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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
アレグロの救済とアグナダム帝国
262/359

255、海底神殿へ

皆様こんばんは。

遅れて申し訳ありません。

さて今回は、再度海底神殿へ向かうお話です。

海底神殿へ向かうため、ケイ達はギエルの後について歩いた。


左側にはルバーリアが見渡すように広がり、今いる場所は高い位置にあることがわかる。地形は円のように丸くなるように建物が建てられているようで、バメットから聞いたギエルの話によると、元々は海底でも平面だった場所なのだが、年月が経つにつれて国の回りを形成している生態系が変化したことにより、海底の地盤も徐々に変化していったそうだ。


ちなみにルバーリアはの近くには元々広大な珊瑚礁があったようで、そこが進化や退化を繰り返したことによりルバーリアも地盤変化を繰り返した結果が今の国になったのだそうだ。


「岩礁の亀裂って独特なのね?」

「なんでも1500年前の世界大戦時につけられた傷跡も残っているそうですよ。丁度あの辺りは大きな衝撃があったそうで、近くで見ると珊瑚が新たに形成されていたりしているんです」

「あのぐらい大きければ崩壊してもおかしくないのだけど、不思議な話ね~」


右手に広がる岩礁を横目に、シンシアが不思議そうな目でそちらを見つめる。


壁のように立ちはだかる岩礁は、前後に一直線に続き、所々に生々しい戦争の跡を残した一方で、その場所から新たに珊瑚の新しい生命が誕生している。


まるで輪廻を思い起こさせるような不思議な気持ちになる。


「皆さん、この谷から海底神殿へと向かいます」


竜のほこらから約600mほどの地点で、ギエルがとある谷を指してケイ達に伝えた。


他の谷と大差はないのだが、位置的にこの谷から向かうことが出来るのだという。

ちなみに他の谷とは何が違うのかと尋ねると、他の谷は途中で道が途切れたり、回り道になっているようでルバーリアの別の場所に辿り着くのだという。


要は、谷がいくつあっても海底神殿までの道なりが成立している箇所が少ないことを意味している。



岩礁に形成されている谷間に入ると、巨大な壁のように特有の圧迫感を感じ、ブルノワは迫ってくるようで怖いとケイに抱っこをせがむ。


「そういえばバメット殿が、人魚族の幼い子供はこの岩礁の谷を『怖い』と思うことはあるみたいですよ」

「壁が迫ってくるように怖いってことか?」

「どうやら少し違うようで、彼らには動いて見えるときがあるみたいです」


人魚族の子供は、このそびえ立つ岩礁の壁が左右に揺れて見えるらしい。


バメットによると、人魚族の視覚は見る視覚と見えない視覚がある。

見える視覚は、どちらかというと草食動物のように360度見渡せるようで、それに咥えてコウモリが発する超音波のように、暗闇でも物の位置が分かるせいでもある。

人魚族でも、ある程度大きくなれば見える見えないの時の使い分けをしているのだが、幼い子供はその能力を制御できずに車酔いや画面酔いのような症状を起こすことも少なくないらしい。


それを聞き、種族が違うとそれぞれ違った悩みがあるのだなと妙に納得できた。


しばらく進んで行くと、徐々に地面が坂のように下がっていく箇所にあたる。

珊瑚や貝の破片が砂利のように歩きづらいことから注意して下っていくと、岩礁の間から一気に視界が開けた。


海底神殿の全体が向かって後ろ左斜めに広がり、位置的には前回訪れた場所とは反対になるようだ。


「結構近かったな」

「海底神殿はルバーリアより低い位置にあり、尚且つ国の真下に近い位置にあるようです。ここに辿り着くには岩礁の間を通っていく必要があります」

「たしか、ルバーリアって空気貝の亜種みたいなものが周りを囲んでいるって聞いたが?」

「えぇ。ここの他にも数ヶ所繋がっている谷はありますが、全てが外部からの遮断することを目的としている感じを受けます」


辺りの潮の流れと空気貝の亜種がルバーリアに結界を施している関係で、海底神殿へ行くには、どのルートを通っても必ずルバーリアを経由しなければならない。

ギエルが述べたように、外部から遮断や隔離もしくは隠れるためにという意味も含まれているかもしれないが、だいぶ辺鄙な場所にある。


前回来た時には気づかなかったが、神殿を守る騎士のような石像が存在したことから、何か重要な物を隠しているのではと考えが浮かび、アスル・カディーム人が外部から遮断してまで建てた海底神殿は、ルバーリアの人々も知らない事実が眠っている可能性がある。


海底神殿の入り口に辿り着くと、人魚族の兵とおぼしき人々が巡回していた。


彼らはギエルの姿を見るや立ち止まり一礼をするとまた巡回し始め、その姿を見たケイがこの辺りは物騒になったのか?と尋ねると、ここに居る兵は人魚族でも若い兵で経験を積むために海底神殿の捜索兼巡回が仕事だという。


入り口に立っていた人魚族の兵に礼をしてから中に入ると、以前来た時のまま様子は変わらなかった。


ただ気になる点でいえば、ギエルが前回向かった際に行ける場所が限られていたと言ったことである。開かずの間ということなのか、施錠されているのかまたは錆付いている関係で行ける場所が限られていたのかはわからないが、重要な文化財という観点からあまり手を付けていないといったところだろう。


長い通路を進んで行くと、前回訪れた地下に続く通路が左手に見えた。


もし内部が変わっていなければ、鍾乳洞のある湖に辿り着き、そこから女神像のある場所へと続いているはずだ。ケイは、ブルノワと少佐に勝手に行ってはいけないと念を押してから一同は地下に続く通路へ向かった。



「動く石像は、もうない・・・わよね?」


階段を下り鍾乳洞のある湖を抜けて、神殿調の建物内に入る間際にシンシアが注意深く入り口から覗き見る。


「シンシア、置いてくぞ~」

「えっ!?ちょっと待ちなさいよぉ!」


中は幻のダンジョン時の跡が残ったままで、同じような動く石像が出てきたら命がいくつあっても足りないとぼやき入ることを躊躇している横で、皆がぞろぞろと中に入り、その姿に慌ててシンシアも続く。


「そういえば、前回来た時には幻のダンジョンの時と違ったところもあったな~」

「見えない道のことだね。あれ以来見ることはなかったけど、あれは一体何だったのだろう?」

「もしかしたら、セキュリティの類いかもしれないな」

「セキュリティ?ということは、えっと・・・外部から侵入してきた者に対して働く仕掛け、ということかな?」

「まぁ、そんな感じだろう。ご丁寧に動く石像まであるんだからよほど部外者に見せたくない感じはあるな」


レイブンが前回とダンジョン時との違いを指摘し、おそらく侵入者を排除または除けるためにあえて設定されたものなのだろう。それは例えばアスル・カディーム人の可能性は捨てきれない。


奥にある地下に続く階段を抜けると、前回と同じように女神像がこちらを向いて佇んでいた。


「そういえば、ギエルはこの辺り来たことがあるのか?」

「はい。前回この辺りまで捜索範囲を広げたのですが、特に何か見つかる、といったことはありませんでした。ですが、同行していた部下の一部が誰かに見られていると言っていました」


ギエルは気づかなかったが、前回訪れた際に部下の数人が誰かに見られているといった声を聞いたそうで、同じように同行していた人魚族の方も、数名だが同じようなことをバメットに意見していた。


一人二人が言っていたのなら気のせいだと片付けられたかもしれないが、同時に複数人が同じ事を声を上げたのなら双方の部族としては無視はできない。

しかし、それがなんなのか?と調査をしてみるものの、全くその対象者が分からないと不気味に思えたようで、わずかながら調査の同行を拒否する者も出ているらしい。


「ギエル、獣族や人魚族は幽霊というものを信じるのか?」

「ゆ、幽霊ですか?私は実際に見たことがないのでなんとも言えませんが、もしかしたらそのような考えを持つ者もいるかもしれません」

「ケイ、な、何言ってるのよ?ゆ、幽霊なんているわけないじゃない!?」

「シンシアさん、大丈夫ですか?」


お化けの類いが苦手なシンシアが、ケイとギエルの会話に割ってはいるが、タレナから足が震えていることを指摘すると、わ、私は平気よ!と若干震えた声で強気な発言を返す。


ケイも一部の獣族や人魚族のような視線を感じることはなかったが、もしかしたらなにか出てくるかもしれないと想い始める。


改めて目の前にある女神像に目を向けると、アルバラント城内で見かけた女神像と同じもののようで、鑑定にはシエロを模した像であることがわかる。

ただ、シエロの像だけは他の女神像と異なり地下に存在していることから、これが何を意味するのかはわからないが、ケイの考えが正しければ、女神像は対で存在していることから何らかの役割をになっていることは間違いない。


「とりあえず、何かないか調べてみようぜ!」


手分けして女神像のある部屋全体を捜索してみることにしたケイ達は、壁や床、天井に仕掛けがないかと見て回り、次に女神像を細かいところまで観察してみた。


「今のところ、何も見つけられないが?」

「う~ん、なんかあってもおかしくはないんだよな~」

「前回来た時の“謎のアナウンス”ってやつか?」

「そうなんだよな~」


「絶対になにかあるんだよな~」とケイが首を傾げるが、全体を見回したアダムが何も見つけられないと頭を振り、ギエルを含めた他のメンバーも同じように全体を見て回ったがめぼしいものが見つからない。


仮に本当に何もないのなら動く石像や謎の視線、謎のアナウンスの説明がつかないのだが、いくら辺りを見回しても塵一つ落ちていない状況に見当違いだったのかとケイが思い悩む。


なにも見つからない状況に手詰まりを感じたケイは、サーチとマップのスキルを使って辺りを確認してみることにした。しかし、サーチに異変はなくマップにもケイ達を示すマーク以外に生体反応が見当たらない。そういえば、幽霊とかお化けは反応として引っかかるのかと別のことを考えた時、不意にブルノワがケイの手を引いた。


「ブルノワ、どうした?」

『だれかいるの~』


ブルノワの声に辺りを見回すが、ケイには何も感じない。

足元にいる少佐は三頭とも何かを感じているのか耳を立てて様子を伺っている様子を見せる。



【ようこそ“新たな王”よ・・・これよりメインシステム『アルバ』の再起動を開始いたします】



急に第三者の声が辺りに響き渡った。

まるで館内アナウンスのような声に、全員が正体を確かめようと一斉に見上げたのだった。

海底神殿に到着したケイ達は、自分たち以外の何者かの声を聞きます。

果たしてその正体とは?

次回の更新は12月9日(水)です。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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