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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
新大陸編
257/359

251、アグナダム帝国と五つの石板

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回は、アレグロを助けるためにアグナダム帝国を調べる必要があると考え、そのための情報収集と羽翼族・バルトルから預かった石板の謎について。

その夜ケイ達は、気持ちが沈んでいるなかで一旦お開きとなり、各々客室へと戻っていった。


少佐はアレグロが居なくなったことを薄々感じてはいたが、まだ幼いブルノワはアレグロがいない事を不思議に思い、何度もケイに彼女の事を尋ねていた。

従魔である前にまだ幼い身であるブルノワは、目の前で起こった事を理解できるわけでもなく、ケイは本当の事を教えてもいいものだろうかと思い悩んだ。


その時、客室の扉がノックされた。


「誰だ?」

「・・・私だ。少し話がしたい」


声の主はロザリンドで、ケイは扉を開け招き入れると神妙な面持ちの彼女が客室の椅子に腰を掛けた。

話は何だ?とケイが尋ねると、ロザリンドは言いにくいのか何かをいいたそうな表情をしていたが、考える素振りが見られると頭を振って目を伏せた。


「父から聞いたんだ。君達が病気の彼女を助けようと、その秘密を解きにこの島に訪れたことを。それなのに私のわがままで彼女を殺してしまった・・・なんと償って良いのか・・・」


アレグロが消失した原因の一端は、自分勝手な行動によってもたらされた結果だと思い詰めているロザリンドだったが、ケイは子の島に来る前からアレグロは体調を崩していたと答え、決してロザリンドのせいではないと宥めた。


「あんたのせいじゃない。起こった事を言っていても仕方ないだろ?それにアレグロは死んではいない」

「死んでいない?どういうことだ?」

「今まで俺達と一緒にいたアレグロは、なんらかの方法で魂を別の身体に移したものなんだ」


現にアレグロの魂が宿っている人魂魔石を見せると、彼女は大層驚き、こんな話をケイに伝えた。


「そういえばミスト=ランブル殿の家系は、医療の方面からアグナダム帝国と親交があったと聞いている。もしかしたらなにか文献が見つかるかもしれない」

「ミスト=ランブルの家って医者なのか?」

「今は違うらしいが、1500年前の世界大戦までアグナダム帝国の医療従事者から技術を学び、我が国に役立てていた話があったと記憶している」


そういえばレイブンとタレナが別行動をしていた時に、ミスト=ランブルに頼み当時の資料や文献を見せて貰ったと言っていた。


そこには【黒腫】と呼ばれるアスル・カディーム人特有の病が流行っていたとのこと。もしかしたらアレグロの身体を黒腫が蝕み、その治療をするために魂をアレグロと外見が同じドール体に移したのではと考える。

一般からしたらあり得ない推測だが、ダジュールの歴史を考えてみるとアスル・カディーム人がアフトクラトリア人を形成した話があるぐらいなので、技術の高さはケイ達が思っている以上に高いのではと思いにいたる。


ただ、実際にミスト=ランブルが所持している文献を目にしないとなんとも言えない部分もある。


「本当に私は、どう彼女に償ったらいいのだろう・・・」

「深刻に考えるなよ。もしかしたらアレグロを何とか出来るかもしれない」

「何とか、とは?」

「“人魂魔石に入っているアレグロの魂を元の身体に戻すこと”それにはまず、アグナダム帝国に行くしかない」


ロザリンドは、海に沈んだと言われている国に行くのか!?と目を丸くした。


彼女からしたら雲を掴むような話だが、今まで一緒に行動してきたケイ達にとっては、アレグロをそのままにしておけないと思った。



翌日ゴルゴーンの屋敷で朝食を済ませた後ケイ達は、彼から話があると応接室へ案内された。タレナはショックが長引いているのか客室から出てくる気配はなく、シルトが彼女の傍に付きっきりになっている。


応接室には従者を連れたミスト=ランブルの姿があり、ゴルゴーンから話は聞いていると、ローテーブルにいくつかの文献を差し出した。

彼の口から自分の家系は、アグナダム帝国で医療に携わってる記述があり、家に戻ってから再度文献を読み直したそうだ。


「私も改めて読んでは見たのだけど、古い“マヴロ語”だったから正確に読めないところもあったわ」

「ジャヴォールはマヴロ語なのか?」

「今とは言葉や字の形式は違うけど、街のおじいさんやおばあさん達はたまに使っているみたい」


地方の方言のようなものだろうか。

ミスト=ランブルは祖父母が健在なため少しだけ話や文字はわかるようだが、やはり今のマヴロ語とは違い、言葉や字体がクセの強いところが特徴とのこと。


ケイは積まれた文献の一冊に手を伸ばし、中を捲っていくと妙な記述を見つける。



【五大御子神の一人は不治の病のため一時的な処置を施すが、アスル・カディーム人はアフトクラトリア人を取り入れたことを後悔している】



「アスル・カディーム人は、アフトクラトリア人を造ったから後悔しているって言う意味か・・・ちなみにこの文献は魔人族が書き記したのか?」

「誰がというのは分からないけれど、この国には医療関係の家系が複数あるから、その先祖が彼らから聞いたことを書き記したみたい」

「なんであんたの家にあるんだ?」

「私の家も医療従事者の家系だけど、その中でもジャヴォールの医療をまとめているトップの家系だったと言われているわ。そのため、医療系の文献やそれに関わる歴史に関しては私の家で保管をしているのよ」


家系的に専門のトップであるのなら、その分野に関しての資料や文献があってもおかしくはない。


手にした文献には、五大御子神の一人の話が載っている。

恐らくこれを記した人物もアレグロが施術されていることは知っていたのだろう。

そうなると、不治の病とアフトクラトリア人との因果関係がわからない。

その辺はこの文献以外にも目を通したが、そのことについての記述が一切見当たらなかった。となると、もしかしたらアフトクラトリア人は不治の病を起こすきっかけを作ったのではないかと考えてみる。


「不治の病にかかった五大御子神はアレグロのことだろう。となると、それを何とかするべくアグナダム帝国とジャヴォールの医療関係者が延命処置の行動を取ったということになる」

「でも、インイカースの件と何が違うのよ?」

「五大御子神だからじゃないか?アスル・カディーム人の王の子供達である五人は国にとって重要なポジションだったとか」


シンシアからシルトが所持をしている大剣・インイカースの話を持ち出す。


インイカースには人魂魔石がはめられており、シルトの妻・スピサの魂が収められている。

病死し人魂魔石として施されたと聞いてはいたが、アレグロの処置とは何が違うのかとふと考える。アレグロが五大御子神だから本人と瓜二つの人形に施術をしたとなると、五大御子神自体の役割はかなり重要な可能性がある。


しかしその辺についても正確な事は分からないため、一旦その話を保留にした。



「ところでゴルゴーン、あんた宛てに預かった物があるんだ」


会話に区切りがついたタイミングで、ケイは鞄からとある物を取り出しゴルゴーンの前に差し出した。


羽翼族・バルトルから預かった二つの石版である。


アステリの石版とテレノの石版。この二つを受け取った経緯をゴルゴーンに伝えたところ、彼はやはりガラーにあったのかと安堵の表情を浮かべる。


「もしやこれが手に戻ってくるとはな」

「この二つはこの国にあるものか?」

「世界大戦前から我が屋敷の宝物庫に保管されていた品だ。儂も詳しいことは知らんが、アグナダム帝国時代からあったと聞いている」


何でも国に取って重要なもので、特にアフトクラトリア人には知られたくなかったという話も伝わっているようだった。


「ケイ、そういえば桜紅蘭にあった石版持っていたよな?」

「あ?あぁ~アレか~」

「もしやもう一つあるのか!?」

「まぁ、成り行きでそのまま持って来ちまったけどな」


アダムに言われたケイは、鞄からもう一つの石版であるシェメラの石版を取り出した。それについても経緯を説明し、同じような石版が三つあることから他の石版の所在を尋ねる。


「石版はこれだけか?」

「あと、もう一つ石版を所有しておる」


もう一つの石版は宝物庫にあるということで、ゴルゴーンは側に仕えている使用人に持ってくるようにと指示を出すと、五分ほど経った頃に厳重に保管されている木箱が運ばれてくる。


箱は質の良い濃い色の木製が使用されており、中を開けると石板と物を傷つけないようにシルク生地を使用したクッションが詰め込まれている。


鑑定に掛けると【フェガリの石板】と表示される。


しかし、どの石板も鑑定結果には※※※の装置に使用される。という表示しかされず、一体何に使うのか検討もつかない。


「この石板、何に使うのかしら?」

「鑑定しても詳細が表示されねぇんだ。たぶん何処かに使うんだと思うんだけど・・・あれ?そういや、四つしかないぞ?」


確かにケイ達の前にシェメラ・アステリ・フェガリ・テレノの石板が存在しているが、女神像と連動しているのであれば、もう一つシエロの姿が刻印された石板があるはずである。もちろんゴルゴーンに尋ねたが、これ以外に石板はなく完全に行き詰まりを感じていた。


ケイは、もしかしたら大陸を巡っていく内に見落としていたものがあったのかもしれないと思い悩む。


石板の使用以前に五つ目の所在が分からないとなると、アグナダム帝国へのヒントも途絶えてしまうのだが、もし仮に巡っていく中にヒントがあれば・・・と考えていたところ、ある場所を思い出す。


「そうか・・・“海底神殿”だ」

「海底神殿?それがどうしたんだ?」

「俺達がルバーリアに行った時のことを覚えてるか?あの時海底神殿は、俺に所有権が移ったって聞いたろ?それにアグナダム帝国があった時に人魚族と関係を持ったと考えると、そこにヒントがあるんじゃないかと思ったんだ」

「ということは、海底神殿がアグナダム帝国の入り口になるかもしれない、ってことか」

「俺の推測が正しければな」


確かにあの時【セキュリティ突破に伴い、メインシステムの再構築を完了致しました。これより海底神殿は、人族・ケイが所有者として譲渡されます】というアナウンスのようなものを聞いた記憶がある。となるとケイに権利が移り、過去の情報をまとめると行く価値はあるかもしれないと考える。


ケイはもう一度海底神殿へ赴き、石板の問題を含めて調べる必要があると結論づけたのである。

現状石板は四つしかなく、そのヒントは以前訪れた海底神殿ではないかと考えるケイ達。

一体この先にどんな真実が待ち受けているのでしょう?

次回の更新は11月25日(水)夜です。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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