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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
新大陸編
209/359

203、アフトクラトリア人の正体

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回は、ダイン島の採掘場の回です。

「これ・・・人か?」

「・・・かなりの人数がいるようだね」


明かりを照らしたアダムとレイブンも思わず言葉を失う。

たいまつに照らされた穴の奥には、男女問わず幾人もの人が折り重なるように倒れている。人は本気で恐怖を覚えると声を出せないというのは当然なのだが、始めに見たシンシアは、気絶することもなく声を上げたことに勇敢さを感じる。


「おい、ケイ!?」


ケイはそんな彼らを差し置いて人の山に近づくと、疑問を浮かべたまま平然と腕や頭、足などを触り、アダム達が引きつった表情をさせることなどお構いなしにあちこちと巡っては触りまくる。



「・・・これ、人じゃないぞ?」



ケイの言葉にアダム達は聞き返す。


そもそも本当に死骸なら腐乱して異臭悪臭のオンパレードなのだが、それが一切ない。そのことからケイはそれの正体を見破っていたのだ。


「ケイ、どういうことだ?」

「どういうって・・・第一、人なら腐乱して悪臭放って白骨化してるだろ?それが全くないって事は、これは明らかに人じゃないとわかる」

「人じゃないって、じゃあ彼らはなんなんだ?」

「『機械人形(オートマタ)』だ」


聞き慣れない単語にアダム達は首を傾げたが、ジュマだけはケイの言葉に納得していたのかほほぅと声を上げる。ジュマも文献には載っていないものの、以前にこの場所を訪れたことがあり、これらの存在を気づいてはいたが、人にしてはいつまで経っても腐乱する様子がなかったことから、人ではないなにかであると確信はしていた様子だった。


「えっと・・・ケイ?機械人形(オートマタ)って何?」

「簡単に言えば自動機械、要は『自らの意思で動くもの』ということだ」


いまいち分かっていないシンシアが尋ねる。


地球では機械人形(オートマタ)の起源は十八世紀から十九世紀頃からあり、ドイツやスイスの時計技術とルネサンス以降のフランスの芸術愛好家の技術によって造られた代物である。

日本では『からくり人形』などと呼ばれているが、ここにある機械人形(オートマタ)は動力はぜんまいばねによるものではなく、何か別の動力が使用されていたのではとケイは思っている。



【氏名および識別番号・不明 性別XX 破損状況100% 頭部破損によりデータ解析・メモリーの修復は不可 なお、千五百年前に存在していたアフトクラトリア人と識別】



試しにそこに転がっていた男性型の機械人形(オートマタ)を鑑定してみると、想定通りの鑑定結果が表示される。


どうりでいろんな文献をあさっても出てこないわけだとケイは納得をする。

まさかアフトクラトリア人の正体が、機械人形(オートマタ)だったとは誰が想像したであろうか。

試しに先ほどケイ達がいた左側の穴も覗いてみると、同じように折り重なったアフトクラトリア人の姿があった。そのどれもが頭部や体の一部が破壊され、修復が出来ない状態になっている。


ここで何があったのかは分からないが、何かが起こった事は間違いなさそうだ。


「皆さん!これを見てください!」


タレナが壁の一部を指さした。

暗闇にたいまつの灯りを近づけるが何故か壁の一部が反射せず、ケイがよく見ようと顔を近づけると、それが何かわかったようでハッと息を呑む。


「これ・・・【汚染された月花石】か?」

「ま、まさか・・・ご存じだったのですか?」


ジュマはケイの指摘に驚き目を見張る。


ケイはジュマとポポにケイ達のいる大陸に試練の塔が存在していたが、一時的に復元された際、このような状態を見たことがあると述べる。


ヴィンチェ達と初めて出会ったエストアの跡地に赴いた時のことである。


その時は情報量が多く、幻ではあるが黒い騎士の存在もあったため全てが推測だった。一通りケイの話を聞いたジュマは、黒い騎士は月花石の影響でそのような姿になったのではと返す。

文献によると、ダインは古来から陽花石と月花石で成り立っている島であったが、それをどこからか聞きつけたのかアスル・カディーム人がアフトクラトリア人を連れてこの島にやって来た記述がある。もちろん当時のホビット族は彼らを制止したが、聞き入れられることがなかったとされている。


しかしその事と汚染された月花石の関連がわからない。


ジュマによると、持ち出された月花石と陽花石を使った建造物などは罰が与えられるとダインでは伝えられている。


「罰?それはなんだ?」

「【望まれない者達の恨み】を示します」



『グォォォオオオオオオ!!!』



ケイがその意味を問おうとした時、奥から魔物の呻き声のような声が何十にも重なって聞こえた。


「じっちゃん!」とポポがジュマの袖を引っ張り、「どうやら時間のようです」とジュマがケイ達に告げる。どういうことなのかと聞こうとしたが、ポポはまずいから早く集落へ戻ろうとケイ達の背を押し急かす。

ケイ達はその展開によく分からないまま採掘場から出ると、いつの間にか外に待機していたメトバ達と合流しそのまま集落へと戻って行った。



「なんかわからないまま戻って来ちゃったわね」


呆れた物言いでシンシアが頭を振る。


正直よくわからないまま集落に戻ってきてしまったが、ジュマ曰く採掘場に留まるのは危険だという。詳しく聞いてみると日没になると彼らが現れ、島中を徘徊するのだという。それに、巨人族と共存しているという話しだが、ホビット族はその日没に現れる何者かから守って貰うために互いに協力をしていると答える。


「その彼らって【望まれない者達の恨み】ってことか?」

「はい。我々も実際には見たことがないのですが、黒い・・・恐ろしい姿をした者だと聞いています。それにあそこにいるアフトクラトリア人は、全て【彼ら】に殺されたのだと言われています」


魔物かどうかは分からないが、明らかに生物を見つけると襲ってくるのだという。

ケイはそれがなんなのか、詳しく探るしかないと考える。


「姉ちゃん大丈夫か?」

「アレグロ、具合が悪いのか?」


ポポとレイブンからアレグロを気遣う声が聞こえた。


彼女自身大丈夫だと言っていたが、明らかに顔色が悪いのは一目瞭然だった。

ただ、アレグロとしては迷惑をかけたくないという思いはあったが、ここに来て体調が悪くなったようだ。


「ジュマ、裏庭の場所を借りてもいいか?」

「はい。構いません」


ジュマの了承を得て裏庭に簡易的なテントを張り、アウトドア用のベッドを設置してからそこにアレグロを横にさせる。

本人は謝っていたがタァークル率が上がってきているのだろう、ケイは未だにアレグロの容態を止める術がないことにどうしたものかと悩ませる。


「とにかく、明日もう一度あそこの採掘場に行ってみよう。悪いがアレグロはここに残ってくれ」

「え・・・で、でも」

「そんな顔色が悪きゃ、無理はさせられない」


ケイの言葉に申し訳なさそうに横になるアレグロを見て、なにかあったらまずいからとシルトも残って貰うことにした。シルトは承諾の言葉を口にし、アレグロには無理はいけないと諭す。


ちなみにジュマからは日の入りになると、採掘場の【望まれない者達の恨み】が姿を消すということなので、ケイ達は日が上ってからの調査を開始することにした。



翌日ケイ達はポポとメトバ同行のもと、再度北にある採掘場に足を運んだ。


昨日のように巨人族にジェットコースター並の降下を楽しんだ後、その後は徒歩で採掘場まで向かう。

その道中でポポに昨日の【望まれない者達の恨み】のことを尋ねると、毎晩現れては島を徘徊するのだという。しかし、何故か昼間には出てこないことから何か理由があるのだろう。


自分は見たことがないが、同じ集落にいる数人が黒い異様な者を見たことがあるのだという。そうなると、ケイ達が以前遭遇した黒い騎士やルフ島のヤツも、何か関連がある可能性がある。


そういえば、以前ケイ達が見つけた【汚染された月花石】のことを思い出す。


詳しい事はあの時点では分からなかったが、なにかによって汚染されたことは間違いなかった。それと、以前ルフ島で遭遇した黒い騎士のなれの果てである【朽ちたシャムルス人の人骨】であるが、この島に生息(?)している【望まれない者達の恨み】と、なにか共通したものがあるのではとふと思いつく。


採掘場に辿り着くと、たいまつを手に奥へと進んでいく。


今回は昨日同行しなかったメトバも一緒だ。

採掘場自体はメトバでもゆうに入ることができるので、今考えると相当広い場所なのだと考える。


「やっぱり気味が悪いわ」


シンシアが少し肌寒いのか腕をさすり、地下から吹き上げる風と錆びたような異様な臭いが漂う。正直何度も足を運ぶような場所ではないと思いつつも、ケイとしては昨日見つけた汚染された月花石も気になる。


「ここまで機械人形(オートマタ)がいるんじゃ、なにかあっただけしか分からないな。しかも全部が壊れてる」


ケイは折り重なるように倒れているアフトクラトリア人の成れの果てに、この人数は以上だと口を開く。


ある者は顔の半分が割れ、中の配線や機械系統の部品がむき出しとなり、またある者は両手足をもがれ絶命している。辺りに採掘用の道具が散乱しているのを見て、月花石と陽花石を採掘したのはアフトクラトリア人だとわかる。


「ん?これは・・・」


ケイがとある壁に注目した。


そこには、汚染された月花石の跡らしき大きな穴のようなヘドロのようなものが付着している。ケイが触ろうとした時、一瞬それが動いた様に見え、手を引く。


「ちょっと待て・・・これ、動いてるぞ?」


さすがの展開に後ずさり、ケイの異変に気づいたアダム達がたいまつをそちらに照らす。


たいまつに照らされたそれは、壁の中から人の両腕のようなヘドロを形成し、手を伸ばすような形をすると、次に人の上半身のようなヘドロが壁の中から現れる。

上半身は人の体をしているが目や鼻などの部位はなく、口を開けて苦悶の声を上げると、何かから逃れんばかりに壁から突き出した上半身を大きく揺さぶる。


「ひぃっ!」

「兄ちゃん達それに近づいちゃダメだ!」


シンシアが悲鳴を上げ、ポポがそれこそが【望まれない者達の恨み】だと伝える。


ケイが鑑定すると【ストーンヘッジ】と呼ばれる魔物であるとわかったが、あまりの奇妙な姿にその場にいる全員が悲鳴を上げたのは言うまでもない。

しかも地下の採掘場ということもあり戦闘になった場合は地形的に崩れる可能性もあるため、ケイ達は一度外に出て体制を立て直すことにした。


ケイ達は、アフトクラトリア人の正体が機械人形(オートマタ)ということを知る。

また採掘場にいた【望まれない者達の恨み】と遭遇することになります。


次回の更新は7月31日(金)夜です。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

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