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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
アレグロの救済とアグナダム帝国
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254、族長たちとの再会

皆さんこんばんは。

昨日は申し訳ありませんでした。

さて今回は、竜のほこらにいる族長二人との再会になります。

ギエルに案内され辿り着いた先に一件の店があった。


大通りから少し外れた場所に巨岩がそびえ立ち、巨岩は自然によって大穴が形成され、その中にこぢんまりとしているものの、古き良き商店街の一角にある料理屋を思わせる外観がぽつんと存在している。


今居る竜のほこら自体は全体的に複雑な地形ではないものの、裏道に一歩足を踏み入れると周辺には岩場を改築し、その中で商店を営んでいるところがいくつも存在している。


さながら知る人ぞ知る地元の名店の様な雰囲気である。


「バメット殿!」

『ギエル殿に・・・ケイさん達も一緒でしたか!?』


店の前で見覚えのある人魚族の男性の後ろ姿があった。


その人物はグドラの部下・バメットで、ギエルに肩を叩かれ振り返ると驚いた様子でこちらをみやる。


『ご無沙汰しております』

「バメットも元気・・・というより疲れてんな~」

『獣族との関係が改善されてから、毎日ことあるごとにグドラ様を探しにルバーリアやジュランジを走り回っている日々を送ってます』


再会したバメットは、前回より違った意味でやつれている様子が見られる。


長年敵視していた獣族との関係が改善された反動で、友好以上の付き合いが行われており、グドラはよく仕事をサボってはマードゥックと共に竜のほこらにある料理店を訪れ飲食をしているという。


どうやら仕事がまだ残っているようで、目を離した隙に居なくなったことからどうせこの店にいるのだろうと考えてやって来たのだという。

一国の主が昼間から何をしているんだと思われるが、嫌いだったものが好きになる反動は人でも起こる行動なので、良いか悪いかはこの際割愛しよう。



『やっぱりここでしたか~』

「本当に困った方達だ・・・」


店内に足を踏み入れると時間帯が早いせいか客の入りはまちまちで、奥の四人がけのテーブルにマードゥックとグドラの姿を見つけた。


二人は木製のジョッキを片手に仲良く談笑をしては、笑い声を上げて料理を食している。全く知らない人からしたら二人がまさか国をまとめる人物だとは思わないだろう。失礼な話、飲んだくれの一般男性と同じである。


『おぉ!ギエルとバメットではないか!』

「お前達もこっちに来て飲もうではないか!」

「何を言っているんですか!?仕事はまだ残ってるんですよ?」

『なんだぁ~いじけているのか?』

『もぉ!グドラ様まで~昼間からお酒を飲んでいる暇はないんですよ!?』


バメットが二人からジョッキを取り上げ仕事が残っていると注意したが、この飲んだ・・・もとい二人の王は、いじけているのかと咎めた二人に向かって酒の臭いを漂わせた息を吐き、まるで親戚の子供を可愛がるように双方の頭をなで回した。


頭を撫でられたバメットとギエルは、ケイ達が見て分かるほどにこめかみに青筋を立て『言うこと聞かない愚王』だの「毎回探しにいくのが辛いんだよ・・・わかれよ」などと小声で不気味な言葉を吐いている。


触らぬ神になんとやらの通りに、その辺りは聞き流しておくことにする。


「グドラ、マードゥック、飲んでるとこ悪いがちょっといいか?」


呪詛の様なものをはくバメットとギエルを余所にケイは酒を飲んでいる二人の王に話しかけると、一瞬動作が止まり、今日は飲み過ぎたか?と同時に目を擦りこちらを確認する。


「お・・・おぉ!ケイ達ではないか!?久々だな!」

『やぁ!貴君らのおかげで我が国もジュランジも良好に築けるようになった。今ではとても感謝しているよ』

「あ~それはまぁ・・・いいよ。実は用があってあんたらの所に来たんだ」


ケイが海底神殿の事を聞いたと述べると、先ほどまで飲んでいた表情をしていた二人が急に険しい表情を作り、そのことかと話を聞く姿勢に変わる。


「実は俺達、アグナダム帝国に行くためにここに来たんだ」

「『なんだって!?』」

「冗談で言っているわけじゃない。それにはアレグロが関わっているから、俺達はその真実を知るために向かおうと思ってる」

「彼女になにが・・・?」


ケイがジャヴォールで起こった事を二人に説明をし、アレグロを模したドール体の破片を二人に見せると、グドラがその欠片の一つを手に取り、これはと呟く。


『これはアスル・カディーム人が持っていた物とよく似ている』

「持っていたってどいういことだ?」

『私が幼少の頃にルバーリアを訪れた彼らが、海底神殿へこれと同じような物を運び入れているところ見かけたことがあるのだ』


グドラの話では大きな木箱を抱えたアスル・カディーム人が、海底神殿へ運び入れるところを見かけたのだという。

その際に箱の隙間からドール体と似たような材質のものが見えたそうだが、当時幼かったグドラが尋ねたところ「知るべきことではない!」と叱責を受けたことにより謎のままだったことが語られた。


「ドール体を海底神殿に運び入れていたということは、実は別の意味で建てられた可能性があるかもしれない」

「ちょっと待て!海底神殿はアグナダム帝国との関係を記念して建てられたものだって言ってなかったか?」

「表向きは、な。もしかしたら“カモフラージュ”の可能性がある」

「カモフラージュ?」

「海底神殿の本当の役割は、別にあるということになる」


アダムから本当の役割の事を聞かれたため、ケイはアスル・カディーム人は何かから隠さなければならない事情があり、その隠す場所を選んだ先がルバーリアだったのではと考える。


「グドラ、ちなみに人魚族がアスル・カディーム人と関わり合いを持ったきっかけってなんだ?」

『きっかけか・・・たしか、先々代の頃にアスル・カディーム人が竜のほこら経由でルバーリアに来たことが初めだと聞いている』


先々代である人魚族の長は、アスル・カディーム人の王であるシャーハーンが少数の仲間と共にこの地に赴いたのが初めだと聞く。


彼らはルバーリアに住む人魚族を海を守る守護者として崇めていたようで、敬意を持って友好的な関係を作りたいと述べ、実際に関係を構築していったそうだ。

しかし、代が変わり1500年前の世界大戦より少し前から関係性に難を感じ始め、アフトクラトリア人が人魚族を乱獲したことをきっかけに大規模な大戦へと発展していったのだという。


ここで、思ったことは、アスル・カディーム人とアフトクラトリア人が別々で行動しているところだ。


他種族を保護し関係を構築していくアスル・カディーム人と人魚族を捕らえ続けたアフトクラトリア人は、相反する行動を繰り返していた。

それは静と動、善と悪のような構図を思い起こす。

ただ、海底神殿を友好の証だといい建設したアスル・カディーム人の行動の裏に別の思惑があると考えるとするならば、それはアフトクラトリア人に関する行動に対抗することか、はたまたドール体を運んでいたとなるとそのことに関するなにかしらの行動を起こしていたのかもしれない。


大陸にあった試練の(ペカド・トレ)と同じように、いくつもの謎を残しながら、まるで何かに対抗するような行動を起こしていたのではと、ふとそんな考えをよぎらせる。


「とにかく、俺達はもう一度海底神殿へ向かってみるよ」

『それなら私が案内・・・『グドラ様』』


グドラがケイ達を案内しようとしたところ、横からバメットがジト目で彼を見つめている。顔には『公務をサボって?』というような文字が浮かんでいそうな雰囲気に、さすがのグドラも閉口する。王を黙らせる程の表情をもつバメットは、将来大物になりそうだ。


「あー気持ちは嬉しいけどなんか忙しそうだし・・・バメット、竜のほこらから海底神殿までは遠いのか?」

『それでしたらルバーリアの街を迂回する形で北に向かって頂ければ、宮殿近くに岩盤の壁がそびえ立つ道が存在しますので、そこに向かってくだされば海底神殿に辿り着くことができます』

「よろしければ、私が案内しよう」


バメットの次にギエラが案内役を担うと手を上げる。


先ほど戻って来たばかりなのに良いのかと思ったのだが、本人はマードゥックがすぐにサボるので、それを阻止するべくわざとこんなことを言ったのだとなんとなく察する。

案の定、グドラとマードゥックは自分たちが案内しようと言いたげな様子を見せたが、それを予測していたようにバメットとギエラがケイ達に提案したため、仕事を頑張れよという意味も込めて、ケイ達はギエラの提案を受け入れた。


その後グドラとマードゥックは、バメットと迎えに来た獣族の兵によりそれぞれの国へと帰っていった。去り際に助けを乞う様な目線を送られたが、笑顔で二人の族長に分かっていますよねと圧をかけたバメットとグドラに折れたようで、渋々と料理店をあとにした。



それからケイ達は、ギエラの案内で海底神殿へと向かうことになった。


前回はルシドラに乗せて貰い直接ルバーリアに来たのだが、今は竜のほこらが開通しているため、海からダイレクトにという行き方は推奨していない。もっともそんなことが出来る人物などほとんど存在していないので、かなりイレギュラーだということは誰でも思うだろう。


竜のほこらを通った先に色とりどりの珊瑚礁が眼前に広がった。


見上げると海底とは思えない青い海が広がり、その青さはルバーリアに広がる光る珊瑚礁やクラゲたちによるものだと推測させる。


竜のほこらはルバーリアの南東に位置し、そこから海底神殿へは一度東を迂回するように北にある宮殿へ向かい、その途中にある岩礁の谷から地下にある海底神殿へと向かうことが出来るそうだ。


ちなみに北側にある神殿は北から東にかけて岩礁が囲むように広がり、所々に谷を形成する場所がいくつかあるのだそうだ。

これは自然に出来たものと世界大戦の際に出来たものの二種類が存在し、ケイ達が北へと向かっている道中で右側に目を向けると、そびえ立つ岩礁の側面に刃物の跡や何かの打撃を受けたような大きな亀裂など戦争のすさまじさを物が立っている。


「ここから右側の岩盤の途中で大きな亀裂の様な谷がありますので、そこから向かうことになります」


ギエルの話では、前回ケイ達が通った谷とは違う谷から向かったようで、そちらの方から向かうことを提案すると、土地勘のないケイ達は彼の提案に了承し、その後についていくことにした。

仕事そっちのけで酒を酌み交わすグドラとマードゥック。

久々の再会にバメットとギエルは頭を悩ませるが、なんとか頑張って欲しい。

一方ケイ達は、ギエルの案内で海底神殿へと向かいます。

果たして何が待ち受けているのでしょう?


次回の更新は12月7日(月)夜です。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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