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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
新大陸編
226/359

220、精霊住み家

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回は、アナベルが契約出来ない理由が判明します。

リュエラから“ダットには既に契約を交わしている三体の精霊がいる”ことを聞いたケイ達は、彼女の頼みでアナベルと精霊の仲を取り持つことになった。


単に言うだけなら簡単だが、実際に何が原因かわからない以上、ヘタに行動を起こせば関係が悪化しかねないため慎重な対策が必要になる。

とは言っても、ダットにどうしたら契約できたのかと尋ねると彼自身もさぁ~。と首を傾げるばかり。現にダットの周りには、契約をして貰いたいのか様々な属性の精霊達があとに続いているのだが、よく見ると精霊でも姿は少女や少年の姿をしている者も居れば、犬や猫・は虫類などの姿をしている精霊もいる。


リュエラに精霊は人の姿だけではないのかと聞くと、上位精霊以上は姿がみんな違うのだという。


そういえば以前ダビアから聞いたが、精霊にも下位・中位・上位・最上位・最高位・精霊神と位置づけがされており、その決め手は魔力量だと聞いたことがある。

他にも条件やなんやらはあると思うが、第一条件としてはまず魔力量といったところだろう。


ケイはリュエラにダビアのことをそれとなく話してみると、彼女は一瞬ハッとした表情をし、急にいなくなり心配をしていたと口にする。


どうやらダビアはこの島の精霊で、条件さえ満たせば上位以上の精霊になるのは確実だったが、ある日現れた魔方陣によって姿をくらましたそうだ。

もちろんリュエラはダビアの行方を精霊達に尋ねたが、一向に分からず、もしかしたら誰かに召喚されたのかと不安がっていたそうだ。


そんな彼女にケイは、アグダル人の子孫に位置づけられるエルフ族のセディルの話をした。


彼は幼い頃から精霊の姿が見えず魔法も使えないことから、弓術以外にも剣術を扱い狩りを行っていた。しかし小さい頃から覚えていた呪文によりダビアが召喚され魔法が使えるようになった。その話を聞いたリュエラは、ダビアが無事なことに安堵し、セディルと上手くいっていればそれでいいと語る。


「でも、ダビアから上位精霊は希少だって聞いたけど?」

「たしかに、世界大戦が始まる前まではアグダル人の乱獲により数が減少していました。しかし今ではその数も戻り、かつてのように精霊達が暮らしています」

「つまりは、現象の原因がなくなったことで数が戻ったって事だよな?だとしたらエルフの森にいる精霊達はどうなるんだ?」


以前エルフの森に行った際に精霊達がいたそうなのだが、あの時はケイ達には見えなかった。精霊と共存しているとは聞いていたが、もしそのちからこの島に精霊達が移ったとなれば、そこには精霊はいないはず。


これに関してはいくつかの仮説が考えられる。


ひとつはアグダル人が無理に使役と言うより奴隷として捕らえ、それがこの地に残ったこと。二つ目は精霊が自らこの地に留まったこと。そして、セディルのように召喚できる者が精霊達がドゥフ・ウミュールシフに移った後も召喚し続け、それが名残として残った。


あくまでもケイの仮説だが、もしかしたらリュエラが言っていたシルトとナザレが何か関係しているのかもしれないとふと考える。


「とにかく、私は娘を探してもう一度話し合ってみます」

「あの後だろ?少しそっとして置いた方がいいんじゃねぇの?」

「そうしたいのは山々ですが、娘が精霊と仲良く出来ない理由がきっとあるはずなんです」


よほどアナベルが心配だったのかリュエラは娘を探して話し合うといい、止めるケイ達の声を退けると彼女が去った方に走って行った。



「しかし、今回は厄介だな」

「精霊達が長の娘に距離を置くってあるのかしら?」

「よほどの事じゃない限りそれはないだろう?ただし長の娘であっても相手に嫌がることをしない限りは、だけど・・・」


リュエラが去った方を見ながらシンシアとアダムが口にする

アナベルが精霊達から距離を置かれる原因がわかれば対処のしようもあるが、今は精霊達からの情報収集が先だと、周辺を探索してみようと考える。


「はぁ!? お、俺も行くのか!?」

「当たり前だろ?そんなに精霊が群がってる奴なんてお前以外にいるかよ!」


ケイ達が周辺を探索しようと入り江から移動する際、今回はダットも同行させると本人に伝えると、寝耳に水だったのか思わず聞き返した。

当たり前だとケイが間髪入れずに返すと、本人は船があるからと言い淀んだが、甲板から一部始終を見ていた船員達が「船は任せてくだせぇ!」と口を揃えていうものだから、ダットも否応なしに同行する運びとなる。


現に彼の周りは未だかつて見たことのない精霊のモテ期が到来している。


正直、群がりすぎてダットの姿が判別できないほど精霊の光に包まれているが、本人は気にする素振りもなく、せめて視界が見えるようにしてくれと言うと精霊達に頼むと、統制の取れた動きで一斉にダットから離れる。


「お前、本当にどうなってんだ?」

「そんなの知らねぇよ! 俺が聞きたいぐらいだ!」


ケイ達が入り江から島の中心部にある精霊達の住居へと向かうと、その後ろをダットが歩き、さらに彼を追って精霊がこぞってついて歩く。


その姿は聖者の行進、はたまた大名行列。

しかも前方から興味本位で群がってくる精霊達が、まるでモーゼの十戒の如く道を開ける。それは恐怖等といった感情ではなく、ケイにはその感情はよくわからないが、まるでアイドルを追いかけるファンのようなあの感じである。


『人間だ!』

『わぁい!わたしと仲良くして』

『いやーよ!私が先!』


ダットが後ろからついて来ないことに気づいたケイ達が振り向くと、彼の周りで取り合っている精霊達の姿があった。それに囲まれた本人も、どうしたものかと頬を掻き、助けを求めている。


「ダット、本当に大丈夫かぁ?」

「これが大丈夫に見えるか?・・・・・・だぁぁ!もぉ、テメェら落ち着きやがれ!!」


業を煮やしたダットが辺りにいる精霊達を一喝する。


瞬間辺りがシーンとなり、ハッと我に返ったダットがまずいと思ったのか弁解をしようと口を開こうとした時、周りに居た精霊が一斉に整列し『へいっ!アニキ!』と敬礼をした。これにはさすがのケイ達も目を丸くする。


恐らくだが、ケイ達と一緒に島に来た海の精霊と緑の精霊がそれが礼儀だと周りに伝えたのだろう。ばつの悪そうなダットが「ほら、行くぞ!」と顔を赤らめケイ達を追い抜かして先へと進み、その後ろを統制の取れた精霊の列が行進をする。


まるでちょっとした軍隊である。


「ダット、お前『精霊の教官』みたいな職業があったら就けるんじゃねぇの?」

「なぁに言ってやがる、あっても俺はそんなのガラじゃねぇ~よ!」


ちなみにその道中でそんなやりとりをしたが、ケイは本当にありそうでもし成っていたらと思うと恐くてダットに鑑定が使えなかったのは内緒だ。



精霊達の住み家は島の中心部にある緑豊かな場所だった。


鬱蒼と茂る森の印象があったが、どちらかというと森の中のテーマパークを彷彿とさせた木の上には、色とりどりの小さな家が建ち並んでいる。まるでミニチュアの世界に入ったような感覚を思わせるが、その中心にリュエラとアナベル親子が住んでいる人が入れる様な一件の家が建っている。


近くの精霊に二人の所在を聞いてみるがまだ戻って来ないようで、二人が戻ってくるまでの間、アナベルが契約できない原因を探ろうと聞き込みを行うことにした。


「この中で、アナベルと契約の儀をしたやつはいるか?」

「ち、ちょっとケイ!?」


開けた場所で精霊が思い思いの過ごし方をしているなか、ケイは突然声を上げ、精霊達に尋ねてみた。ド直球過ぎるケイの問いにシンシアが段取りなし!?と言った表情を向けたが、そんなことは気にしていないのかその場に居た精霊達が一斉に手を上げる。


「思ったより数が多いね」

「というか、ほとんどの精霊が手を上げるって相当ね」


想定以上の数にレイブンとアレグロが疑問を通り越して、顔を引きつらせている。

なにせこの場にいる全てが経験をしていたのだから無理もない。

リュエラからはその原因は精霊達から語られることはなかったと言っていたが、もしかしたら言いづらいのかもしれないと、その中から赤い三角帽をかぶった手のひらに乗るぐらいの小さなおじいちゃんのような風貌の精霊に尋ねてみる。


「あんたもアナベルの契約の儀をしたのか?」

『あぁ、そうじゃよ』

「リュエラから、毎回アナベルの儀式の途中で精霊達がよく消えると聞いているんだけど、それはなんでなんだ?」

『それはアナベルに“契約を交わした精霊がいる”からなんじゃよ』


どうやらアナベルには既に契約を交わした精霊がいるようで、契約が成立しているため他の精霊との契約は成立しないというわけらしい。

ケイはアナベルを見かけた時にその精霊を見たことがないと聞き返すと、彼の周りに居た精霊達は『あいつは臆病者』だとか『アナベルが恐いから隠れている』という声が口々に聞こえる。


「となると最初の契約で成立していたにも関わらず、その精霊がアナベルの前に姿を現さなかったから互いに勘違いをしたってことか。でも、なんでおまえ達はリュエラにそれを言わないんだ?」

『ほほっ。時に物事は盲目にさせる、といえばわかるかな』

「もしかして“長だから知ろうと思えば知れる”ってことか?」

『ほほっ、当たりじゃ。リュエラ様も長である前に子の親ということじゃ』


なんと回りくどい・・・とは思ったが、自由人の精霊に言っても仕方がない。


なんにせよ精霊達は基本自由人なので、別段嘘をついているわけでもないので、これ以上の言及は不毛と納得するしかない。


そうなると、アナベルが初めの契約で成立した精霊を探さなければならない。

他の精霊からチキン発言をされていたようだが、その精霊の所在を尋ねるとさぁねといった態度をとられる。要は自分たちで探せということらしい。


「でも最初に契約が成立した精霊って、何処に行ったら会えるの?」

「これだけ数がいるし、他の奴らの話を聞く限り、そいつは人前に出ることが苦手ってことだけはわかる」

「前途多難ね」


さすがのケイでも、ノーヒントで該当する精霊を探せということはかなり厳しい。

シンシアが肩を竦め、ケイはさてどうしようかと仲間達の顔を見やり唸るしかなかった。

精霊達の証言から、アナベルは既に精霊と契約していた。

しかし最初に契約した精霊が何らかの事情で姿を現さなかったことから、契約が不成立だと思い込みこれまでずっと続けてきた様子。

果たしてケイ達は、その精霊を見つけ出すことが出来るのか?

次回の更新は9月9日(水)夜です。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

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