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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
新大陸編
200/359

194、二人の兄

皆さんこんばんは。

今回はケイとレイブンがキキョウの元へ、アダムとシンシアがアサイの元へと訪れます。

ケイとレイブンは西の集落にあるキキョウの屋敷へと向かっていた。


何人かに声をかけ場所を教えて貰い向かった先は、ユイナとあった屋敷と同じような雰囲気の建物だった。

屋敷に続く門には二人の警備をしている男たちがおり、彼らはケイ達を見つけると用がないなら帰れと出会い頭に威嚇される。


「用があるにきまってるだろ?それに、ユイナからキキョウの様子を見てきてくれと頼まれた。これでとりあえず本人に会わせろ」


兄がユイナから預かった紐に通された青い勾玉を二人に見せると、その内の一人がここで待てと慌てて屋敷内を駆けていった。

残されたもう一人からユイナの知り合いかと尋ねられ、世話になっているだけだと口にすると、さっきはすまなかったと口にする。どうやら兄弟間のいざこざで、彼らを取り巻く人達にも緊張が走っているのだという。


暫くすると、もう一人の男が戻って来るや中に入れと言われる。


敷地内に入ると思ったより綺麗なことに驚く。

表にいる警備をしている男たちはどちらかというと派手な外見をしているため、最初ゴロツキみたいだと思ったのは内緒の話だが、敷地内にいる屋敷の使用人を見てみると、全員が同じように派手で肌を露出した服装が多い。


ケイとレイブンは、先ほどの男の後に続き奥座敷らしき場所に通された。


「兄貴!客人をお連れしやした!」

「・・・入れ」


中から声がし男が襖をあけると、奥座敷の奥の方に一組の男女がいた。


一人は屋敷の使用人らしき女性で、もう一人の男に膝枕をしている。

この男が先ほどの声の主なのだろうと思い二人が中に入ると、男は起き上がり女性に退出するようにと指示をした。女性は残念ねと言って立ち上がると、ケイ達と入れ違うように部屋をあとにする。


「まぁ、座れや」


どうやら男は先ほどまで横になっていたのか首をバキバキと鳴らし、ケイ達に座るように即す。


体格的にはレイブンと大差ないが威圧感が異常に大きく、まるで獲物を捕食するような獰猛な捕食者のようだ。男は赤い瞳でケイ達をまるで品定めをするように見つめ、用件を言えと言わんばかりの表情をする。


「あんたがキキョウか?」

「あぁ。おまえらは見たことないが・・・誰だ?」

「俺達は、ユイナさんにお世話になっているレイブンとこっちはケイです」


レイブンがそれぞれのことを紹介すると、島の奴らなら大抵知っているがお前達は初めて見ると口にする。いくら変装しているとはいえ、人間とバレたら即刻打ち首獄門である。


「ユイナからアンタとアサイが長の座で争っているって聞いてやってきた」

「だとしたらそれは間違いない」

「それに集落のやつらから『仲が良い兄弟なのに』って言ってたぞ?」


ケイの言葉に、それはお前らには関係ないとキキョウは一蹴する。


長の家系に育ち【鬼人の証】を手にすれば長になれると言われているが、そもそもそのことは島民に知られていないとなると、何かあるのではと疑うのが人の性である。


「争いの根本は・・・【鬼人の証】とか?」


その言葉にキキョウは目を細め険しい表情で二人を見つめ、まるでなぜ知っていると言わんばかりの形相になる。そんなことで怯むことのないケイが、ここでキキョウにあることを告げる。


「じゃあ、アサイがミナモを投獄した話は聞いてるか?」

「なっ!?・・・アサイがミナモを!」


驚愕し目を丸くさせたかと思うと、どもりながらなんの冗談だと口にする。


その動揺した様子から、まさに今聞いたような反応である。

ケイとレイブンは、もしかして知らなかったのかと互いに顔を見合わせていると、いつの間にかキキョウがケイの前に来たかと思うと、大きな両手でケイの肩を掴んだ。


「おい!それはどういうことだ?あいつになにがあったんだ!?」

「キキョウさん、落ち着いてください」


慌てて止めに入ったレイブンが諭すと、ケイはユイナから聞いたことをキキョウに伝える。どうやら本当に知らなかったようで、最後に会ったのは三日前の夕刻だという。


「アサイがミナモにそんなことをするはずねぇ!」

「あんた、知らなかったのか?」

「おまえ達に聞いたのが初めてだ。あいつ、何を考えてやがる・・・」


苦虫を噛みつぶしたような表情で呟くキキョウに、ケイとレイブンはどうなっているんだと疑問を浮かべるしかなかった。



一方その頃アダムとシンシアは、東の集落にあるアサイの屋敷を訪れていた。


屋敷の門番に話を伝えると、ほどなくして許可されたのか案内人の女性が現れ、中へと通される。屋敷にいる使用人達は決まった服装を着ているのか、紺色の着物を身に纏っている。

敷地内は塵一つ落ちていないほど掃除が行き届いており、屋敷の主を写しているかのような凜とした雰囲気を漂わせている。


「凄い庭ね」

「あの白いのは砂か?模様のようになっているけどどうなってるんだろう?」


二人が不思議に見つめていた先には、渡り廊下の左手に石庭が広がっていた。


その一画に白い砂が敷き詰められ、渦を巻くように砂紋が広がっている。

ちなみに日本では、過去には学僧が修行の一環で砂熊手を使い描いていると言われているたが、現代では専門業者が十日に一度の割合で線を引くことがあるのだという。


「アサイ様、お客様をお連れいたしました」

「ありがとう・・・どうぞ」


襖が開かれ、奥には作業をしていた成人男性とおぼしき人物がこちらに背を向けて座っている。


「すまない。少し待ってくれないか?」


案内人の女性からどうぞと示され、恐る恐る中に入ると畳の床に二人が座ると、作業のキリが悪いのか少し待ってほしいと告げられる。


ほどなくして青年は筆を置き、二人に向き合い一礼をした。

短めの黒髪に凜とした佇まいに白い模様の入った紺色の着物を身に纏い、姿勢を正した青年が二人に対峙する。


「お待たせしました。私がアサイです」

「お忙しいところすみません。俺達はユイナさんから様子を見てきてほしいと頼まれたアダムと彼女はシンシアです」

「初めまして」


互いに自己紹介をすませ、アダムはユイナから心配をしているので様子を見てきてほしいと述べると、アサイは妹には迷惑をかけたなと兄らしい表情を浮かべた。


「俺達は、長のことでキキョウさんと争っていると彼女から聞きました」

「そうですか。妹には迷惑をかけてばかりで悪いことをしました・・・」

「彼女はミナモさんのことについても心配していました」

「ミナモのこと?なんのことだい?」


アサイはなんの話かと首を傾げる。

二人は一瞬シラを通しているのかと思い顔を見合わせたが、ミナモに何かあったのかと尋ねられ、シンシアがあなたがしたことじゃないの?と問い返す。


「私がミナモに何かをしたと?」

「何かをじゃなくて、投獄したんでしょ?ミナモさんを!?」


そこで驚きの表情に変わり、なぜそんな話がと戸惑いを見せた。

二人は予期しなかった彼の表情に何がなんやらと困った表情をし、アサイにユイナから聞いたことを伝え、ここで彼は「自分はそんな指示をしていない」と首を振った。


「えっ?してないって、じゃあユイナさんから聞いた話は嘘ってこと?」

「いや、もしかしたら情報操作されているんじゃないか?」

「情報操作?」


アダムは、第三者によって四兄妹に嘘の情報が入り交じっているのではと考えた。


それが誰なのかはわからないが、少なくともその人物にとって四兄妹は邪魔な存在だということだけは分かる。だから互いに知らない、嘘などを盛り込んで伝えられているのではとシンシアに返すと、それを聞いていたアサイはまさかそんなことがとショックを受けている様子を見せる。


「アサイさん、ユイナさんからあなたとキキョウさんが【鬼人の証】を巡って対立していることを聞きました。それはだれから聞いたんですか?」

「鬼人の証は私の家に代々伝えられている物だと叔母から聞きました」

「叔母?」

「サザンカさんのことです」


アサイから叔母であるサザンカから、証の話を聞いたと述べる。


三兄弟はその時、丸型で金色の証をみたと証言をした。

アダムとシンシアはユイナの話と同じであると理解し、島民に聞いても知らないと首を振ったが島に伝わる言い伝えの様なものじゃないのかと尋ねると、実は証の存在は自分たちも最近知ったそうだ。


両親は生前何も言わなかったが、もしかしたら以前から叔母のサザンカだけに密かに伝えて来たのかもしれないと言う。


「ちなみにその証は今、どこに?」

「叔母のサザンカさんの屋敷に保管してあります。彼女は後見人ですから」


アサイからサザンカが【鬼人の証】を所持していることを聞いた二人は、自分たちが嘘の情報を広めた人物を特定するので、アサイさんはあまり動かない方がいいと伝えた。もちろん彼は二人を信じても良いのかと悩んだが、アダム曰くアサイが動けば代わりにユイナさんの身に何かが起こるかもしれないと考え伝えた。


長の家系を壊す人物が他にも存在している可能性があると示唆したアダムに、アサイは申し訳ないがよろしく頼むと頭を下げた。



「・・・で、そっちはどうだった?」

『こっちは、兄妹間で嘘の情報が入り交じっている可能性を考えたよ』

「第三者による情報操作か~」

『やっぱりそう思うか?』

「まぁな。しかもやり方が露骨だろ?それに気になることもあったし~」


キキョウの屋敷を出たケイとレイブンは、状況をアダム達に伝えようとスマホに連絡を入れた。


互いに情報共有をしていく中で、いくつか気になるワードも出てくる。


まずは【鬼人の証】である。

これは叔母のサザンカが保管をしているそうで、長になった暁には証が送られるというものだが、その事実を知るものは四兄妹とサザンカだけになる。

これは極秘なのか単に島民に伝えられていないだけなのかは分からないが、いずれにせよ物は存在している。


次にミナモのこと。

彼が投獄されている監視塔は実際に島の中央に存在しているそうで、昔では罪人を収容する施設になっていたこともあったようで、ケイ達からもアダム達からもその塔らしきものが見えている。監視塔は島全体を見通せることから、今でも災害が遭った時用に食料の備蓄もしているとのこと。


そして、四兄妹の中と両親の死についてである。

ユイナ達の両親は北東にある岬から落ちて亡くなったと言ったが、そもそも毎月赴いており、その場所の危険性も熟知していた人間が落ちたとなると、何かしらのことがあったのではと考えざるおえない。

そしてユイナの話からアサイの近衛がミナモを捕縛した話だが、アサイ自身はそんな指示をしていないと否定。キキョウはアサイがそんなことをするはずないと彼も否定していたものの、心のどこかで疑惑が晴れないような表情をしていた。


「そうなると手分けして調査するべきだな」


ケイはそう言って、アダムとシンシアに一度ユイナのところに様子を見に戻ってほしいと伝え、レイブンにはブルノワと少佐をたくし、アダム達と合流してほしいと伝える。


『ケイは?』

「俺は、監視塔にいるミナモを救出してくる」

『大丈夫なのか?』

「まぁ、なんとかなるだろう。あと、ついでに頼まれてほしいんだけど、ユイナ達の両親が亡くなった岬を調べてくれねぇか?」

『岬?北東にあるやつか?』

「あぁ。どうもなんか引っかかるんだよな」

『わかった。一度ユイナさんの屋敷に戻ってから行ってみることにするよ』


ケイは監視塔に収容されているミナモを助けると言ってから通話を切り、アダムとシンシア、レイブンは一度ユイナの屋敷に合流するために別行動を開始した。

アサイとキキョウは、ミナモが投獄されていることを知らなかった。

やはりケイの推測通りに第三者の存在が浮き彫りになったことを受け、ケイはミナモの救出。

アダム、シンシア、レイブンはユイナの屋敷経由で北東の岬に向かうことになります。

果たして真実は一体?


次回の更新は7月10日(金)夜です。


閲覧&ブックマーク&感想ありがとうございます。

細々とマイペースに活動していますので、また来てくださいね。

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