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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
新大陸編
215/359

209、知らなかったことを後悔する

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回は、ケイ達にとって衝撃的なことがわかります。

「なぁ、モエってなんだ?」

「モエは、人魚族が崇めている守り神のことです」


ギエルにモエのことを尋ねると、ルバーリアで崇めている守り神の事らしい。


現在、ルバーリアには二体の守り神が存在する。

一体は西の海を司るルシドラという大海竜で、もう一体は東の海を司るモエという海の神が存在していることから、その二体がルバーリアを守り、人魚族は彼らを信仰していると伝えられる。

しかしモエの方は長い間姿を見せないことから、人魚族は東の海に比較的近いジュランジがモエを捕らえたと考え、攻撃を仕掛けたのではとギエルは答える。


「しかし我々はそんなことをしていません。マードゥック様も何かの間違えだと何度も掛け合ったのですが・・・」

「向こうには相手にされなかった、と」


はい。と頷くギエルにケイは、そのモエというものについて尋ねた。


「そもそも、そのモエってやつはどんなやつなんだ?」

「私も見たことがないのですが、一説では【白い体に手足が十本ある姿】をしているそうです」


ん?とケイが首を傾げる。

白い体・・・手足が十本・・・・・・イカか?と頭の中でその生物の姿を思い出す。

イカが守り神?と疑問を浮かべたが、地域や部族によってはそういうことがあるのだろう。


ちなみに地球では年間300万トンを超える漁獲量なのだが、その内の約30%が日本で消費されているという話がある。実は世界的にもタコよりもイカの方が消費され、海外ではタコは悪魔の生き物などという逸話まであるそうだ。


ケイはそんな認識のため、いろんな信仰があるのだなと納得した。


「ケ、ケイ?」


しかしそんな話しを余所に、隣にいたシンシアがケイを呼んだ。

何だと振り向くと、彼女は心なしか顔を青くさせながらこちらを見つめている。


「ねぇ、思ったんだけど・・・それって“クラーケン”じゃない?」

「そういえば、そんな異名があったと聞いてます」


シンシアの言葉にギエルがそうだと頷くと、ケイもそこであっ!と思い出す。


ダットも気づいたのかケイの方を見て、マズいという表情を浮かべている。

バギラはそんな様子に気づいたのか、ギエルの傷に障るからとケイ達を一旦テントの外へと退出させた。



「本当にまずいことになったな。で、どうするんだ?」

「どうするって、俺もまさかこんなことになるなんて思ってもなかったぜ!」


ギエルの話を聞き、速攻でアダム達とレックスを集めたケイは事情を説明した。


案の定アダムはこんなことになるとはと頭を振り、ケイは頭を抱える。

その横では、事情を聞いたレックスが顔を青ざめさせながら「食べたのか・・・?」と正直引いている表情が窺える。


要はルバーリアの守り神であるモエというものは、ケイ達のいうクラーケンのことだった。


毎年アーベンの南の海域に現れることをケイが聞き、魔道船を創造。

その時漁師の職を失っていたダットが舵を取り、クラーケンと対峙・勝利をしている。しかもあの後、捌いて町中がイカの大試食会ならぬ大宴会が催されたのはいう間でもない。

クラーケンの残りの素材は全てギルドに売ってしまい、魔石はオークションでマライダの魔道具が設置されている噴水へ。結果、見事に綺麗さっぱり解体される。


「でも、クラーケンがアーベンの南の海域に生息していたのは何故なの?」


シンシアの疑問にケイが、恐らく幻のダンジョンが関係していると考えていると述べる。


あくまでも個人の推測だが、結界の張っている大陸からは女神像の仕掛けである幻のダンジョンが解除されることにより安全装置が働き、大陸に引き戻される仕組みになっているが、逆に外から大陸に入り込むことは可能だったと考える。


「外からの侵入に関しては対策をされていないということかい?」

「たぶんな。本当はされていたのかも知れないけど、何かしらの事情で解除されている説も考えられる」


レイブンの問いに確証はないがその可能性はあるだろうと述べる。


となると、クラーケン(モエ)が幻のダンジョンの発生時に入り込み結界の中にあるケイ達の大陸から出られなくなっていたということになる。

クラーケンもまさか戻れなくなるとは考えているかいないかはわからないが、結果としてケイ達に倒され捌かれたなどと思わなかっただろう。


「でも、どうするの?倒して食べちゃってごめんなさい!って謝るの!?」

「そりゃ無理だろう。それこそ大戦争だ」

「だったらどうするのよ!?」

「それを考えてんだよ!シンシアも考えてくれよ!」


まさか一年前にケイ達がしでかしたことが、今になって弊害が出るとは思いもよらなかった。ケイとしてはそんなの知らん!で通したかったのだが、それが獣族に矛先が向かっているとなると話は別である。


さてどうしたものかとケイが考えていると、ダットの部下が慌て様子でこちらに駆け込んできた。


「ダットさーーーん!」

「おぅ!どぉしたよ?」

「た、大変です!ダインの西の海域から謎の生物が勢いよく魔道船の方にやって来ています!!」

「なぁんだって!!!??」


船員の報告にダットが慌てて立ち上がると、港の方から落雷のような轟音が響き渡る。慌てたダットの後にケイ達も続き、魔道船が停泊している港に向かう。



「おいおい!こりゃ、どういうことだ!?」


港まで戻って来たケイ達は、船が停泊している地点を見て思わず息を呑んだ。


幸い船は無事なのだが、船の近くに巨大な青い生物が腹ばいになって海に浮かんでいる。頭を掻いたダットが船に残っていた船員に事情を聞くと船員は頭を下げてこう述べた。


「ダットさん、勝手に船の防御装置を使って申し訳ありません!」

「何があった!?」

「西の海域からこちらに向かって何かがやって来たため、舵付近にある防御装置のボタンを押してしまいました。船にぶつかってくるところだったので事後報告で申し訳ありません!」


船員の話では、何かが魔道船に向かって突っ込んで来ていたので、謝罪をした船員がダットの普段の行動から船の機能を熟知していたことから、咄嗟の判断で巨大魚を捕縛するためのスタンガン装置を発生させたようだ。


先ほどの落雷と轟音は魔道船の装置の発生音だった。


ダットは船員と船が無事であれば問題はないと首を振り、他の船員から報告を聞いた時には肝が冷えたと額に薄らと汗を掻いている。安堵の表情のダットとバギラを余所に、ケイ達は船の近くに浮かんでいる生物を見やった。


それはなんとも奇妙な生物だった。


全体的に青を基調とした色合いの中に水色と紫が混じった鱗が見える。

色合い的には綺麗なのだが、いかんせん体長はかなりあるようで、恐らく10mは優に超える。


ケイ達から右側に頭があることから、そちらに回りそれを確かめる。



ルシドラ 大海竜 性別・メス 状態・気絶



魔道船の防御装置に感電したようで、海に浮かんでいるそれは舌をだらんとさせたまま白目を剥いている。ケイの鑑定で【大海竜】と表示されているそれを見て、ギエルの話を思い出した。


そうなると、ルバーリアのもう一体の守り神がいま気絶しているこれになる。


シンシアからこれをどうするのかと尋ねられたため、起きるまで待つしかないかと考えていると、気絶していたそれが目を覚ました。


『よくも我を愚弄したな!!』


先ほどまで白目を剥いていた形相とはうって変わり、上体を起こし歯をむき出しに何かを恨んでいるような声を上げる。しかしその対象はケイ達ではなく、魔道船にいるとある人物達に向けられている。


船の上には素潜りから戻って来たマカド達の姿がある。

大海竜の目線は、ヴェルティヴェエラとノヴェルヴェディアに向けられているようで、今にも向かってきそうな気配が漂う。


ヴェルティヴェエラとノヴェルヴェディアが大海竜に対して敵だと認識しているようで、やってやるぞ!とやる気が見えている。しかしその様子を見た大海竜は何かに気づいたのか、一瞬ハッとした顔の動きをすると『そなたらは子供ではないか』と口を紡ぐ。


ケイ達は慌ててタラップを上り、彼らの元までやってくると、大海竜は更に驚いた様子を見せ、今度はケイ達や船員達を見回しどういうことだと疑問を浮かべる。


「お前は誰だ?」

『我が名はルシドラ。ルバーリアの西の海を司る大海竜だ・・・それよりもそなたらは人族か?』

「あぁ。ちょっとわけありで旅をしている」


この場にいる皆がルシドラの言葉が分かるようで、船員達が固唾を見守っているなか、ケイの言葉にルシドラは愉快そうに目元を緩ませる。


彼女自身、人族を見るのは千年以上前になるらしい。


ケイ達は掻い摘まんで今までの事を話すと、ルシドラはそなたらに敵意はないと宣言し、ヴェルティヴェエラとノヴェルヴェディアに目を向け、ルバーリアの王族と一緒とは・・・と口にする。


「王族って、ヴェルティヴェエラとノヴェルヴェディアのことか?」

『彼らは継承順位としては低いが、れっきとした王族だ』

「こいつらの話じゃ、1500年前の世界大戦で帰れなくなったから俺らが国に帰してやるところだったんだ」

『だとしたら、今はやめておいたほうがいい』


どういうことなのかと尋ねると、彼女曰くルバーリアは既に狂っているという。


『ルバーリアはクラーケンをモエと呼び崇めておった。そもそもこの海は元々我が住んでいる。それをルバーリアの奴らが勝手に住み着いただけの話だ』


人魚族は長い間王位継承を巡って対立が起こり、既に現・国王の子供が何人も死んでいる状態だという。


先ほどルシドラが言ったヴェルティヴェエラとノヴェルヴェディアのことだが、彼らも王族なのだが人魚族としては若く地位は低い。ケイ達の年齢で考えると、中身が大体十代半ばから後半にあたるらしい。外見は完全に成人男性や女性のような容姿をしているが他の種族よりかなり長生きのため、外見上の変化は最低でも千年経たないと変わらないらしい。


「行かない選択肢を提示してくれるのはありがたいけど、獣族の長のマードゥックが捕まってるんだ」

『と、いうことは領土の関係か』


ルシドラはルバーリアは海底に大国を築いていることから領土不足の問題もあり、それゆえに比較的近い場所にあるジュランジに侵略しようと考えたのだろうと述べる。そしてそこにクラーケンの存在が出てくる。


そもそもクラーケンは守り神ではなく、ルバーリアにとっても厄介な相手であるという認識だった。しかしケイ達の推測した通り、この海域から姿を消したことからそれを口実にジュランジに攻め入り、長のマードゥックを盾に島の明け渡しの交渉材料にされた。


偶然が偶然を呼んだ結果になるが、ジュランジにとっては今後の命運を左右する出来事になるのは明白である。


「じゃあ、このいざこざを収めるためにはどうしたらいいんだ?」

『それなら簡単だ。双方のどちらかが滅すしかない』


その言葉にケイは怪訝な表情をルシドラに向けたのだった。

大海竜・ルシドラの登場により偶然が重なった結果、人魚族がジュランジに攻め入ったことを知ったケイ達は、なんとしてでも獣族の長・マードゥックを助けるべく案を考えます。

果たして彼を救うことは出来るのでしょうか?

次回の更新は8月14日(金)夜です。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

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