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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
新大陸編
255/359

249、一件落着からの・・・

皆さんこんばんは。

遅くなり大変申し訳ございません。

今回は、ロザリンドとミスト=ランブルのピンチとケイ達の出番回です。

「こ、これは一体・・・」


ロザリンドが呟いた二人の目線の先に、突如ダンジョンボスが現れる。


三つの頭を持つその異形は、ヤギの頭にヘビの頭、そして金色のたてがみを持ち鋭い牙をむき出しにしている肉食獣の頭をした何かがこちらを見据えている。

身体はミノタウロスたちのようなガッシリとした胴体に、背には黒い大きな鷲の羽根が強調され、大蛇の様な太い尻尾が捕食対象と認識している二人をもてあそぶかのようにユラユラと揺れている。


「これは、ちょっとまずいと思う」


顔を青ざめたミスト=ランブルは、ケイに成り代わっていることなど一瞬で吹き飛ぶほどこの状況を不利だと理解する。

本来ならこの場はロザリンド一人で対峙し、ミスト=ランブルはコウモリに化けて高みの見物をするはずだったのだが、第三階層からここまで同行していたため、ここで予定が狂ったことに焦りの色が浮かんでいる。


さすがに自分一人で姿を眩ますわけにはいかず、とりあえずこの場を何とかしようと、ロザリンドの前に立ちふさがる。


「な、何をする気だ!?」

「俺が注意を引くから、お前はさっき来た階段の方に走って逃げろ!」

「何を言っている!?あんなのにまともにぶつかってみろ!貴様がどうなるかわかるだろう!?」

「わかってるから言ってるんだ!いいから俺の話を聞け!」


二人が押し問答していると、ダンジョンボスのヘビの頭が口を開け、捕食しようと舌を出し牙をむき出しに迫ってくる。


ミスト=ランブルは寸前のところでそれに気づき、すぐにロザリンドの手を引くと左側の神殿調の柱の陰まで駆け抜けた。

後方で歯が噛み合ったガシン!とした音が辺りに響き、動きを始める気配を背中で感じる。


二人は柱の陰に隠れるが、ダンジョンボスはこちらの位置を把握し尚且つ下手に行動が出来ないことをいいことにジリジリとにじり寄ってくる気配がした。


(ロザリンド、ここは俺が気を引かせるからさっき来た階段まで走って逃げろ)

(本気か!?)

(あんたが他に身を隠せば、少なくとも二人共やられはしないだろう?)


悪い冗談のようなケイ(ミスト=ランブル)の提案に、ロザリンドは彼は自分を逃がそうとしている事を理解する。それと同時に何とか二人で切り抜けないかと提案したが、ダンジョンボスは待ったなしでこちらににじり寄っているため、実行するならぶっつけ本番のような状況で今しかないと腹を括る。



と、ドーンという衝撃と揺れが辺りに響き渡った。


轟音と同時に地響きを身体中で感じ、グラグラと揺れた足元に反射的にロザリンドをミスト=ランブルの方へと引き寄せる。二人は何が起こったのか分からず、柱の陰から恐る恐るダンジョンボスがいる方向へと顔を出した。



「あっぶね~~~、危うくミスト=ランブルまで巻き込むところだったぜ!」



異形のダンジョンボスの姿に替わって、そこにはケイの姿が仕事をしたと言わんばかりに満足げに仁王立ちをしている。


左に目線を移すと、先ほどの異形のダンジョンボスが壁に当たった衝撃で折れた柱に頭をぶつけて目を回している姿が見えた。

唖然としている二人にケイが気づき手を振ると、ロザリンドはそこで初めてケイが二人居ることを知る。

一体どうなっているんだ?と言わんばかりに相互の姿をものすごい勢いで見比べ、説明を乞うために本物のケイの方に詰め寄った。


「なんで貴様が二人居るんだ!?」

「なんでって、そいつは俺に化けたミスト=ランブルだからさ」


ケイの襟首を掴み問い詰めるロザリンドに、さらっと真相を口にすると信じられないと言わんばかりにケイに化けたミスト=ランブルの方へと向き直る。


「ほ、本当なのか・・・?」

「ごめんなさい。実はあなたの行動に思うことがあって彼らに協力していたの」


左手人差し指にはめられた指輪を抜き取ると、中性的なミスト=ランブルの姿へと戻る。


その表情は、ロザリンドに対して偽ったことの罪悪感からか浮かない表情をしている。しかしいつもならだましたな!とか卑怯者!というワードが出るはずの彼女だが、さすがにこの状況下では色々と思うことがあったのか、「そうか・・・」と一言呟き閉口する。


「まさかあんなのが出てくるとは思わなかったわ」

「俺が創ったダンジョンだからな。気合を入れて鬼畜感増量にしたから、正直あいつ(ロザリンド)が途中で挫折するかどうかは分からなかったけどな」


まるで悪びれることもなくカラカラと笑うケイに、さすがのミスト=ランブルもその清々しいまでの反省のなさに思わず口からため息が漏れる。

もちろん反省の意味を込めて、ケイの後ろからシンシアが腰目がけて蹴り飛ばしたのはお約束である。



「きさ・・・いや、ミスト=ランブル殿。今まで本当に申し訳なかった」


ミスト=ランブルの前に立ったロザリンドが、頭を下げ謝罪の言葉を口にした。


謝罪を受けたミスト=ランブルは、一瞬驚きの表情を浮かべ、咄嗟に言葉が浮かばなかった様子で彼女の次の言葉を待つ。


「私は、今まで自分勝手なことをしてきた。幼少の頃に起きた出来事を盾に自分を守り、それ故に他人の事を何も見ていなかった。こんな時に言う言葉かわからないが、さっきあなたがあの魔物から私を逃がそうとしてくれたことが嬉しかったし、何も出来なかった自分が情けないと思った」

「そんなことないわ。確かに吸血種は豪魔種のように力や戦闘の技術はないし、それに私は女性っぽい口調や仕草をしているでしょ?あなたが軟弱者と言った気持ちも理解できるわ」

「ち、違う!あなたはそんな人じゃない!」


まるでラブロマンスのワンシーンを見せられているケイ達は、二人の会話に口を出して良いものかと考える。


「ねぇ、なにこの状況?」

「まぁ~“吊り橋効果”ってやつじゃねぇ?」

「なによそれ~?」


冷めた表情でシンシアが眺め、ケイがさぁ~?と肩を竦める。


「お二人さ~ん?とりあえずその続きはここを出たあとにしねぇか?」

「「あっ!」」


手を繋ぎ互いに尊敬の言葉をたたえ合っている二人に声を掛けると、周りに人がいることに急に恥ずかしさを覚えたのか、繋いだ手を離し恥ずかしそうにそっぽを向いた。



ケイ達が脱出ゲートからダンジョンの外に出ると、心配そうな表情のゴルゴーンとアンドワールの姿があった。


ケイ達が出てくるところを待っていたのか、少人数の護衛と共にダンジョンの外で待っていたようで、ゴルゴーンは姿を見るまでうろうろと辺りを歩き、アンドワールは心配そうに外で待っていた。


そして二人がロザリンドの姿を見るや慌てて駆け寄ったかと思うと、無事を確かめるように抱擁する。

予めケイから新ダンジョン計画のことを聞き了承をしたものの、生死に関わる内容にはならないと認識してはいたが、やはり親としては一人娘としての心配が尽きない。

しかし寸前までロザリンドとミスト=ランブルは互いに手を繋ぎ、二人の姿を見るやパッと手を離したところを見たゴルゴーンは、別の意味で娘を心配することになる。


「お父様、お母様・・・」

「ロザリンド、よく無事でいてくれました」

「もしかして、二人もダンジョンのことを?」


二人が頷いたことから、ロザリンドはいかに自分が未熟なのかと痛感させられた。


いまさら遅いかもしれないが、今後は自分を庇ってくれたミスト=ランブルやいつも心配していた両親とポネアのために心を入れ替えようと、自分自身に厳しく他人に寛大になろうと心に決める。


「お父様!ミスト=ランブル殿との婚約話を進めさせてください!」

「ロ、ロザリンド!?今、なんと?」

「私は今まで他より強い人間だと勘違いをしていました。しかしミスト=ランブル殿が危機に陥った際に私を庇ってくれました。そんな彼を今まで罵っていたのが恥ずかしく、これからは彼やお父様、お母様のために死力を尽くしたいと思っています!」


今までの性格とは真反対になったロザリンドを見て、ゴルゴーンとアンドワールは大層驚いた。


一方ダンジョン見学のためにケイ達に同行していたポネアは、そんなロザリンドの姿に感銘を受けたのか、ポケットからハンカチを取り出し感激の涙を拭う。

まるで長年慕っていた老執事のような立ち振る舞いに、こっちもか~とケイ達は気持ち的に冷めた様子で事の成り行きを見守る。


「ゴルゴーンさん、僕からも彼女との関係を継続させてください。それに彼女はとても可愛らしい一面もあり、ちゃんと考えることが出来るいい子なんです」


彼女は今までは気を張っていただけだと続けたミスト=ランブルに、ゴルゴーンの目が結婚の挨拶をする男女の前に座る頑固親父のような表情へと変わる。


やはり婚約・結婚となると父親としては厳しい眼差しになるのだろう。

そんな彼とは正反対に喜々の表情を浮かべたアンドワールは過程がどうであれ、それでいいじゃないの!と二人を後押しする。


「先日ミスト=ランブル殿は、娘と婚約解消をしたそうな物言いをしていたと記憶していたが?」

「あの時はあの時です、人の考えは刻々と変わっていきます。それに、僕は彼女の全てを知りません。これからよりよく関係を続けて行く上で、一緒になることに問題はないですし、そもそも彼女との縁談を持ちかけたのは貴方ですよね?」

「ほぉ~?その言葉を君に返そう。私も考え方も変わるのでね・・・」


笑みを浮かべたゴルゴーンとミスト=ランブルの背景に、睨みを利かせた虎と大蛇の姿が見える気がする。


余所様の事情に口を挟むことはないが、笑みを浮かべたままのアンドワールと二人の間をオロオロとした表情で見つめるロザリンドの姿に、一般的な家庭の構図が垣間見える。



「あー…取り込み中のところ悪いけど、そろそろ俺たちは本来の目的に戻っていいか?」


そんな状況で土足で会話に踏み入るケイの発言に、仲間たちは肝が据わっているなと別の意味で関心を示す。


ゴルゴーンがこちらを向き、本来の目的?と疑問を投げかける。


そもそもジャヴォールに来た目的は、アレグロの容態解明と羽翼族のバルトルから預かった石板の返還の件である。

そろそろ本題に移りたいと思っていたところに、屋敷の使用人と思しき不死種の青年が駆け込んでくる姿が見えた。



「ゴ、ゴルゴーン様!大変です!」

「どうした!?」

「客室で休まれている女性の様子が…ゲホゲホ!」


青年はシルトからアレグロの様子が急変したようで、他の者が医師を呼び、自分はゴルゴーンと客人の連れであるケイ達を探していたという。

息を切らした使用人の青年の話を聞いたケイ達は、すぐさまアレグロの元に向かうため、ゴルゴーンの屋敷へと急いで戻ることにした。

ロザリンドの件がひと段落したころ、慌てて駆け付けた使用人から屋敷で休んでいたアレグロの様子が急変したと聞いたケイ達は、急いでゴルゴーンの屋敷へと戻ります。

次回の更新は11月20日(金)夜です。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースで活動していきますので、また来てくださいね。

※誤字脱字または表現の提供をありがとうございます。

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