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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
新大陸編
224/359

218、精霊族の島 ドゥフ・ウミュールシフ

皆さんこんばんは。

遅くなって大変申し訳ありません。

さて今回は、精霊の島ドゥフ・ウミュールシフ上陸回です。

『私は海の精霊です。勝手に船に入ってごめんなさい』


少し経ってから、青い服と髪の小さな少女が自分の事を語り出した。


彼女たちはドゥフ・ウミュールシフの精霊達で、海の精霊達が通過する魔道船を見て騒いでいたため、興味本位でこの船に近づいたのが始まりだった。

どうやらここ数日に食べ物や持ち物が消えたり、ちょっとした奇妙な現象は全て彼女たちが行ったイタズラのようなものだったようだ。


通常精霊という者は他の種族では見ることが出来ないようで、先ほどまき散らしたものは、精霊の姿を見るための魔法の粉のようなものらしい。


緑の精霊が逃げるために咄嗟にまき散らしたあの粉は、意外と重要なものだったことに、パニックに陥っていたことをさし引いても簡単にまき散らせるのだなと逆に心配になる。それと彼女たちは今までに人間(人族)を見たことがないようで、自分たちの事を説明するとても驚いていた。


「おまえ達のいう人族は他の大陸で生きている。俺達は歴史の真実を知るためにいろんな大陸へ行って情報を集めているんだ」

『なんだか難しそうね~』

『よく分からないけど、リュエラ様ならなにか知っていると思うよ!』


彼女たちはケイの説明を聞き、歴史?と疑問を浮かべる。


実は精霊には時間の流れという概念が鈍いらしく、言っている意味はよくわからないけれど、精霊族の長であるリュエラ様なら知っているのではと提案をされる。


『あ!でも、人にたくさんいたずらをしたからリュエラ様に怒られる~』

『ど、どうしよ~~~』


彼女たちは、精霊をまとめているリュエラという人物から他の者にイタズラや意地悪をしてはいけないと教わったようで、興味が勝りその約束を破ってしまったことに不安がる。彼女たちの話を聞く限りでは怒るとと恐い人物のようで、顔を青くさせた精霊達に一緒に謝ってやるからとケイが声をかける。


『『ほんとう!?』』

「あぁ。それに俺達も歴史に詳しい・・・その、リュエラ?って奴に会いたいんだけど出来るか?」


ケイの問いにもちろん!と、彼女達は自信を持って胸を叩いた。



「・・・で、具体的には何をするんだ?」

『この船にいる人達に魔法の粉をかければいいだけ!』

「さっきのやつか?」

『そうよ!』


精霊達は迷惑をかけたお詫びと称し、ふわりと飛び上がると瞬く間に食堂内にいる他の船員達の頭上に緑と青の粉を振りかけた。

振りかける際に加減をしているのか、先ほどのように粉じん爆弾ばりに舞うことはないが、突然降りかかる粉に初めは見えていない船員達もなにが何やらと唖然としている。


そして食堂内にいる者全てに粉を振らせると、さらに速度を速め食堂を飛び出し、光の速さの如く魔道船内全ての人々に粉のお裾分けタイムが始まり、船内の至る所から、船員達の慌てふためく声や仮眠を取っている船員が粉を吸ったことで咳き込む声があちらこちらに聞こえる。



「ダ、ダットさーーーん!!た、大変です!!!」



精霊達が飛び回っている間に、見張りで外にいた船員が慌てた様子で食堂に駆け込んできた。ダットがなにかあったのかと尋ねると、息を切らせながらも驚いた様子でこんなことを口にする。


「う、海の上に多数の青い光のようなものが見えました!」

「は、はぁ!?」

「嘘じゃないんです!とにかく、早く来てください!」


その船員はダットにそう報告をすると、とにかく甲板まで来てくださいと急かす。


ダットと食堂にいた船員達はどういうことなのか分からず首を傾げるが、食堂前の通路から甲板に続く階段を急いで向かう他の船員達の姿が見えた。

ただならぬ様子にダットが駆け出すと、ケイ達やその場にいた船員達もその後に続き甲板へと向かった。



「こ、こりゃ~どういうことだ!?」


甲板に出たダットが辺りの状況に声を上げる。


現在魔道船はドゥフ・ウミュールシフの捜索のため、自動運転超・徐行モードで海域を進んでいた。見張りの船員達の話によると、ダットの指示で海に何か手がかりはないかと見回していたところ、突如無数の青い発光体が現れたのだという。


呆然とする一同を前に、先ほどの緑の精霊と海の精霊が戻って来る。


「おい、この青い光は何だ?」

『これ海の精霊よ。光として見えているのは、生まれたばかりの精霊たちなの』


ケイの目から見てもただの青い発光体にしか見えないが、海の精霊曰く生まれたばかりの精霊だという。


もちろんなかには人型の姿をした精霊もいたが、そのどれもがこの魔道船に興味津々の様子を見せるが、逆にケイ達を含めた魔道船の船員達は、皆が皆、唖然とした表情でそれらを見つめている。

まさか、自分たちが実際に精霊を見られるとは誰も予想していなかった故に、ある者は近づいてくる精霊に触れると壊れるのではと棒立ちになり、またある者は心臓が止まりそうなほど至近距離から顔を覗かれている。


緑の精霊がなぜみんな止まっているのかと尋ねてきたので、精霊を見ること自体初めてだから緊張しているんじゃないかと返すと、そっか~と話を聞いているのかはたまた興味がないのかそんな返事をされる。


『でも、これなら島にいけるね!』

「ここから遠いのか?」

『ううん。ここからあっちに行けば島に着くよ!』


海の精霊が北東の方角を指し示し、ダットが「徹夜になるぞ!」と船員達を集め発破をかけては自動モードから手動に切り替え、船を進ませる準備をする。


ケイがずっと起きているのかと聞くと、ダットは善は急げ!というじゃねぇか!と声を張り上げる。さすがにケイは着くまで寝ようと思っていたので、鞄から最近ルトが開発した【眠気覚まし】のドリンクを取り出す。


これは過去に一度ケイも飲んではみたが、生姜のようなピリッっとした味わいが口に広がった。ルト曰く、睡眠攻撃を得意とする魔物の体液を錬金術で変換し作製した物だという。この飲み物には、生姜の他に五種類の薬草と特殊な製法で作製した薬品(魔素液を分解した時に残った成分を使用しているといっていた)を掛け合わせて作られた物で、試験的に試したところ約24~30時間ほど効果がある。


ルトが初めて作った際に本人が試し飲みをしたのだが、濃度が濃かったのか二日ほど眠れなくなったそうで、以来段階を重ねて調整をしていると語る。


ちなみにダットに渡した方は、いくつかの調整と試験を通過した物を渡している。


もちろん徹夜での航海を覚悟していたダットは、ケイから説明され受け取った飲み物を一気飲みし、やってやる!といった気負いで舵を手にした。



「ケーーーイ!島が見えたぞぉ!!」


翌日、そのまま甲板でうたた寝をしてしまったケイは、舵を取るダットの声に目を覚ました。


この辺りの海域は夜間は寒いと聞いたので毛布を羽織り、ブルノワと少佐を抱えながら寝ていたため、起床時に身体の節々がバキバキと音を立てる。

ダットから何度か名を呼ばれたが、朝の弱いケイの頭がはっきりするためには時間が少し必要だった。


「お前、本当に朝が弱いんだな~」

「悪かったなぁ。これでも今日は早い方だ」


立ち上がったケイが再度身体を動かし関節が音を立てると、腰に手を当ててダットの横に立つ。ブルノワと少佐もケイと一緒に起きたが、まだ眠いのか毛布にくるまったまま寝ながら立っている。


ケイが海を見やると、魔道船の進行方向に一つの島が見えた。


島は全体的に森に覆われているが、遠くからでも分かるぐらい木々の色が淡い緑をしており、クリスマスツリーの電飾を思わせる色とりどりの発光体が飛び回っているのが見えた。


あの島が以前上位精霊・ダビアが言っていたドゥフ・ウミュールシフのようだ。


「ダット、あとどのくらいで着くんだ?」

「この調子だと、早くて15分ぐらいだろうな」

「ということは、夜通しだったの・・・ぶっ!」


ケイがダットの方を向くと、何故かその表情に思わず吹き出す。


一晩で何があったのかという位に顔に落書きをされ、バンダナから見える髪の毛の先には色とりどりのリボンで結われている。


ダットのその姿にケイはゲラゲラと笑い、腹を抱えて甲板を笑い転げる。


ヒィ~ヒィ~と引きつった笑いをしたケイがどうしたんだと聞くと、ケイがその場で眠りメンバーは一度仮眠を取るために部屋に戻った後、精霊達に髪の毛を結われ顔を落書きされた挙げ句になぜか仲良くなったのだという。

よく分からないが、ケイ達を初めとする魔道船の船員達を精霊達が気に入ったようで、なかには既に仲良くなった船員と精霊もいるそうだ。



しばらくして魔道船は、ドゥフ・ウミュールシフの西の入り江に到着をした。


ケイ達が船から下りると、入り江に女神像があると聞いたことを思い出す。

辺りを見回しそれらしきものを探すが、ちゃんと見回す前に女性の声が聞こえる。


「風の精霊がいっていた船は、あなた達のものですか?」


透き通った白い肌にアイボリー色の衣装を身に纏った女性が一人。

太陽の加減でコバルトブルーの髪色が綺麗に映える若く落ち着いた印象のその女性は、ケイ達が来ることを知っていたような口ぶりをした。


「あんた、何者だ?」

「私は精霊族をまとめておりますリュエラと申します」


リュエラと名乗った女性は風の精霊からケイ達の事を聞き、自ら足を運んでこの入り江で待っていたと語る。


そこでケイがリュエラに今までの出来事と事情を説明し、精霊達が行ったイタズラも不問にして欲しいと話すと、その事も風の精霊経由で知っているのか少し困った表情で、あまり困らせてはだめですよと精霊達を宥める。


それから彼女は突然、とある人物に気づき、自らその人物の前に歩み寄った。


「あなたは・・・シルト様、ですね?」

『? 私のことを知っているのか?』

「もう遠い昔のことかも知れませんが、あなたが居なければ、今の精霊族は存在していません。あの時は本当にありがとうございました」


リュエラは感謝の意を示し、逆にシルトは記憶喪失のためなぜ自分が感謝されるのか分からず困惑した表情を浮かべた。

精霊族の長リュエラはシルトと面識があった。

彼女の言葉に記憶がないシルトは困惑をするが、ケイは何か分かるかもしれないと期待に胸を膨らませる。

次回の更新は9月4日(金)夜です。


いつもご高覧くださりありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

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