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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
27/359

25,砂漠の都市マライダ

砂漠の都市マライダ到着。

暑いところは苦手です。

砂漠の都市マライダに着いた頃には、空は茜色になっていた。


砂漠の真ん中にあるため、砂嵐から守れるよう円形状に高い壁がそびえ立つ。

門番にギルドカードをみせ中に入ると、涼しい風が吹きかかる。

街の中央にある噴水広場に水の魔道具がはめ込まれており、そこから来る風が街中を巡っているのだという。


「じゃあ、俺はこれで」

ポリスとはここで別れることになる。

五人分の馬車代を払うと、約束していた別の客へと向かっていった。


「リック、これから行くか?」

「そうですね。今から行けば今日中にはお渡し出来るかと思います」

リックの同意で、五人は受取人のルラキのいる宮殿に向かうことにした。



「マライダは城じゃなくて宮殿なんだな」

街の北側に宮殿が見える。

全体的に白レンガを使用しており、白い巨大な柱がそれを支えている。

屋根部分には金色の装飾が施されており、明るい色にも関わらず全体的に落ち着いた印象を持つ。


宮殿の入り口にいた門番に話しかける。


「こんにちは。ダナンの被服職人のリックと申します。礼服をお持ちしましたので、ルラキ様に取り次いで頂けないでしょうか?」

「遥々ようこそお越し頂きました。あなた方のことは伺っております」

門番の男は、予めリック達が来ることを聞いていたようで、受取人のルラキから伝言を預かっていると言った。

「大変申し訳ありませんが、ルラキ様は外せない用が出来まして『明日来てほしい』と言うことです」

その際に、謝礼として街の宿屋を予約していると言い、その場所を教えて貰った。

「そうですか・・・それではまた明日伺います」

リックが門番に挨拶をし、一行は街の宿屋に向かうことにした。



教えて貰った宿屋は、街の西側にある。


中央の噴水広場まで戻ってくると、全長3.5mほどの噴水から水が吹き出していた。

「結構大きいな」

「街の入り口まで風が吹いていたからな、クラーケンの魔石の威力って結構すごいんだな」

魔道具がはめ込まれた噴水の先端を見上げる。


「普通はここまで威力はないよ」


工具箱を持った青年が近づいてきた。

魔道具の整備士だろうか。ケイより身長が高く、切りそろえられた茶色の髪に、健康的な肌。体格は細いわりにしっかりしている印象を持った。

「というか、あんたらよくこれが『クラーケンの魔石』だってわかったな?」

「これ、俺らがオークションに出したやつだから」

「え?そうなのか!?だからあの時・・・」

ケイの返答に、青年はぶつぶつと何かを言っていたようだったが、よく聞き取ることが出来なかった。

「君は整備士かい」

「そ、そうさ。前までは毎日見て回っていたけど、この魔石を導入してから週に一度でも大丈夫になってさ。俺的には物足りなくて」

「なんか悪いことをしたな」

そう言って不満げな顔の青年に、アダムがなんとも言えない表情をした。


「そういや西側の宿屋に行きたいんだけど、こっちの道で合ってるか?」

ケイが、西側を指さした方向に青年が頷いた。

「そこに行きたいなら案内するよ!」

五人は青年の行為で案内して貰うことにした。



「ここがお兄さん達が言っていた宿屋だよ」

案内された宿屋は西側の中心にある、茶色い屋根の建物だった。

聞くところによると、食事も酒も評判のいい宿屋で、特に香辛料を使った料理が人気である。

「じゃあ俺はここで!」

青年はケイ達に手を振ると、来た道を戻って行った。


宿屋の亭主からルラキの名前で予約を取っていると言うと、話がついていたのか二階の六人部屋を案内して貰った。

個室に案内したかったそうだが、式典が近いため他国からの観光客の影響で、ここしか空いてないと申し訳なさそうに言われた。

窓を開けると、西側の通りに面しており、ここから中央広場の噴水が見えた。

「噴水って光るんだな」

日が暮れた噴水広場は、青く光っていた。


「噴水ですか?あぁ、三大名所の一つと言われています」

広場の噴水は『蒼光石』と呼ばれる特殊な石で作成されている。

蒼光石は、昼間は光を吸収し夜には青白く光るという性質を持つ石である。

「それを見たいがために、遠くから来るお客もいるほどなんですよ」

マライダ観光名所の一つと言われている。

観光の名所と言えば、他には北西にある王家の墓とバナハに続く渓谷がある。


「食事はもう出来ていますので、お時間がありましたらお越しください」


亭主が一礼をして部屋を出る。

各自荷物を降ろし、一息着いたところで食事を取りに一階へ向かった。


食事は香辛料を使った料理を注文した。

店で一番人気と言われる料理が運ばれてくると、ケイは目を丸くした。


「これ、麻婆豆腐か?」


大皿に盛られていた見たことのある赤い色と、豆腐より少し緑に近い四角い具材。

地球でおなじみのあの料理だった。


「おや?お客さん知っているのかい?」

「え?あぁ、俺の国にも似たような料理があるから」

亭主に聞かれ、ケイは料理と亭主の顔を交互に見ながら答えた。


「これはマーボーという料理で、唐辛子という香辛料を使った食べ物なんだ」

「この緑色の四角い具材はなんなの?」

「それは、フリージア産のフィトの実を絞って固めた食べ物だよ」

作り方を聞くと、日本の豆腐と作り方がよく似ていた。

ちなみにこの料理の考案者は、フリージア地方に住んでいる公爵令嬢とのこと。

(絶対そいつ日本人だろう!?)とケイは内心思った。


味も、フィトの実で作った豆腐もどき(正式名所不明)は少し弾力があったが、全体的に地球で食べたそれとよく似ていた。

辛いものが苦手なシンシアとリックは、ヒィヒィと言いながら食べている。

香辛料の料理の他には、肉厚の牛のステーキやグレープとオレンの盛り合わせなどが運ばれてきた。



「なぁ、今回の式典ってうまくいくと思うか?」


料理に舌鼓をうっている後ろで、二人組の男が食事をしていた。

その会話を真後ろに座っていたケイが聞き耳を立てる。


「十年も続けばうまくいくんじゃねぇ?知らねぇけど」

「前国王の息子達のようなことにならなきゃいいけどな」

男達は注文した料理を口に運ぶ。

「でも、マーダ様も可哀想だよな。兄たちを立て続けに亡くして、成人して即国王だぜ?俺だったらグレるぞ」

片方の男が酒を飲み、話を続ける。

「一部じゃ『一族の呪い』なんて言われて居るみたいだぞ」

「そういや『陰謀説』も出てたよな?」

「どちらにしろ王族の今後は気にはなるよな」

どうやら前から国民が気になっている噂話らしい。

王族が立て続けに亡くなるとは、お家騒動の暗殺が真っ先に思いつく。しかし、この国の王族の仲は悪い噂を聞かない。

前に出会ったマーラの弟、ルークス・ルーナエ・ヴェーラも好印象の青年だった。

世の中は、何が起こるかわからないといったことだろう。


しばらくして後ろの二人組は食事を終えて去って行った。


「やっぱり気になるか?」

横に座っていたアダムが聞いてきた。

どうやら彼も話に聞き耳を立てていたようで、思うところがあったらしい。

「王族って、立て続けに亡くなるってあるのか?」

「俺もよくは知らないが、この国にはもともと五人の兄弟がいて、そのうち上の三人が成人して程なくして亡くなったと聞いている。病死かはたまた暗殺かはわからないけどな」

アダムが酒の入ったコップを飲み干す。


「ねぇ二人とも!」

向かいに座っているシンシアが声を掛けてきた。

「この後、皆で噴水を観に行かない?」

「あぁ、窓から見えたやつね」

「せっかく来たんだし、一度は見てみたいじゃない!」

そう笑顔で話すシンシアだが、尋常じゃないスピードで料理を平らげる。

会話の口の動きと合ってないように見える。

その隣でレイブンがゆっくり食べるよう諭す。


それを見てケイは、学生時代に友人宅で料理をご馳走になったことを思い出した。

友人の母は、一番最後に食卓に着いたのに、いつの間にか一番速く食べ終わっていたのだ。

しかも会話をしながら食べていたのに、どんなトリックを使ったんだと言わんばかりの猛スピードである。

なんだか懐かしい感じがした。



食事を終えた五人は、中央広場の噴水前にやってきた。


「わぁあ!綺麗!」

シンシアが目をきらきらさせながら、噴水を眺めていた。


二階の窓から見えた時もだいぶ明るかったが、近くに寄ると青白い光が際立った。

噴水からわき出る水が反射して、全体的に煌びやかさを演出する。

「噴水ってツルツルしてるんだな」

縁を触ると、ツルツルした感触が伝わってくる。どちらかというと大理石に近い。

「話には聞いていたが、これはすごい」

「蒼光石は魔道具と相性がいいと言われていたが、改めて見ると圧巻だな」

アダムとレイブンも、巨大な噴水に感慨深い表情を浮かべた。


「そういえば、この噴水は恋人たちの愛の告白場にもなっているそうですよ」

「あ、愛の告白!?」

リックの言葉にシンシアが過剰に反応する。

「お得意様の中で、告白したら結婚できたと噂になったものですから、女性の中では『一生に一度は行ってみたい!』場所らしいですよ」


やはり噂に敏感な世の女性達は、異世界でも共通なんだなと感じた。


「いいわね~。私も言われてみたいわ」

「シンシアって相手いないの?」

「ないわ」

「嘘だ~領主の娘なら、それこそ引く手あまただろう?」

「親の決めようとしている相手は、引く手あまたとは言わないわ!」

完全に父親に対して、不機嫌そうに言った。


「私だって、いずれ好きな人が出来るかもしれないじゃない?」

モジモジした態度で、ケイの方を振り返った。


「リック見てみろよ!」

「すごいですね~!」

先ほどまで話の相手であったケイは、リックの方を見て吹き出す水を眺めていた。


「もぉ!なんで聞いてないのよ!!」

地下駄を踏むシンシアに、アダムとレイブンが乾いた笑みを浮かべた。


こうしてマライダの夜は更けていった。

日本人にもおなじみのあの食べ物がでました。

個人的には結構好きです。


次回は5月24日(金)更新です。

細々と活動中。

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