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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
新大陸編
232/359

226、永遠人と航海へ

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて前回リュエラからアスル・カディームは永遠人という証言を得たケイ達は、更なる情報と歴史の考察を行う回です。

「アスル・カディーム人は精霊族では永遠人って呼ばれているのか?」

「はい。他の種族ではどういう風に伝えられているかはわかりませんが、少なくとも夫は永遠の命を持つ彼らのことをそう呼んでいました」


リュエラの夫は、生前にアスル・カディーム人の王を含めた交流があった。


彼曰く、アスル・カディーム人の王は彼が幼少の頃からほとんど姿が変わらず、他種族の中でも比較的長命な精霊族でさえも、人の様な老いを感じることがなかったのだそうだ。そのことから、アスル・カディーム人は永遠の命を持つ永遠人などと勝手に呼んでいた。


「アスル・カディーム人が永遠に生きている人種って冗談よね?」

「どうだろうな。話の流れから考えると、精霊族より長寿でアフトクラトリア人が裏で人魚族の誘拐とルシドラの子の殺害の事を考えると、機械人形(オートマタ)である彼らがアスル・カディーム人に憧れを抱いて真似をしたと考えてもいいかもしれないな」

「憧れ?じゃあ、アフトクラトリア人はアスル・カディーム人になりたくて、本当かどうかも分からない人魚伝説を信じていたってこと?」

「俺が思うに、アフトクラトリア人を造ったのはアスル・カディーム人じゃないかと考えている」


ケイの考えでは、アスル・カディーム人は神が自分たちを作ったと考え、自分たちもまた同じように人を造れるのでは?と考えたのだろう。

そして試行錯誤の結果、機械人形(オートマタ)のアフトクラトリア人を造り、彼らと共存をし始めた。


「ケイ、それだと本来なら、俺達人間以外の他種族も同じ末路を辿ることになるんじゃないのか?」

「まぁ普通はそう考えるわな。俺は人や他種族を作ったのはアレサで、アスル・カディーム人を作ったのは、彼女じゃなくメルディーナだと考えてる」


ケイの推測に質問を投げかけたアダムを含め、全員が驚きの声を上げる。


メルディーナに仕えていた黒狼の話から、歴史に穴をあけたという表現に以前から疑問に思っていた。

ケイの推測では、アレサの部下であるメルディーナが彼女(アレサ)の許可なく、全知全能(と、ここでは例える)である種族アスル・カディーム人を作り、世界の更なる繁栄を期待していたが、アスル・カディーム人がアフトクラトリア人を造ったことにより世界の在り方がガラリと変わった。


アスル・カディーム人はアフトクラトリア人を連れて海を渡り、ケイ達がいる大陸に住んでいたシャムルス人・アグダル人・ビェールィ人と交流。しかしシャムルス人とアフトクラトリア人が結託し、アグダル人とビェールィ人が協力関係として加わったことで不和が起こり、世界大戦が始まった。


その結果、大国と言われていたアグナダム帝国は滅び海に沈んだ。


話はそれだけではない。

その動向を見ていたメルディーナが、これはまずいと何らかの方法でダジュールに降り立ち、予言者・アニドレムとして各地を回り隠蔽工作を行った。


それがのちの、五百年前の世界大戦と三百年前の魔王誕生の歴史に繋がる。


「だとしたら、なぜ俺達のいた大陸に結界が張られているのよ?」

「これはあくまでも推測しかないが“アスル・カディーム人の抵抗”だったんじゃないかと思ってる」

「アスル・カディーム人の抵抗?」

「世界大戦の時に、アスル・カディーム人たちは自分たちの命を使って、予め地下遺跡と試練の(ペカド・トレ)に仕掛けを施し仕掛けを作動させた。そもそもその二つは何でできている?」

「なにでって、陽花石と月花石・・・あ!」


シンシアがそこまで口にすると、気づいたのか声を上げる。


アスル・カディーム人はもともとストーンヘッジの存在に気づいていたと考え、それを仕掛けとして利用し、試練の(ペカド・トレ)と地下遺産を建設した。

エルフの森にいたアンダラが証言をした『自分は生け贄のために命を捨てなければならない』とうアスル・カディーム人の少女の言葉から、彼らは全員世界大戦を予期して準備をしていたと考えられる。


そして大戦後は、他種族から隠蔽されるように人類を結界に閉じ込め、歴史の闇に封じた。


メルディーナはこの一件から自らダジュールに降り立ち、予言者として各地で証拠隠滅を計っていた。アスル・カディーム人が起こした出来事をこれ幸いと利用し、あとは大陸内での歴史隠蔽のために世界大戦と魔王誕生をメルディーナが任意に起こす。


「でも大陸内の世界大戦の意味は分かったが、三百年前にあった魔王誕生もってどういう意味なんだ?」

「それについては、聖樹トレントが言った魔王誕生時にエルフの民を守るために結界を張ったっていってただろ?それって、ダナンからエルフの森の女神像に直結している地下遺跡から魔王は現れたんじゃないかと考えている」


アダムはまさかと口にしたが、誕生した魔王が各地にあった試練の(ペカド・トレ)を破壊し、そしてバナハの試練の(ペカド・トレ)で討伐されたことは事実であり、本来ならバナハの試練の(ペカド・トレ)も破壊されるはずなのだが、そこだけは残ったまま。


そして以上のことから、ケイはもう一つの真実を口にする。


「三百年前に誕生し討伐された魔王は、アスル・カディーム人の王じゃないかと思っている」


その場にいた全員が寝耳に水だったのか、驚きのあまり食事の手を止める。


「ちょっと待って!それってどういうこと?」

「アスル・カディーム人の王が魔王ということについては、これも推測でしかないが、アニドレムに姿を変えたメルディーナが仕掛け人となると、魔王の姿として蘇ったアスル・カディーム人の王は彼女に利用されたと考えるべきだろう」


何らかの方法で魔王として蘇ったアスル・カディーム人の王は、メルディーナの思惑通りに各地を回り混乱を招いた。


本能的に各地を回っていた魔王は、もしかしたらわずかな理性を持ち合わせていたと考え、他の試練の(ペカド・トレ)を破壊し、最後に自身の希望である腕輪と文献をバナハの塔にいたヒガンテに託した。

また以前ヴィンチェの能力でエストアの跡地にあった塔を、一時的に復元させた際に幻として遭遇した黒騎士は、アレグロとタレナの父であり魔王として蘇ったアスル・カディーム人の王ではないかと考えられる。


ヴィンチェの能力がどれほどのものかはわからないが、あの時塔の復元にプラスされるように当時あったことが再現されているとなると辻褄が合う気がする。


しかしこれはあくまでもケイの推測でしかなく、それを事実とするならば、今生きているアレグロ・タレナ・シルト・アルペテリア以外のアスル・カディーム人達は一体どうなってしまったのだろうかと疑問が浮かぶ。


地図では西の海域全土にアグナダム帝国が存在していたそうだが、島の面積から考えると人口数は他の人種より遥かに多くアスル・カディーム人がいたことになる。

仮に戦争をして負けたとしても、世界が滅亡しない限り島なんて沈むことは物理的に不可能ではないかと考える。となると、そのへんについては人工的に島を沈ませることが出来たのではと、ふと頭をよぎる。


「ケイさん、それが仮に本当だとしたら父は何故最後にそんなことを?」

「もしかしたら、他のアスル・カディームにそれを見つけて貰いたかったんじゃないかと思う。まぁ、結果的に俺が貰っちまったけどな」


そういえば以前ダビアがケイの事を『新たなる王』と言っていたが、その辺についても何か知らないかとリュエラに尋ねると、彼女はやはりとケイのしている腕輪を見つめ、アグナダム帝国の王の証であり、それを持つ者は次世代の王として君臨すると言われていると口にする。


「ケイが王様?それが現実になったら不安でしかないけど?」

「俺だってそんなこと言われたら、一国の主になれるったって遠慮するぜ」


冗談半分にシンシアがケイにそんなことを口にすると、ケイはそれは面倒くさいから自身も嫌だなと首を振る。


王族貴族って自由に見えても結構大変そうなイメージがある。

ガイナールしかりマーダしかりとなにかと一悶着あった形跡があるので、ケイとしては仮に王になれるとしても敬遠する。


「そうだ!あと、もう一つ聞きたいんだが、リュエラは【タァークル率】の事をしっているか?」

「【タァークル率】ですか?儀式的な浸食だと聞いたことがあります」


ケイはアレグロの事をリュエラに説明をすると、彼女はアレグロの方を見やり心配そうに大丈夫なのかと聞き、アレグロは大丈夫だと笑顔で返す。

しかし、大陸を出発して随分と経つが、日に日にタァークル率が上昇していることにケイは気に留めていた。

リュエラは、シルトが言っていたようにアレグロの身には儀式的な副作用でそのようなことが起こっているのではと返し、それを知る手立てはあるのかと尋ねると自分たちは思いつかないが、もしかしたら魔人族が何か知っているかもしれないと返す。


「アレグロさんと合っているかは分かりませんが、世界大戦前にアスル・カディームは不治の病が起こり、それを治すために儀式的な浸食が伴う可能性はあるがある方法を実践していると聞いたことがあります」

「風土病みたいなことか?だとしたら、アレグロはその処理を施された後だったってことか?」

「そうなると、浸食が進みきる前に当時アスル・カディームと共に研究をしていた魔人族の元を訪ねる方が確実かと」


アレグロの背中にあるタトゥーは日に日に大きくなり、現在両腕の肘一歩手前まで広がっている。


もちろんケイはそれを見ていないが、シンシアとタレナからの証言でタァークル率と連動するように広がっているのではと思われる。


そうなると、早々に出発して魔人族がいるジャヴォールに向かう必要がある。


それに関しても、リュエラから羽翼族がいるガラーと魔人族が住むジャヴォールは空に浮かぶ大陸で、空を飛ばない限り辿り着くことが難しいと助言される。


そういえば、仕掛けを解く時にフリージアの女神像にいるベルセから“空に島が浮かんでいる”と発言したことを思い出す。

しかし幸いなことに魔道船にいるダットとその船員達は、なぜかほぼ全員精霊と契約を交わし、イベールとレマルクもそれぞれ五体の風の精霊と契約をしている。

リュエラから彼らの力を借りれば島に辿り着くことができるかもしれないと意見され、ケイ達は行くだけ行ってみようと全員の了承を得た。



「皆さん、この度は本当にありがとうございました」

「俺達は何もしてないぜ。まぁ強いて言うなら、ダットとイベールとレマルクのおかげだと思うぜ」


朝食後、すぐに船員たちによって慌ただしく出航の準備が行われた。


並んで見送るリュエラとアナベルがケイ達に声をかけ、船に乗り込んだ後に世話になったダットとレマルク、イベールに声をかける。


「ダットさん、それにレマルクさんとイベールさん、この度は本当にご迷惑をおかけしました」

「いや、こっちこそあんたに色々言っちまって悪かったな」

「いいえ。親としての基本的なことを忘れていた私に落ち度がありました。皆さんのおかげで娘と話し合う機会が出来ました」


リュエラが一礼し隣に居たアナベルにお礼をと伝えると、少し恥ずかしいのかアナベルはレマルクとイベールに「悪かったわね」と少し素っ気ない言葉で二人を見送る。


「アナベル、僕たちはまた君に会いに来るよ」

「な、何言ってるのよ?そんなしょっちゅうこれるものじゃないでしょ?」

「え?だって僕たちは“友達”じゃないか?それに弟は君ともっと仲良くなりたいみたいだしね」

「「えっ!?」」


イベールの口から天然なのか爆弾が投下されると、レマルクとそれにつられるようにアナベルが互いに顔を赤くさせる。

思春期による甘酸っぱい一幕に甲板から船員達と精霊が冷やかし、アナベルの隣に居たリュエラは一瞬驚いたかと思うと、ふふっと二人を暖かく見守った。



こうしてケイ達を乗せた魔道船は、魔人族がいるジャヴォールに向けて船を進ませたのであった。

多くの情報と大国であるアグナダム帝国が沈んだことと、他のアスル・カディームは一体どうなってしまったのか?

それに儀式による浸食が進行中のアレグロを助けるためには、魔人族の元に訪れなければならないということで、ケイ達はジャヴォールに向かって船を進ませることになりました。

次回の更新は、9月23日(水)夜です。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

※誤字脱字の報告ありがとうございます。

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