扉の一部が辛うじて残ったままで、建物の外観は全体的に風化が進み、壁の一部は崩れ落ちている。

元の外見がわからないほど損傷が酷く、一瞬入ったら倒壊するのではと不安を見せたが、割れた窓ガラスから室内を覗くと、本来あるであろう天井がすっぽりとなくなっている。恐らく天井部分だけが倒壊した形で残っているのだろう。


「これ、中入って大丈夫なのか?入った途端、建物が崩れるなんて嫌だぞ」


アルバにメインシステムの入り口は他にはないのかと尋ねると、ここから二キロ先に別の入り口があったのだが、残念ながら島が沈んだ際に完全に潰れたようで、今はこの教会の地下経由で向かう道しかないようだ。


ケイ達は建物が倒壊しないように祈りつつも、二枚扉の片方がなくなった入り口から中へと入ることにした。



アグナダム帝国の教会跡地と聞くとカルト的なものを想像したが、実際はケイの想像を裏切るほど、ごく普通の教会内部の跡地だった。


もっとも宗教は一般的に“手放す”ことを説いているので、デコトラやパチンコ屋のような派手さではなく、単にケイの思い違いだったりする。

それに1500年前の大陸なので、当時どんな雰囲気をしていたのかというところまではわからないが、田園地帯という場所を考えると田舎を想像する方が近い。


「それで、地下につながる道はどこなんだ?」

【正面にある講壇の後ろに石像があります。そこが地下の監理施設へと続く道となります】


どうやら講壇の後ろに石像があり、その仕掛けを動かすことで地下へと続く道が現れるのだそうだ。正直、異世界なのにからくり屋敷かはたまた忍者屋敷を彷彿とさせるが、言ったところでこのメンバーでは伝わらないだろう。


それからアルバの指示で正面にある講壇の裏側に向かうと、小さな間取りが一つだけ存在した。


当時は祈りの部屋かもしくは懺悔室らしき場所には古びた像が一体あるが、何かの拍子で破壊されたようで、像の首から上がなく少し不気味さを感じる。


足元を見ると像の下に台座があり、地面と擦れた跡が残っている。


一般的な隠し通路や階段の仕掛けと同じようで、男性四人がかりで像を動かすと重いものを引きずるような地響きと同時に地下へと続く階段が現れる。


「ねぇ、この調子だとメインシステムは全部地下にあるってことかしら?」

「時と場合によりってことだろな。当時の様子はわからないが、アグナダム帝国の法律で景観を損ねず技術や開拓を進めたとなると、自然に重要なものは地下に送ることを考えたのかもしれない。まぁ、国が発展して尚且つ他の大陸に試練の塔を造る技術があるのだから、もし沈まずに残っていたのだとしたらまた違ってきたのかもしれないな」


結局は時代と運って事なのねとシンシアが肩を竦める。


そういえばルシオを保護した際、彼はタブレットの存在を知らなかった。

ケイはメインシステムを構築するだけの独立した技術があるのだから、それを簡略化・小型させることも当然行っていたのではと考えたのだが、彼の様子を見るにそれがなかったこと気づく。となると、アグナダム帝国の大陸の大きさから考えると技術の発展と比例したかたちだったのではと考える。


まるで、90年代のパソコンのようだと感じたのはケイだけだろう。


足を踏み入れてすぐにサブシステムが動いているのか、赤色の非常灯が上部と足元を照らしている。上映前の映画館のような雰囲気に似ているが、下りる時間が長く感じたせいか正直吐きそうになる。


「みんな大丈夫か?」

「私達は大丈夫ですが、アダムさん達が・・・」


地下に続く螺旋階段は人一人が通る程の幅しかなく、タレナが後方を向くと大柄に該当する男性陣は、大丈夫だと言いながらも少し窮屈そうな様子を見せる。

なにせ男性は体格的に肩幅が広く、特に三人は揃って180cm以上あり防具も着ていることから、地下に続く階段の幅がかなりギリギリなのである。

そう思うと、頻繁に出入りするような場所ではないことが上げられるのだが、その辺りは謎である。



階段を下ると、東部地区のメインシステムと同じ構造が広がった。


メインシステムの一部とおぼしきモニターがあったのだが、やはりここも水没諸々で破壊されていた部分もあったが、サブシステムが動いているおかげで維持されているようだ。とりあえず、東部地区のように創造魔法で操作盤やモニターを修復させてからブレーカーを探そうとした。


「アルバ、ここのブレーカーはどこだ?」

【操作盤の奥、ちょうどこの隣の部屋にありますが、大陸が沈没した際に部屋を隔てる通路が塞がってしまったようです】


どうやらブレーカーは操作盤がある部屋の隣にあるのだが、行き来する通路がなだれ込んだ流木や海のゴミのようなモノが混じり完全に塞がっている状態だった。

さすがにこれを人力でどかすのは衛生的にちょっととケイは尻込みをする。


「え゛っ・・・向こうに行く道ってここしかないの?俺、汚いの嫌なんだけど~」

【一定の理解はありますが、奥の部屋にあるブレーカーを動かすしかありません】

「衛生的にそれどうなの?素手でゴミ拾いなんて、今日日誰もやりたがらないぞ」


致し方ないと続けるアルバになんだかAIの底が見えた気にはなったが、どう考えても嫌だったケイは、そういえばと鞄を開けて中を探り始めた。


「ねぇ、何を探しているの?」

「ルトから受け取った道具袋に面白いモノが入ってたのを思い出したんだ」

「面白いモノ?」

「そう・・・あ、あったあった!これだ!」


ケイが取り出したのは、直径9×9cmの四角いふた付きの入れ物だった。


透明の容器の中には緑色のスライム状の固体が入っており、蓋を外すと微かに火薬の様な臭いがする。

ルト曰くこれも錬金術で作製したものなのだが、実は以前ケイが幼少期の頃にある年の正月の話をした際、室内で爆竹を使って家族から怒られた話を元に作製したものだという。

その時錬金術師というのは、ちょっとした日常話を参考に新たな錬金物を思いつくのかと妙に感心したことを感じていたのだが、実際にはそんな芸当ができるのは、大陸広しといえどもルトぐらいなものだとはケイおろかルト本人も知らない。


「それは何に使うんだ?」

「対象物を破壊するモノだってルトが言ってた。たしか錬金術の爆石とスライムの外殻の素材を合わせて作ったって言ってたけど、引火する物質が入っているから使うとき以外は取り出さないでくれって」


容器に手を突っ込み、スライム特有の感触を感じながら緑色の固体を取り出すと、隣で見ていたアダムが顔を顰めた。見た目はあまり万人受けはしないが、持っているケイの手にはひんやりとした質感とゼリーのような感触が伝わる。


本当ならいつまでもその感触に浸りたいのだが、いかんせんルトが作製した爆発物であることから、それを素早く塞がれた道に貼り付けるように塗りたくってから全員が一斉にその場から離れる。


そして、数秒後に何かが焼ける臭いと同時に弾けるように物が吹き飛んだ音が響き渡る。


フロアの離れた場所の角から一同が様子を伺うように顔を出すと、微かな煙と木っ端微塵に吹き飛んだゴミ、もとい通路を塞いでいた流木や海藻などが綺麗に吹き飛び燃え切れている。どうやら空気に反応して爆発する仕組みになっているようで、瞬時に燃えたカスが床に散らばっていた。



それから通路から奥の部屋に辿り着いたケイ達は、手分けをしてブレーカーを上げてから来た道を戻って操作盤の様子を確かめる。


すでにアルバが操作をしており、ルシオから頼まれたデータもメインシステムのデータ上に凍結された状態で見つかった。

モニターに映し出された目的のファイルは『黒腫の調査進展』のタイトルが表示され、アルバが解凍の作業を行い、ケイの所持しているタブレットに情報を転送。

またその情報は、アルバのメッセージ付きでルシオが所持をしているタブレットにも送られた。


データの内容は解析中とのことから詳細が見られないが、彼の友人が遺したものになにかヒントがあるのではとルシオが言っていたことを思い出す。


「ケイ!ちょっと来てくれ!」


アルバがデータ内に有益な情報がないかと確認しているところを待っていると、少し離れたところからアダムの声が聞こえた。


「どうした?」

「これって、マデーラの洞窟で見た棺と似てないか?」


アダムが示した先には、並べられた棺が複数存在していた。


しかしどれも破壊されたのか機能はしていなかったが、よく見ると三つほど動いている物をがある。直感的にルシオの時と同じなのかと察すると、アルバにこの装置の解除を頼むと伝えた。



【コールドスリープ解除まであと六十秒】



アルバのアナウンスがなされると、起動していた三つの装置の解除が始まる。


この装置にもルシオの時と同じ物が使われているが、丸い窓枠は汚れが酷く中の様子がわからない。他にも生存者が居たとなると、もしかしたら当時の状況を知ることができるかもしれないとケイは考える。


「ケイ、やっぱりルシオさん以外にも生存者がいるってことになるの?」

「そうなるだろうな。ただ、大陸が沈んだ際に全滅したと思われたアスル・カディーム人が何人も生存していたとなると、もしかしたら生存を見込んでの状況に持っていった可能性はある」

「誰かが彼らを生かそうとしていたってこと!?」


信じられないと解除作業が行われている装置を前に、シンシアが戸惑いの表情を見せる。


たしかに一般的に考えて、時を超えての生存というものは聞いたことがないし前例がない。

しかし、アレグロやタレナ・シルトにアルペテリアなど数人のアスル・カディーム人が存在しているのであながち嘘でもないのだが、永遠の命を持つ種族であろうと時の概念ぐらいはあると考えると、リスクが高くても一人でも多く後生に残す方法を取ったことになにか意味があるのだろうと、ケイは考える。



アルバからコールドスリープ解除の完了のアナウンスがなされると、ルシオの時と同じように煙を上げて上蓋が開かれる。



ケイ達が煙が収ったところに内部を覗き見ると、眠ったままの男性一人、女二人の姿がそこにはあった。

ルシオから頼まれたデータの回収と、新たな生存者が確認されました。

ルシオの友人が遺したデータには何が残っているのでしょう?

次回の更新は1月11日(月)夜です。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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