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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
新大陸編
256/359

250、アレグロの急変

みなさんおはようございます。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

昨日は申し訳ありませんでした。

さて今回は、アレグロの急変に屋敷に戻るケイ達のお話。

「アレグロ!」


ケイ達が急いでゴルゴーンの屋敷へと戻ると、アレグロがいる二階の客室の部屋から切迫した男性医師の声が聞こえた。


「アレグロさん!しっかりしてください!」


中へと入ると、苦痛に顔を歪ませ痛みから逃れようとアレグロが暴れる。

彼女の身体を医師が肩を押さえ、助手の女性が安静にさせようと両足をを掴んで押さえつけている様子が見えた。

しかし暴れるアレグロの力が強いのか、力のない女性の助手が振り回されたため、彼女に変わってベッドの傍らに立っていたシルトが交代で両足を掴み押さえつけている。


「シルト!何があった!?」

『みんな戻ったか!アレグロが急に苦しみだした!』


シルトからアレグロが急に苦しみだしたそうで、その次の瞬間には背中にあった黒い模様のタトゥーがまるで意思を持っているかのように全身に張り巡らすように広がり始めたのだという。


ケイはアレグロに鑑定を施すと、儀式による浸食を示すタァークル率が90%を超えてた。


タトゥーのような黒い模様が全身に広がると同時にその数値が急激に上昇する。

今までも上昇を続けていたがここにきて急激に症状が悪化したことから、もしかしたら・・・と一抹の不安を抱く。


その間にもアレグロの身体はどんどん浸食し、両腕と両足が真っ黒に変色したことにより、両手足を押さえていた医師とシルトは驚きのあまり拘束を解き後ずさる。



「ぁぁぁぁぁあああああ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!」



いつもの彼女では到底出ない悶絶した獣のような声を上げ、ベッドの上でのたうち回る身体は凄まじい速さで首や胸まで黒く染まる。

表情は苦悶に満ちており、見開いた両目は女性の柔らかい印象とはうって変わり、白目が充血し、青い瞳に映された瞳孔が大きく開かれる。


「姉さん!」


タレナが落ち着かせようとアレグロの身体に触れようとしたが、その一切を拒絶するように振り払われる。


のたうち回ったアレグロの身体は、痙攣を起こし呪詛を吐く老婆のようなかれた声に変わり身体中が黒く変色しきると、今度は首から上が黒く染まり始める。

爪も歯も髪も目も黒く、まるで火に焼かれたような異様な色へと変わり苦悶の声がピタッと止まる。


そして再度大きく痙攣をすると同時に、その身体がボロボロとベッドの上で崩れ落ちた。


あまりの突然のことに一同が声を失う。

まさかそれが、身体の消失を意味していたとは夢にも思わなかったからである。



「姉・・・さん・・・・・・?」



ベッドの脇にいたタレナは、状況に理解が追いついていないのか呆然とした表情を浮かべ、その場にペタンと座り込んだ。


タレナはアレグロの消えたベッドにしがみつき、何度も名を呼んでは泣き叫んだ。

唯一の肉親である姉を失ったのだから無理もない。

そんなタレナにシルトが寄り添い、ケイ達もその状況に理解をしたのか全員が顔を青ざめる。


「ロ、ロザリンド様!?」


その状況にショックを受けたのかロザリンドが気を失い、使用人の青年が声を上げると、ポネアとミスト=ランブルが介抱に回り退出をする。


アレグロの消失、それが彼女の末路だった。



「まさか彼女があのような状態になるとは、儂ももっと早くそのことに気を向けるべきだった・・・」


タレナとシルトを除いたケイ達は、応接室にて頭を抱えたゴルゴーンから謝罪を受けた。


アレグロがいたベッドの上には、既に彼女が居た痕跡の一切が見当たらなかった。どんな原理かは分からないが、あきらかに人の身体が真っ黒にましてや消えることなど物理的にありえないのだから、そんなことになるとは想定していなかったケイ達やましてや謝罪するゴルゴーンに落ち度はない。


そういえば出会った当初に“一時的な処置”をされているのでは?という事を言っていたことを思い出す。


「そういや、あんたは初めにアレグロが“一時的な処置”をされているって言ったな?ということは、アレグロは何らかの方法で既に手を施されていたっていいたかったのか?」

「今はないが、我々の国に古くからそのような方法があると聞いたことがある。それはアフトクラトリア人から伝わったようなんだ」


そこでレイブンが、そういえば・・・とあることを口にした。


「ケイ達と別行動をした時にミスト=ランブルさんの屋敷にタレナと行ったんだ。そこでいくつか文献を見せて貰ったったんだけど、タレナがある文献に『黒腫』について書かれている部分を見つけたんだ」

「黒腫?」

「タレナが読んだ文献には、アスル・カディーム人特有の病気じゃないかと記載されていたようだ。さっきのアレグロの様子からもしかして、って思ったんだが・・・」


【黒腫】とは、アスル・カディーム人の特有の風土病の一種と思われ、身体のどこかしらに黒い斑点が現れ、数が増えるにつれ大きくなると全身を覆うような症状に至り命を落とす。しかも当時はその治療法がなく、読めない箇所があったが“何らかの方法”で進行を遅らせる処置をとっていた節があったようだ。


「じゃあ、アレグロは黒腫かなんらかの処置をとられていたってことになるな~」

「でも、それってなんなの?」

「さぁな。その文献を詳しく読まないとわからねぇな」

「それでは、儂からミスト=ランブル殿に話をつけておこう」


会話を聞いていたゴルゴーンが、ミスト=ランブルから文献の提示を依頼しておこうとケイ達に提案する。一瞬いいのかと迷ったが、ロザリンドの件もあることからゴルゴーンは快く承諾した。


「ところでケイ?少佐とブルノワは何処に行ったんだ?」

「えっ!?あ゛~また居なくなってるし~」

「そういえば、話の途中で扉から出るところを見ましたよ?」


アンドワールがサラッと口にし、「いや、止めろよ!?」という言葉を飲み込んだケイが、ため息をつき探しに行くかとソファーから立ち上がると、タイミング良くノックされ、開いた扉の隙間から先ほどの使用人の青年が顔を出す。


「あの~お取り込み中のところ申し訳ありません。この子達が二階の客室にいましたので連れてきたのですが・・・」


申し訳なさそうな青年の足元からブルノワと少佐が現れる。


どうやら先ほどまでいたアレグロの客室にいたようで、客室の対応に追われていた青年がそれに気づき連れてきたのだという。


「悪ぃな~ブルノワ、少佐、勝手に出歩いたら駄目だっつただろ?」

『ごめんなさぁい・・・』


でも・・・と続けたブルノワ手に何かが握られている。。


見ると橙色をした球体の様ななにかであることがわかり、ケイが出せと手を伸ばすとポトッと粘着物が付着した物体が手に落ちた。


「うわぁ・・・これ、少佐の涎じゃん!・・・ってかなんだこれ?」


橙色の球体は魔石特有の透明度の中に薄らとだが赤い何かが動いている。


「ブルノワ、これは何処にあったんだ?」

『おねえちゃんのへや』


一見すると魔物からたまに出る魔石に近いがそれをブルノワに尋ねると、どうやらアレグロが居た客室に落ちていたようだ。

ケイは妙な違和感を感じ、その橙色の球体に鑑定を掛けてみた。



【人魂魔石】 


人の魂が入っている魔石。特殊な技術で作製された。

魂:五大御子神・アレグロ



えっ?とあり得ない鑑定結果に呆けた表情を浮かべる。


アダムからどうした?と声を掛けられたので、その事を伝えるとケイと同じような表情ののちにまさかと口にする。


「ち、ちょっと待って!じゃあ、それにアレグロの魂が入っているってこと!?」

「俺の鑑定は嘘だったら別に表示されるから、さすがにこれは想定してなかった」

「ということは、インイカースと同じってわけか」

「経緯はどうであれ人魂魔石を施されているなら、もしかしたら今まで俺達といたアレグロの身体は別のものだった、って可能性はあるな」


シンシアとアダムはそんな馬鹿げた話はあるかと懐疑的な目でこちらを見やるが、事実ケイ達の前で真っ黒に染まり身体が崩れ落ちる様は、レイブンとタレナが文献で呼んだ“黒腫”の症状に当てはまる部分があることは否定できない。

しかし仮に人魂魔石を施したからといって病魔が蝕んでいる身体に戻すか、と考えるとその線もどうもしっくりこない。となると、ケイが発言した別に用意した依代に人魂魔石を組み込んだのでは、という線が濃厚である。


「お話中申し訳ないのですが、黒い破片はどうしたら良いのでしょうか?」

「黒い破片?」

「え、えぇ。先ほどの女性が居た場所に黒い石のような破片が散らばっていたので回収をしたのですが・・・」


使用人の青年は、持参したそれが入った麻の袋を手にケイとゴルゴーンにどうしたら良いのかと尋ねた。

ゴルゴーンはケイの方を見やり一任する素振りをみせ、見せてくれと使用人の青年から麻の袋を受け取り中を覗くと、黒い石というより黒炭に近い物体がいくつか入っていた。


【ドール体の破片】

人魂魔石を埋め込むための特殊な加工をされたドール体。

あくまでも本体の治療のつなぎとして使用されているため、耐久年数は三~五年ほど。


黒い破片の一つを取り出し鑑定を行うと、このような結果が表示される。


特殊な加工という部分が気にはなるが、そもそもアレグロの身体は偽りのものだったことは確定になる。そうなると、本体であるアレグロの身体はどこにあるのか?それに人魂魔石となった彼女はインイカースのように喋ることがない。


「そういやシルトの剣にも人魂魔石が埋められてたよな?アイツは喋るのに、これは喋らないのか?」

「もしかしたら、インイカースのように何かに装着しないの意思の疎通ができないんじゃないのか?」

「その可能性もある。こればかりはシルトに聞いてみねぇと分からねぇな」


頭を掻き、ここに居ないシルトが所持している大剣・インイカースを思い出す。


大剣についている人魂魔石はシルトの妻の魂が入っている。

そう考えるとアレグロとは状況が異なる部分があることから、これになにか理由があるのか?と考えてみたが、やはりシルトに聞いてみないと分からないなと思い直す。


さて、どのタイミングで尋ねれば良いのか。タレナのことを考えるとシルトに頼むタイミングを計りかねるケイであった。



アレグロの消失により、ケイ達はショックを受けます。

しかしブルノワと少佐がアレグロの魂が入った人魂魔石を手に入れ、なぜそうなったのかと疑問を浮かべます。

次回の更新は11月23日(月)夜です。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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