表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
新大陸編
247/359

241、タウルスの力比べ

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回は、ミスト=ランブルのことでレイブンとタレナが行動すると共にロザリンドに挑まれたケイがタウルスの力比べへと足を運びます。

「貧血のようですね」


ミスト=ランブルが倒れてほどなくしてから屋敷に医師が到着し、診察を受けた結果はただの貧血だった。


「ところで輸血は定期的に行っていますか?」

「はい。二日に一度輸血パックをゴルゴーン様から提供して頂いていますし、ミスト様はそれをお召しになっております」


険しい表情の医師が使用人の内の一人に尋ねた。


輸血?とレイブンとタレナが首を傾げていると、もう一人の使用人が吸血腫には血液を必要とする人もいることが語られる。


特にミスト=ランブルは特殊な体質の持ち主で特定の血液を必要とするため、今までは市場でも特殊な血液を取り扱っている店とやりとりをしていたが、ここ数年はロザリンドの件もあり、ゴルゴーンの計らいでミスト=ランブルに合った血液を取り寄せて貰っているそうだ。


しかし使用人から話を聞いた医師は、どうもおかしいと首を捻る。


ゴルゴーンから提供されている輸血を二日に一度飲んでいるといってはいたが、詳しく調べたところ、本来体内循環されるはずの栄養素が不足しているというのだ。

それは血液を必要としている一部の特異体質の吸血種にとっては死活問題で、人間で言うところの栄養失調と同じことになる。


「でも私達が喫茶店に一緒に居た時に、吸血種に人気の飲み物を飲んでいたようでしたが、もしかしてそれが原因では?」


タレナが先ほどの喫茶店のやりとりを医師に伝えたところ、ミスト=ランブルの場合は、特定の血液からしか栄養を取り入れることが出来ないが、他の血液を摂取しても身体的に問題はないという。感覚的には水を飲むことと大差ない。


そうなると、考えられる問題としては提供されている血液が別のものと入れ替わっているかあるいは別の要因が可能性として上げられる。


「あの、提供されている血液を調べて貰うことはできますか?」

「血液ですか?私の方は実物があれば、すぐにお調べできますが・・・」

「それでしたらすぐにお持ちします」


使用人の一人が退出し、ほどなくして血液が入った袋を持って戻ってくる。


「こちらが、提供されている血液です」

「拝見いたします」


使用人から血液が入った受け取った医師が鞄からいくつかの道具を取り出すと、まずは底の浅い円形状の皿に血液を少量流し込む。

次に医師が持参した薬品が入っているであろう茶色の瓶に、ピンセットで掴んだ綿を浸し、それを血液が入った皿の中に入れると綿が血液を吸い取り、綿の色が黄色に変色する。


「あの、これは何をしているんですか?」

「これは血液の中に含まれている栄養素を調べるものです。栄養素が多い場合は、この綿の色が赤く染まり、栄養素が低下すればするほど緑色に近づいていきます」


医師が持参した薬品は、魔人族の医師の間ではもっともポピュラーな検査方法の一つである。地球でいうところのリトマス試験紙のような役割に近く、8割前後の正確さであることが実証されているそうだ。


医師はその検査結果を目にまたもや唸っている。


どうやら提供された血液の栄養がかなり悪いようで、提供元の個体に何らかの影響があるのではと考えを示す。


そうなると提供元であるゴルゴーンに話を聞かねばならないことは明白で、レイブンとタレナは自分たちは彼に世話になっているので、その当たりを聞いてみることが出来るかもしれないと、医師と使用人の二人に提案をする。


「それでしたら、先ほどの検査結果を記入したカルテをゴルゴーン様に提出願います。私はゴルゴーン様と個人的に付き合いがあるもので、渡して頂ければ伝わるかと思います」


医師から手渡された用紙には、先ほどの検査結果と医師のコメントが寄せられており、レイブンとタレナはそれを承諾すると、ミスト=ランブルの屋敷を出て、ゴルゴーンの屋敷へと急いで向かったのであった。



「ここが“タウルスの力比べ”か?」


時を同じくしてロザリンドに勝負を挑まれたケイと部外者なのに巻き込まれたアダムとシンシアは、ゴルゴーンの屋敷の敷地内にあるとある場所へと向かっていた。


ケイ達が向かった場所は、屋敷の敷地内北西にある小さな祠の様な場所だった。


ロザリンド曰く、ここが【タウルスの力比べ】と言われているダンジョンで、本来なら族長であるゴルゴーンに許可を得ねばならないのだが、ケイがそれを指摘すると、ことあるごとに軟弱者!だの怖じ気づいたか?などとロザリンドから変な返しをされる。


脳筋という言葉がぴったりだなと思いながらも、ここまで話が合わず執着している彼女にケイ達は辟易した様子を見せる。


「それなら私は先に行く!まぁ、お前が私より先に“アイツ”を倒せるとは思わんがな!」


準備運動と共にロザリンドはケイを一瞥すると、鼻を鳴らして嘲るような表情を見せた。

ケイは「はいはい・・・」と半分聞き流していたが、その後ろでシンシアが「こいつぶん殴ってやろうか!?」と鬼の形相で拳に力を入れ、それを羽交い締めするようにアダムが押さえている。


そんな各々の心情をくみ取れないのかするつもりがないのか、ロザリンドは踵を返すと祠に向かって全力疾走するように走り去ってしまった。


「ほんと~~~になんなの!こっちの話なんてちっとも聞いてないじゃない!」

「シンシア、落ち着けって・・・で、ケイはどうするんだ?」

「はぁ~、面倒くさいけどやらないとボロカス言われそうだしな~」


押さえていた憤りを地下駄を踏むように発散させているシンシアを余所に、仕方がないとケイは行ってみるだけ行ってみると伝える。


アダムはブルノワと少佐の事もありついていくと言い、シンシアはここまで話の聞かないロザリンドに何かを言わないと気が済まないようで、三人は先に入っていった彼女に続くようにタウルスの力比べの内部に入って行った。



「ねぇ、ここって本当にダンジョンなのかしら?」

「どうみても、屋敷で使っている道具が置いてあるのが見えるんだが?」

「さぁな。あいつ(ロザリンド)の言っていることはよく分からねぇ」


ロザリンドの言っていたタウルスの力比べに入ると、倉庫のような内装に大型の機織り機や使用していない農具が並べて置かれているのが見えた。

そのほかにも骨董品らしき箱や布に包まれている絵画らしき四角い何かが立てかけられており、一般的にある納戸のような様子があるのだが、ケイの鑑定やマップではその下に何層ものダンジョンの形状が確認できる。


「普通の倉庫みたいだけど、ダンジョンへ続く階段があるってこと?」

「どうやらそのようだな。俺の鑑定とマップだと、下に何層も広がっているから間違いではなさそうだ」

「でも、本当にゴルゴーンさんに話をしなくていいのか?」

「何か言ってくればあいつ(ロザリンド)に絡まれたって言えばいいんじゃね?」


ケイはとっとと終わらせたいがため先へ進み、アダムとシンシアは大丈夫なのかと疑問を抱えながらその後に続く。


現在地から少し奥に進むと、ダンジョンへと続く木造の階段が見えた。


階段を下るとある一定の階から周辺の状況が一変し、どこかの坑道を彷彿とさせる内部が眼前に広がる。後方を向くと先ほど通ってきた階段が見え、一方通行ではないようだと確認できる。


「あいつ、結構進んでるな」

「ロザリンドのことね。どのくらいまで進んでいるの?」

「この下を全力で走り回ってるみたいだ」


ロザリンドの方はケイ達とは違い、猪突猛進のごとくダンジョンを進んで行く様子が見られる。


予めケイはマップでロザリンドの居場所をマークし、その動向を把握していたのだが、それと同時に彼女が言っていたこのダンジョンは果たして本当にダンジョンなのかと疑問が浮かぶ。

その証拠に下に続く階段を三階分下りたのだが、一階は倉庫で二階は何かの制御装置が並び、三階は防壁のような堅い質感の壁だけがある部屋と、どうもダンジョンとしての様子が見られない。


そして今居る階からようやくダンジョンのような光景が広がっていることから、ケイ達は疑問を解消出来ずにいた。


「ん?少佐どうした?」

『ワウ!』


正直面倒くさいと思いつつも先に進もうとしたところ、少佐がとある位置からケイ達の方を向き立ち止まっている姿が見え、ケイが行ってみると、ショーンが地面の臭いを嗅ぎ、何かを見つけたのかこちらを見上げて小さく吠える。


「これは・・・」


少佐が立っていた地面を指でなぞると、わずかだが直線的な切れ目が入っている。


大きさは1.5m×1.5mほどの正方形で、取っ手や持ち手の穴が見られないことから何か仕掛けがあるのではと考える。


「ケイ、何か見つけたのか?」

「これを見ろよ。ここ、普通のダンジョンじゃねぇのかもしれないな」

「どういうこと?」

「ここだけ変な切れ目があるんだ。もしかしたら何かの仕掛けがあるのかもしれない」


アダムとシンシアに地面にある正方形の切れ目を指すと、ダンジョンの仕掛けの一部なのかと考え、先へ進む前にこの場所を調査しようと三人は部屋を探索することにした。



時を遡ることケイ達がロザリンドとタウルスの力比べへと足を運んでいる頃、レイブンとタレナはミスト=ランブルのことをゴルゴーンに伝えるべく、屋敷へと急いで戻って来た。


「あら?レイブンさんとタレナさんじゃないですか?」


門を抜け、屋敷の入り口へ向かう途中でポネアが二人を見つけ声をかける。


「ポネアさん!今、急いでいるんです!」

「何かあったのですか?」


ただならぬ様子の二人にポネアが問いかけると、二人はミスト=ランブルの屋敷に赴き、そこであったことを彼女に伝えた。

その話を聞いたポネアがまさかと驚きの表情を見せ、このことをゴルゴーンに説明しなければならないと続けると、彼女もまたロザリンドの姿が見えないため、ゴルゴーンに相談するべきかと思案していた様子だった。



「あ!ポネアさーーーん!!」



屋敷の北側からツナギを着た青年がポネアを呼んだ。


「ポネアさ~ん!何とかしてくださいよぉ!」

「どうかしたの?」

「また、ロザリンド様が制止を振り切って“タウルスの力比べ”に入って行ったんですよぉ~。しかも今回は客人を巻き込んでいるみたいでぇ~」


泣きついている青年を横目にレイブンとタレナは“タウルスの力比べ”のことをポネアに尋ねると、地下で飼育している家畜やミノタウロスがいる場所だと述べる。


今、泣きついている青年は、家畜やミノタウロスを飼育している新人の飼育員で、ベテランの飼育員たちが入っていくロザリンドを止めようとしたのだが、逆にこてんぱんにされて突っ切られてしまったという。


しかも、ロザリンドの後に幼女と三つの頭をした犬を連れた若い人が三人入って行くところを見たと青年から聞かされると、レイブンとタレナはケイ達のことかもしれないとポネアに伝える。


「それなら今行けば間に合うかも知れないわ。悪いけど、あなたはこのことをゴルゴーン様にお伝えして頂戴!私はロザリンド様の後を追いかけます」

「申し訳ありません!よろしくお願いします!」

「ポネアさん、俺達も行きます!」

「お手数をかけます。是非お願いします!」


レイブンとタレナは、ポネアと共にケイ達が向かったタウルスの力比べへと向かったのであった。

ロザリンドが示すダンジョンは、ケイ達が認識している場所と少し違う事に疑問を抱く。

一方でミスト=ランブルのことをゴルゴーンに伝えるべく戻ったレイブンとタレナは、タウルスの力比べで暴走しているロザリンドの話を聞き、ポネアとその場所へと向かうことになります。

次回の更新は11月2日(月)夜です。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ