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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
新大陸編
254/359

248、新ダンジョン・パニックハウス(5)

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

今回は前回の続きで、新ダンジョン・パニックハウスにてロザリンド達がアワアワする話です。

「お、おい!まだ仕掛けは解けないのか!?」

「今始めたばかりだろ?急かすなよ~」


ロザリンドが仕掛けを解いているケイ(ミスト=ランブル)に問い返すと、まだ始めたばかりなのだと諭され、その様子からかこの場所が怖いようでしきりに辺りを見回している。確かにダンジョンで謎解きなど悠長なことをやっているなと思わなくもないが、ここはあくまでもケイが創造したダンジョンである。


何かあるのは間違いない。


今いる物置部屋には、白いマネキンが六体部屋の隅に置かれている。

その全てには首から上はなく、女性のスタイルを強調させたモノが天を仰ぐように両手を広げたり、膝をつき祈るようなポーズが取られたものが存在感を強調している。


次に壁に目を移すと、緑色の宝石を首から下げた白いドレスの女性の絵がある。


品のよさそうな柔らかな笑みを浮かべた女性の上半身が描かれているのだが、一見なんの変哲もない絵に見えてもダンジョンの物置部屋という特殊な環境のせいか、それも恐怖を抱かせる要因となっている。


仕掛けを解いているケイ(ミスト=ランブル)の傍で、いまだにロザリンドがしきりに辺りを見回している。


薄暗い室内のせいか、ここには二人しかいないはずなのだが誰かに見られている気がしたからである。強がっていたロザリンドもさすがにこの状況にはこれ以上の強気は出てこないようで、ただ早く仕掛けを解いてここから出たいという気分にさせる。


一方ケイに扮したミスト=ランブルは、予めレイブンとタレナからこの仕掛けのことを聞いていたため、その通りに解くことに専念している。


今彼が解こうとしている仕掛けは、3×3の正方形のマス目にスライド式のピースが八つはめ込まれている。そこに左上から1~8を順番に並び替えするだけの簡単な仕掛けなのだが、スライドをしながら数字を合わせるというルールが設けられているせいか、少し頭を使わなければいけない場面に遭遇している。


横目で隣で立っているロザリンドの様子を窺うと、気味が悪いのか両腕をさすり気を紛らわせようとしている姿が確認できる。

もともと頭を使うことが苦手と聞いていたため、もし彼女一人だったらどうなっていたんだろうと疑問が残るが、自分もこんな頼みをされるとは思ってもいなかったので、お互い様なのだろう。


1・2・3・4…と数字が順番に揃っていくなか、後ろにいたロザリンドから呼び止められる。


「なんだよ?あとちょっとだからもう少し待てくれよ~」

「あ、あの…この部屋さっきから誰かに見られてる気がするんだ」


暗闇でもわかるほどのロザリンドの戸惑った様子に、一旦手を止めて辺りを目視してみる。

部屋の隅にはマネキンの姿があり、壁には女性の姿が描かれた絵画が飾られているだけなのだが、たしかに彼女の言っていた通り妙な感覚を感じた。

そういえばレイブンとタレナから、もしロザリンドと一緒になることがあったら第三階層での行動は慎重に行えと聞いたことを思い出す。


もしかしたら何かあるのかもしれないと思っていたのだが、それよりも先に残りの仕掛けを解こうと再度向き合うことにした。


仕掛けと向き合うことになったケイを余所に、先ほどの妙な違和感と視線を強く感じたロザリンドは、いつでも戦えるようにと腰に掛けられた剣に手を掛け、息をひそめながら注意深く物置部屋に目を光らせた。


気持ちで負けてはならないと自分を鼓舞し、視線の正体はどうやら壁に掛けられている女性の絵画のせいではないかとロザリンドが考える。

近くによると笑みを浮かべた女性の絵は、こちらに目線を合わせているつもりではないものの絵の構造上、どの角度からその絵を見ても同じように目線が合わさっている感覚を覚える。



カチッ。



ここでケイ(ミスト=ランブル)が悪戦苦闘して取り組んだ仕掛けが解除される。


扉が開いたぞという声と同時に振り返ったロザリンドが、彼の後ろに異形の何かが潜んでいたことに驚き声を失う。


「う…」

「う?」

「う、後ろ…」


顔を青ざめさせたロザリンドが、向かって左後方を示す。


その意図がくみ取れないケイ(ミスト=ランブル)が振り返ると、驚いたことに先ほど隅にいたマネキンの一体がすぐ後ろに立ち尽くしているところが見えた。



『あははははははははははははははは!!!!!!!!』



それに驚き一歩たじろくと同時に、ロザリンドの後方に掛けられた絵から女性の笑い声が聞こえる。


さきほどまで穏やかな笑みを浮かべていた女性の絵は、気が狂ったように不気味な笑みを浮かべながら目を見開き、こちらをあざ笑うかのように声高く笑い声をあげている。


「な!なんなんだ!?」

「わ、私が知るわけないでしょ!?とにかくここを出ましょう!!」


てんぱりすぎたミスト=ランブルは、いつもの口調にもどっていたものの同じように慌てたロザリンドはそれに気づくことはなく、後方から残りのマネキンがギクシャクとした動きでこちらに迫ってくる。


とっさにロザリンドの腕をつかみ、仕掛けを解いた扉から第四階層へと駆け足で向かおうとすると、その後を追うようにマネキンたちも追いかけてくる。

二人は慌てて解除した扉に飛び込むと、それと同時に飛びかかってきたマネキンたちが、締まる扉に体当たりした音だけが返ってきて止んだ。


どうやらマネキンたちは、他の階に進むことができない様子だった。



第四階層は、溶岩が流れる川が一面に広がっていた。


川を覗き見ると溶岩から気泡がポコポコとわき上がり、文字通りRiver of Hell(地獄の川)と言ってもいいほどの灼熱地獄が二人を待ち構えている。


ミスト=ランブルは、レイブンから第四階層は何が起こるか分からない構造になるかもしれないので、決してコウモリの姿を解かない方が良いと助言されたのだが、ロザリンドと行動を共にしているため、その助言がなさない状態になっている。


「ここは本当に可笑しなダンジョンだな~」

「この熱のせいで体力を無駄に消耗するようだから、早く抜けようぜ」


肌で熱風を感じる二人からじわりと汗が噴き出る感覚を感じ、ロザリンドは思わず袖で首元を拭い、ケイに変装しているミスト=ランブルも想定外の階層に次の階層へ早く向かうべきだと考えている。


二人は次なる階層への扉が辺りにないか見回していたが、ロザリンドがあそこ!と指を指す。


見ると、反対側の川岸に茶色の扉がぽつんと立っているのが見え、その場所に行くには溶岩の川の間にぽつぽつと岩が飛び石のように存在しているので、それを飛び越えればなんとか行けそうな感じがした。

しかし、落ちればどうなるか分からない状況で、引き返す事も出来ずにさすがのロザリンドも頭を悩ませる。


「四の五の言っても仕方ないみたいだから、岩に飛び移りながら渡るしかないな」

「な!何を言ってるんだ!?さすがにこれでは無理があるだろう!?」


いつもなら我先にと突き進むロザリンドだが、さすがにこの状況では尻込みをしている様子で、何かを言いたげに口をもごもごさせている。

ミスト=ランブルは彼女の態度に理解はしているものの、このままここに居ても仕方がないと早々に考えを切り替え、躊躇しているロザリンドの傍まで歩み寄る。


「ど、どうしたんだ!?」

「いつまでもここに居るわけにはいかないだろ?とにかく先へ進むから、あんたは今から絶対に動くなよ?」


ケイ(ミスト=ランブル)は彼女に念を押してから、身体を横向きにさせそのまま抱き上げた。


慌てたロザリンドが何をする!だの下ろせ!だの言ってくるが、腰が引けているのに渡れるのか?と尋ね、言葉に詰まる彼女に頼むから大人しくしてくれと再度声を掛けると、抱きかかえたまま溶岩が流れる川に浮かんでいる岩を飛び移りながら進んで行った。



「はい。到着」



反対側の川岸まで無事に辿り着くと、ロザリンドを地面に下ろしたのだがあまりの恐怖だったのか、彼女はそのまま地面に座り込んだ。


「おい、大丈夫か?」

「あ、あぁ。だいじょ・・・いや、少し待ってくれ」


本気で恐怖を感じ腰を抜かした様子のロザリンドは、情けないと思いつつも立ち上がろうとする彼女に、手を差し伸べるケイ(ミスト=ランブル)に申し訳なさを感じた。

あれだけ罵声を浴びせたのに、目の前の男は嫌な顔をせずに自分に付き合ってくれた。あのまま置いて行けばいいのにと思ったのだが、それが顔に出ていたことを察したケイ(ミスト=ランブル)は、ダンジョンに人を置いて行くほど鬼畜じゃないと口にする。


「あれは俺でも肝が冷えた」

「大丈夫な顔をしていたようだが?」

「そんなわけないさ。誰だって死にたかねぇだろ?俺だってあんたを抱えて川を渡るとは思わなかったけど、勝負以前に困ってる奴を放置するほど落ちぶれちゃいないさ」


ひょうひょうとしているケイ(ミスト=ランブル)の態度に、ロザリンドはなぜだか安心感を覚える。


もし幼少期のあの時にケイのような人が居れば、自分の人生も別のものになっていたのではないか?そんなことがふと頭の中をよぎる。

今までその出来事を盾に、自分を守ると見せかけて他人に牙を剥き傷をつけてきたのではと、ここでそんな気持ちを感じ、急に申し訳なさと自分の不甲斐なさに今までの自分を殴りたいと思った。


過去は変えられないが、ここを出たら父や母、ポネアや町のみんなにちゃんと誤ろうとそんなことが浮かぶと大事にその思いを頭の片隅に留めておいた。



二人が第四階層への扉を開けると、下に続く薄暗い階段が姿を現した。


明かりがない状態で階段を下ることは少し危ない気がしたが、幅は人が一人通れる程しかなく、上を見上げると天井が見えないくらい高く漆黒の闇が続いている。


「わっ!あ、明かりあったんだ」


階段を下っていくと、ある一定の場所から壁掛けたいまつが青く灯る。


ケイ(ミスト=ランブル)が途中で声を上げ、進むにつれて等間隔で同じような明かりが歩調を合わせるように辺りを照らしていく。


ミスト=ランブルは第五階層が最後だと聞いており、予定ではロザリンドとダンジョンボスが対峙することを聞いていた。しかし今、彼女は自分と一緒に行動を共にしているので、戦闘能力のない自分は果たして一緒に出られるのかと不安を感じていた。


階段を下りきると、神殿調の内装が垣間見られる場所に辿り着いた。


明かりが灯っていないが広さがかなりあるようで、奥には暗闇に蠢く何かの影が見える。

ロザリンドがその物体を目視すると、腰にかけた剣に手を掛けたまま奥へと進み、ケイに扮しているミスト=ランブルも彼女を一人にするわけには行かないとその後を追う。


その物体に注視したまま二人が中央まで歩み寄ると、部屋の左右からたいまつの光が灯り、それぞれ時計回りに室内の壁掛けたいまつが灯る。


「なっ!?」

「う、うそでしょ・・・」


明かりで全体が露わになった物体に、一言で表すなら三体の動物が融合したような異形の姿をしていた。これがダンジョンボスであることは瞬時に把握していたが、見たこともないその姿に二人は唖然とした表情でそれを見上げたのだった。

新ダンジョン・パニックハウスにて、紆余曲折を得て第五階層に辿り着いたロザリンドとケイに扮したミスト=ランブル。

異様な姿のダンジョンボスにどう攻略していくのか!?そしてケイ達の出番は!?

次回の更新は11月18日(水)夜です。


いつもご高覧くださりありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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