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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
新大陸編
204/359

198、意外な事実

皆さんこんばんは。

大変遅れて申し訳ありません!

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回は、いくつかの証拠を手にケイ達がサザンカの屋敷に乗り込みます

「サザンカ様、アサイ様とキキョウ様の殺害および偽装が完了いたしました」

「ご苦労様・・・で、礼の物は?」

「はっ。こちらに・・・」


黒装束の男たちの手には、血の付いたアサイとキキョウの着物の一部が握られている。サザンカはそれを男たちから受け取ると、うっとりした目でそれを見つめ悦に入る。それは、まるでおとぎ話の悪い魔女のようなそんな表情をしている。


「そうそう、監視塔に閉じ込めたミナモはどう?」

「はい。大人しくしている様子ですが、いかがなさいましょう?」

「そうね~アサイとキキョウ殺害の犯人として処分して頂戴。やり方はあなたたちに任せるわ」


側に仕えていた黒装束の男の二人は、黙ったまま彼女の言葉を聞いている。


彼らの一族は暗殺を生業としており、サザンカの私兵でもある。

そんな彼らに指示を出しているサザンカは、表ではみんなの相談役として、裏では四兄妹を葬ろうと画策していた。元より島国で生まれ育ったが全員が全員まっすぐに育つというわけではない。彼女自身四兄妹を疎み、私兵を使ってあれこれと手を引いていたわけであるが、それが今成就されようとしている。


「あら?あなたたちまだ居たの?もう用はないから下がって頂戴」


血に濡れた着物の一部を手にサザンカが黒装束の男たちに声をかける。


いつもなら報告が終わればすぐに退出するのだが、なぜかいつまでも片膝を付き、頭を下げたまま彼女の言葉を聞いているような様子を見せる。

サザンカが「聞いてるの?下がれと言ってるの!」と少し強い口調で言い放ち、二度も言わせないで頂戴とくるりと背を向ける。


黒装束の男たちは、彼女が後ろを振り返ったことを確かめた後にゆっくりと立ち上がり、サザンカは二人が退出する物だとやれやれといった空気を醸し出す。



「化けの皮が剥がれたな・・・サザンカ」



その言葉にサザンカは不意を突かれたのか、持っていた血濡れた着物の一部を落とす。ばっと振り返り、立ち上がった片割れの男がニヤリと笑みを浮かべているところを見るや彼女に緊張が走る。


「あなたたち、どういうことなの?」

「どういう?それはあんたがよく知っていることだろう?」


黒装束の男たちは左手にしている黒染めの皮手袋を取り、その人差し指に服装には似つかわしくないエメラルドがはめられた銀の指輪を抜き取る。


「なっ!・・・・・・アサイ!?」


男たちの姿は、術が解けたのか霧散するようにケイとアサイに変わる。


サザンカは二人の姿に何かを言おうと口をパクパクとさせるが、なかなか言葉が出てこない。何を隠そう、捕縛したサザンカの私兵に入れ替わるように以前バナハで使用したマジックアイテム【変化の指輪】を使用したのだ。ケイはその際に同じ物を創造し、もう一つをアサイにはめさせて変装したのちに屋敷に潜入していた。


サザンカは人を呼ぼうと反対側の襖を開けると、目の前にはキキョウとミナモの姿がある。そしてケイ達の後ろからアダム達とユイナが入ってくると、信じられないといった表情を一同がする。


「サ、サザンカ叔母様・・・・・・」

「ユイナ!?・・・まさかあなたたち、最初から知っていて!?」


青ざめたユイナの表情と寄り添うようにアレグロとタレナの姿を見て、サザンカが声を荒げる。そうかと彼女が悟り、自分がはめる方ではなくはめられる方だということに気づく。


「サザンカさん、あなたほどの聡明な方がなぜ?」

「なぜ?当たり前でしょ?あなた達では里を任せられないわ!だから私が代わって今後もまとめていくのよ!」


たとえ親族であっても、権力を前にして人という者は大なり小なり変わっていくことがある。ケイは彼女の様子を見て権力の亡者かと考える。力を与えれば人を導くと同時に様々な誘惑が自身の回りに這い入るかのように纏わり付く。

ここまで来るとアレグロとタレナが最初に感じた彼女の大人の柔らかな印象は、鬼女のような怨念を帯びた陰険な表情がにじみ出るような感覚を覚える。


「あんたのやっていることは全てお見通しだ」

「ふん!あなた達こそなによ?私が実権を握って何が悪いの?」

「笑わせんなよぉ~ 自分の息子を長の立場にして自分が裏から島ごと操る。あんたみたいな奴が島のトップなんて俺ならごめんだね。てか鏡見たことあんのか?はっきり言って権力に執着した性格ブスじゃねぇか?」


ケイがゲラゲラと笑いながら指摘すると、サザンカは憤慨して詰め寄ろうとする。


それを後ろからキキョウが羽交い締めにするや、暴れるサザンカを見てこれはいいのかとアダム達は戸惑ったがアサイはキキョウは器用な奴ではないので仕方がないと首を振る。もう少し(キキョウ)をフォローしてもいいのだが、そういう立ち位置なのだろうと口を挟むことはしない。


「サザンカさん、両親が亡くなったのはあなたのせいなのですか?」


アサイ達はここに来る前にアダム達と合流した時点で、北東にある岬にサザンカが重潤滑油を巻き両親が事故死するように仕掛けたのではという話を聞いている。

もちろん四人とも、叔母であるサザンカがそんなことをするとは微塵も思っていなかったので多かれ少なかれショックを受けているのは間違いない。


「本当なら、もっと後にこの計画を遂行するはずだった」


閉口したサザンカに代わりケイがその説明をする。


どういうことなのかとアサイがケイに尋ねると、自分の計画を四兄妹の両親に知られたこと、もっといえば自分の夫もこのことを知っていたのではと口にする。


ケイはみんなには内緒で、この屋敷に古くから出入りしている女中から話を聞いていたのだ。


その女中の話では、三年前に亡くなったサザンカの夫は偶然にも彼女の計画を知ってしまい、彼女を止めようと説得をしていたが彼女と口論になっているところを見かけたことがあった。そしてその数日後に彼女の夫は帰らぬ人に。

その女中はまさかと思っていたが、日が経つにつれてサザンカに知られれば自分が殺されてしまうと危機感を抱き、今まで誰にも言えずに黙っていたのだという。


そして四兄妹の両親も何かのきっかけで彼女が実権をほしがっていることを知り、同じように説得をしたのだが、サザンカは聞き入れるどころか岬に猟に出かけることを知っていたため先回りをして岬に重潤滑油を巻き、事故に見せかけて殺してしまった。そして次にその子供達までも毒牙にかけようとしている。


完全に口封じなのだが、話はそれだけではない。


「実はさ、ユイナ達の訪問の時にちょっとこの部屋を見させて貰ったんだ」


するとさ~という言葉と同時にポケットから手のひらにのるほどの小さな桐箱と金色のメダルが取り出される。それを見たサザンカは、それは!?と慌てた表情をしていたが、キキョウに羽交い締めにされているため身動きが取れない。


「ねぇ、それってなに?」

「へその緒」

「へその緒?」


シンシアが蓋が開かれた桐箱を覗き、なんでへその緒?と首を傾げる。


どうやらダジュールの大陸にはへその緒を取っておく習慣がないようで、赤ん坊を悪いことから遠ざけるためすぐさま廃棄するのが当たり前になっているようだが、錬金術師の家系では、逆にへその緒を錬金の材料にしてしまうケースもある。


日本でいうところの、子供の歯が抜けたら屋根に飛ばすようなものだろうか。


「俺さ~鑑定持ちなんだけど、鬼人の証だっけ?これを鑑定したら【シェメラの石版】って出たんだけど、あんたの言ってること・・・全くの嘘、だよな?」


覗き込むようにサザンカを見つめるケイに、羽交い締めにされている彼女は目線をそらす。アサイがそれじゃあと口を開き、ケイの口から全ては実権を握るための嘘だったことが語られる。


「シェメラの石版が、なぜサザンカさんの手に?」

「代々家に伝わる先人達の所有物の中に入っていたということでしょう」


アダムの問いにアサイは、長の家系は代々先人が所有していた物を所有・保管していたのだという。それぞれの屋敷の敷地内に立てられている蔵にはそういった物が数多くある。無論サザンカのいるこの屋敷にもそれらがあるので、恐らく彼女の屋敷の蔵から発見されたことからそういった考えを思いついたのだろう。


「そういや、この桐箱の蓋にタマエとは別に【キジム】って人の名前が書いてあるんだけど、サザンカの夫か?」

「いや、それは父の名前だ」


アサイから桐箱の裏に小さく書いてあったキジムという名は四兄妹の父の名で、なぜそこに書かれているのだろうと兄妹共に首を傾げ、それを見たケイはなるほどと納得した表情を見せた。



「・・・母上?」



その時ケイ達の後ろから子供の声が聞こえた。


五~六才ぐらいの男の子が先ほどまで眠っていたのか、目を擦りながらこちらを見ている。夜も遅い時間帯に、大人数でガタガタと音を立てながら何かをしていたらさすがに起きるだろう。

男の子はキキョウに羽交い締めにされているサザンカを見て驚きの表情をした後、母親を離せと言わんばかりキキョウにしがみつく。それをミナモが何とか引き離し落ち着くようにと目線を合わせて諭す。


「こいつは?」

「サザンカ叔母様のお子様でタマエです」


ユイナに男の子を聞きこれは好都合だと、ケイはタマエに近寄り目線を合わすようにしゃがみ込む。


「よう、坊主!ちょっと俺に協力してほしいんだがいいか?」


サザンカが息子に何を!?と鬼の形相で叫び、それをまるで聞こえないというように無視をする。聞こえていないのではなく外野のせいで話が進まないことが目に見えるため、タマエは普段では見ないような母親の形相に驚きながらもおずおずと頷く。


「じゃあ、一瞬だけこれを咥えてくれ」


ケイが鞄から取り出したのは、50mm×15mmほどの平たいガラス板のようなもので、タマエに半分のところまで一瞬だけ咥えてくれと指示をすると、その通りガラス板の半分まで口を付けすぐに離す。


「・・・で、オマエ達も協力してくれ」


ケイはアサイ、キキョウ、ミナモ、ユイナにそれぞれ同じようなガラス板を手渡し、同じように一瞬だけ咥えるようにと指示をする。キキョウはサザンカを羽交い締めにしていたため、ケイが彼女を【バインド】で拘束し、畳の上に横になるような形で放置する。ケイはそれぞれが咥えたことを確認すると、鞄から三脚の上に円盤形のような器がのった物を取り出す。


「ケイ様、それは何に使うの?」

「これは“DNA鑑定”の装置だ」

「DNA?」

「遺伝子を調べる装置のことだ」


ケイは以前モラン・リュリオとシンバの親子関係を調べる方法がダジュールにもあるとガイナールから聞いたことを思い出す。

ガイナールが言うに地球でいうDNA鑑定のやり方とは大分違うのだが、ダジュールのやり方では小さなガラス板に人の唾液を付着させ、専用の装置にかけると遺伝的な違いなどが瞬時にわかるという方法がある。


そもそも生き物の体内にある魔力は大きく分けて二種類ある。


内部的魔力と外部的魔力。

外部的魔力はその人物の魔力を現しており、それは絶えず変化するそうで例えるなら血液のような物に近い。一方、内部的魔力はその人自身に宿る受け継がれた能力や体質を現しており、それらは変化はしない。いわばDNAのようなものらしい。


ケイはガイナールからそんな方法を聞き、冗談半分に同じように創造魔法でその装置を再現してみたのだが、予め行った実験ではほぼ十割という的中を誇っていることから今回使用してみようと取り出したのだ。


ケイは五人に唾液が付いたガラス板をアサイ、キキョウ、ミナモ、ユイナの順に入れて貰うことにした。


円盤形の器に四人の唾液が付着したガラス板を投入すると、円盤の中にある特殊な製法で再現された液体がそれらを解析し、中央にある液晶のような画面に結果が表示されるというものだった。


その解析では、四人とも同じ両親からの遺伝子を持っていることがわかる。

そしてケイはその鑑定結果の後にタマエのガラス板を投入すると、数秒経ってから液晶部分に【父・100%】【母・0%】と表示される。


「やっぱりな~」

「やっぱりってどういうことよ?」

「この結果、タマエの親父はキジムでユイナ達の父親にあたる。そうなると四人とは異母兄弟ってことになる」


その言葉に聞いたシンシアを含めて全員が絶句する。


アサイは何かの間違いではと口を開くが、試しにと半ば強引にサザンカの唾液を摂取し再度タマエの唾液と一緒に装置にかけると、二人の親子関係が認められる。

このことから、タマエは四兄妹の父・キジムと母・サザンカの間に生まれた子供になる。


「ち、ちょっと待って!?サザンカさんは叔母に当たるのよね?ということは、その兄妹で・・・ってことになるじゃない?」

「まぁ、そうなるだろうな。俺の国でも昔はそんなことがあったみたいだが今は法律で禁止されているし、兄妹間の場合は障害などのリスクが高いことが根拠としてあげられていることを聞いたことがある」


言いにくそうにシンシアが指摘するが、ケイはへその緒を入手した段階でおおよその予想は立てていた。


大昔では異父・異母関係の場合により条件によっては認められていたものの、現在は法律で禁止されている。遺伝的に劣化遺伝子の可能性も一理あるようだが詳しい事は割愛する。

そうなるとタマエの誕生の過程は不明だが、サザンカの夫が子を作れない体質だったと仮定するともしかしたらと思ったりするが、彼女が何を思ったのかは本人しかわからない。


そうこうしている内に、アサイとキキョウの部下が数人この部屋に入って来る。


アサイは、衝撃的な真実にショックを受けると同時に気丈にも部下にサザンカの身柄を拘束するようにと指示を出した。

ケイの創造したDNA鑑定機により意外な事実が発覚しました。

当然アサイ達はショックを受けますが、タマエの事は気がかりです。

次回の更新は7月20日(月)夜です。


いつも閲覧&ブックマーク&感想などをありがとうございます。

細々と活動していますので、また来てください。


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