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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
新大陸編
212/359

206、アレグロの秘密と次なる島へ

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。


今回はアレグロの秘密を中心とした回です。

シルトの攻撃に目を瞑ったケイ達は、収まったことを確認してから目を開けた。


テントを襲撃していたストーンヘッジの群の姿はなく、灰になった跡のようなものが散見された。地面にインイカースを突き刺したシルトが剣を抜き、鞘に収めるところを待ってケイが声をかける。


「シルト、さっきのあれはなんだ?」

『これは人魂魔石による能力だ。ストーンヘッジは月花石が変容した姿で、それが起こらないように陽花石が押さえ込んでいる』


シルトによれば、人魂魔石となった彼の妻スピサは、生前それらを押さえる役目をしていたのだという。それ故にインイカースに装着されたことになってもその能力が使えるそうで、咄嗟の判断だったため事後報告で申し訳ないと詫びた。


「そうだ!アレグロは大丈夫なのか!?」


ハッとケイが気づき、急いでテントに手をかける。


中を覗くとアレグロも集落の異変に気づいていたようで、杖を手に臨戦態勢を取っていた。ケイ達の姿を見るとほっとしたのか簡要のベッドに腰をかけた。


「ケイ様ごめんなさい。私も参加をしたかったのだけど・・・」

「気にすんなって!怪我はないか?」

「えぇ。大丈夫・・・」


アレグロは衰弱をしていたものの意識はあり、怪我をしている様子はなかった。


ほどなくしてアダムとレイブン、タレナが合流をした。

三人にシルトがしたことを説明すると、それもアスル・カディーム人の能力なのかと疑問が出た。当の本人であるシルトからはインイカースについている人魂魔石であるスピサの能力のひとつだと告げられた。


『それと、アレグロとタレナの事で思い出したことがある』

「アレグロとタレナの事か?」

『彼女たちは“五大御子神”の内の二人だ』


五大御子神?と聞いて、ケイは首を傾げる。


御子神は日本では神社において親子関係にある神が祀られている場合、子供にあたる神のことを示す。しかしダジュールでは違う認識のようで、親が神のために自分の子供を選ぶ神子(かみこ)の事を示す。そして、二人はその五大御子神の人間だという。


アグナダム帝国を統括しているアスル・カディーム人の王には五人の子供が居る。


その内の三人は、アレグロ・タレナ、そしてベルセ達に同行している彼女たちの妹・アルペテリアである。続けてシルトは大陸にある五つの女神像は、それぞれをモチーフに造られている説があるという。

まさかと思い、以前ヴィンチェから送られた画像とアダムのスマホ画像を開き、実際に二人と比べてみると、エルフの森にある女神像はアレグロにミクロス村にある女神像はタレナに似ている。もしかすると他の三体も、残りの三人をモチーフにしたものではと考える。


『あと、アレグロなんだが、彼女は“特殊な治療を必要としていた身体”だった』


シルトから衝撃的な発言を聞いたケイ達は、どういうことだと急かす。


彼も思い出した範囲でしかわからないと言ったが、アレグロの身体は何かの病にかかっていたため、それを治すためにとある技法を施す必要があったということを思い出したらしい。それがおそらく治すための儀式を行ったことで、逆に儀式による浸食が進行しているのではと考える。



「おーい!兄ちゃん達ぃ!!」


ストーンヘッジの襲撃が止んだ事により、避難していたポポ達ホビット族と食い止めていたメトバを含めた巨人族が戻って来た。


ジュマが先ほどの現象はどういうことなのかと説明を求めてきたので、ケイがシルトのしたことを教えてあげると、ホビット族は唖然としたあと、口々に信じられないと声を上げた。

まぁ、アレグロ・タレナ・シルトは、過去に存在していたアスル・カディーム人であることから、過去の人間が現代に存在していること自体ケイ達もその辺の説明は難しい。しかし、これは紛れもなく事実である。


「と、いうことは、人魂魔石となった人は“守り手”ということでしたか・・・」

「守り手?」

「この大陸は古くから、巨人族とは別にストーンヘッジから我々を守ってくれる守り手の存在がありました。しかし世界大戦以降、その日を境に彼らはこの島から姿を消したのです」


ホビット族と巨人族が暮らすこの島・ダインは、古くからアグナダム帝国と交流があったそうで、特別な力を持ったアスル・カディーム人の守り手と、互いに手を取り合ってストーンヘッジの脅威から守っていたのだという。


しかし今では姿を消し、巨人族のみがその役目を引き続けていた。


「人魂魔石についてですが、アスル・カディーム人と魔人族はその研究をしていたと言い伝えられていると聞きます」

「となると、魔人族の住む北の島に向かうことになるな」


現代に存在するアスル・カディーム人の三人に驚きながらも、務めて冷静に話すジュマは、魔人族が住むジャヴォールはここから遥か北にあり、船でもかなりの日数を必要とすると口にする。ケイは日数がかかってもアレグロの事を考えると行くべきだろうと考える。それはアダム達も同意であり、タレナも前よりも元気のないアレグロに心を痛めている表情も窺える。



その後ケイ達は、各自協力をして倒壊や半壊した建物を修理したり、廃材をまとめたりなど片付けに追われていた。


ケイは魔法で建物を直し、他のホビットから称賛を受ける。

まぁ、調子に乗って建物をいくつかネオン系統の色合いに変えたところ、アダムから拳骨を貰いやり直しもしたところもあったが、概ね集落の修復は完了した。

元の建築構造は不明だったが、恐らく前よりは幾分広く直され、二階建ての家も当初よりも大分高い位置にある。魔法があれば建築家も真っ青というところだろう。


その途中で、ジュマにホビット族の集落が高い位置にあるのはなぜかと聞いたところ、ストーンヘッジの襲撃にも対応出来るように工夫された末の場所だという。

しかし今回の件から高い位置に関係なく集落に入ってきたところを見ると、今後の対策も検討する必要があるという。


そういえば・・・とケイは鞄の中から中身の入った麻袋を取り出す。


ルフ島に向かう前にルトから受け取った物である。

中身は一応確認したが、使いどころに困る物ばかりで本人曰く全て試作品なので、本番ではどうなるかわからないと聞く。


「それって、ルトから貰ったやつだよな?」

「あぁ。もしかしたら、これが使えるんじゃないかって思ってさ」


後ろからやって来たアダムにケイは、手にしたある物を見せる。


ケイの手には、野球ボールほどの大きさの白色の球体が一つ。

白色とはいってもたいまつの灯りに反射したそれは、パール色のようなものも浮かんでいる。アダムはこれはなんだ?と尋ねると【反射球】とケイが答える。


「反射球?なんだそれ?」

「俺もよくわかんねぇんだけど、ルトが言うには錬金で使う素材の一つを加工して作った物らしい。たしか、ミスリル液を媒体に銀といくつかの素材を混ぜて錬成したって言ってた。効果としては、魔法や光などを吸収して対象者からその場所を守るために作った結界みたいな物だっていってた」


ケイも専門的な事はわからなかったが、どうやら錬金術師でも扱いが難しいミスリル液を利用した試作品の結界といったところだろう。使い方は、使用したい場所の中心で地面に向かって投げて割るといったシンプルな方法とのこと。


正直半信半疑だが、ルト曰く実験の段階では成功したので、あとは実用に向けて色々と調整するだけらしい。


集落の中心に向かった二人は、物は試しと反射球を試してみることにした。


もちろん予めジュマに経緯を伝えた後に彼も同席し、その動向を伺うことに。

集落の中心には他のホビット達の姿もあり、ジュマと一緒だったことから何かが起こるのではと人だかりが出来ている。


「じゃあ、やるぞ?」

「本当に大丈夫なのか?」

「ルトが試して成功したんだ。大丈夫だろう」


アダムもルトが錬成した物の完成度の高さは知っている。

しかし、それを考えても不安が残るのが未知なるモノの警戒心といったところだろう。


ケイは手にした反射球を振り上げて、地面に叩きつけるように振り下ろす。

球体自体はガラスの様なもの舗装されていないで構成されていたのか、ほどよく整備された土の道に当たり、パリンと割れる。


その瞬間、液体らしき白い光が瞬く間に広がり、集落を包むように地面全体に広がった。


さすがのケイもこれは想定していなかったため、驚愕の表情を浮かべその様子を見る。アダムやジュマおろかその様子を見ていたホビット達も何事かと唖然とした表情で地面に広がった光を見つめていた。



「・・・で、これで大丈夫なのか?」



顔を引きつらせ、光が収まった地面を見つめるケイ。


下を向いた目線の先には、夜なのに月明かりやたいまつの灯りで反射した様子とは別に地面が光っている。ジュマから説明を求められたがケイすら答えられない。

さすがにこの時ばかりは、一瞬ルトも連れてくればよかったと感じる。


そのすぐあとにシンシア達がやってくると、案の定どういうことなのかとシンシアに胸ぐらを掴まれ言及される。


何かする=胸ぐらからの言及は止めて欲しいのだが、既に建物修復の件でアダムから拳骨を貰ったのでチャラだと思っている。

もちろんみんなにもルトの試作品の説明はしたが、専門的だったようでわかったようなわからないような表情が見受けられる。しかし、ジュマから集落全体が光っているので、少なくとも光に弱いストーンヘッジの襲撃を退けられるのではと伝えられる。


正直、これがどの程度の効力を発揮するのかはケイ達にもわからない。


しかし思いの外、ジュマ達は少なくとも夜間も安心できると安堵した表情をする。

あとは自分たちでも自衛できるように手立てを考えると言ってくれた。



翌日、先にシルトが島の西側にある浅瀬に待機していた船に戻り、北側にある浅瀬に移動するようにとダット達に伝え合流をした。


見送りには、ジュマとポポ、メトバ達数体の巨人族が立っている。


「皆さん、今回はありがとうございました」

「いや、俺らも色々と参考になった」


ケイが文献を見せてくれたことに礼を言うと、ジュマから一つ気になることがあるという。


「そういえば、ここから北にある島では長らく抗争が起こっていると聞きました」

「抗争?」

「おそらくですが、ジュランジとルバーリアではないかと」


アサイから受け取った地図を広げると、ダインの北側にジュランジという大陸とルバーリアという国がある印がされている。


ジュマからは安全な航海をするなら迂回する方が良いと助言されたが、地図の位置的にも二国の先にジャヴォールがある。迂回するぐらいなら突っ切った方が良いと考えたが、その辺は船長であるダットに任せることにした。


「兄ちゃん達、気をつけてな!」

「ポポ達も元気でな!」


ケイ達はまた来ると約束をした後、船はダインを離れ、遥か北にあるジャヴォールを目指して進んでいくのであった。

アレグロは、何かの病気を患っていた?


一部を思い出したシルトから伝えられた内容は意外な事だった。

儀式による浸食が進行しているアレグロを心配しつつ、ケイ達は遥か北にある魔人族が住むジャヴォールへと向かいます。

次回の更新は8月7日(金)夜です。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

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