表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
新大陸編
246/359

240、巻き込まれ

皆さんこんばんは。

少しの間お休みをして申し訳ありません。

今日からまたマイペースに活動していきます。


さて今回は、完全に巻き込まれたケイ達のお話。

「・・・で、これはどういうことなんだ?」


屋敷の東側に広がる広場にて、アダムとシンシアが理解できないといった表情でとある一幕を見つめている。


芝生で息を切らせて大の字になっているロザリンドと、その傍らでケイが水の入ったコップを悠長に飲みながら彼女の様子を観察している。その傍らにはブルノワと少佐が遊び疲れたのか、胡座をかいたケイの足元に丸くなりながら眠っている様子が見られる。


「何怒ってるんだよ?ただ、ブルノワと少佐がこいつ(ロザリンド)と遊びたそうだったから遊ばせてやってただけだ」


ロザリンドの様子から、どう見ても彼女の方がブルノワと少佐に遊ばれていた感が否めないが、その辺はどうでも良いのか残りの水を飲み干してから、眠っている彼らを抱きかかえる。


「遊ばせたわりには、何故彼女はあんなに疲弊しているのかしら?」

「あいつが街でのやりとりに難癖つけてきたし強いことに執着していたから、こいつらを遊ばせたら強くなるって言ったから~」

「そんなわけないでしょ?なにでたらめなこと言ってるのよ!?」


呆れたとシンシアが頭を振り、アダムがそれを信じるロザリンドの行動になんとも言えない表情を浮かべる。


そんな話の中心にいるロザリンドは、最初こそ息を整えるためにその場に大の字になっていたのだが、しばらくして体力が戻って来たのか勢いよく起き上がると、ケイに次は貴様だ!と指を指した。


「ちっ、まだ諦めてなかったのかよ?」

「なんだその言いぐさは!?私の辞書に諦めるという言葉はない!」

「じゃあ、あんたがいう“強さ”ってなんだ?」

「そんなの“力”のことに決まっているだろう!」


当然と言わんばかりに腰に手を置くロザリンドに、随分と抽象的な表現の仕方だなと疑問を浮かべる。


力という言葉にはいろいろな表現が含まれている。

例えば自分の大切な者や仲間を守るために持つことだったり、逆に私利私欲のために略奪を繰り返すためのものだったりと、その意味の幅は大きい。

ロザリンドが言う力という意味は、前者でも後者でもなく、自分自身の為に力をつけるといった意味あいであることは、会話の中で認知している。


何かを得るためには、まず自身の為に力や実力をつけるということは、ある程度理解はしている。しかしロザリンドの場合、それが他者に向けられるということはなく、ただ己を守るための力であると感じている。

ただ彼女を諭すために説明しても、本人は納得しないだろう。

それこそ何か大きなアクションがあれば別だが、こればかりは状況と運に左右される。


そんなことだろうとケイは頭を掻き、どうした物かとため息をついた。



「なんか付き合わせちゃってごめんなさいね~」


一方レイブンとタレナは、ミスト=ランブルの案内で街でオススメの人気店と言われている喫茶店へ足を運んでいた。


店内の約八割が女性客で埋め尽くされているなか、タレナとレイブンの真向かいには、青色のスポンジ生地に砂糖でコーティングされた黄色の生クリームらしき物がのり、仕上げにピンク色のソースがかかった異様なホールケーキを堪能しているミスト=ランブルの姿がある。


彼は店に着きケーキが運ばれたかと思うと、対面に居た二人を前に親親族から始まり、ロザリンドの態度に関して愚痴を並べまくっていた。


話す割合と食べる割合の均等が取れているようで、二人はそんな器用なミスト=ランブルに、唖然とした表情を浮かべて言葉に耳を傾けている。

そして愚痴が一通り済んだ頃には、ホールケーキは綺麗さっぱりなくなっていたことには驚く。彼が仕上げに頼んだ血液が入った吸血種人気の飲み物を啜る様子に口を挟むところがないと引きつった笑みを浮かべる。


「ところであなた達は、豪魔種ではないようね?」


あっ・・・と二人の表情が変わり、どうしようかと顔を見合わせる。


確かに一見すると人間と豪魔種の違いといえば目の色ぐらいである。

ミスト=ランブルは、そんな二人の表情に分かってたし誰にも言わないわ。とニコニコした笑顔で二人を見つめる。


「あなたの想定通り、俺達はあなた達のいう人族です。実は世界の歴史を調べるために各地を回っているんです」

「それって世界大戦の事、かしら?」

「は、はい。千五百年前の世界大戦に何があったのか、それにタレナ達が関わっているので・・・」

「じゃあ彼女(タレナ)は、アスル・カディーム人?」


その言葉にレイブンとタレナはハッとしたが、ミスト=ランブルはふふっと笑みを浮かべ、とある話を口にした。


「実は私の家系は、元々アスル・カディーム人を相手にした医療を行っていたみたいなの。その時に、アスル・カディーム人独特の伝染病が広がっていたっていう話があったみたい」

「伝染病、ですか?」

「私の屋敷に古くから伝わる文献なんだけど、もし時間があるならこれから一緒にいって見てみる気はないかしら?」


ミスト=ランブルの誘いに二人は一瞬躊躇したが、ケイ達を見つけることができなかったことから、読める読めないは別としてとりあえず自分たちだけでもそれを確認しようという結論に至った。



「だ~か~ら~!さっきからしつこい奴だな!?」

「何を言う!貴様が一度私の相手をすればいいだけのことだ!」

「面倒くさいから嫌だって言ってんだよ!」


レイブンとタレナがミスト=ランブルから彼の屋敷に招待された頃、ケイは未だにロザリンドに絡まれ続けていた。


ロザリンドに腕を掴まれ面倒くさそうに断り続けるケイに、遠巻きに見ていたアダムとシンシアはなんのこっちゃと首を振りため息をつく。

男性への対抗心なのか、なかなか諦めないロザリンドにケイはどうすれば良いのかと頭を掻き、じゃあ何をすれば納得するのか?と尋ねると、玩具を与えられた子供の様に目が輝き出すロザリンドは、是非これをしようと提案してくる。


「それなら“タウルスの力比べ”はどうだ?」


タウルスの力比べ?と疑問を浮かべるケイ達に、ロザリンドは男性と競うなら絶対にやる場所の事だと示す。


「それってなんだ?」

「ダンジョンと言えばわかるか?遥か昔に自然発生した場所で、私は強くなるために何度もそこに潜ったことがある!」


自信満々に答えるロザリンドに、どうするのかとアダムとシンシアが横目でケイを見やるが何度断っても諦めない彼女に折れたようで、わかったわかったと子供を宥める親の様に了承する。


「では、今からダンジョンに向かうとしよう!」

「はぁ!?今からか?」

「当たり前だろう?貴様の気が変わらんうちに打ちのめすことができて完了するのだ!」


かなり強引なロザリンドは、ケイの言葉を聞くより先にダンジョンは屋敷の地下にあると言い残し、颯爽とその場をあとにする。


「・・・で、ダンジョンはゴルゴーンの屋敷の地下って訳か~」

「何度も潜っているって言ってたけど、ゴルゴーンさんはそれを知っている・・・という感じじゃなさそうだな」

「知ってたら頭を抱えるだけじゃすまないんじゃない?」


ロザリンドの姿が見えなくなった頃、三人は彼女に対しての感想を述べるた。

強引で自由気質な様子に、あれじゃ族長であっても頭を抱えるわなとゴルゴーンに少し同情をする。

ケイとしては完全に気乗りしないが、約束をしたからには行かなければ軟弱者と文句を言われかねない。それは彼自身癪に障るので、本当に仕方なし半分憂さ晴らし半分と言ったところ。


ともかく売られた喧嘩は買う主義のケイと族長の娘であるロザリンドの対決が始まったのである。



「二人とも、お待たせ。これが言っていた文献よ」


ミスト=ランブルの屋敷に案内されたレイブンとタレナは、書庫が併設されている応接室に案内をされ待っていると、彼が資料を手に戻って来た際にあまりの資料の多さに目を丸くした。


当然ミスト=ランブルだけでは持てなかったのか、屋敷の使用人達である男性二人が彼の後に続いて入室する。


「結構あるんですね~」

「今すぐに用意できるのはこれだけね」

「え?これだけって、もっとあるということですか?」

「えぇ。この隣にある書庫には、大体五万冊あるから探すのが一苦労でね、あなた達に大口を叩いたわりには大したことないかもしれないけど・・・」


質の良い飾り脚のローテーブルに積まれた書籍の山が二人の前に並べられた。


大したほどじゃないけどと言いながらも、重要書籍である本には何が書かれているのかと期待に胸を膨らませる。

それと同時に今まではケイが文献を解読出来たのだが、今回はレイブンとタレナだけ。果たして自分たちが読める代物なのかと不安もあるが、とにかく一度手にとって見てみないことには何も出来ない。


二人は山のように積まれた部分の一番上からそれぞれ手に取ると、書籍を読み渡航とする。しかしレイブンが取った書籍は書いてある内容が読めず、頭を振ったとなりでは、タレナが「これは・・・」と呟く。


「タレナ、何か見つかったか?」

「レイブンさん、この文献にはアスル・カディーム人のとある病気のことが書かれています」

「病気?」

「アスル・カディーム人特有の【黒腫(こくしゅ)】と呼ばれる病気のようです」


タレナが手にした書籍は、アスル・カディーム人を診療したと思われるミスト=ランブルの祖先が書き記した物のようだ。


【黒腫】とは、アスル・カディーム人の風土病の一種と思われる。

初めはほくろのように身体のどこかしらに現れるが、時間が経つとその黒い斑点は数が増え、大きく全身に広がると言われている。

現段階では有効な治療法がなく、現在は(黒くて読めない)によって進行を遅らせるしか方法がない。


タレナがその内容をレイブンに伝えると、ケイ達に伝えた方が良さそうだと考えたところ、向かいに座っていたミスト=ランブルの顔色が悪く見えた。


「あの、大丈夫ですか?」

「え、えぇ。大丈夫よ」

「顔色が悪そうに見えるのですが・・・」


レイブンとタレナがミスト=ランブルに問いかけると、大丈夫だと席を立ったところ、その身体がグラッと揺れて倒れた。


「「ミスト=ランブル様!!」」


側に控えていた使用人の男性達が、倒れた彼を介抱する。


突然の出来事にレイブンは使用人に医師を呼ぶようにと指示を出し、タレナは医師が来るまでの間、倒れた彼の体勢を楽にさせるようともう一人の使用人と共に動かし様子を見守ることにした。

ロザリンドから力比べを強制提案されたケイと、ミスト=ランブルの不調に慌てるレイブンとタレナ。

ズルズルと巻き込まれるケイ達の運命はいかに!?(笑)

次回の更新は10月30日(金)夜です。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ