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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
新大陸編
216/359

210、海の国ルバーリア

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回は、ルシドラによってルバーリアに向かうお話です。

「どっちかを滅するって物騒な話だな」

『ふっ、現にどちらの国も揉めているではないか?』


ルシドラは鼻で笑い、二種族の抗争など取るに足らないと切り捨てる。


彼女からしたら、自分のテリトリーでもめ事が起こることは迷惑以外の何ものでもないだろう。双方弱って共倒れになればラッキーと思っているのか、それに対して何かをするつもりはないらしい。


「じゃあ、ヴェルティヴェエラとノヴェルヴェディアに牙を剥いたのは何故だ?」

『人魚族は我から子を取り上げ惨殺した不届き者だ。それが誰であろうと、同じ事をするまでだ』

「矛盾してねぇ?だったら国ごとルバーリアを滅ぼせばいいだろ?それにヴェルティヴェエラとノヴェルヴェディアを襲わなかったことも、あんたの言っていることと違うじゃねぇか?」


ケイの指摘にそれは・・・と言葉に詰まるルシドラ。


『あの国は年端もいかない者しかおらん。故に我が手を下すわけにはいかない』

「年端もいかないって、人魚族ってそんなに若い奴しか居ないのか?」

『あやつらは何年もジュランジと対峙し、その度に犠牲者が出ている。特に最近では若い者が矢面に立っているところを幾度となく見てきた』


現在ルバーリアでは、人で言うところの年配や年長者の存在が犠牲となりすぎているためその存在が減少傾向にあるという。

しかも国をまとめている王の命で若い人魚族(十代~二十代)の犠牲もあり、内政も傾きかけているようだ。しかし王は国を安定・繁栄させるためにありもしないことをでっち上げ、ジュランジに侵略している。


ルシドラによると、人魚族は一回の出産に約二十~五十体ほど生み、半永久的に兵を投資しているそうで、落とすためなら自身の子供の犠牲も厭わない考えを持っているようだ。子供を殺された彼女も、その当たりで国を滅ぼす様なことを躊躇している。正直、彼女がやるやらないという選択肢を設けても傾きかけている時点で、遅かれ早かれ国が潰れるのは目に見えている。


「交渉の材料となるマードゥックの安否を気になるし、いずれにせよ助けることになるな」

「でも、ルバーリアって海の中でしょ?ケイなら出来るけど、私達は専門のスキルがないから潜れないわ」


シンシアの言う通り、ケイはアーベンのスライム騒動で自身の創造魔法でスキルを作製した経緯があるが、他のメンバーはそもそも潜水のスキルを所持していない。ケイは自分だけでも行ってこようとしたのだが、何があるかわからないとアダム達から否定の意思を受ける。


『ほぉ~。そこまで獣族の長を助けに行くというのか』

「なんか文句あんのか?」

『いいや。人間という者は他種族であっても、助けに行くというという考え方が不思議でならないだけだ』


ルシドラはそれならと、自身の体を示し鱗を剥いでくれという。

そのワードだけなら完全に猟奇的な発言なのだが、彼女曰く鱗には水中呼吸の作用があるようで、一定期間なら十分に対応出来ると答える。


「その鱗をかじれってこと?」

『そうなる。まぁ、味の方は期待できないがな』


ルシドラの表情からさぁ、どうする?というような雰囲気を感じる。


ケイにはそれが伝わったのか、人数分の鱗をルシドラから剥ぐ。

その様子にアダム達はいいのかと止めに入ったが、やたらめったら鱗を剥いでいるのではなく古い鱗を選んでケイは取っている。


さすがのケイもその辺の気遣いは出来る。


ルシドラの鱗を渡されたアダム達は、ただ口に入れて食べればいいという言葉に顔を引きつらせる。魚でも鱗は食べることはなく、ましてや大海竜という未知の領域に躊躇する。

唯一食べる事がないケイは食べないのかと聞くと、半ばやけになってアダムとシンシが口の中に鱗を入れて咀嚼する。

咀嚼した口の中から、煎餅を食べたようなバリバリと乾いた物が砕ける音がする。


「上手いか?」

「「・・・味がしない」」


アダムとシンシアからは、物の味がしないと鮮やかな鱗の見た目とは裏腹に微妙な感想を告げられる。二人が食べられるのだから他のメンバーも次々と口に入れる。


今回もアレグロの関係でシルトも同行することになった。


彼も口に入れたことのない感触に戸惑っていたが、これもありなのかと適応力はアダム達より高い。島にはダット達が残り、レックスも同行したがっていたが島の方の手伝いに回ることになった。


『そこまで意思があるならルバーリアに案内しよう』

「あぁ。頼む」

「皆さん、どうかよろしくお願いします」


ルシドラからルバーリアまで案内する旨と、ダットとバギラからはこっちはなんとかするので心配しなくてもいいと伝えられる。

レックスは自分ではどうも出来ないため、マードゥックのことを頼むと頭を下げられた。海を得意とする人魚族がいつ襲ってくるかなんてわからないため、ダット達も気をつけるようにと返し、ケイ達はルシドラの背に乗り、海底にあるルバーリア国を目指したのであった。



「ルシドラ、ルバーリアまでは距離があるのか?」

『ルバーリアは日の光が届かない海底に存在している。それに先ほどからついて来ている者がいるようだ』


ケイ達が後ろを向くと、こちらに向かってくるヴェルティヴェエラとノヴェルヴェディアの姿があった。ルシドラに待つようにと止めると、二体はケイ達に追いつき自分たちも一緒に行くと言った。


「ダットには言ったのか?」

『モンダイ ナイ マカド ハナシ キイテクレタ』

『モドル ヤクソク』


二体は国の現状が気になったのかダットとマカドには話をしていたようで、必ず戻ると約束をしたのでケイ達について来たと答える。

二体は国で過ごした期間が短いことから、自分たちを分け隔てなく優しくしてくれたダット達の元を自分たちの家だと思っているようだ。


ケイは彼らにこれからルバーリアに向かっているから、自分たちの言うことを聞くようにと諭すと、それを了承したのか互いに顔を見合わせてから頷いた。



「ケイ!アレじゃない!?」


ルシドラに乗ってしばらく海底を進んでいたが、急に海底から泡が上がって来るところが見えた。よく見ると、海底の岩場にいくつかの空気貝の存在が確認できた。

ここまで来るとルバーリアは目前だとルシドラが口にし、ケイ達の眼前に岩で出来た建物がいくつも見えた。


日の光が当たらない海底なのに、全体的に仄かに明るい。


どうやら海底に生息する微生物やプランクトンの一種が発光する能力を持っているようで、緑や赤・黄など色鮮やかな景色が見られる。その中には光る珊瑚の存在もある。地球にもブラックライトを当てると蛍光色に光る珊瑚があるのは知っていたが、それとは別にルバーリアに生息する海中生物は、独特の進化を遂げていることがわかる。


「それでルバーリアに入るにはどうすればいいんだ?」

『ルバーリア全体に薄い膜の様なものが見えるだろう?あれは、結界種に変異した空気貝が存在しているから上から入るのは不可能だ。中に入るには、正門と裏門の二つのルートがある』


ルバーリアは他の海域には見られない独自の生命体が形成されているようで、その中でも空気貝の亜種である“結界種の空気貝”は、あるルート以外からは入れない仕組みになっているそうだ。


『表は他の人魚族が護衛をしているが、裏側からなら入れるかもしれない』

「じゃあ、そっちに向かってくれ」


ルシドラはケイに了承すると、表側ではなく裏側からルバーリアに続く道の方へと回り込んだ。



ルバーリアの裏側の道は、岩盤が高い崖のようにそびえ立っていた。


岩盤の真ん中に亀裂様な細い道があり、左右に囲まれた岩盤の中をルシドラが通ると、幅的にギリギリだということがわかる。こんなところで襲われたらたまったものじゃないなと思い、ケイはマップとサーチを展開する。

幸いこの辺りには警備する人魚族の存在がいないようで、ルシドラに念のために注意するようにと伝えてから辺りに気を配る。


「この先は何処に繋がっているんだ?」

『恐らくだが、ルバーリアの宮殿の裏側に辿り着くはずだ。我も実際に行くのは子供が殺されて以来だ』


ルシドラの子供は、今から向かう宮殿の裏側で惨殺された姿で見つかった。


彼女はその時悲しみのあまりにその地を離れたが、なぜ子供が殺されたのかと尋ねると、ルバーリアの守り神に子供を宿すことが御法度らしい。人魚族のルールなのかはたまた一方的な解釈なのかはわからないが、それ故に彼女の子供は生まれてすぐに人魚族に殺され遺棄されたのは事実だ。


同行しているヴェルティヴェエラとノヴェルヴェディアにそのことを尋ねると、正確な事は聞いたことがないが、人魚族を崇める神は元々雄を軸に考えている節があるそうだ。


実はそんなことを言っている人魚族も元は男性型が多かったそうで、女性型などの存在はあまり知られていなかったそうだ。そうなると女性型であるヴェルティヴェエラは、人魚族にとって異端の性と考えられていたのだろうか?


ノヴェルヴェディアによると、ヴェルティヴェエラはある時急に他の個体と異なった体格になったらしい。それまでは自分と同じ体格だったのに、急に彼女が変わったことにより彼はそこで初めて他の性を知り受け入れた。


それが世界大戦後のことであったことから、環境によって幅広い考え方も彼らは持つのだとケイ達は理解する。


ちなみに人魚族にも女性型(雌)がいたようだが、彼女たちは子供を産むために存在し、それが終われば王の手により問答無用で切り捨てられたそうだ。

かなり残酷な話だが、それが人魚族の生活習慣であり、そのまま国に留まった場合

にヴェルティヴェエラも同じような末路を辿る可能性があったとなると、国を離れたのはよかったかもしれない。



『そろそろ着くようだ』


シルドラの言葉と同時に、細い岩盤から急に視界が開けた。


青い海に反射するように蛍光色の珊瑚の姿が広がり、遠くの方にアラビアン調の宮殿の様なものが見える。


この辺りは人魚族が来ないそうだが、万が一のためにルシドラは岩盤の方に身を隠し、ケイ達はうろ覚えながらもヴェルティヴェエラとノヴェルヴェディアの案内により宮殿がある建物の方に向かっていくことにした。



「この辺りには反応があるはずなんだけど~」


マップとサーチを展開したケイは、人魚族の反応以外に他にいるかと気を配る。


ケイの目にはルバーリアの地図が表示され、好戦的な赤色が広がっている。

ここで戦闘になれば面倒だとなるべく人通りのない道を選び、時折ヴェルティヴェエラとノヴェルヴェディアに周囲の状況を見て貰っている。


「マードゥックさんは見つかるか?」

「たぶんたけど、下に一つだけ違う反応があるから其処にいる可能性はあるな」


宮殿の外側を通りながら、アダムが開けた窓から中を覗くと人魚族の兵が行き交う姿が見える。


反応自体は下の階層にあるようで、ケイはどうやって中に入ろうかと考えた。

何とかルバーリアに着いたケイ達は、宮殿の下の階層から別の反応を確認します。

果たしてマードゥックは見つかるのか!?

次回の更新は8月17日(月)夜です。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

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