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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
新大陸編
242/359

236、魔人族の国・ジャヴォール

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回から魔人族の国・ジャヴォール編をお届けします。

羽翼族の国・ガラーを出発したから五日ほど経った。


相変わらず周囲を海で囲まれ、なにも面白みがない景色をぼぉっと見つめていたケイは、鞄に入っていたシェメラの石版とバルトルから託された似た石版を取り出した。


託された二つの石版はシェメラの石像と同じように女性の横顔をしていたが、それぞれ微妙に顔の造形が異なっている。恐らく他の女神像を模したと思われるが、それがケイにはなんとなく不気味に思える。

二つの円形状の石版を裏返しにしてみると、特にこれといった特徴は見つからず、何処かにはめるための物だと言うことしか分からない。


「ケイ、何か分かったのか?」

「いいや、正直これだけじゃ分からん。たぶん何処かにはめるための物だということは考えればわかるんだが、それが何を意味しているのかまでは掴めねぇんだよ」


考え事をしているケイにアダムが声をかける。


ケイの鑑定には【アステリの石版】と【テレノの石版】と表示されており、情報量は少ないが女神像とは別の役割を担っていたのではないかと考えられる。


「魔人族の長が所有していたということは、ジャヴォールに石版に関する何かがあるってことなのか?」

「どうだろうな。バルトルの話しぶりだと、個人的に深い関係性を築いている様子がなかったから詳しい事は分からないが、少なくとも所持をしていたとなると、アグナダム帝国に関連した物と考えるべきだろうな」


アダムの問いにあくまでも推測での可能性を示したケイだが、当時からアスル・カディーム人と魔人族が交流していたとなれば、大なり小なり何かがわかることはなんとなく感づいてはいた。



「ダットさ~~~ん!島が見えました!!!」


見張りの船員が声を上げた時には、その日の夕時を迎えていた。


ケイ達が食事を取る前にその声を聞いたため、一同は甲板の先端まで様子を見に行ってみると、ガラーと同じように空に浮かぶ巨大な島が遠くに見えた。

遠くからでも分かるぐらいの大きさに唖然としていたが、ガラーとは違って島全体が街になっており、建物の明かりが夜景のように灯っている。


「あれがジャヴォールか。結構でかいな~」

「島全体が街になっているのかしら?というよりも夕方なのにかなり明るいのね」

「外観だけ見れば、俺の住んでた日本の都心の光景によく似てる」

「えっ!?ニホンってあんなに不気味な雰囲気なの!?」


シンシアが懐疑的な目でこちらを見つめているため、何と答えていいのかわからないが、街の明かりは電気のようなものを使用しているのか、赤や黄、緑などの様々な色の照明が見受けられる。アルバラントでも見たことがないので、繁華街や居酒屋のような、ちょっと大人の街の色というべきなのだろう。


飲み屋やバーみたいな色だと返すと、あぁ~とシンシアが察したような声をする。


「・・・で、今日はどうするんだ?」

「今日はここまでにしよう。明日イベールとレマルクに頼んで船を上げてくれ」

「わかった」


ダットはケイの提案に了承し、側で作業をしていた船員にイベールとレマルクにこのことを伝えろと指示を出す。

そんな声を聞きながら、遠くに見えるジャヴォールに何があるのか、ケイ達は不安と期待が入り交じった感情を抱きながらも巨大な島を見つめていた。



翌日、魔道船は海に浮かぶ島の近辺まで進んでみた。


島の高さはガラーと変わらないが、大陸の数ヶ所から水が滝のように落ちてきているのが見える。どうやらジャヴォールに川が流れているのか、摩訶不思議な現象に一同は首を傾げる。


「上の大陸から滝が流れているんだけど、どうなっているのかしら?」

「ガラーでも泉があるぐらいだから天候とその大陸の地盤の関係かも知れないな」

「不思議ね」


見上げたアレグロがさっぱり原理が分からないと首を振るが、確かに空に浮かぶ大陸から水が滝のように落ちてくるところは天候以外にも要因はあるのだが、他の大陸とは違った文明の可能性を示唆している気がした。


「イベール!レマルク!頼んだぞ!!」


昨日の命令を聞いたイベールとレマルクが甲板に集合すると、早速作業にかかれと号令を受けるが、二人と精霊の間で二言三言会話が交わされた後に船を浮かすために、大陸から流れ落ちる滝を利用してもいいかと提案する。


「前の様にできねぇのか?」

「すみません、ダットさん。精霊に聞いたんですけど、船を動かすには大気中にあるはずの魔素の量が足りないみたいなんです」

「魔素が足りない?」

「どうやら大気中の魔素はあの大陸の他の部分に使われているようで、滝に含まれている魔素を取り入れて変換すればギリギリ上がれるみたいなんです」


レマルクの話では、大気中にある魔素の関係で風の精霊の力が少し足りないのだそうだ。幸いこの船には海の精霊が多くいることから、彼らにかかる力の割合が少し大きくなるのだが船を浮かせるぐらいならなんとかなるということらしい。

以上のことから船を滝ギリギリまで寄せ、そこで滝の力を利用して上がる方法を取らざる終えない。


その話を聞いたダットは、舵を取るから直前に合図をしてくれと指示を出し、魔道船はジャヴォールに上るために行動を開始した。



「それじゃあ、いきます!・・・3・・・2・・・1!」



レマルクの合図で風の精霊と海の精霊が一斉に光り出すと、ケイ達から見て右手に流れている滝が一瞬ピタリと止まり、波は船を滝に引きずり込む様に波の流れが変わると滝の水が動きだし、海の精霊の力により逆流する現象が始まる。


「ねぇ!これって大丈夫なのよね!?」


船は最初緩やかに上昇していたが、徐々にそのスピードが速まり、明らかに最初の速さと異なるほどの爆走状態が始まる。

シンシアが言っていた通り、滝を登るには思ったより速さがある一方でそれに振り落とされないようにケイ達や船員達が掴まれる場所に全員が捕まる。

さすがのイベールも咄嗟に近くにある手すりに掴まり、片手でレマルクを抱きかかえる。


「お、おい!これこの後どうなるんだ!?」


ケイがそう口にした瞬間、船は滝を登り切り、宙を舞うようにジャヴォールの上空を飛び上がる。


滝登りに助走をつけすぎたのか、船は大陸の遥か上空を飛んだのち降下していく。


まるで映画のワンシーンのようにスローモーションで空を飛ぶ魔道船は、さながら宇宙人と遭遇した少年達の物語のような妙なリアリティーと感じさせる。

舵を取っていたダットは、まずいといった表情で声を張り上げる。


「ケイ!このままじゃ街の上に落ちちまう!」

「嘘だろ!?何とか出来ねぇのか!?」

「今、やってるだろうが!」


風の精霊の影響で緩やかな降下をしている魔道船だが、滝を登りきった先にはレンガ調の建物がところせましと建ち並ぶ街並みが見えた。

このままでは建物の上に落ちてしまうと、ダットがレマルク経由で精霊達に指示を出すが、大気中の魔素の量が足りないのか降りられる場所が見当たらない。


降下中にケイが視界の左少し先に大きな池の様な地形を見つけ、声を上げる。


「イベール!レマルク!この先に大きな川らしき場所があるから、そこに精霊達の力を誘導してくれ!ダット!舵を頼む!」


その言葉にイベールとレマルクが頷き、ダットが任せろと親指を立てる。


降下している魔道船に風の精霊達は、左前方にある川の形をした場所に着水するように調整を行い、ダットが船がぶれないようにと舵の手を強める。


ケイが見た川はヴェネツィアの運河のような場所で、両側にレンガが敷き詰められた道に挟まれ、前方にその道を繋ぐアーチ状のレンガの橋がかけられている。

運河の幅は魔道船より少し広いがそれでも幅いっぱいというところ。


「着水するぞ!!」


ダットの合図と同時に船はその運河に音と水しぶきを立てて着水した。


両側の道には魔人族とおぼしき行き交う姿があり、突如着水した魔道船に呆気にとられている顔をしている。しかも着水した弾みで水しぶきが両側の道を歩いている人々の上に落ち、全員がずぶ濡れになっている。


舵を取っていたダットは着水に成功はしたが、別の意味で外交問題にならないだろうかと考えたが、左の道からこちらを心配する男性の声が聞こえる。


「おーい!大丈夫か!!?」

「こっちは大丈夫だ!いきなりすんませ~ん!」


声をかけて来た男性は一般の人らしく、たまに船が上から落ちてくるという話もあるらしい。


なんか物騒だなと思いはしたが、船を停泊する場所を聞いてみるとこの辺りは一本道でケイ達が来た方向は滝になるから、滝に流されないようにここにつなぎ止めた方がいいとアドバイスを受ける。


そしてケイ達が船から下りると、先ほど声をかけてきた男性がやって来る。


見ると驚いたことに、その男性は紫色の肌と黄色の瞳という風貌をしていた。

魔人族特有の外見なのか周りを見ると同じような風貌をした人々の姿があり、他にも金髪に赤い瞳をした人やエルフ族のような容姿端麗の老若男女の姿もある。


「あんた達はどこから来たんだ?」

「俺達は、ガラー経由でこの大陸に来た冒険者だ」


ケイは大陸各地を回っている冒険者だと説明し、ガラーに住むバルトルの用事でゴルゴーンに会いに来たと述べる。


「兄ちゃん達、ゴルゴーン様に会いに来たのか?」

「あぁ。何処に行ったら会えるんだ?」

「それなら街の中心地に大きな屋敷がある。ほら、あの大きな建物だ」


男性が指さした先に大きな屋敷がある。

そこは小高い丘の上に立てられているようで、途中の坂の上に住宅地がいくつも建て並んでいるのが見える。

建物はだいぶ大きく見えるが実際はもう少し大きいのだろう。


長が住むあの大きな屋敷は、ここから迂回するように西側に向かえばいいらしい。


途中に坂が見えているが緩やかな傾斜が続く場所のようで、ブルノワや少佐のような小さな子でも上れるとのこと。もっとも実際に行ってみないと分からないが、途中で疲れたなら抱っこをさせればいいだけの話である。



「た、大変だ!!ズモーが来るぞ!!!!」



突然ケイ達の後方からこちらに向かってくる大衆が見えた。


誰かの叫び声と同時にケイ達の脇を通り抜けていく大衆に、先ほどまで会話をしていた男性も慌てて逃げろと伝えてくる。


「兄ちゃん達も早く逃げた方がいい!」

「なんで逃げるんだ?」

「ロザリンド様が、またズモーを使って男性達を追いかけ回しているんだ!」


そう言って男性は踵を返すと、急いでその場をあとにする。


なんのことだか分からないケイ達は、次々と人々が自分たちを避けて走り去る異様な光景に首を傾げるしかなかった。


「ね、ねぇ!あ、あれ!!」


慌てた様子のシンシアが指した先には、なんと大衆の後を追うように黒い闘牛のような生き物が勢いよくこちらに向かってくるところが見えた。

ジャヴォールに着いたケイ達は、そこで牛追い祭のような光景に出くわします。

果たしてどうなることやら。

次回の更新は10月16日(金)夜です。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告、または表現の提供をありがとうございます。

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