表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
新大陸編
203/359

197、疑惑と襲撃

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

今回は、ケイが想定したことのアダム達視点になります。

鬼人族のアサイ、キキョウ、ミナモの協力の下対応に奮闘をします。

「えっ!?じゃあサザンカさんは、この店に来たんですね?」

「あぁ。えっと、たしか長たちが亡くなる二日前だったと思う」


同じ頃アダムとシンシアとレイブンは、集落にある潤滑油を扱う店を回り情報収集をしていた。その一件に向かった時、店の亭主からユイナ達の両親が亡くなる二日前にサザンカが来ていたことを知った。


亭主からは重潤滑油を壺に入れてほしいとサザンカが頼みに来たそうだが、本来は臭いが強く少量で使用するものだと言って、彼女が持参した壺の5分の1ほどしか入れていなかったのだという。

しかも何に使用するのかと尋ねた際に「ねずみの駆除に使う」ということを聞き、疑問に感じていたが詮索するのはヤボだとそのまま売ってしまったのだという。


「たしか重潤滑油は、成人の男性でも転倒してしまう品物なんですよね?」

「あぁ、そうだ。普段は海に近い家の扉や井戸の滑車などが錆びてしまうことを防ぐために特殊な液体と混ぜて使用しているんだ」


重潤滑油は、島では海側に住んでいる家の引き戸や井戸の滑車、倉庫の鉄扉の開閉に使われるそうで、デメリットとしては臭いがきつく長期的に残ることが上げられる。

そういえば、ブルノワと少佐が臭いと泣いていたのはこれのことだったのかと三人は知る。現に店の奥には貯蔵する倉庫の様なものがあり、入り口に立っているだけでも少し臭ってくるのだから、同行しているブルノワと少佐の嗅覚には非常にきつい臭いを感知しているのだと表情から察する。


「ちなみにねずみの駆除に重潤滑油は、使うことがあるんですか?」

「たしかにひと昔前は一般の家にも使っていたことがあったけど、ほらっ臭いがアレだろう?昼夜問わずに臭いって苦情ばっか、今じゃあ無臭の薬品を使って駆除するのが当たり前になってきたけどな」


店の亭主は、樽を片付けながらアダム達の質問を返す。


どうやら床下に徘徊しているネズミを一網打尽にするためにあえて滑らせ、一箇所に設置した罠にまとめてかけるという方法らしいが、今はネズミ用の餌に神経性の毒を混ぜて置いておく方法が支流のようだ。

しかし今考えると、そういうことは屋敷の女中が行うはずだがと店の亭主が首を傾げる。アダム達はそれが岬に仕組むために使われたのではと考えに至る。しかしこの店の重潤滑油が使われたと知れば、卒倒するのではとあえて口にしなかった。



「ということは、ここの重潤滑油が使われた可能性があるということか」

「でも、教えなくて正解ね。まさか殺人の片棒を知らない間に担がされていたなんて知ったら、私だったら店を畳みかねないわ」


店の亭主に礼を言って離れた一同は、人気のないところで今聞いた話を整理する。


サザンカはこの店に出入りしていたことは亭主の証言からわかった。


しかし、仮にサザンカが犯人だと仮定すると動機はなにか?

ケイはそれも見越して彼女を主犯だと決めているような口ぶりだったが、アダム達には見当も付かない。そこにシンシアがあっと声をあげる。


「ねぇ、もしかしてサザンカさんの目的って・・・長争いじゃない?」

「どういうことだ?」

「後継者争いよ。サザンカはユイナ達の叔母に当たるから、長の家系に入るわ」

「でも、女性は長になれるのか?」

「彼女じゃないの」

「・・・・・・! そうか、タマエか!」


レイブンがやっと気づいた様にシンシアに続く。


正解!と人差し指を立てサザンカはタマエを長にするべく、裏で工作をしていたのではと考えに行き着く。本来ならサザンカの夫もその一族に入ると考えるなら、その子供であるタマエも対象になる。

しかしそう考えると辻褄が合うが、そこまでして四兄妹の両親を殺し、兄妹の仲を裂いたりと早急に実権を握りたいのかと考えると、その部分が不透明である。

仮に、何かの事情でタマエを継がせたいという考えがユイナ達の両親が伝わり揉めたとなると可能性はなくはない。


「これ以上考えても分からないところはあるわね」

「だね。二人共、俺は予定通りキキョウさんのところに行くけど大丈夫か?」

「そういえばそうだった。ケイの推測通りなら、この後相手が動くということか。俺とシンシアはアサイさんのところにいくよ」


予めアダムとシンシアはアサイの屋敷へ。レイブンはブルノワと少佐を連れてキキョウの屋敷へと向かう。


ケイはこの後起こることも想定していたのか、一同は先読みする彼に脱帽した。




「その話は本当なの?」

「はい・・・・・・先ほど屋敷にいる者から、アサイ様とキキョウ様が今夜、長になるための行動を双方で行うようですがいかがなさいましょう?」

「この辺で潮時かしら?互いに争ったように偽装して始末して頂戴」

「御意」


サザンカの言葉に密偵とおぼしき黒装束の男たちが頭を下げ、部屋から退出する。

ケイの想定通りサザンカが一枚噛んでいたようで、彼女自身その朗報を聞き、喜々とした表情を浮かべている。


「やっと、目的は達成される・・・・・・ってことかしら」


障子越しに夕日が差し込み、反射した室内と彼女の意味ありげな表情がこれから起こることの前触れとなるのだった。




「本当に大丈夫かしら?」

「ミナモさんもいるし、こっちは大丈夫だと思う」


その頃アダムとシンシアは、アサイの屋敷に辿り着いていた。


日はとっくに落ち、辺りは月と星空の明かりが照らされている。

二人はキキョウ達を含めたやりとりの中で、潤滑油の聞き込みが終わったらそのままアサイとキキョウの屋敷に行くようにとケイから言われている。

これは、ケイがわざと仲違いをしたアサイとキキョウに関しての嘘の情報をサザンカと同じような手法で広めたのだ。

現に屋敷の近くにやって来た時、すれ違った屋敷の使用人達が口々にこんな話をしていたことを聞いた。それに、サザンカがアクションを起こすとなると今夜だろうとこれも想定している。


二人が予め話を聞いたとおりに外周を回ってから裏門に辿り着くと、ミナモが扉を開けて中に招き入れる。


「アダムさん、シンシアさんお疲れ様です」

「そっちはどうだ?」

「今は何も動きがないようです。でも、本当にサザンカさんが兄さん達の命を?」

「ケイが考えていたことが当たっているのなら、今夜にサザンカさんがらみの人物がくる可能性はあると思うわ」


ミナモは不安そうな表情で二人を見つめ、そのために自分たちが来たから心配しなくても良いと励ます。


ミナモの案内でアサイがいる彼の私室にやってくると、刀を手に畳に座るアサイの姿があった。

彼は三人の姿を見るやミナモから話は全て聞いたと伝え、サザンカのことも内心驚いてはいたが、こうなっては仕方ないと腹を括った表情をする。


「それと君達の仲間が行った監視塔だが、私の方で調べたところ、ミナモが監視塔に投獄されその際についていた警備は私の部下ではなかった」

「どういうことですか?」

「彼らはサザンカ私兵だった。」


アサイは自分たちの知らないところで、サザンカの私兵が自分の部下が着ている紺色の着物を拝借して成り代わっていたらしい。


ちなみに紺色の着物は誰の下に付いているかを示すために各々色を変えており、アサイは紺、キキョウは黄、ミナモは青、ユイナが桜色(ピンク)と分けられている。

これは島の誰もが知っていることなのだが、元々は両親の私兵が四人分に分けて編制されたことから区別をするために行っていたそうだ。

「まさかそれを利用されるとはな」と困ったような表情を浮かべるアサイに、島国という独自の文化とルールを築いた鬼人族の裏の場面と言わざる終えない。


「屋敷にいる部下は君達の仲間のケイが言っていたように配置をしているが、本当なのか?」

「はい。ケイはそれを想定としてミナモさんに伝えてましたから」

「だとしたら、彼は相当頭の切れる人間だな」


ミナモから一部始終を聞いているアサイはケイの考えに舌を巻く。

彼曰く、そのタイプはもっとも相手にしたくないらしい。


そうこうしているうちに、部屋の外に人の気配がした。

刀を手にアサイが立ち上がり、アダムも剣に手をかけながら襖の外の様子を慎重に伺う。ミナモが不安そうな表情を見せたがアサイは大丈夫だと二人を気遣い、シンシアは弓を扱うため室内では使用が難しいからとアダムの背に回る。


「・・・誰だ?」


襖を隔てた先に向かいアサイが投げかける。

返事はなく誰かが息を殺してこちらの様子を見ているのだろう。

アサイとアダムが襖に手をかけ、顔を見合わせ頷き一気に開くとガサッと庭園の方から何者かが動く。


「そこにいるのは誰だ!」


アサイの張り上げた声と同時に、周囲に潜伏していた彼の部下がばっと現れた。


その内の一人がその人物を捕縛したようで、腕を後ろ手に地面に伏せて押さえつけている。他の物がちょうちんの明かりを手にその人物を照らし出すと、アサイがハッとした表情をする。


「彼はサザンカの私兵?」

「兄さん後ろ!」


ミナモの声と同時にアサイが振り返るともう一人いたようで、ナイフを手に距離を詰めるところが見えた。距離を取っていたシンシアがすぐさま弓を引き射ると、寸分の狂いもなく持っていたナイフにあてるようにはたき落とす。そのあとにアダムが距離を詰めその人物の後頭部を件の柄をあてて気絶させる。


「すまない。助かった」

「彼らは?」

「サザンカの私兵だ。私の屋敷に潜り込んでいたようだ」

「スパイって事?」


アサイが頷き、なぜ?と捕縛された男たちに問いかける。

男たちはサザンカの命で、アサイとキキョウを争ったように殺害しろと指示を出したという。アサイの表情は冷静そのものだったが、内心腸が煮えくりかえっていてもおかしくはない。


「調査が済み次第、彼らの尋問を行う。この者達を地下牢に繋げておけ」

「「はっ!」」


アサイは部下に指示を出し、アダムとシンシアは予定通りに二人を連れてサザンカの屋敷へと向かった。



「うらぁぁぁあああ!!!!」


同じ頃ブルノワと少佐を連れたレイブンがキキョウの屋敷に到着をすると、建物の方から交戦しているキキョウの怒声が響き渡った。


「キキョウさん!・・・わっ!」


キキョウの部屋に足を運ぼうとして、中から黒装束の男が投げ飛ばされているところに遭遇し、間一髪で避ける。中を覗くとキキョウの回りには数人の襲撃者とおぼしき人物が倒れており、その内の一人は頭部をキキョウに鷲掴みされている。

いくら体格が大きいといってもこの人数を一人で押さえ込んだ辺りは、さすが鬼人族といったところだろう。


「おぉ、レイブンか?」

「助けいらなかったようですね」

「この程度なら俺だけで十分だ。野郎ども、そいつ等を牢にぶち込んでおけ!」

「「へい!兄貴!」」


キキョウの部下に連行された黒装束の男たちは、サザンカの私兵だという。

昔は暗殺も兼任していたが、近年その方面の役割はあまりされていないようだったが、本職であるようにいつでも遂行できるような体制になっていたらしい。

ケイが提案し、尚且つその行動も想定済みだったことにキキョウは笑いながら自分じゃ思いつかなかったなと口にする。


「それでは、サザンカさんのところに向かってもいいですか?」

「あぁ、俺は大丈夫だ。屋敷の事は野郎どもに任せてある」


レイブンはキキョウの了承を得て、彼と一緒にサザンカの屋敷へと向かうことにした。

襲撃されたアサイとキキョウは何とかそれを退け、予定通りアダム達は彼らを連れてサザンカの屋敷に向かいます。

次回は7月17日(金)夜です。


閲覧&ブックマーク&感想をありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、よければまた来てください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ