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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
アレグロの救済とアグナダム帝国
260/359

253、石板の謎を求めて

皆さんこんばんは。

大変遅くなり申し訳ありません。また、いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回から新章突入になります。

ジャヴォールから南に進路を取り、進むこと二週間近く経った。


ケイ達を乗せた魔道船はいつもの日常でありながら、アレグロが居なくなったことにより少しだけ寂しさを感じていた。

特にタレナは一人でボーっとすることがあり、少し離れた場所からシルトが心配そうな表情で見守る光景が何度か見える。ケイも何とかしてやりたいと思っているのだが、下手に間に入れば拗れてしまうかもしれないといつも通りに接することにする。


「まさか、アレグロがあんなことになるなんてな・・・」


舵を取っているダットが、甲板で海を見つめるタレナの後ろ姿を見ながら近くにいるケイに問いかける。


戻って来てすぐにダットを含めた全船員がケイからアレグロの事を聞いており、いつも通り働いている船員達も姉妹の仲の良さを知っているためか、声を掛けていいのかわからず、そっとしている状態である。


「俺もある程度覚悟はしてたが、完全に想定外だぜ」

「と、言っているわりには大分冷静だな」

「んなことはねぇよ。ま、もし俺の考えが正しければ、アレグロの本体のヒントはアグナダム帝国にあるかもしれねぇ」

「でも、そのアグナダム帝国ってぇのは1500年前に海に沈んだんだろ?その取っかかりが海底神殿って、本当に見つかるのか?」

「こればっかりは実際に見てみないとわからねぇな。あるかもしれないしないかもしれない・・・」


険しい表情で考え込むケイにダットは、半信半疑ながらも海底神殿へ向かうために中間地点であるジュランジへと船を進ませた。



魔道船はジュランジ近郊の海域に差し掛かった頃、反対側から一隻の船が留まっているところに遭遇する。


どうやらこの船はジュランジの漁師のものと思われ、獣族が甲板で一列に並び網を引いている姿が見える。網にはこの付近で取れる魚が網にかかり、必死にそれを引き上げようと漁師達が奮闘する。



「おーーーい!!!!」



その時、その舟に居た漁師の一人がこちらに気がつき手を振った。


見ると見覚えのあるトカゲの姿をした青年・レックスが手を振り、船には他の漁師たちの姿もあり、魔道船に気がつくとこちらに向かって手を振っている。


「レックス!久しぶりだな!」

「お久しぶりです!皆さんはこれからどちらに?」


ケイが海底神殿に向かう予定だと述べると、レックスが少し考えてから思い出した様にある事を口にした。


「そういえば少し前にマードゥックさんの命令で、ギエルさんが調査隊を率いてルバーリアに向かいました」

「調査隊?ルバーリアから泳いで行ったのか?」

「あ、いえ。最近になってからジュランジとルバーリアを繋ぐ“竜のほこら”から向かったようです」


竜のほこら?と首を傾げていると、あの騒動以降から徐々にだが獣族と人魚族の友好関係が改善に向かいつつあり、その取っかかりとして世界大戦以前まで使用されていた国と国を繋ぐ場所が改めて開放されたそうだ。


「俺は行ったことないんですけど、もし実際に行ってみたいのならマードゥックさんに聞けば分かるかと思います」


どうやら人魚族のグドラも度々竜のほこら経由でジュランジに赴いているそうで、頻繁に互いの国を行き来しているらしい。


ついこの間までいがみ合っていたことが嘘のようで、現にレックスがいる漁船には人魚族の青年とおぼしき姿が数名乗り込んでいた。

彼らは獣族の漁師の補助を行い、互いの国の技術を学ぼうと定期的にやって来るそうで、魚や貝を分け与えたり逆に漁に適した場所を教えてくれるそうで仲間意識が形成してきているとのこと。

先ほど青年達と言ったのだが、レックスの話ではあぁ見えて数百年は生きているそうで、グドラ曰く他の種族に換算すると大体の十代前半から半ばにあたるらしく、見た目が全員二十代ぐらいに見えるせいで、最初の頃は子供として接していいのか分からず悩んだそうだ。



レックス達を乗せた漁船をあとにした魔道船は、マードゥックに竜のほこらのことを聞くためにそのままジュランジにある港へと向かった。


港では、前回の惨状があったとは思えぬほど活気に溢れていた。


ケイ達が船を下りると、港街と例えてもおかしくないほど獣族の往来が多く、魔道船と入れ違いに漁に出る船がいくつか見えた。

港のあちらこちらから市場独特の活気が溢れ、店員が自身の露店に置いてある品を行き交う人々にアピールしたり、屋台が建ち並んでいるエリアでは魚介類を使用した料理が鼻腔をくすぐる。


「タレナ、大丈夫?」

「はい・・・大丈夫です。むしろ何かをしないと考えてしまうし、何より皆さんを心配させてしまいます」


一緒に船を下りたタレナを心配したシンシアが声を掛けると、むしろ何かをしないとどうにかなりそうで・・・と申し訳なさそうな表情をする。

もちろん彼女を心配してシルトも同行しているのだが、なかなか二人が会話をするには難しい様子が見られる。そんな様子を察したのかブルノワと少佐が健気にもタレナとシルトの仲を取り持とうとしているのがなんとなく心苦しい。



活気のある市場を抜けると、広場とおぼしき場所に辿り着く。


「・・・なんだこれ?」


見上げると、そこには前回にはなかった銅像が立てられていた。

よくみるとマードゥックとグドラに似た像が、互いに握手を交わす姿が模されている。しかもその間にはケイによく似た像が満面の笑みで立っている。


「あっちにもなにかあるみたいよ!」


シンシアが指さした先には、腕を組み仁王立ちをしているダットと海の方を指さしたバギラの姿もある。まるでアメリカの博士が残した明言のような出で立ちに、ここに二人がいなくてよかったと別の意味で安堵する。



「あ!ケイさん達じゃないですか!」



聞き覚えのある声に振り返ると、部下を引き連れたギエルの姿があった。


彼はケイ達を見るや嬉しそうに駆け寄り、前回は大変お世話になりましたと律儀に例をした。


「ギエル、久しぶりだな。マードゥックとは一緒じゃないのか?」

「え、えぇ。実はあの後、グドラ殿と意気投合したようで、よく公務を放りだしてルバーリアに向かわれるようになったんです」


ギエルは悩みの種が増えたとこめかみを押さえ、どうしたものかとため息をつく。

同席していた部下は乾いた笑みを浮かべていたところを見ると、日常的におこなわれているそうで、なんとなく察した。


「ところで、この銅像はなんだ?」

「これですか?ジュランジの英雄とルバーリアとの和解を記念して建てられた像です。ルバーリアにも同じ像があるので、両国の平和のシンボルとも言われてます」

「いや・・・俺、関係ないと思うけど~」

「ははっ!何を言ってるんですか!皆さんが居たから我が国もルバーリアも友好を築くことができたので、敬意を込めて造らせて頂きました」


最近完成し除幕式も行ったらしく、満面の笑みでギエルがケイを称え、ここにいないダットやバギラにも参加して欲しかったと少し残念そうな表情をする。


「そういえば、皆さんはなぜここに?」

「実はレックスから“竜のほこら”について聞いたんだ。訳あってルバーリア経由で海底神殿に向かいたいって言ったら教えてくれた」

「ということは、あのことはご存じでしょうか?」

「あのこと?」

「その様子ではご存じないようですね。実はケイさん達がこの島を立たれてから、海底神殿から“妙な気配”を感じるとグドラ殿から相談を受けまして、私もマードゥック様の命で調査に向かったのですが、見つけることが出来ずに先ほど戻って来ました」


どうやらレックスが言っていた通り、少し前まで調査隊を編制して海底神殿に向かっていたようで、ギエル達は結果的に見つけることが出来なかったと落胆した様子を見せる。


グドラの話では、海底神殿に入ると誰も居ないのに誰かに見られているということが頻繁に起こっているのだという。

海底神殿はルバーリア内に存在しているため、何度も調査や探索を行ったようだが行ける箇所が限られているせいか、何度か断念しているとも言っていたようだ。


海底神殿に向かいたいと聞いたギエルは、この場を同席していた部下に任せ、竜のほこらへとケイ達を案内すると言い、とりあえず彼のあとについてそちらに向かうことにした。



「竜のほこらへは、ここから入ります」


ギエルに連れられやって来た場所は、港から北に進んだ崖沿いにある鍾乳洞。


ここから目的の竜のほこらに行けるそうで、左に目を向けると海が目の前にあり、鍾乳洞の入り口は海から守るように大小様々な岩や石で塞き止められている。

潮の満ち引きが竜のほこらへの道を防ぐことはないのかと聞くと、特殊な生態系の関係でこの辺りだけ満潮になっても変わらないのだという。


内部への道は自然に造られた石階段が続き、途中からギエルがこの辺りから海の領域になると告げられた時には、知らない間に海の中なのかと驚いた。

まるで東京湾に浮かぶパーキングエリアに向かう道を彷彿とさせ、しかも自然に造られた場所なのだからケイも驚きをかくせない。


石階段を下っていくと、海底にありながら人の活気のような声や音が聞こえた。


反響しているせいか不思議さを感じ、この辺りから両国をつなぐ竜のほこらの域になるとギエルが答える。


「竜のほこらって市場みたいなもんか?」

「少し前間ではただの道でしたが、最近になってから商売を始める者も出始め、日に日に活気に溢れているようです」


海の中で商売とは商人魂の賜か?と思ったが、なかには獣族に混じって人魚族の商人らしき姿もあるため、さながら異世界異文化コミュニケーション感が否めない。


竜のほこらは、具体的にどっから何処までがジュランジとルバーリアの領域かということは線引きがされていない。あくまでも両国を繋ぐ場所と考えられ、治安を守るために双方の警備隊を配置しているそうで、ギエルも月に何度かこの場所を訪れているという。


「・・・で、マードゥックはどこに行ったら会えるんだ?」

「それでしたらグドラ殿の行きつけの店があると部下から聞いているので、恐らくそこにいるかと」


グドラのいきつけの店というのは、竜のほこらでも裏路地的な場所にある料理店らしく、マードゥックも週に何度か足を運ぶことから隠れ家のような店らしい。


とりあえず、ケイ達はマードゥックに会いにその店に向かうことにした。

海底神殿に向かう道中でジュランジに到着したケイ達は、再会したギエルと共にマードゥックに会いに竜のほこらの隠れ店に向かうことになります。

次回の更新は12月4日(金)夜です。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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