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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
新大陸編
244/359

238、ゴルゴーンと更なるもめ事

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回は、魔人族の長であるゴルゴーンとの対面ともめ事がやって来ます。

魔人族の国・ジャヴォールは、人口が五十万人と他の大陸と比べてやや多い。


大陸全土が一つの街を形成し、人々がその中で生活をしている。

街並みは赤色のレンガが建ち並び、運河などの水辺に近い区画もある関係で焼成レンガが使用されているが、鍛冶屋などの一部分には、に火に強い耐火レンガを使用している。

元は粘土と藁などを組み合わせて日干しした日干し煉瓦が使われていたが、強度不足の関係で何年も建替えをを行い、最近ようやく街全ての修復が完了したそうだ。


「そういや、この島の連中は面白い容姿をしているな」

「皆さんはご存じかは分かりませんが、我々魔人族は三つの異なった特徴を持っています。私や娘は豪魔種、ポネアは不死種、そしてもう一つが吸血種になります」


ケイ達が街中で見る魔人族の容姿に疑問を抱き、アンドワールに尋ねる。


魔人族は一般的に三つの種が存在している。

豪魔種は瞳が赤くて力が強く、不死種は紫の肌に黄色の瞳、そして吸血種は容姿端麗で他の二つの種にはない牙が存在している。


豪魔種は文字通り力を得意とする魔人族で、王族だからこの特徴というわけではなく、一般でもその特徴を受け継ぐ者もいるが、昔は女性から男性に求愛をする時は決闘のような儀式を行い、勝った女性だけが男性と添い遂げることができるという妙な風習がある。ちなみにアンドワールは過去にそれを行い、ゴルゴーンを射止めている。今ではそんな風習はなくなったが、ロザリンドの血の気の多さは彼女譲りではないのかと一瞬頭によぎる。


不死種は紫の肌と黄色の瞳を持つ種のことで、元は死肉を食べる傾向があったようだが、時代は進み、今では他の種と同じ食事環境になったことから、肌と瞳の色はその名残などと言われている。

もっとも死んだらゾンビとして生き返るという特殊な体質というわけではなく、なぜ肌の色が紫なのかと聞くと、大昔にあらゆる死肉を食べ続けたが故にその色になったと言われているが、人と同じように眠ったり食事を取ったり仕事をしたりと何ら変わりはない。


吸血種は、他の二種と比べて容姿端麗で職人や芸術肌のある人々が多い種である。

主に外見はエルフと同等の美しい容姿をしているが、その反面付き合いづらい性格をしている。

吸血という名の通り、生物の血を必要としている場合もあるらしいが、大半は時代の影響からか輸血を必要としない人々が多い。しかし希に特殊な体質などの関係で輸血が必要な人も居るそうで、その場合は街の数ヶ所に輸血専門の診療所が完備され、そのための血液の提供も随時行っている。



先ほどの運河がある場所から通りを一つ抜けると、活気に溢れた大通りが広がる。

この国のメインストリートというわけなのだが、露店や店舗が充実しており、アルバラント以上の活気を体感する。


アンドワールによると、魔人族は【魔機学】と呼ばれる独自の技法で、時代と共に国を造り上げてきたと言っても過言ではないそうだ。


魔機学とは魔法と機械という独自の技法を組み合わせ融合させた技術で、魔人族の祖先である人々が魔法を形として残せないかといろいろと試したのちに完成させたと伝えられている。

しかしその反動で本来は魔法を扱うことが出来るはずだった魔人族は、それ以降、魔法の一切を扱うことが出来なくなったそうだ。


何かを得るためには何かを捨てざる終えない。そんな話を目の当たりにしたケイ達は執念の技術確立を知る。


「この先が、我々の屋敷になります」


アンドワールが示した先には、緩やかな坂道に建ち並ぶ住宅街の奥を示している。


屋敷と言えば豪邸とイコールしがちだが、遠くから見えるその屋敷は華美な装飾は施されず、質素でありながらも品格を保ち続けているといってもいい。

ゴルゴーン自体があまりそう言ったものを好まないことから、代々受け継がれてきた屋敷は数千年も同じ外見を保ち続けているとアンドワールが述べる。


住宅地に囲まれた緩やかな坂道を登り切ると、眼前に大きな屋敷が広がる。


警備をしている兵がアンドワール達に敬礼をし、屋敷に続く鉄柵の両開きの門扉を押し開け、中へと通される。


「庭には生け垣が多いですね」

「今は花が咲かない時期なので寂しい印象はありますが、時期がもう少し後になれば様々な色の花が咲くんですよ」


レイブンが庭のことを尋ねると、ジャヴォールでは時期が変換する中間期にあたるそうで、もう少しすれば暖かい気候が続く暖候期が来るので、その時になれば色とりどりの花が咲き乱れるそうだ。


ジャヴォールの気候は三つあり、暖期・中間期・寒期と分けられている。


話の内容から、暖期は日本で言う7月~9月までを示し、中間期は4月~6月と10~11月、寒期は12月~3月ぐらいだと推測される。

サイクル的には、中間期を経由して暖期・寒期を行ったり来たりしており、暖期と寒期はそれぞれ異なった草木や花が咲くと言われ、なんとなく日本を感じさせる気候だとケイは思う。



屋敷の応接室に通されたケイ達は、アンドワールがゴルゴーンを呼びに言っている間に、同席していたポネアにロザリンドの事を尋ねてみることにした。


「ところでポネア、ロザリンドはいつもあんな感じなのか?」

「はい。さきほどアンドワール様の話にあったように、あんな事があって以来、特に男性に対してあのような印象を持っているようで、年頃であるロザリンド様にゴルゴーン様は頭をお抱えになっております」


ロザリンドは、最近になって人間でいう成人を迎えた。


ゴルゴーンとアンドワールの間にはロザリンド一人しかいないため、必然的に彼女が次の長になるのだが、いかんせん婚約となると軟弱者の男性は不要!と考えているようで、このままではロザリンドで一族が廃れてしまう危機感を持っていた。

前々から様々な相手とお見合いをさせてきたが、ロザリンドの態度に悪評がついているせいか、豪魔種・不死種共に男性側からお断りをされ続けていた。


しかし数年前、吸血種のとある男性から二つ返事で了承を得る。


それがミスト=ランブルという吸血種の男性で、芸術家をしている人物である。

もちろん了承を得てすぐに最初のお見合いが行われたのだが、ロザリンドの第一声が「吸血種?男なんて全員軟弱者!」と男性相手に言い放ったそうで、以来二度目以降の顔合わせは実現しないままとなる。


当然、相手の男性は断わりの書状をゴルゴーンに送ったそうだが、長自らが彼の元に出向き直接謝罪をしたことにより、ロザリンドの考え方を改めれば考えてやらなくもないという結論に至る。


「でも、あの調子じゃ無理だろ?」

「結構ずっぱりいうのね?」

「当然だろ?俺だったら速攻お断り案件だぜ」


その話を聞いたケイがずっぱりと物言いをすると、シンシアは分からなくもないけどと戸惑った表情で返す。

いずれにせよ、ロザリンドの凝り固まった思考をどうにかしなければ見合いは無理だろうと、黙って聞いていた仲間達は口には出さなくともそのように感じていた。



ほどなくしてアンドワールが男性と護衛を連れて戻ってくる。


男性は赤い瞳に白髪交じりの銀髪、豪魔種特有の長身の高さと体格の良さが相まって存在感を増している。表情は元からの人相なのか眉間に皺を寄せ、険しい表情を醸し出す。

見上げたブルノワがその形相に恐怖を抱いたのか泣きべそを掻いたことから、アンドワールが「あなた・・・」と声をかける。その表情に気づいた男性は、ばつの悪そうな表情をし、どもりながらも「すまない」と口にしてからアンドワールと共にソファーに腰をかける。



「儂が魔人族の長をしているゴルゴーンだ」



口ぶりでは威厳を保っていたが、ケイに抱っこされているブルノワが、男性の表情が恐いからか顔を背けている行動に少しショックを受けている風にも見える。


「どーも。俺たちは『エクラ』というパーティで冒険者をしている。あんたらのいう人族と言えばわかるか?」

「あぁ。妻から話を聞いた時にはかなり驚いたが、まさか人族が生存しているとは夢にも思わなかった。それに後ろの三人はアスル・カディーム人ではないか?」


ゴルゴーンがアレグロ・タレナ・シルトの方を見やると、その通りとケイが頷く。

彼が幼少の頃、何度か大陸にアスル・カディーム人がやって来たのを見たことがある。貿易を主に取引をしてきたアスル・カディーム人は人が良かった印象しかなかったが、世界大戦が起こって以来、その姿を見ることはなかったそうだ。

それと同時に魔人族は、南から来る人族共交流があったそうで、彼らもまた世界大戦以降から姿を見ていないという。


ケイは今までの経緯をゴルゴーン達に説明し、記憶の失ったアレグロとタレナ、シルトの事を調べていると述べる。


特にアレグロは儀式による浸食が進行しているようで、今は背中のタトゥーは肘まで広がりを見せている。これに関してはもっとも重要視する事案の一つで、その事をゴルゴーンに伝えると、もしかしたらと彼は口にする。


「君の話を聞く限り、彼女(アレグロ)はもしかしたら既に何かを施されているだろうな。儀式による浸食が進行しているということは、我々の国では一時的な処置を示している」

「一時的な処置?」

「アスル・カディーム人は永遠に生き続ける人種であり、もし彼女が不治の病を煩っていたとなると、一時的に進行を遅らせるかあるいはその処置を行うために別の処置を行っている可能性はある」


でなければ、と言ったところで応接室の扉が叩かれ、不死種のメイドが顔を出す。


「ゴルゴーン様、お取り込み中のところ申し訳ありません」

「何事だ?」

「先ほど、ミスト=ランブル様がお見えになっております」


いかがなさいましょう?というメイドの問いに少し待つようにと伝えると、それと同時に通路から複数人の足音と制止する他のメイドが声が聞こえる。


足音の主とおぼしき人物が扉の前にいるメイドを押しのけ、乗り込んで来る。


現れた男性は、腰まで流れる絹のような銀髪に麗しの麗人と例えられるほど中性的な顔立ちをしている。造形はエルフ族のように容姿端麗で、街中で見かけた吸血種も揃って美男美女が多く、この人物も例外ではない。


たしか芸術家で気むずかしいと聞いていたが、男性はケイ達がいるにも関わらず大股でゴルゴーンの元までやって来ると、彼の前に一通の書状を叩くようにテーブルに置いた。


「ゴルゴーンさん、貴方の娘はどうなっているんですか!?」

「ミスト=ランブル殿、いかがなされましたか?」

「これを見てください!先日貴方のところの令嬢からこんなものが届きました!」


ゴルゴーンがその書状を手に取り確認すると、その内容に唖然とした。

そこには、彼女の字で『婚約解消』の二文字がデカデカと書かれていたのだった。

ゴルゴーンの口から、アレグロの身体的症状は既に何かを施されている後だったと推測されたケイ達は、アレグロの身を案じながらもそれが何を示すのか模索をします。

一方、婚約解消に激怒したミスト=ランブルが乱入し頭を抱えるゴルゴーンの姿が・・・


次回の更新は10月21日(水)夜です。


いつもご高覧くださりありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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