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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
新大陸編
220/359

214、動く石像と譲渡

皆さんこんばんは。

遅くなって申し訳ありません。

今回は、地下神殿でグドラぶち切れ!?乱入者現る!?の回です。

『やはり、バメット!貴様もか!!』


どうやらグドラは、マードゥック救出の手引きはバメットがしていたと思っているようで、ケイ達が一緒だということも関わらず歯をむき出し敵意を見せている。


怒り心頭のグドラを前に、ケイとしては「えっ?俺達見えているよね?」と言った完全スルーで置いてけぼりを喰らいつつ、さてどうしたものかと考える。

バメットはこうなるとグドラは手に負えず、ましてや自身の私兵は実子であることから言葉での説得の成功率は高くはない。加えてマードゥックからは、どうせジュランジはルバーリアの配下になるので、彼を殺しても問題はないだろうと言っていたらしい。


もはや暴虐を通り越し、ある意味清々しいほどの振る舞いである。


『それと、貴様らもバメットに荷担してるな!?』

「あ、俺達見えてるんだ。ある意味安心した~」

「何言ってるのよ!?完全にピンチじゃない!」


グドラは次にケイ達を見やり、バメットが手引きした者かとつっかかってくる。


ケイは自分たちの事は見えているのかと別の意味で安心をし、その隣で悠長にしてる場合ではないとシンシアに突かれる。

肝心な状況で悠長なケイの物言いにあきれ果てながらも、水中を得意とする人魚族には些か不利な状況だが、そんなことは気にもせず、ケイはグドラにこう尋ねた。


「あんたさ~ひとつ聞きたいんだけど、獣族が人魚族を裏切ったって聞いたけど、それって本当にそうなのか?」

『何を言っている!?あやつらは我々との同盟を破棄しアフトクラトリア人と共謀した裏切り者だ!!しかも民や私の子供達まで殺され、連れて行かれた!それが嘘だというのか!?』

「だからその腹いせに、クラーケンの件を獣族が捕らえたという嘘をでっちあげてジュランジに攻め込んだんだな?」


グドラはそれの何が悪いと鼻を鳴らすと厄介者がいなくなることに加え、長年の雪辱を果たすためなら嘘でも構わないと一蹴する。


しかしケイは、ここで奇妙な違和感を感じる。


そもそも彼らが言う裏切りと言う言葉は、何を示しているのか?

アフトクラトリア人と獣族が手を取ったということは、もしやケイ達のいる大陸の事を示しているのでは、と。


それを裏付けるのは、ルフ島にある獣人族の文献である。


そこにはペカド・トレに関する事項は、口外をしないという規定がされている。

以前獣人族のオブスから聞いた話によると、今居る獣人族は一部を除き(魔物のコボルトから進化したコボルト種など)獣族から進化した姿だという。

そう考えると、ジュランジからルフ島に住み着いた一部の獣族が、長い年月をかけて人の姿に近い獣人族として暮らし続けたのだろう。


そうなると人魚族が言っていた裏切りは、アフトクラトリア人がペカド・トレの建設のために一部の獣族と共に海を渡り、そこで女神像の結界の関係で生涯を過ごすことになったとなる。

しかし事情を知らない人魚族は、裏切られたと認識したのだろう。



そこで、ケイ達の後方にある地下に続く階段から轟音が聞こえた。


何事かと後ろを振り返ると、何かがこちらに向かってくる音が聞こえる。

時折、壁に何かをこすりつけながら音が近づいて来ているところを、その場にいた全員が注視する。


「おいおい!またかよ!?」


階段を上がり姿を現したの者は、以前幻のダンジョンで対面した動く石像である。


あの時は建物の柱が折れたことにより天井が崩れて下敷きとなったが、不死身の如く蘇った石像は、今度はご丁寧に石像と同じ材質の大剣を両手に持っている。

完全に第二ラウンドが始まっている。



「全員走れーーー!!!!」



ケイが顔を引きつらせ軽口を叩いた次の瞬間、思い日本の大剣を引きづらせながら向かってくるところを見て敵味方関係なく、全力で来た道を戻れと声を張る。

ブルノワと少佐を脇に抱え、ケイ達やマードゥック、グドラ達は慌てて来た道を急いで戻る。


石像は全体的に巨体で、一歩が大きいことから全力で走らなければすぐに追いつかれてしまうことは理解できた。加えて大剣二本持ちである。

完全にテリトリーに入ったことによって追いかけて来ていることがわかる。

もはや、映画に出てくる追跡者のよう。下手なホラーより武器を持った巨大な石像が追いかけてくるとなると、そっちの方がもはや恐怖である。


一行は来た道を戻り表の入り口と裏手に続く通路までやって来ると、そこで石像が手に持っていた大剣が投げ込まれる。


「きゃあっ!!」


シンシアの悲鳴と共に大剣は上空を飛びこえ、その先の壁に深く轟音と衝撃が合わさり深く突き刺さる。

身長に対して大剣も異様な大きさのため、ヘタをしたらその衝撃で建物が壊れることを悟ったケイは、ブルノワと少佐をアダムに投げ渡すと、くるりと方向転回をして迎え撃つことにした。


「ケイ!止めとけ!逃げろ!!」


投げ込まれたブルノワと少佐をキャッチしたアダムが叫ぶ。


その声に反応したのか、一緒に逃げていたヴェルティヴェエラとノヴェルヴェディアが同じように方向を変え、ケイに並ぶと同時に凄まじい高温を石像目がけてブレスする。



『『kyaaaaaaaーーーーーーーー!!!!』』



二体の甲高い音に空気が震え、壁の大理石に亀裂がいくつか走る。


石像はその音に動きを止め、まるで押し戻されているような体制を取ると、もう一本の剣を支えとして凌ごうとしている。


ケイは隙を狙い、超音波により膝をついている石像目がけて走り出し、その行動を確認する石像は地面に突き刺さっている大剣を抜こうとしている。

しかしケイの方が一歩行動が早かったようで、大剣が引き抜かれる同じタイミングで石像の手前で飛び上がり、頭部目がけて右足を思いっきり振り切った。


「覚悟しやがれ!!」


ケイの右足が石像の頭部に直撃すると、到底人の足に当たったと思えないほどに亀裂が走り、ケイの足が振り切ったかと思うと亀裂が入った頭部は破裂音と共に無残にも木っ端微塵に砕け散る。

そして頭部を失った石像は、突き刺さったままの大剣から手を離したかと思うと、数歩下がり、同時にその身体は轟音をを立てて後ろに倒れた。



「『なっ!?』」


ケイの中では先手必勝と頭部を潰せば大体勝てるという認識だったのだが、その光景を間近で見たグドラ達とマードゥックは、唖然とした表情をしていた。


大喜びのブルノワと少佐に仲間達は既に何度も見ている光景なのでいつものことだとたいして驚きはしなかったのだが、冷静に考えればいくら体格が良く力が強い歴戦の猛者でも自分より体格の大きい相手を魔法もなしに一撃は無理がある。


それが例えヴェルティヴェエラとノヴェルヴェディアの助けもあっても、本能的な部分が【ケイを敵に回してはいけない】と訴えかけている。


この時ばかりは、人魚族も獣族の長も同じような思いを抱いた。



【セキュリティ突破に伴い、メインシステムの再構築を完了致しました。これより海底神殿は、人族・ケイが所有者として譲渡されます】



神殿内にアナウンスのような声が響き渡った。


「ケイ!腕輪!」


何事かと辺りを見回してみると、アダムがケイの腕輪を示す。

腕にはめている腕輪が、一瞬だけ青く光るとそれに連動して建物内全体がネオンのような青い光が何かの模様のように形成し広がりを見せる。


「こ、今度はなんなのよぉ!」

「メインシステム?譲渡!?」

「ケイ!また何かしたの!?」

「んなわけねぇだろ!?なんでも俺のせいにするな!」


慌てふためくシンシアに自分のせいにされたケイがとばっちりだと訴える。


建物全体が地震のように激しく揺れ、崩れるのではないかと覚悟をしたのが、数秒後に揺れが収まると、辺りは息を吹き返したかのように青い光を維持したままの光景が広がっていた。


「・・・で、これはどう説明するのかしら!?」

「いでぇぇええ!お、俺のせいじゃねぇ!腹を抓るな!」

「シ、シンシアさん!?お、落ち着いてください!」

「こればかりはケイのせいじゃないぞ!?」


もうー堪忍ならん!といわんばかりにシンシアがケイの横腹を抓り上げ、それを慌ててタレナとレイブンが止めに入る。その横で先ほどまでの殺人的な攻撃は一体・・・とグドラ達とマードゥックが呆けた表情でやりとりを見つめる。


「ほら、シンシアそれぐらいにしておけ。それより、メインシステムがどうとかって言ってたな?」


アダムが間に入りシンシアを宥めると、ケイに先ほどの声はと疑問を投げかける。

レイブンがもしかしたら、先ほどの地下のことじゃないか?と返し、幻のダンジョンの時の事を話す。


以前ケイ達が幻のダンジョンとして入った時は、石像があった部屋の先に見えない床の場所があったはずだ。それを聞いたシンシアは顔を青くさせるが、一度先ほど行った場所まで戻ろうとした。


「もしかして地下に行くのか?」

「様子を見に行ってみる」


マードゥックの問いに答え、未だに呆然とするグドラ達を見やると殺されると言わんばかりに兵は青い肌を更に青くさせ、その何体かは腰が抜けたかのようにその場に座り込む。

指揮をしているグドラからは冷や汗の様なものが浮かんでおり、動けば殺されるのではと、まるでケイの事を獰猛な獣を見る目つきで顔を強張らせている。


未だに動く気配のないグドラ達を置いて、ケイ達は石像があった場所まで行ってみることにした。



地下に続く階段を下りると、湖の見える大きな鍾乳洞に辿り着く。


以前幻のダンジョンとして赴いた時には神殿のような部屋があったはずなのだが、前回と同じように扉をくぐると柱を始め天井や柱の瓦礫が石像の一件で散乱したままになっていた。

しかし前回と違って草で覆われた扉は開いたままになっており、下に続く階段を下ると見えない床の場所ではなく、こちらを向いた女神像がある部屋に行き着く。


「幻のダンジョンの時とは違うんだな?」

「女神像の仕掛けのせいじゃないのかしら?」

「たぶんな」


そこに立っている女神像は、アルバラント城の地下にあった女神像・シエロと瓜二つだった。桜紅蘭にシェメラの像があったことから、恐らく女神像自体“対”になっているのではと考える。


用途は分からないが、他の像も対になっている可能性はある。


「ここにある像はがアルバラントとは別、ってことか。ところでマードゥック、ジュランジにもこれに似た像ってあるのか?」

「いや、見たことがない。そういえば、ここから北にある島の入り江に同じような物があるというのは聞いたことがある」


マードゥックの言葉にケイは頭の中で地図を思い出した。


位置的にジュランジとルバーリアの北側は、精霊族がいるドゥフ・ウミュールシフがあるはずだ。やはり大陸にあった他の像も対として他の大陸に存在しているのではと、ケイはふと考えたのであった。

女神像は、それぞれ二体ずつ存在し対になっているのではと考えたケイ達は、マードゥックから噂でドゥフ・ウミュールシフに女神像に似たものが立っていることを聞く。

それは一体何を示しているのか?

そして知らぬ間に海底神殿の権利を譲渡され、シンシアに抓られるハプニングもありつつ次なる行動に移ります。

次回の更新は8月26日(水)夜です。


いつもご高覧くださりありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

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