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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
アレグロの救済とアグナダム帝国
266/359

259、東部地区

皆さんこんばんは。

大変遅れて申し訳ありません。

さて今回は、アグナダム帝国の内部に潜入するお話です。

左側に見える通路には、サブシステムにより点灯している非常灯の赤い光がポツポツと奥へと続いていた。


「なんか不気味ね~」


まるでおばけでも出そうな雰囲気にシンシアの目は泳いでいたが、行くにしろ戻るにしろ照明がろくにない場所のため、覚悟半分諦め半分という気持ちで足を進めるしかない。


通路の先には、鉄骨がむき出しとなった非常階段らしきものが上へと続いている。


カンカンと鉄骨特有の高い音が足音と共に辺りに反響し、それがより一層不気味さを演出し、非常灯を頼りに上へと上ってはいるが研究施設特有の雰囲気に話を加えたように静寂と反響した足音だけが不安を抱かせる。


体感的に三階ほどの段数を上りきると、少し広いエントランスの様な場所に出た。


頭上には原型を留めていないが、天井や電気配線がむき出しになった大型の照明が見える。ますます地球と文化が似ていると感じてはいたが、ここまで似ているとなると、メルディーナはこの世界にかなり手を入れていた可能性がある。

またアスル・カディーム人を創造した彼女に、どんな理由で歴史や人々の人生を変えてしまったのかというところまではわからないが、あの性格だと軽い気持ちで手を出したなら想像に難なくない。


アルバから正面に見える扉から外に出られると教えられ、ケイ達はそちらに歩みを進めた。


「当時の状況そのままだから、足の踏み場に困るね」

「もっと別の道はないのかしら・・・きゃっ!」


レイブンが通り道を塞いでいる棚をどかしている隣で、シンシアが足を崩して尻もちをつく。


「おい、大丈夫か?」

「あ、ありがと・・・」


ブルノワを肩車させ、少佐を小脇に抱えたケイがシンシアに手を差し伸べる。


一般的なシチュエーションならときめくことがあるかもしれないが、それをしているのはケイだ。あまり期待されても困るが、滑稽な状況とは裏腹に足元に気をつけろよと一声添えてシンシアを立ち上がらせる。


「ブルノワと少佐を抱えて歩きにないの?」

「こいつらにこの状況を歩かせるのはちょっと怖いから、もう少し物がなければ考えたけどな」


たしかに幼い彼らを連れて歩く場所とは想定されていないので、これもケイなりの気遣いだとシンシアでも分かるが、その反面もう少し女性にも優しくしてくれたら~などと、この場に及んで一瞬だけ考えがよぎる。


外に通じる二枚扉までやってきた。


「アルバ、扉を開けてくれ」

【承知しました】


扉はセンサー感知の自動式のようで、手で押し開けようとしたアダムを制してケイがアルバに開けるように指示を出す。


「押し開けるヤツじゃないのか?」

「俺の国ではセンサーがあって、それが人を感知して自動で開くんだ」

「すごいな!扉が勝手に開くなんて~ということは、よぽど技術が発達してるんだな!」


アダムの驚きようにそこまでか?と疑問を浮かべたが、よくよく考えてみるとケイは剣と魔法を使えないが技術はここより発展している世界からやって来たので、アダム達が自動で扉が開くというワードに驚くことは当然だった。


サブシステムから自動扉に電源供給を行うと、爪で黒板をひっかいたような不快な音を響かせながら扉が開く。


「ちょっと!なんなのよ!?」

【電源供給の調整を行い扉の開閉を遂行しましたが、時間が経ちすぎているため、システム上で不備が発生しております。ご迷惑をおかけします】


1500年以上も開かなかったのだ。システムを再起動させたのはいいが、あちこちにガタがきているようで、自動扉も本来なら全開できるはずなのだが一人分の幅しか開くことができなかった。


「そりゃ1500年以上も経っているから錆びたりしてるんだろな。こういう機械物は定期的に見てやんねぇと途端に壊れたりするんだよ」

「そうなの?ずいぶん不便なのね」


シンシアは面倒くさいのねと肩をすかした。

ケイとしては当たり前に思えても、彼らからしてみればなんだか複雑なんだなという各々の感想を持たれる。要は文化や慣れの違いである。



中途半端に開いた扉から外へ出ると、青い空に白い雲と大海が広がり、眼前には朽ちた大都心のような建物が広がっていた。


「これが“アグナダム帝国”か・・・」

「いや!完全に都会じゃん!」


呆然とするアダム達を横目に完全に地球の技術を丸パクリ!?と思えるほど、異世界の技術が広がっている。さすがのケイも思わずツッコミを入れるしかない。


今まで明かされることのなかったアグナダム帝国の跡地が広がってはいるが、本来なら本島とを繋ぐ橋があったものの、アルバのシステムでも橋の復元は出来なかったようで、泳いで渡るにしても距離は意外とある。



「おーーーーーい!!!!」



海上の方からこちらを呼ぶ声が聞こえた。


右側に目線を向けると、魔道船がこちらに向かってやってくるところが見える。

甲板からバギラと船員達の姿が見え、こちらも声を出して手を振る。


「皆さん!見つかってよかったです!」

「なんでここが?」

「ケイさん達の所在を通信で知りました。私達はその方の指示でやって来ました」

【魔力の一部がこの船とリンクしていましたので、大陸を渡る際に必要かと思いこちらから連絡をとりました】


どうやらケイが創造した魔道船とアルバがシステム上で一部共有できたようで、通信を通してダット達に伝えてくれたようだった。


「ケイ達!無事だったんだな!」

「無事ってどいうことだ?」

「どいういうって、いきなり海が荒れ始めて地震が起きたんだよ。ジュランジやルバーリアの奴らも今までに起きたことがない現象だったから、もしかしたらと思ったんだ」

「で、アルバからの通信を貰ったってことか」

「あぁ。そいつからアグナダム帝国を浮上させたから、大陸に向かうためにケイ達を迎えに来てやってくれってな」


魔道船には通信機器が存在しているが今までに使われたことはなかったようで、ダットが礼を言いたいのでアルバの所在を尋ねたところ、アグナダム帝国のメインシステムだと今までの経緯を含めて説明する。


「はぁ~そのAI?ってやつは凄いんだな!」

「昔の技術にしては、我々の知っているものとだいぶ違いますね~」


ケイの説明を聞いたダット達は、納得かつ曖昧な返事を返した。

むしろ見たこともないモノなので仕方がない気はするが、逆に嫌悪感や苦手意識を持たない仲間達やダット達に関心を示す。


それからダット達と合流したケイ達は、魔道船に乗り込むと小島から西にあるアグナダム帝国の東部地区へと向かうことにした。



船から距離にして約200mほど進んだ辺りで、東部地区の港らしき場所に辿り着く。


もちろん年数諸々経っているせいか風化が進み、港おろか地区全体として成り立ってはいなかったが、失われた歴史的な一歩を踏み出すと思えば心のどこかで多少なりとも緊張が走る。


「アルバ、もうすぐ着くが何処に止めたらいいんだ?」

【進行方向から右に二時の方向に、船を停泊させる場所があります。そちらから東部地区内部へと進んでください】


魔道船は、アルバの指示通りに港の一角にある停泊できる場所へ船を止めた。


船から下りると、レンガ調の倉庫や恐らく風車がいくつも連なり、奥には発電塔のような建物まで見え、この辺り一帯は工場関係の施設があったのではと伺わせる。この世界の港街とは異なった、まるで地球の港街のような光景が広がる。

地面に足をつけると、以前は舗装されたレンガのような材質が敷き詰められていたことを伺わせたが、今ではそれもただの瓦礫と化し足場を悪くしている。


【ここは工場関係および漁業を中心とした場になっていました。一日に何隻もの船が海を往来し、とても賑やかだったことがデータで保存されています】


アルバの事務的な会話の中に懐かしむようなニュアンスが含まれている。


当時の事を思い出しているかは分からないが、跡地からかなり栄えていたことが見てとれる。感傷に浸りたい部分もあるかもしれないが、目的は東部地区内にあるメインシステムの復旧である。


ケイ達が屋外に移動したことから、アルバの存在は魔道船のシステム内およびケイのしている腕輪に意思が導入される。


魔道船については、今までケイ達との通信の手段がなかったことから、今後はアルバを通して情報をやりとりしていくスタンスをとり、同時に魔道船には新たにモニターを導入して、情報を蓄積する方法に移行することにした。


ダットを含めた魔道船の面々は、見たこともない新たな場所に唖然とした表情で港全体を見回していた。本来ならダット達も同行しようとおもったのだが、ケイ達が先行して様子をみてくるので待っていて欲しいと話し、ダットもそれに同意した。


「本当に大丈夫か?」

「とりあえず行ってみねぇと分からねぇな。アルバの話しじゃ東部地区に大陸の機能を再起動させるメインシステムがあるらしいが、他にも色々と気になることがあるから、ついでにそれも調べてみるぜ」

「俺達はここで待ってるから、悪いが何かあったら連絡をしてくれ」

「あぁ、わかった」


ケイ達は、心配半分のダット達に見送られながら市内地へと向かうことにした。



「タレナとシルトは、この辺りに見覚えはあるのかい?」

「薄らとですが、なんとなく・・・」

『先ほどから霧のように鮮明ではないが、なんとなく通ったことがある気がする』


レイブンから話を振られたタレナとシルトは、その道中で見覚えのある場所だと意見した。ただシルトに至っては記憶が不鮮明なのか、思い出すことがあまりできないという。タレナは、以前から世界大戦前のやりとりなどは覚えてはいるものの、アグナダム帝国の風景自体はまだ思い出すことができないようで、何かの拍子で思い出せる部分があるかもしれないと、焦らずに見守ることにする。



【あの建物が東部地区のメインシステムがある場所になります】


港から市内に十分ほど歩いた場所に朽ちた白い建物が建っている。


全体的にスタイリッシュな外観に反して、なにをしている場なのかはわからないものの、当時では最先端の流行が盛り込まれた建物だそうで、近づいてみると、入り口の脇に完全に砕けたガラス扉のようなものが存在している。


ケイはその位置から中を何気なく覗いてみると、まるで病院の待合室のような長椅子が荒れ果てた状態で存在していた。


「アルバ、この施設はなんだ?」

【ここは東部地区唯一の“総合病院”です】


どうやらメインシステムは病院の中にあるようで、不安な要素はあるもののケイ達は朽ちた建物へと入ってみることにしたのだった。

アルバの活躍でダット達と合流することが出来たケイ達は、そのままアグナダム帝国の東部地区へと辿り着きます。

メインシステムを復旧するために、潜入した先にはどんな真相が待ち受けているのでしょう?


次回の更新は、12月18日(金)を予定してます。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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