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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
新大陸編
213/359

207、トカゲ拾いました

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回はジャヴォールに向かう船の上で、とある物を見つけた回です。

ダインを出発して一日半が経過した。


ケイは今まで得た情報をスマホに記録し、ものは試しとガイナール・ヴィンチェ・ベルセ・ナットにそれぞれ送信したところ見事に送れることがわかった。


ケイ達が使っているスマホは、電気を使用せず大気中の魔素を使って動いている。

構造的には普通のスマホと同じなのだが、魔素の消費量は電気と比べて圧倒的に少なくてすむ。

当初、大陸外は魔素が存在していない可能性も想定していたため、屋敷にいるローゼン達には何かあればガイナールに連絡を取るようにと指示をしている。

でも、スマホが使えるとなると話は変わってくる。


ケイが送信してから数分後にガイナールから返事が来た。


彼によると少し前からローゼン達と交流を行っているそうで、ローゼンはひょんなことから上位精霊と契約をしたり、パーシアが実業家と提携し自分の店を持ち、ルトはマーリンから才能を買われ錬金術師の講師も務めたり、ボガードは後輩と『挑戦者の試練』のダンジョンに赴き、レベル70のハイカラミミックをボコボコにして周りを恐怖させたりと、意外と目まぐるしい様子だった。


ケイは彼らにきっかけを与えただけだったが、その成長が凄まじく今後どうなるのかと思わず笑みを浮かべる。


「ケイ様、楽しそうね?」


そこに、今日は気分が良いのかアレグロがやって来た。


彼女に桜紅蘭とダインで得た情報をガイナール達に発信できたことを伝え、彼から屋敷にいるローゼン達の様子も教えて貰ったと言う。


彼らの目まぐるしい活動に喜ぶケイとは裏腹にアレグロはケイの隣に座り、今回はみんなに迷惑をかけたと少し気落ちしている。

ケイは気にしないと首を振り、アレグロは先日シルトが思い出したことを知ったのか、徐々にだが自分の状態や境遇を受け入れることにすると口にする。


「無理するなよ」

「ふふっ、私は大丈夫よ。ありがとうケイ様」


アレグロが笑みを浮かべたところに、ブルノワと少佐がせわしなく動いている船員達の間を縫ってケイのところまでやって来た。


『パパ~』

「どうしたブルノワ?」

『お水に何かあるの。あれはなぁに?』


ケイがブルノワを抱き上げ、アレグロと船の手すりまで近づくと、真上にある太陽の光の反射で波が輝いているところが見える。

ブルノワはしきりに海の遠くを示すと、波が反射して光っていることかと聞くと違うと首を振る。少佐も短く鳴き声を上げ、もっと遠くだと意思表示をする。


「アレグロ、見えるか?」

「いいえ。私の目じゃよく見えないわ」


ブルノワと少佐は魔物であり五感が人の数十倍も発達しているため、ケイ達には遠くに何かあるとしても距離が離れすぎていてよく見えない。


ケイは、鞄から以前趣味で創造した望遠鏡を取り出し、アレグロに見てほしいと手渡す。アレグロはケイから簡単な使い方を学び双眼鏡を覗いてみると、ほどなくして何かを見つけたのか声を上げた。


「ケイ様、あれを見て!」


アレグロから双眼鏡を受け取り、片手でブルノワを抱っこさせたまま、左手で双眼鏡を覗く。


すると、遥か遠くの方に木片の様な漂流物が見える。

どこかの島から流されて来ているようで、それは周辺の海域の関係で波に乗ってこちらにゆっくりと近づいてきている。


ケイは双眼鏡をしばらく覗いていていると、あっ!と声を上げた。


「おい、あれなんかしがみついてるぞ?」


双眼鏡で見えた物は、人がしがみつける程の大きさの木片に緑色の何かが引っかかっている様子が見えた。


たまたま近くを通っていたダットに双眼鏡で見えた漂流物の事を説明すると、受け取った双眼鏡をダットが覗き、慌てて船を減速させると船員に小型船で漂流物の確認をするようにと指示を出した。



「ダットさーーーん!生物を保護しました!!」



小型船に乗った二人の船員が漂流物を確認すると、なんとそれは緑色のは虫類のような生物だった。


それを魔道船に引き上げると、そのは虫類は人型で鎧を身につけていた。

何かから逃げる途中だったのか、はたまた船か何かから放り出されたのか、全身が傷だらけで装着していた鎧は、背中から切られたのか破損し使えない状態だった。


は虫類の顔を見ると、トカゲのような顔立ちをしている。

心音は動いているが声をかけても揺さぶっても反応がないようで、気絶をしている様子だった。


ダットは、船医室に運び治療をしてもらうようにと船員達に指示を出した。



「バギラ、保護した奴はどうだ?」


ダットと一緒にトカゲ男が運ばれた船医室にやって来たケイとアレグロは、そこで船医のバキラという男性の姿を見かける。


男性は白衣に身を包み、容姿端麗で金色の長い髪、そして長い耳が特徴的なエルフ族である。

彼は元々バナハの軍医を務めていたそうで、軍医を辞めてからあちこち放浪した後にダットに誘われ船医として在駐するようになった。

ケイ達は世話になることはあまりなかったが、彼は雑学を中心に病気や医学・薬学・魔法学・錬金術などに精通しており、ダット曰く聞けば何でも答えてくれるそうで、本人は人より少し詳しいだけだと謙遜した。


「怪我の程度は想像以上に酷かったよ。何とやり合ったのかは分からないけど、特に背中の傷が酷くて、一通りの手当てはしたけど、いつ彼が目覚めるかは分からないな」


ふぅっ~とバギラがため息をつき、自分で入れた紅茶を啜る。


また保護をしたトカゲ男は、体格が175cmの雄であることが彼から伝えられる。

骨格や質感から推測するに大分若い個体で、右手左足の骨折に背中と腹部が切られたことによる出血が酷く、止血剤と血液を補う薬も投与したところだという。


バギラは普通あそこまで怪我が酷いと死んでもおかしくない状態だったと語り、偶然ではあるが、ブルノワと少佐が見つけていなかったらと思うと運がよかったのだろうと続ける。

それを聞いたブルノワと少佐は、バギラの前に立ちどうだ!と言わんばかりにえへん!と胸を張る。それが愛らしかったのか、バギラはカップを置き、その手で彼らの頭を撫でた。


「そういや、ジュマからルバーリアとジュランジは抗争を行っているっていってたよな?ということは、こいつはそれに巻き込まれたって事か?」

「その様子じゃそんな感じだな~・・・で、こいつどうするんだ?俺はこいつが治るまで置いてやってもいいけど」

「あの怪我じゃ自力で帰るのは難しそうよね」


ダットもアレグロも、保護したトカゲ男を国に返すべきではないかと意見する。


ケイはいつ目覚めるかも分からないトカゲ男を見やると、おもむろに自身の鞄を開きとある物を取り出す。アレグロが前に作ったエリクサーじゃないと言うと、先ほどまで悠長に紅茶を楽しんでいたバギラが驚愕の表情でこちらを振り返った。


「これを飲ませてトカゲやろうを起こした方が早い」


ケイは取り出したエリクサーのビンの蓋を開けると、眠っているトカゲ男の口にエリクサーのビン口を突っ込ませた。



「ゲハッ!ゴホッ!ガハッ!・・・ゲホゲホ!」



ケイにエリクサーを口の中に突っ込まれたトカゲ男は、即効性のおかげかはたまた三途の川が見えたのかは分からないが、瞬時に飛び起き、咳き込みながら目を覚ました。しかも咳き込んでいたにも関わらず、寝ながらエリクサーを飲み干したようで瓶の中はほぼ空。器用な芸当だなとケイはまるで他人事の様に観察している。


もしシンシアかアダムがこの場に居れば間違いなく拳骨ものだろうが、生憎それを指摘する者はいない。


「ゲホゲホ・・・はぁーーーー死ぬかと思った!!」

「正確には死にかけていたけどな~」

「・・・はぁっ!誰だ、あんた!?」


まだ混乱しているせいか、トカゲ男はケイ達の方を見ると矢継ぎ早に何がどうしてこうなったのかと質問してきた。


ケイはいちいち答えるのが面倒くさいのか、海で見つけて拾って治療したと簡潔にまとめる。その隣にはバギラが「まさか伝説の霊薬・エリクサーがあるとは・・・」と頭を抱え、まるで呪詛のようにブツブツ独り言を口にする。

アレグロとダットは、何がともあれ元気になって良かったと胸をなで下ろしているが、トカゲ男からすれば実にカオスな様子だっただろう。


「ところであんたは?」

「俺はジュランジに住んでいる漁師のレックスだ」


レックスというトカゲ男は、獣族という種族でこの先の海にあるジュランジという島で暮らしている男だという。

漁師である彼は投網を使って漁をしていたところ、急に人魚族が現れて船を攻撃されたらしい。船には彼の他にも数名乗船していたが、ケイ達が見つけたのはレックスだけだと伝えると、爆破された時に海に放り出されたので自分は運よく助かったのだろうと返す。


レックスにケイ達が自分たちは人間で各地の島を回っていると伝えると、一瞬えっ!?という表情をして人族は滅んだんじゃないのか!?と聞いてくる。


桜紅蘭・ダインに引き続き、レックスの島でも人間は滅んだと伝えられているようなニュアンスだった。

ケイは自分たちはちゃんと人間だし嘘はついてないと返し、歴史の事を調べたいと言うと、レックスは自分では分からないからとりあえず一旦ジュランジに戻りたい旨を伝える。


ダットはそれを聞き入れ、舵を自動徐行モードにしているためレックスから場所を聞き、舵を取るためにその場を離れた。


「レックス、そのジュランジという島はお前みたいな姿のやつしかいないのか?」

「俺達の島は獣族という種族しかいない。今はマードゥックがその島の長をしているから、彼に聞けば何か知っているのかもしれない」


ただ現在ジュランジは、近郊にある人魚族が住むルバーリアと抗争を繰り広げている。ルバーリアは時折漁船などに危害を加えているようで、島の悩みの種を抱えていた。

そもそも、なぜそんなことになっているのかと尋ねると、詳しくは知らないがルバーリアの守り神に危害を加えたと言われ、揉めているのではと聞く。


ジュマも言っていたが、どうやら本当の事らしい。


レックスの話しを聞く限り、どうもその当たりが曖昧であることからケイ達は目的地をジュランジに変更し、船の進路を変更したのであった。

海に漂流していた獣族のレックスを保護したケイ達は、一度進路をジュランジに変更。

しかしこれが新たな展開になるとは想像もしていませんでした。

次回の更新は8月10日(月)夜です。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

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