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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
新大陸編
218/359

212、マードゥック救出

皆さんこんばんは。

遅くなりましたが、いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回は、マードゥック救出回です。

『バメット!グドラ様の命だ。投降しろ!』


ケイ達の前方に槍を持った数体の人魚達がこちらに構えた。


バメットは自分を捕らえて処刑するつもりだといい、おまえ達こそこれが変だとわからないのかと彼らに問うと、グドラ様の命は絶対とこちらの問いを一蹴する。

頭に血が上っているとか興奮状態というわけではないようで、どちらかというと教えによる洗脳のような様子が窺える。


こちらに対峙する人魚達は、ケイ達の姿を見るやバメットの仲間だと認識したようで大人しくしろと槍の先をこちらに向ける。


「【バインド】!」


ケイがまとめて拘束魔法を施すと、瞬時に身動きが取れなくなったのか水中に浮かんだまま藻掻き始めた。

拘束自体はよほどのことがなければ解かれることはないが、いくら身動きが取れないからといって、水中を得意とする相手にはいささか分が悪い。


「バメット、マードゥックはどこに居るんだ?」

『彼はこの先にある監獄に収容されています』

「監獄?」

『この宮殿の地下には大人数の罪人が収容されています。マードゥック殿はおそらくそこに・・・』


この先にある監獄と呼ばれる場所は、人魚族曰く“墓場”だという。


元は本当の罪人を収容するためにあったそうだが、近年無実の罪で投獄されている人魚もいるらしく、グドラは部下の口から聞いた大小様々な噂を罪とでっち上げ、片っ端からそこに放り込んでいるのだという。

しかも最悪なことにグドラは自身の子供の育成の糧にと、捉えた人魚達を使って武器の練習相手(というより逃げられないようにヒモで括り付ける人形の役割)として送り出したりしている。


もちろん武器として使用するものは、実際に戦場で用いられる槍や銛を使用するので結果は大体想像つくだろう。グドラ曰く、また生めば良いという暴虐振り。

一部の兵士はそのやり方に疑問や嫌悪を抱き、反対派として水面下で活動の機会を伺っている集団もいるそうだ。


「でも、なんでそこまで行イカれた考えや行動をするようになったんだ?」

『我々人魚族は、1500年前の世界大戦で多くの仲間を失いました。当時我々と獣族は同盟関係にありましたが、アフトクラトリア人に寝返った獣族に恨みを抱いたグドラ様は、彼らの滅亡を願い、そのための行動の準備を行っていたようです』

「ということは、グドラの単独計画ってことか」


ちなみに人魚族は他の種族に比べて圧倒的に寿命が長い。


その一つの要因は、彼らが槍や銛以外では魔法を扱い、魔素の関係で体質が変化し長命を手に入れたのではと言われている。そしてグドラ自身も1500才以上とかなりの長寿で、兄弟の王争いを勝ち抜いて今まで生き抜いてきたというサバイバーな人魚である。


当然単独計画といっても、先ほどの人魚達のように彼を崇高している者も少なからずいる。バメットは、その彼らはグドラの息子達だという。

私兵兼実の子供ということである。


『それと、そちらの彼らは・・・』


バメットの目線がヴェルティヴェエラとノヴェルヴェディアに向けられる。


ケイは今までの経緯を説明をすると、表情が一変し無事で何よりですと二体を快く迎える。バメットによると、どうやら二体は世界大戦時にグドラによって国から追放されたのだという。


当時人魚族は同盟国だったジュランジと決別し、大戦に乗じて戦争を仕掛けた経緯がある。その時に生まれた二体を含む五十体以上の兄弟達は、すぐに選別され兵士として育てられたが、ヴェルティヴェエラとノヴェルヴェディアだけは能力の劣が目立ち使えないと判断され、捨てられたのだという。


しかし、これが彼らにとってはよかったのかもしれないと考える。


暴虐と捉えられる実父の言動の影響を受けず、ダット達のような他種族と共存するという事を学んでいることから、少なくとも教える内容と方向さえ間違いなければケイ達のいう一般的なことも理解できるだろう。


「ケイ、それよりもマードゥックさんを探さないとやばいんじゃないか?」

「あ、忘れてた!」


アダムからマードゥックの話をされたケイは、バメットの案内で奥に続く通路の先へと向かった。



「これは・・・鳥かご、か?」


通路の先の二枚扉をくぐると、見上げるほど高い吹き抜けにドーム型の天井がある空間へと辿り着く。

ケイ達がぽかんと見やる目線の先には、天井から太い鎖がいくつも垂れ下がり、そこから人が収容できるほどの頑丈で大きな鳥籠がぶら下がっている。


よく見ると、そのいくつかの鳥籠には何体もの人魚達が鉄格子越しに「助けてくれ!」と声を上げているところが見える。


その周囲には巡回しているとおぼしき人魚達の姿がある。


数は目視で大体二十体ほど。

強引に突破は出来なくはないが、マードゥックの姿を確認するべく周囲を見回していると、その中心に他より二回りほど大きな鳥籠が見えた。

その鳥籠は他のものより骨組みがしっかりしており、鉄格子同士の感覚が短く、収容者を逃がさんばかりの重厚さを感じる。


「あそこにいるのがマードゥック殿です!」


バメットが指を指した大きな鳥籠には獣族とおぼしき竜の姿をした人物がいた。

その人物は拷問を受けた様子で、傷だらけになりながらもグドラを説得している様子が見える。しかし当のグドラはそれを否定、一蹴するような口調をする。


『マードゥック、お前達獣族は過去に我々を裏切った・・・その身を持って償え!』

「グドラ殿、話を聞いて欲しい。確かに過去の獣族はそういったことをしたのかもしれない。しかし今の獣族は貴殿たちが知っている者は既に存在はしない。今後は我々も共に手を取り合うべきであろう?」

『笑わせるな!お前達はただ我々人魚族に従っていればいい!まぁ、貴様が死んだ後に我々の下僕として獣族をまとめることぐらいはできるであろうな』


驚愕の表情を浮かべたマードゥックに愉快そうな笑みを浮かべるグドラ。


端から見れば完全に悪役の言動だが、バメットから過去のことを聞いたがために責められない事情もある。しかし今はマードゥックの命が危ないことは、見ているケイ達も理解できる。現に鳥籠の回りには槍を持ったグドラの私兵(実子)達が取り囲んでおり、矛先をマードゥックに向けているのだ。


「ケイ!マズいぞ!」

「分かってるって!任せろ!」


グドラが兵に合図を送るために手を上げた右手を振り下ろした瞬間、鳥籠と私兵達の間に閃光弾が割って入る形で鳥籠の鉄格子に当たった。


閃光弾から太陽の光のように強烈な光が辺りに広がり何も見えなくなると、一瞬のことにグドラと兵達は目を押さえた。

そしてしばらく経ち光が収まると、鳥籠にはマードゥックの姿はなく、無残に鉄格子が変形し穴が開いているだけだった。



『なっ!こ、これはどういうことだ!!?』

『グドラ様!マードゥックの姿がありません!』

『何を呆けている!早く探せ!!』


グドラは兵に叱責を浴びせ、マードゥックを探すように命令を下す。


兵達は慌てて監獄から飛び出すと直ちに建物内の捜索へと向かっていく。

グドラも『あの獣野郎』と悪態をつき、兵に続くように監獄をあとにした。



「あんた、大丈夫か?」

「だいぶ酷い怪我だな」


そのマードゥックは、閃光弾と同時にケイとアダムによって救出された。


彼のいた鳥籠は、異常なまでのケイの力によって素手で引きちぎられ曲げられ、マードゥック自身は閃光弾の光を見てしまったために自力では動くことが出来ずに二人によって運び出されていた。


運びだされたマードゥックの体には、人魚族によって受けた拷問の傷跡が無数についている。


鑑定では【体力低下】と【疲労】が表示され、ケイの魔法によって傷と体調を回復させたマードゥックは、状況が理解できないのかケイ達の方を見つめている。


「君達は?」

「俺達は冒険者だ。ジュランジのレックスとギエルからあんたを助けて欲しいと頼まれてここまで来た」

「じゃあ、島は!?」

「大分被害を受けていたけど、レックスもギエルも無事だ」


島や船を攻撃され自身も捕虜となり、どうにもならなくなった時に助かるとは思ってもみなかったのだろう。

そして彼は、バメットとヴェルティヴェエラとノヴェルヴェディアの姿を見るやハッと息を呑んだ。ケイが彼らは自分たちの見方だと話し、今までの経緯を説明すると、彼は人魚族はまた島に攻撃を仕掛けてくるかもしれないと不安を抱く。


「だとしたら、早くここから出ねぇとな」

「あぁ。彼らが戻ってくる前にルバーリアから脱出できればいいんだけど」


アダムの不安が的中したのか、ケイがマップとサーチを展開すると宮殿内の捜索隊が相当な数を導入したのかほぼ赤色に染まっている。


『それでしたら、海底神殿を経由すれば宮殿の裏側に辿り着くでしょう』

「海底神殿?」

『過去にアグナダム帝国の人々が築いた神殿があり、この部屋には神殿に続く隠し通路が存在します』


バメットが監獄の奥にある壁に向かって手を伸ばすと、ぬぅっと手が壁に吸い込まれる。実は、光と水の関係で視覚では壁があるように見えるのだが、ケイ以外はその奇妙な現象を初めて見るのか「えっ?」と声を上げる。


「珊瑚の光の屈折か?」

『はい。ここは他の場所より暗いため、珊瑚の光と相まって我々の視界には壁のように見えるのです』


バメットから早く向かいましょうと急かされる。


ちなみにこのことはグドラ達は知らなかったようで、一国の主が知らないことなんてあるのかと聞くと、元々一度集中したり気分を害してしまうと他のことが目に入らず覚えてもいないこともあると述べる。一点集中型なのだろう。



隠し通路には年季の入った苔がついた階段があり、そこを下るとある地点から見たこともないアーチ状の柱が奥に続くところが見える。


どうやらこの辺りから海底神殿の敷地内のようで、バメットによれば太古の昔にアグナダム帝国と人魚族は協力関係にあったことから、友好を示しての建造物だと言われている。

神殿と聞くと神様を祀り祈りを捧げるという認識なのだが、人魚族では国のシンボルとしての意味あいが強い。ちなみに隠し通路はバメットも最近見つけたそうで、まさかここで役立てるとは思わなかったと口にする。


「海底に神殿って、アグナダム帝国のやつらはどんな技術を持っていたんだ?」

「これを見る限り水中に建造物なんて俺達も想像しなかったが、この技術を地下帝国に応用したということなんだろうな」


アダムが言うように、現代の地球でもなかなか再現できないクオリティーである。


感心したいのは山々だが、今は一刻も早くルバーリアを脱出するためにケイ達は海底神殿へと足を踏み入れたのであった。

マードゥックを救出したケイ達は、ルバーリアを脱出するために海底神殿を経由しながら宮殿の裏側を目指すことになります。

果たして待機しているルシドラと合流をすることはできるのでしょうか?

次回の更新8月21日(金)夜です。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

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