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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
新大陸編
208/359

202、歴史と採掘場

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回のお話は、ホビット族の文献とジュマによるとある場所への案内の回です。

ジュマに連れられ、ケイ達は家の裏側にある庭に案内された。


彼は家に置いてある文献を取りに行くといってその場を離れる。

庭は思ったより広く、ケイ達が座るには十分な広さだった。

その一角に、見たこともない自生しているのか栽培しているのか分からないキノコが生えている。鮮やかな赤にスイカのような黄色の模様が入っている。

見た目が完全に毒キノコにしか見えないのだが、興味を持ったのかブルノワと少佐がその側までやって来ると、あろう事かヴァールが匂いを嗅ぎ、いきなり食らいつこうとした。


「ちょ、待て!」


ケイは慌ててキノコとファールの間に手を入れると、トラバサミにかかる獲物のようにガチンという音が響き渡る。幸いにもケイは丈夫なので怪我はないが、一般人なら確実に指がもげるだろう。

馬鹿たれ!とヴァールに拳骨を落とし、『ギャン!』と鳴き声が上がる。


「どうかされましたか?」


ここでジュマとポポがやって来た。

ジュマの手にはいくつかの文献が、ポポは客人用の紅茶の入ったティーセットを持っている。ケイは庭にあった見たこともないキノコをヴァールが食べようとしたので止めただけというと、ジュマはあぁ~それですかとほほっと笑う。


「それはこの島に自生している【モグ】というキノコです。栽培しているわけではないのですが、島の至る所に生えてます故に我々の食料としてもっとも重宝している食材になります」


どうやらこのスイカの模様をした赤い茸は普通に食べられるようで、ホビット族はスープの具材によく利用しているのだという。

鑑定してみると匂いが良いが味はあまりしないなど、どちらかといえば松茸のようなものであると理解する。松茸は市場に出れば高値で取引される代物なので、このキノコも他の大陸で扱うことがあれば、高級食材と同等かそれ以上の価値になるだろうなと勝手に解釈してみる。



「こちらが、わが島に伝わる文献になります」


一同が庭に腰を下ろし、ケイと対面しているジュマから文献が手渡される。


文献を捲ると、ケイには読めるが見たこともない言語が綴られている。

どうやらホビット族は【アクィルス語】という言語が用いられおり、今のホビット族にはこの文献を読める人物はジュマしかいないらしい。

ジュマによると、今のホビット族と過去のホビット族の言語が全く異なっている事を明らかにした。もともと鬼人族が居る桜紅蘭と交流を持っていたが、1500年前の世界大戦の際に鬼人族は多数の死者が出たため、その後の交流はないという。


ケイ達は少し前まで桜紅蘭に滞在していたことを話し、互いに助け合って生活していると伝えると、それは良かったと安堵の表情を浮かべる。

今では交流が潰えたが、きっと近い将来に互いに手を取り合うことができるはずだと、ジュマは口には出さなかったがそんな表情をしていたことが印象的だった。


いくつかの文献を読み進めていくと、奇妙な項目が目に付いた。


【アフトクラトリア人は新たな人種だが、愚かである】


それは最後に手にした文献の一節に書かれていた。


そういえば桜紅蘭の文献には【アフトクラトリア人は、新しい人種である】とシルされていたことを思い出す。アスル・カディーム人に仕えていた優れた人種だということなのだが、ここに来て愚かであるという一節に疑問を抱く。


ジュマにアフトクラトリア人について尋ねてみると、やはり・・・といった感じで口を開く。


「アフトクラトリア人については、恐らくどの文献にも記されていないでしょう」

「ジュマ、あんた知ってたのか?」

「知っていた、というわけではないのですが、彼らは人と同じ姿をしていましたからね、知らないのも無理はないのでしょう」


えっ!?とケイ達が目を丸くし、どういうことなのかと考えていると、ジュマは立ち上がりケイ達をとある場所に案内したいと行った。



ジュマとポポの案内で、ケイ達は集落から北にある地点を目指していた。


当然崖を降りるためには巨人族の協力が不可欠で、メトバと人数分の巨人族が現れると彼らに乗り、下に降りる。そこから徒歩で森を進んで行くと、生息しているもの達の鳴き声が聞こえ、また先ほどとは違う種類の動物の姿も多数見受けられる。


しばらく徒歩で森を歩いていると、急に視界が開けた。


「これは・・・」


視界には採掘場の跡地とおぼしき場所に行き当たった。


放置されているシャベルや荷車はなどの道具はかなり古く、その奥には採掘場に続く木造の階段があり、そこからレールの様なものが奥に続いているのが見える。


「ここは“アフトクラトリア人の墓”です」


ジュマからこの場所の事を伝えられると、この場所とアフトクラトリア人がなんの関係があるのかと尋ねる。彼は見れば分かるといった表情で、採掘場に続く木造の階段を示す。正直罠じゃないのかと思ったのだが、表情や態度からは嘘を言っているようには見えない。

それにその場所は、1500年以上前にアスル・カディーム人であるとある青年と、数人のアフトクラトリア人が採掘を行った場だと説明される。


ジュマ曰く、文献にはアスル・カディーム人の青年であるイシュメルを中心に離島の大陸に塔を建てるために、この島にある鉱石を採掘したと記されていたようだ。


『イシュメル』という言葉にアレグロとタレナがわずかながら反応を示す。


ケイは何か思い出したのかと尋ねると、アレグロは顔は思い出せないが以前自分が“何かに閉じ込められた”という話をした際、タレナと一緒に居たもう一人の男をそう呼んだ事を朧気だが思い出したのだという。

タレナも偶然かもしれないがと、イシュメルの名前を覚えているそうで、もし二人の記憶喪失にその人物が関わっているのなら、そのきっかけの一因である可能性は十二分にある。


ジュマはケイ達のやりとりに、やはりあなた方はアスル・カディーム人ですねと口を挟んだ。アレグロ・タレナ・シルトの方を向き、もしやと思ったものでと申し訳なさそうな表情をする。

彼自身アスル・カディーム人に会ったことはないが、文献で容姿や当時の生活の一端が書かれていたようで、会話の内容からそう察したのだという。


三人はそうだと答えた上で自分たちには記憶がなく、何があったのかという真実を探していると答える。ジュマはそれならなおさら、アフトクラトリア人について知った方が良いと述べる。



ジュマが示した採掘場に続く階段を覗くと、文字通り明かりがなく暗闇に包まれていた。


「ジュマ、ここはなんの採掘場だ?」

「“陽花石”と“月花石”です」

「えっ?ちょっと待て!じゃあ、罪の(ペカド・トレ)の材料はここから採掘されたってことなのか!?」


ジュマは罪の(ペカド・トレ)の事は知らなかったが、文献にはアフトクラトリア人が地下にある陽花石と月花石を採掘していたことが記されていたので、ケイ達が以前別の文献で読んだ内容と照らし合わせると、この島から大量の陽花石と月花石を大陸に運び出したことは間違いないようだ。


ケイ達はジュマの言葉に従い、採掘場跡地とおぼしき階段を降りることにした。


階段は石階段が中心で、所々に木製を用いた部分も見受けられた。

しかし年月が経っているせいか木の部分は腐り落ちている状態で、ブルノワを抱きたいまつを片手に下りて行くと、おおよそ50mほどの地点で階段から下りた。


目の前には左右に続く長い空洞があり、明かりを照らしても先が見えない。

それに加え、入り口から続くレールはケイ達が辿り着いた地点に分岐器があり、今は使われなくなったのかレールを分岐するスイッチのようなレバーは完全に錆びている。


「これは何だ?」

「分岐器だな。おそらく左右に続くレールを用途ごとに設置していたんだろう」


アダム達は見たこともない代物に、しげしげと分岐器とレバーを見つめる。

運搬用にトロッコを使っていたのだろう。レールは時が経ち過ぎているせいかほとんどが錆て途切れている箇所もある。


ケイは奥に続く左右の暗闇を凝視し、マップを展開させる。


左右の穴はほぼ同時期に掘ったもののようで、同じように下るように坂道が続き、ターンや螺旋状に展開し、時には合流している地点が散見される。

それはまるで、蟻の巣のような内部構造に近い。マップで見る限り下に続くように複雑な空洞がいくつもあることから、長い間採掘に利用されていたのだろうと察する。


『パパ~これ、なぁに?』


少し目を離した隙にブルノワと少佐がうろうろとしていたようで、ケイは彼らに勝手にどこかに行ってはダメだと諭すと、ブルノワの手に何かが握られていることに気づく。


「ブルノワ、何を持っているんだ?」


『わかんな~い』と言いながら彼女の手からそれを受け取ると、ケイは右手に持っていたいまつの光に反射するように近づけ、それがなんなのかを確かめた。


「・・・ネジ?」


ケイの手に置かれたそれは光に反射し姿があらわになると、側面に螺旋状の溝が入った雄ねじのような部品であることがわかった。

この辺にネジを使うものといえばレールしか見当たらないのだが、ブルノワに何処にあったと聞くと、左の穴の入り口付近にあったという。


ケイがブルノワと少佐を連れて様子を見ると、入り口の近くにある壁際にいくつもの似たようなネジが落ちている。ネジ以外にもヒューズや何かよくわからない部品も散乱していた。また、近くには何かを直すためだったとおぼしき工具も投げ捨てられた状態で見つかる。


「ケイ、なにか見つかったか?」


後ろからアダムが顔を出し、ケイはネジなどの工作系の部品と工具が落ちていたと話す。採掘場にあっても違和感はないが、周りの壁は木の梁と土を固めた部分しか見当たらず、工具を使う場所がない。それに大量のネジやヒューズなどがこの場に落ちているの不自然だと感じたが、下の採掘場で使われているのだろうと結論づける。



「ちょっと!みんな来て!!」



その時分岐している右側の穴の方からシンシアの声が聞こえた。


ケイ達がそちらに向かうと、何故か青ざめたシンシアが口をパクパクとさせながらその場に立ち尽くしている。驚いた拍子に持参したランプが床に落ち火が消えてしまったが、それどころではないようで切羽詰まった表情をしている。


「シンシア、どうした?」


ケイ達が彼女を見遣ると、穴の奥の方を示し「あれを見て」と一言。


なんのことか分からないが、表情を察するに恐怖が浮かんでいる。

アダムとレイブンが持っていたたいまつで奥を照らすと、その場にいる全員が声を失った。


なぜなら、そこには大人数の人の死骸が転がっていたのだ。

採掘場がアフトクラトリア人の墓ということはどういうことなのか?

採掘場で見つけたネジとアフトクラトリア人には、なんの関係があるのか?

そしてシンシアの見たモノとは一体?

次回の更新は7月29日(水)です。


閲覧&ブックマーク&感想などありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

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