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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
アレグロの救済とアグナダム帝国
271/359

264、黒腫の違和感とルシオの頼み

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。今年最後の投稿になります。

さて今回は、回収したデータとルシオの話です。

「ケイ、どういうことなの?」


船医室を出たところでシンシアが保護をした男性・ルシオのことについて尋ねた。


あの短時間で疑問に思っていた“言語”について、あの場に居た全員が思ったことだろう。それについては、ケイの鑑定である(ルシオ)の種族に関係している。


「ルシオは、アスル・カディーム人とシャムルス人の間に生まれた人間なんだ」

「たしか私達の言語って、アスル語が変化した言葉よね?でも1500年前って言ったら、今の言語とだいぶ違うはずじゃない?それにシルトの様に翻訳機?というものが必要なんじゃないの?」

「それに関しては、私からお答えいたします」


船医室からバギラが顔を出した。


保護をした男・ルシオは、初めに目を覚ました段階でバギラと手伝いの船員の会話が理解できたのだという。

その際に彼は左耳に銀色のピアスをしていたのだが、それが会話をするたびに全体的に赤く点滅していたことから、ケイがシルトに翻訳機を与えたことを思い出し、もしやと思ったそうだ。


「ということは、アグナダム帝国からすでにその技術があったってことになるな」

「でも、アレグロとタレナはどうなの?」

「マーダ様の話では、保護された私と姉様は意思疎通に問題はなかったそうです」


二人を保護したマーダ・ヴェーラから聞いた話では、当時身元を示す物を何も所持しておらず、それどころか記憶喪失になっていたことから、独自に調査を続けていたがなんの成果も出すことが出来ず、二人が港街のヴィリロスの砂浜で発見された当初、全身ずぶ濡れの状態たっだことから、状況から考えて船から落ちた可能性があることからしらみつぶしに船を当たったが該当することがなく、調査に行き詰まっていたのだそうだ。


アレグロとタレナが現代の言語を話せるということについては、あくまでも憶測でしかないが、元から話せることができるかもしくは記憶喪失によって言語を司る部分が変化したのではと考えられる。

もっとも脳の構造というのは、現代医学でも解明されている部分が少なく、素人であるケイにはわからない部分であるため一個人の意見となる。


「とりあえずルシオのことは、本人の回復を待ってから話を聞くことになるな」

「そういえば、アルバに頼んだデータの回収ってどうなったの?」

「一応一通り内容を確認したけど、一つ気になったことがあるんだ。バギラ、悪いがダットを連れて来てくれないか?」

「わかりました」


ケイは今後の事と回収したデータの件について話し合うため、一旦会議室へと場所を移した。



「・・・で、東部地区に行ってなにか分かったのか?」

「まぁ、慌てるなって。まずはこれを見てくれ」


ケイに招集されたダットとバギラが席に着き、はやる気持ちで尋ねたダットに東部地区の様子を再度簡単に説明をしてから本題に入る。


スマホを科糧に会議室の壁に向けられたプロジェクターを遠隔操作し、アルバに回収させたデータを壁に映し出す。


予めプロジェクター用に情報をまとめたものが映し出され、男性・女性・成人前の子供の背中が写った画像が並べられている。

その画像を前にバギラが興味深げに前のめりになり、シンシアとタレナが苦い表情を浮かべ凝視している。


「これはなんだ?」

「東部地区のメインシステム内にあった情報をアルバに回収させ復元したものだ。それに俺が見やすく編集したんだが、ここにはアグナダム帝国の医療の記録が残っていた」


一同がプロジェクターの映像を食い入るように見つめている。


「この三枚の画像は、黒腫に侵された人物の背中を写したものだ。右下に女性と子供はアスル・カディーム人、男性がアフトクラトリア人と文字が入っている」


映像にある右下の文字を拡大し、確認させたところで映像を全体に切り替える。


「ここで俺が気づいたことがある」

「気づいたこと?」

「アスル・カディーム人の女性と子供の方と男性のアフトクラトリア人の画像を見比べてくれ。なにか気づく事があるはずだ」


三枚の映像を皆が見比べたとき、あっ!とシンシアが声を上げた。


「黒い痣の色が違うわ」

「正解。補足をすると、女性と子供の背中には内側から盛りだしている黒い物が存在しているが、男性のアフトクラトリア人にはそれがない」

「これはなんなの?」

「アルバに解析させたところ、これも黒腫の症状の一つらしい。だが、俺には何がある気がしてならないんだ」


実は自室で先に映像を確認した際に、再度画像を見比べたところ映像に映っていた女性と同じ症状が画像の女性と子供にも現れていたことがわかったのだ。

アルバに画像の解析を依頼したところ黒腫の症状のひとつだというのだが、それを聞いたケイは、なぜか疑問と違和感を感じていた。


「違和感があるってことか?」

「あぁ。黒腫はアスル・カディーム人の風土病って認識だったけど、なぜアフトクラトリア人も侵されてるんだ」

「そりゃ病気なんだから、アグナダム帝国がある大陸に一緒に住んでいれば多かれ少なかれ感染する可能性はあるだろ?・・・あれ?でもアフトクラトリア人が感染?」


ここで「そんなことがあるのか?」とアダムが何かに気づいた様子で首を傾げ、次にレイブンもそれに気づき、疑問の表情でケイの方を見やる。


「アフトクラトリア人は機械人形(オートマタ)じゃないのかい?だとしたら、認識が違うということになるが?」

「そう!そこなんだ、アフトクラトリア人はアスル・カディーム人が造った機械人形(オートマタ)。人と見た目が一緒であれど、内部の構造は人と違うはずなんだ。だとすると、その意味することは・・・」


「黒腫の正体がなにか・・・ということになりますね」


今まで静観していたタレナが口を開き、隣では心配そうに彼女の顔を見つめるシルトの姿もある。


アレグロが消失した時、全身に広がった痣には画像の女性と子供のような黒い異物感はなく、どちらかというとアフトクラトリア人の男性の痣に近かった。

今までに得た情報には、アレグロの仮の身体はアフトクラトリア人のドール体を参考に作製したものであることから、ケイは黒腫がただの風土病でない可能性を感じていた。


その後、画像を見たシンシアとタレナが気分を害したのか、映像もあったのだがそれはみんなには見せることなく、今後は北部地区と南部地区の大陸を浮上させ、順番にメインシステムを巡ってみることで話をまとめ、その日はお開きにした。



翌日、自室で惰眠を貪っていたケイに突如強い縦揺れを感じて飛び起きた。


揺れは五分ほど続いたが治まったときには隣で寝ていたブルノワが大泣きし、少佐は飛び起きた拍子でベッドから落ちた。

棚に置いたブルノワと少佐の玩具が全部床に散乱し、面倒くさいと思いながらもベッドから起きると、拾い上げながら朝っぱからなんだと悪態をつく。


「うわぁ~拾うのめんどくさ!マジでなに!?」

【昨日ケイ様から、自分が起きる際にすぐに調査に向かいたいからと北部地区と南部地区を浮上させろと指示をされましたが違いましたか?】

「あ゛ーーーーそうだった~忘れてた・・・」


AIであるはずのアルバから、母親に小言を言われる学生の気分になる。


もちろん昨日のうちにアルバに指示を出し、仲間達やダット経由で魔道船に居る全船員に通達を出したことは覚えている。

寝起きの悪いケイは玩具を拾い終えると、寝惚け眼のまま自分の着替えとブルノワの着替えをしてから甲板へと様子を見に向かった。




「ルシオさん、まだ無理しちゃ駄目っすよ!」


ブルノワと少佐を連れて甲板に向かうと、昨日船医室にいた船員の姿があった。


彼の横には、手すりに掴まり船員に支えられながら、一人の男性が南部地区の方を見つめている。どうやらルシオが動ける状態になったようで、様子を見るにバギラには内緒でここにいるようだ。


船員がケイに気づき挨拶をすると、その声に気づきルシオがこちらを向いた。


「ケイさん、おはようございます!」

「おはよ~」

「いや~凄い揺れっすね!俺、驚きましたよ~」

「実は、自分で指示したのにすっかり忘れてた」


あはは。本当に朝が弱いっすね!と声を上げて笑いながらブルノワと少佐をなで回す船員にほっとけと恥ずかしさのあまりそう答える。


「あの・・・大陸を浮上させたのは、あなたですか?」

「あぁ。アルバに頼んで、アンタが居た東部地区を浮上させ、今は北部と南部地区を浮上させて調査をしようとしていたところだ」


ケイはルシオに自分たちのことと今までの経緯を説明すると共に、生存しているタレナとシルト、それからアルペテリアの事を話した。

その間、彼は黙ってその話を聞いていたが、ケイから自身の事について尋ねられると困惑しながらも思い出すように話しをしてくれた。


「昨日、紹介をしたかと思いますが、私はルシオといいます。アグナダム帝国にいた五大御子神の内の一人、ナザレ様の部下兼研究者を務めてました」

「研究者?」

「主にドール体の形成とアフトクラトリア人のメンテナンス、それから黒腫の情報収集を行っていました」

「黒腫の情報収集ということは、アレグロの事も何か聞いてるのか?」


口にしたケイに驚きの表情をしたまま「アレグロ様は?」と問い返され、彼女の経緯を説明すると、ショックを受けたのか顔を両手で覆い、そうですか・・・と力なく返す。


「アレグロの人魂魔石は俺が持ってる。もし、アレグロの本体がまだあるのだとしたら戻せる可能性はあるはずだ」

「でしたら今は無理かと。アレグロ様の身体は世界大戦直前に中央地区へ移されました」

「移された?」

「直前になってシャーハーン王の命がありましたので・・・。私はその時その場に居なかったのですが、同じ研究をしていた者からその話を聞きました」


となるとアレグロの本体は中央地区にあり、必然的に北部地区と南部地区のメインシステムを起動させる必要がある。


「あの!もし南部地区に向かうのであればお願いをしたいことがあります」

「お願い?」

「南部地区に私の同僚、友人が残したデータがあるはずなんです。それには、黒腫についての詳しいデータが記録されたまま残っていると言っていました!もし、可能であれば、それを持ってきて頂くことはできませんか?」

「元々南部地区に行く予定だから持ってくるだけなら出来るぞ」


ケイの言葉に安堵するルシオに何故かと問いかけると、過去にその友人から“あり得ない可能性”があるかもしれないと耳にしたことがあり、それが大陸浮上時に思い出されたのだという。


その後、甲板に仲間達とルシオを探してバギラがやって来た。


今後の事も含め、話し合うと同時に情報の整理もしておくべきかと、未だに船員になで回されているブルノワと少佐の姿にふとそんなことを思ったのだった。

ルシオから南部地区に友人の残したデータの回収を頼まれました。

ケイ達が得た情報にはいくつかの相違と違和感があったようで、次回南部地区へと向かうことになります。

次回の更新は、正月休みを挟みまして1/4(月)夜になります。

皆様よいお年を!


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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